愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる 作:ペン汁
モンキー•D•ルフィは、バーソロミューくまによって吹き飛ばされた後、
その島で七武海であるボア•ハンコックと親交を持ち、新聞で同じ海賊で義兄であるエースが海軍に捕まった事と、彼の公開処刑が行われる事を知る。
エースを助けるために海軍の海中監獄『インペルダウン』に入ったものの、彼は処刑のため既に海軍本部へと連行されていた。
インペルダウンにいた囚人達と共に海軍本部『マリンフォード』へと乗り込み、エースの在籍する海賊団であり世界最強の男『エドワード•ニューゲート』が船長の『白ひげ海賊団』と共に、彼の救出を開始する。
そして遂に、海楼石の手錠を嵌められていたエースを処刑台から救出し、ルフィ達は全力で逃走を開始したのだが、大将に追いつかれてしまいーーー。
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「この時代の名は、白ひげだァ!!」
ルフィの義兄エースと、海軍大将赤犬の拳がぶつかり合う。
衝突の末、打ち勝ったのは赤犬の方だった。エースは背後に吹っ飛び、熱で燃える手を抑える。
「ロギアじゃ言うて油断しちょりゃありゃせんか? お前の火と、火すらも焼き尽くすワシのマグマは完全な上下関係にある!」
赤犬が右腕からボトボトとマグマを垂らす。
彼は自然系マグマの実を食べた全身マグマ人間。対してエースは、自然系メラメラの実を食べた全身炎人間。赤犬の言葉通りに行くと、この2つの実は完全な上下関係にあるらしい。
エースが足を止めてまで赤犬と勝負したのは、赤犬がエースの大恩人である『白ひげ』の事を敗北者と罵ったからだった。
我慢ならなかった彼は、果敢に挑んだものの......意志を貫き通せるほどの実力が不足していたらしい。
「海賊王の息子と革命家ドラゴンの息子が義兄弟とは恐れ入ったわい......! 貴様ら2人の血筋はすでに大罪、誰を取り逃そうが貴様ら兄弟だけは絶対に逃がさん!!」
赤犬が、吹き飛ばされたエースの方ではなく、疲労困憊で動けないルフィの方に近づく。
ボコボコと沸騰するマグマは、人間の体など簡単に溶かし命を奪うだろう。そのマグマが拳の形を作り、ルフィの体に迫った。
「よう見ちょれ......」
「ーールフィ!!」
まずい。このままではルフィが死ぬ。
エースが彼を守ろうと走り出し、赤犬の前に身を翻した。
背後に近づく赤犬の拳。何もかも焼け焦げるような熱気が皮膚を焦がす。
感覚がスローになり、もう1秒も経たぬ間に、自身の体をマグマが貫通するだろうと言ったところでーーーーー。
ーーーバンッ!!!
何かを受け止めるような音が響いた。
「マリンフォードで戦争......念の為この辺りに来ていたが、どうやら正解だったようだ。救援信号が来て、すぐに駆けつけられた」
エースが背後を振り返る。
そこにいたのは。
身長3m。筋肉モリモリ。
白タイツスーツで頭の先から靴先まで覆い、顔には表情が見えないほど濃い赤のバイザーをはめ込んでいる不審者。
その不審者の名は天竜人殺しのラブヒーロー。
彼が、赤犬の拳を右手で受け止めていた。
「天竜人殺し......! 独りよがりの正義を振り回す悪が、何をしに来よった!!」
「モンキー・D・ルフィとの約束を果たしに来ただけだ」
ブゥン......!と、ラブヒーローの右手が白い武装色の覇気で覆われた。
左足を前に踏み出し、力任せに赤犬の体をぶん投げる。そして、赤犬が少し宙に浮いたところで。
「
空気を膨張させ、マリンフォードの奥へと吹っ飛ばした。
ダメージは殆ど与えられていないだろう。すぐに戻ってくるだろうが、時間稼ぎはできる。
「あ、あんたは......」
エースは、ラブヒーローの顔を見上げた。
彼は、エースの顔を見て、静かに言う。
「......海賊王の息子か。あの、ロジャーの......」
「!! 俺の親父は白ひげだ!」
「それならそれでいい。私が言ったのはあくまで血筋の話だ。親と子の関係の話ではない」
彼はエースの傍を歩く。
そして、疲労で倒れるルフィの前にしゃがみ込んだ。
