寄生獣~S~   作:証明

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第4話

何かと、騒がしい1日である……

 

私は、令和の世じゃ考えられないようなエアコンの無い教室の中 

暑さをしのぐ為に下敷きで自身を扇いでいる少年少女の姿に外の日差しよりも眩しさをおぼえながら、そんなことを思っていた…

 

そんな少年少女達とすごす高校生活も自身にとって、二度目ではあるが今日ほど騒がしく感じたことはない。

 

私は、前世の記憶を思い出してからというもの、両親曰く人が変わったように勉学に励むようになったらしい。

事実、今世の記憶との融合により、別人になったと言って差し支えないのであるが、その時の両親の顔はと言えば決して喜んではいなかったように思える。

 

私は、前世のような人生を歩みたくなかった。

人にこき使われ、使えない奴だと罵倒され続けた男のような人生は歩みたくないのだ。

 

「……別に、今となってはどうでも良いことではあるが…。」

「え? 何か言った?」

 

私の斜め前に座る何かと、表情豊かな少年がそう聴いてきた。

別に、君に話しかけたのではないのだが……

 

「嫌、気にしないでくれ。 泉 新一くん。」

「いや、でも……さあ」

「良いから、前を向いてくれないかな、泉 新一くん

それとも、また彼からチョークを投げられたいのかな?」

 

私は、少しのため息を吐きつつ、今日何かと騒がしくしている原因にそれとなく注意を促した。

「いや、ゴ、ゴメン…ぁはは。」

そう、こと今世に至ってはしごく感情の薄い私をほんの少しであるがイラつかせた張本人である。

 

何の話かと言うと、この少年、泉 新一は、  

授業中、隣の席の女子と話していたのを、先生に見つかり

チョークを投げられ、こともあろうかそれを見もせずに

右手で捉え、砕いたのだ。

 

その光景には、さすがの私も表情にこそ出てないが驚いたものである。

 

しかし、先生のプライドとやらは傷ついたようで、私の目の前で盛大に拳骨を食らっていた…。

 

かと思えば、私が休み時間にトイレから自席へと、戻る途中のことだったが、大胆にもこの少年は少女に気安くセクハラというものをかまし、そこでもまた一騒動あったのだ。

奇しくも、その場に居合わせた私は、またも頭を悩ませるのだった。

 

 

__

 

 

 

私は、自分が感情が薄いことは理解しているし、それが前世の私の最後の願いから来ていることも分かっている。

故に、そのせいもあり、今世の両親と上手くいってないことも、今世の私が今の私になってから、今まで私が培ってきたであろう友人関係にヒビがはいってしまったことも仕方ないとも思えるし

あぁ、そうか と納得している。

 

「ただ、完全には願いを叶えてはくれなかったらしいが…」

 

そう、"感情が薄い"だけなのである。

"感情が無い"のではないのだ。 もし、神とやらがいるのなら大層なひねくれ者だなぁと思う。

私は、感情なんていらなかったのである。薄皮一枚も一粒も一ミリでさえも…。

 

まぁ、今さら嘆いても仕方のないことであるし、誰にどう嘆けと言う話なのであるが…

故に、私は…

「まぁ、いいか…」

そう呟き、黒板に書き出される教えをノートにとり続けるのであった。

 

 

__

 

 

 

「なぁ、本当にどうしたんだよ大丈夫か井上?」

「…」

「なあ?」

ボキッと、教師のチョークを折る音が響いた。

 

そういえば、不思議な事があったのをその音で、ふと思い出した。

私が、今世動体視力が良いのは前述した通りだが、いつもなら駒送りのように見えていた世界が、今日はまるで止まって見えたのである。

例をあげるなら、教師が投げたチョークが彼、"泉 新一"のもとにたどり着くまでになんなら、私は歩いて教室を出ていけそうな程、それはいつもより数倍ゆっくりと感じたのだ。

 

「~井上っ」

私が、あまりに反応しないからか、私の斜め前にいる少年は、若干、声を荒らげた。

「いず…っ!」

どうやら、教師も我慢の限界だったようで、それを上回る声を発しようとしている。

 

__ 

 

 

私は、静かな所が好きだ。

私は、平穏が好きだ。

私は、毎日がただ平和に過ぎれば良いと思っている。

 

恐らくそれは、前世の影響だろう。

社会で怒鳴られ続けた影響だろう。

家で、両親に泣かれ続けた影響だろう。 

社会人になってから、1日たりとて心休まる日がなかった影響だろう。

 

故に、私は

「泉くん、君、今日はもう帰ったら?具合悪そうじゃない」

 

……。

 

教室中に響くような凛とした声で、気づけば私はそう言っていた。

 

…折角、今日は体調が良いのだ、 私の平穏の邪魔をしないでほしい。

階段だって、息切れせず登りきれたのだ。

 

「そ、そうかな?」

泉 新一は、少し驚いたようにそう言った。

「ええ、先生もそう思うでしょう?」

 

「う、うむ。 そうだな泉、今日はもう帰れ!」

「え、いや…でも…」

煮え切らない少年である。

 

 

「いいから……帰りなさい」

私は、以前としてこちらへ顔を向けたままの彼に対して、仕方なく彼へと顔を近づけ彼の目を覗きこむように見つめ、諭すようにそう伝えた。

 

「…っ。 わ、わかったよ。

スミマセン、先生やっぱり今日は体調悪いみたいなので帰ります」

そう言って、目の前の表情豊かな少年は、なぜだろうか少し怖がった様子で帰っていった。

 

しかし、私は見逃さなかった

彼の右手が、瞬間何か異形の形を成したことを……。

 

 

__

 

 

…失敗した…

 

…ナ…カマ…?

 

イヤ…違う…

 

違う         何か…

 

危険ナ……  ナニか……。

 

 

 

 

 

 




当初、世界観を壊すようで書きたくなかったのですが

筆者の中では、無表情な羽衣狐をイメージしてかいています。

どうか、それに惑わされず皆様それぞれの井上香織でお楽しみください。
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