「田宮良子か…なんとも興味深いヤツだ、そう思わないか? 新一?」
「あんだよ、急に…」
時間帯は、深夜1時といった所だろう。泉新一に、彼の右手に運悪く寄生してしまった存在である"ミギー"が今日あった出来事を思いだし、話し始めた。
「だって、そうは思わないか? 自身の存在理由を明確にする為に子供を成すなど、到底我々には思い付かないことだ」
「…そうなのか?」
「ああ、我々"寄生生物"とでも言うべき存在は非常に単純であり、言うなれば、ただ一つの目的の為に産まれ生息している」
「あんだよ、その目的って?」
泉新一は、一体どちらが主人か解らない会話の中、自身の右手ミギーへと質問をした。
だが、それに対する答えはなく
「…今日はもうよそう新一。 君も疲れただろう? 疲労がみてとれるぞ?」
そう言って、ミギーは部屋の明かりを身体を伸ばして消した。
「おい? 勝手に消すなよったくっ! …んだよ、自分から話し出したくせに…」
しかし、疲れがあるのは本当であった新一は、しぶしぶベッドへと潜りこんだのだった。
……
「新一。」
「あん?」
ようやく、眠りへとつこうとした所、再び話しかけられた新一は、若干の怒気を含めそう返事した
「"井上香織"アレには近づくな」
「はあ? 何でだよ? 井上は最初の方こそ、お前も疑ってたけど、"仲間"じゃないって言ってたじゃねーか」
「ああ」
「だったらー」
「仲間ではない。 事実我々特有の脳波も感じなかった。 しかし…」
「…んだよ?」
「あれは、"化物"だ」
__
それは、私の平穏を壊しにやってきた
「井上が、化物ねえ……」
恐らく聴こえないように呟いただろう。 それを私の耳は聞き逃さなかった
「私がどうしたって? ……泉くん?」
「えっ? いや、何でもない何でも……!」
まさか、聴こえるとは思ってなかったのだろう。 彼は、最近は落ち着いてきたと思った表情を、それこそ百面相しながら焦って私にそう答えた。
「ちょっと、泉くんたら。 また香織にちょっかいかけて~、いくら香織が綺麗だからってもう!」
その様子を見ていた村野里美が、会話に乗り込んできた。 恐らく彼に気があるのだろう、私は彼女に対して一応謝罪を述べる事にした。
「ごめんなさい。 村野さん、何でもないから気にしないで」
「別に香織が謝ることじゃないでしょ。」
「いいえ、私が悪いの。だって彼…泉くんはー」
私は、そう言いながら、彼の右手へと目をやりこう告げた
「事実を言っただけだもの」
そんな少し緊張感のある休み時間だった。
それは、私の平穏を潰しにやってきた
『緊急連絡! ただいま校舎内に外部の者が入りこみました。 B棟で授業中の生徒は教員の指示に従い、クラス毎にまとまって校庭に避難するようにして下さい! その際は必ずC棟寄りの階段を使用しA棟には絶対近づかないようにして下さい』
授業中に、突如として入った放送に生徒達はざわめきを広めた。
「バカが…」
そう言って、教鞭にいた田宮良子が自身のもっていたチョークをおると、一度、泉新一の方を見てから私を見てこう言った
「死ぬぞ…」と。
そう、言い残し慌ただしく教室を出ていった田宮良子に代わり、私達のクラスは別の教員の指示に従い移動することになった。
もちろん、私も和を乱すことなく移動していた時の事である。
ドンッ!
突如として、逆走しだした泉新一にぶつかった
「わ、悪い井上」
「いや、大丈夫ですよ泉くん。 それより、どうしたの? 何か忘れ物でも?」
事実、私の身体は揺らぎもしてない。 むしろ、グラついたのは彼の方であった。
そんな、事実に驚きつつ彼は
「~…ゴメンッ!」
そう言い残し、何故か緊迫した様子で階段を駆け上がっていったのだった。
__
ところで、この身体はあの生物をとり込んで(食べて)から、五感も異常に発達していた。
それは、視力だけに留まらず、聴力や嗅覚も例外ではない
それは、10キロ以上先の音や匂いも判別出来る程である。
(…鉄? いや、これは血か? 血の匂いか…)
ぎゃああ… た、助けてくれぇ…
ガシャアアアアン ぐあぁ…… ひいぃぃ…
「…………」
私は平穏が好きだ 感情が無くなったからと言って、それは変わらない。
「言ったはずだぞ…田宮良子… 私の平穏の邪魔はするなと……。」
ダンッ
「きゃ、何?」
「うわ、ちょっと!」
「っえ? 香織までどうしたの?」
タタタタタタッ……
それは、私の平穏を邪魔しにやってきた。
故に私は、泉新一の後を追うように走り出すのだった。
作中で里美と新一は同じクラスとなっています