「あ、ありがとう白いおっさん。助かった......」
「約束だからな。それより、モンキー・D・ルフィ。一つ聞きたいことがあるんだが。
......まさかだが、インペルダウンから囚人を逃したりしたか?」
「? あ、ああ」
「そうか」
瞬間。
ラブヒーローは覇気を纏った右手で、ルフィのこめかみを掴んで持ち上げた。
いわゆるアイアンクローだ。
「ギャアアアアア! いてェ、何すんだよ!!」
彼の問いに、静かな声で返す。
「何をするか、だと? お前、インペルダウンから囚人を逃がすことが、どれだけ世界の愛を乱すか分かっているのか。
しかもLEVEL6に収監されるような海賊まで何人かいるな......」
「か、監獄から逃げるには仕方なかったんだ!!」
「仕方なかったかどうかではない。逃がしたという事実こそが問題なんだ」
傍目から見ても、相当怒っていることが分かるラブヒーロー。
懸賞金30億ベリー以上の化け物が怒っている。そんな状況で動ける者は少ないだろう。エースですらも、初めて見る不審者とそこから溢れるとんでもない圧のギャップに動けずにいる。
そんな中、ラブヒーローの腕を、青い手が掴んだ。
「お初にお目にかかる、天竜人殺しのラブヒーロー。ワシは海峡のジンベエという者じゃ」
「海峡のジンベエ......七武海か」
「知っていてもらえて光栄じゃ。......エースさんとルフィ君を助けてくれたこと、心から感謝する。
そして、恩人に対して無礼極まりないことは承知の上で言う。......その手を離してくれんか。ルフィ君とエースさんは一刻も早くこの場所から逃げ出させてやらねばならん」
「......断る」
両者が睨み合う。
まともにぶつかれば、勝敗がどうなるかは火を見るよりも明らかな2人。ジンベエも、彼我の実力は重々承知している。
「......ワシもインペルダウンから逃げてきた囚人じゃ。ルフィ君を離してくれる代わりに......」
ジンベエが、ラブヒーローの腕を掴む手とは反対の手で、和服の襟を緩めた。
そして自分の心臓付近の皮膚を空気に晒す。
「ワシの命を好きに持っていけ。エースさんとルフィ君が助かるなら、この命、惜しくも何ともない」
「......」
ジンベエの目をじっと見る。
強い決意の籠った瞳。言っていることはハッタリでなく、全て本当だろう。
数秒考えた後、ラブヒーローはルフィの体を地面に落とした。
「今は離す。だが後で少しキツめの仕置きを受けてもらおう」
「いてて......」
「それに来る途中で、少しだけここの状況を見ていたからな。他に首謀者がいたのも分かっている。
……
戦場の何処かにいるバギーが、のちのち大変なことになるのが確定した瞬間であった。
さて。
赤犬が鬼のような形相で遠くから迫って来ているのが見える。
「ふむ......」
ルフィ達は既に私の背後へ逃げていった。
マリンフォード頂上戦争は殆ど終盤。
ラブヒーローが手を加えても、大きく展開が変わることはない。さっき大事な男の運命を変えたような気もするが、それは置いておこう。
執拗にルフィを追う赤犬を叩きのめすだけでもいいが......。
「ラブヒーロー! そこを退かんかァ!!」
......取り敢えず、叩きのめしてから考えるか。
混沌を極めまくった現場の状況に、ラブヒーローも脳筋的な考え方をする他なかった。
右の手のひらを迫る赤犬に向け、周囲の熱を圧縮し始めた瞬間。
「アイスBALL」
ボール状に固まった冷気がラブヒーローに飛来し、直撃。
3mを超える白タイツ不審者の氷漬け像が完成した。
数秒で内部から破壊するも、赤犬はラブヒーローの上空を飛び越えてルフィ達の方へ行ってしまう。
すぐに追いかけようとするが、足元に氷の矛が突き刺さった。
振り返って、この場に現れた海軍大将の1人の名を鬱陶しげに呼ぶ。
「......青雉」
「厄介な男が来ちまったもんだな。......ガープさんとゼファー先生からお前の事はよく聞いてるぜ」
そう言うと、青雉は周囲に冷気を展開した。
そして、低い声で言葉を続ける。
「天竜人を殺した時から、お前はおかしくなっちまったってな。
......『
ーーービキキッ!!
