寄生獣~S~   作:証明

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第2章
第6話


私は、平穏が好きだ

 

__

 

 

朝の両親との、騒々しいやり取りを終え、私はいつも通りに登校した。

 

どうやら、今日は朝から全体朝礼があるようで、私は体育館へとクラスメイト達と共に移動していった。

 

「えー、それでは先日交通事故で入院された。松山先生に替わり1年3組には、新たに副担任として、田宮 良子先生が勤めることになりました。」

 

「宜しくお願いします」

 

自身のクラスの担任が入院している事により、その新しく赴任された教師が教頭より紹介され、挨拶をした時の事である。

 

その女教師は、何故か、ほんの一瞬こちらを見て何事かを呟いた。

恐らく、常人には聴こえないだろうそれを、私の耳は聞き逃さなかった。

「面白い」 そう呟いたのを。

 

 

ふと、前の方を見れば賑やかに色めきたつ男子生徒達の中で、泉新一だけは、何故か怯えてるように見えた。

 

 

__

 

 

しばらくしたある日の放課後の事である。

「井上さん。少しお話があるの、良いかしら?」

突如として、彼女、田宮良子に呼び出された。

「はい。分かりました」

そう返事をし、教室を出ようとした時

「ちょっと、香織大丈夫なの?」

友人のいない私に、何かと心配性な村野里美がそう話しかけてきた。

私と彼女は、友人と呼べるものではないと私は思っている。

ただ、常に一人でいる私を気にかけてか、何かと声をかけられ、いつの間にか、名前で呼ばれるようになっていた。

 

恐らく、前世の私が同じ時代に出会っていたならば、異性を感じていたことだろう。

 

「ええ」

そう彼女に伝え、教室を後にした。

 

 

__

 

 

「で、話とはなんでしょう? 田宮先生」

私は今、進路指導室で件の教師と二人きりになっていた。

 

「……」

「あの?」

「どっちだ」

「?…どっちとは?」

目の前の教師は少し怒気の孕んだ声でそう聞いてきた

「どっちだ、貴様の正体は… ここ数日見ていたがまるでわからん。我々と同じなのか? それとも人間なのか、一体どっちだ?」

 

「……人間ですよ?」

「私を見て、何か感じ無かったのか? 何か気づかなかったのか?」

そう言った田宮良子の顔が突如として、ひびでも入ったかのように割れ始めた。

「別に、何も感じませんが?」

そう、私が述べると、彼女の髪の先端が刃物のように形づくりながら、私に向かってきた

 

それはゆっくりと、酷くゆっくりと私に近づいてくる

 

恐らく私への攻撃なのだろう。 別にケガをするのも平気なのだが

……

「はぁ……面倒くさいな」 

 

ヒュッ

 

私は田宮良子の後ろに立ち、彼女の首元に手を置いた

「別に、どうでも良いんですよ。 先生が何者だろうと、例えあなたが人間じゃなかろうが  ……いえ、今分かりましたが人間じゃあないようですが……それでも、どうでも良いんですよ私は__」

 

 

私は、ほんの少し手に力を加えこう言った

「ですが、私の平穏の邪魔だけはしないでくださいね」

 

ギリ……ッ

「私は、それさえ守って頂ければ何もしませんから」

「ッグゥ…」

私はそう彼女に囁き手を離した。

 

 

「それでは先生、さようなら」

 

そう言って、進路指導室を出ようとした時、田宮良子は私に聞いてきた

「泉、……泉新一のこと、あなたはどう思ってるのかしら?」

普段のような女性特有の口調に変わり、田宮良子は首すじを擦りながら私にそう尋ねた。

 

「別に、それこそどうも思っていませんよ。  ただし  もし彼が私の平穏を邪魔するようなら、その時は……」

 

そう言って私はその部屋を後にした。

 

 

__

 

 

 

「…化物め」

その部屋に、一人残された田宮良子はそう呟いた。

目には、グチャグチャに握り潰されたドアノブがあり、始め"面白い"

と感じた思いは、とうに消え去っていた……

 

 

__

 

 

 

「泉新一ね…」

別に、どうも思ってはいないが言われてみれば、確かにどこかひっかかる少年だ。

初めのころは、豊かすぎた表情も、最近では落ち着きを見せはじめたように見える。

かと、思えば授業中一人でしゃべっていたりする訳で…

「確かに、何かあるのかもしれないな」

もしかしたら、彼も人間では無いのだろうか? 別にどちらでもかまわないのだが…

 

「邪魔するなら殺す」 

 

私は、電車の窓から見える夕焼けの空を見ながらそう呟くのだった。 

 

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