ラブヒーローの首筋に、太い血管が浮かび上がった。
「私が天竜人を殺してからおかしくなっただと? 次、ふざけた事を言うと殺すぞ」
明らかに怒りのこもった声。
その声に怯む様子は見せず、青雉はさらに言葉をつづけた。
「口々に言ってたぜ? 天竜人を殺すだけってんならともかく、マリージョアを30回以上襲撃するのはどう考えてもおかしいってな。
それにその妙ちくりんな白タイツスーツも、マリージョアを襲撃してる時から始めたそうじゃねえか」
青雉の目的は、
ラブヒーローに冷静さを失わせ、自身に標的を固定。天竜人殺しなんて厄介な犯罪者に行動を許し、海軍側の邪魔をさせないためだった。
ただ、少し挑発が上手く行きすぎたのか。
相手の心に踏み込んで良いラインを間違えてしまったのか。
青雉の言葉に対する返答は、覇気でガチガチに固めた拳による殴打であった。
「私が間違っているなどと言う戯言を聞く価値はないな。その首を千切り取って今すぐ黙らせてやる」
覇気で固めた拳をモロに喰らってしまった青雉。
地面に両手を突き、頬が切れて出た血を地面に吐いた。その血の中には、白い歯も一本混じっている。おそらく今の一撃で折れたのだろう。
「おっとっと、こりゃまずいな......。程度を見誤っちまったかーーッ!」
ラブヒーローの容赦ない蹴りの追撃。
それを空中に向かって剃、飛び上がって回避した青雉。
「アイス塊・パルチザン!!」
空中で姿勢を整え、ラブヒーローに氷の矛を発射した。
氷の矛が自身に迫ってくるのに対し、回避することもなく、右の手のひらを向ける。
「
手の平の前に生み出される、直径3mの圧縮された熱の塊。ラブヒーローの身長とほぼ同じだ。
そんな太陽が、ノーモーションで一直線状に放たれた。速度は銃弾のそれなど圧倒的に超えている。
「!!」
氷の矛を一瞬で溶かし、青雉に迫る太陽。
月歩で空を駆け、なんとか回避する。が、太陽の周囲に薄っすらと漂う熱気で右足首から先が溶かされてしまった。
「こりゃ熱いじゃすみそーにねーな......懸賞金30億越えは伊達じゃねェか」
すぐに足先を再生する。
ラブヒーローはそんな青雉の様子を静観する義務もなく、右の手のひらを彼に向けた。
「
生み出されたのは、先程よりも倍以上大きな熱の塊。
直径は10m以上あり、地面に太陽がめり込んでいる。しかし威力を損なうどころか、地面のコンクリートを一瞬で焼き消していた。
「おいおいおい! そりゃまずーーー」
「死ね」
放たれた太陽。
太陽は一直線状に地面を削りながら進んでいき、最終的に、海軍本部の建物に直径10mの大穴を空けた。
そこから先、太陽が何処まで飛んで行くかは分からない。が、いずれは熱を消費して消えるだろう。
「......」
太陽の軌道上。
そこに青雉の姿はなかった。
だが彼は死んでいない。
見聞色の覇気で探るまでもなく、視界の中に、彼の姿があったからだ。
ゴツい機械の指に胴を掴まれ、太陽の軌道上から瞬時に離脱したらしい。
そして、そのゴツい機械の指、機械の腕を操るのは。
「ラブヒーロー......」
元海軍大将。
シャボンディ諸島で破壊したはずのバトルスマッシャーを右腕に装着した、『
一日休んで申し訳ない