愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローは反省する

 

 

 地面に降り立ち、意識のないゼファーの左腕を掴む。

 空中にポイと放り投げ、空気の壁で海軍本部の方に弾き飛ばした。

 こうすれば気絶しているところを海賊に仕留められるなんてこともないだろう。海軍の医務室送りになるはずだ。

 

 見聞色の覇気で辺りを探る。

 

 モンキー・D・ルフィとエースは……もう海の近くまで行っているようだ。まず問題なく逃げられるだろう。

 白ひげは頭の半分が消し飛ぶという何故生きているか分からない傷を負っているが、交戦していた赤犬を倒したようだ。だが……あの傷ではもう助かるまい。

 

「…………」

 

 どうしたものか。

 もうモンキー・D・ルフィを助けるという目的は果たした。

 正直この戦争において私の役目は少ない。

 

 そう腕を組んで悩んでいると、何処からか白い正義のローブを纏った白髪の男が飛んできた。

 海軍の英雄『ガープ』だ。

 

「ガープ……。最近は海兵のビッグネームがよく私の所に来るな。光栄なことだ」

「自分の懸賞金額を考えてから言うんじゃな」

 

 構えはするものの、覇気を使わないガープの姿から、戦闘の意思がないことを悟る。

 組んだ腕はそのまま、顔を逸らしながら言うラブヒーロー。

 

「――ゼファーのことは悪かったな。つい……怒りのままに全力で撃ってしまった」

「どういう意味の謝罪じゃ、それは」

「守るべき愛のある人間に撃つ太陽の大きさではなかったということだ」

「……はァ~。ゼファーが聞いたら怒るぞ、その言葉は」

 

 それは、つまり。

 ゼファーではラブヒーローの全力を当てるには値しないと言っているようなものだ。完璧な挑発である。

 

「もう、ワシとお前が出会って何年だ?」

「……ガープとは私が14の時に出会ったから、29年だな」

「そうか……。29年も経てば、ワシもゼファーも老いるわな! ブハハハハ!」

「おかしな話はもういい、一体何の話をしに来た。たわいない思い出を語らう時ではないだろう」

 

 そう言うと、ガープは拳に覇気を纏った。

 

 

 ――ガァン!!

 

 

 ラブヒーローとガープの拳が錯綜する。

 

 黒と白の武装色が入り乱れ、縦横無尽に拳の雨をぶつけ合った。

 ガープが押している時もあれば、ラブヒーローが押している時もある。平均を取って概ね互角……と言ったところだ。

 

大気崩壊(エア・ブレイク)―――ミニッツ・コア(小さな太陽)

 

 ガープを吹き飛ばし、太陽を放つ。

 空中で身動きの取れないまま迫る太陽を、両手でがっしりと受け止めるガープ。

 そのまま背後にバックドロップの要領で放り投げた。

 

 空気を足元で膨張させ、一瞬でガープに近寄るラブヒーロー。

 白と黒の武装色を纏う拳がぶつかり合った。余りの衝撃に周囲の地面にヒビが入る。

 

 両者共に飛び下がり、覇気を纏った拳を構えたまま、睨み合った。

 数秒経ったところで――ガープが覇気を解いて拳を下げる。

 

「やめじゃやめじゃ! お前とはもう一対一では勝負がつかんわい!!」

「……やめるなら何故私に挑んだ……」

「センゴクがやって来いと言うからじゃ。まぁもう充分じゃろ」

 

 多分充分ではない。

 遠くの方からガハガハと笑うガープを睨みつける海軍元帥の姿があったが、2人ともわざと気にしないようにした。

 

 

「……ワシの立場でこういう事は中々言えんから、一度しか言わんぞ。良いな! 耳の穴をかっぽじって聞くんじゃぞ!」

「なんだ、一体……」

 

 ラブヒーローが腕を組み、呆れたようにそっぽを向いた。

 すると、ガープが突然頭を下げる。

 

「――ルフィとエースの命を救ってくれて、感謝する……!」

「っ……」

 

 少し驚いた。

 まさかあの海軍の英雄が、過去に私の事を何度も殴り飛ばしたあのガープが、頭を下げて感謝までするとは。

 

「火拳のエースの方は結果的に救っただけだ。モンキー・D・ルフィとは……約束だからな、助けたに過ぎない」

「それでもじゃ」

「知らんぞガープ……。センゴクはバッチリこっちを見ているからな」

「それ以外は()()見ておらんから大丈夫じゃ」

 

 ……確かに、先ほどの戦闘で、周囲にはかなりの砂煙が巻き上がっている。

 目視では私たちの動きを認識できないだろう。

 見聞色の覇気でも使わない限りは無理だ。

 

 問題は、この海軍本部には見聞色の覇気を扱えるものがまぁまぁいるという点だが。

 

 

「そういえば……私の本名を調べたのは、お前か?」

「そうじゃ」

 

 ラブヒーローは溜め息を吐く。

 

「ハァ。……もういい、私の過去を探りたいなら好きにしたらどうだ? 誰にでも、自由に話せばいい。許すまでもなく広まっているだろうが」

 

 吐き捨てるようにそう言うと、彼はガープに背を向けた。

 

「帰るのか」

「この戦場にも、老兵にももう用はない。私の目的は果たした」

 

 ラブヒーローは空を見上げる。

 太陽は変わらずそこに浮かんでいた。

 

 このマリンフォード頂上戦争の後、きっと時代は大きく変わる。

 ゴールド・ロジャーが処刑された時と同じほどの、何か大きな物のうねりを感じるからだ。

 

 

 ……といっても、ラブヒーローには余り関係がない。

 大海賊時代以前から彼のやっていたことはずっと同じ。誰かの愛を守るだけだ。

 

 それ故に、彼の中の世界はどこかへ置き去りにされてしまったのだ。

 

 

 天竜人殺しのラブヒーロー。

 懸賞金32億2000万。

 世界中の誰も、彼の思考を心の底から理解することはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 その後。

 白ひげが黒ひげ『マーシャル・D・ティーチ』によって殺害され、グラグラの実の能力が奪われるという大判狂わせな展開が始まる。

 だが、戦場に駆け付けた赤髪のシャンクスによって、黒ひげの攻撃と戦争は終結した。

 

 戦場が終わった後の空気は、以前までの世界とは比べ物にならないほど濃くなっている。

 

 

 ――世はまさに大海賊時代。

 海のあちこちから新進気鋭の海賊が産声を上げた時代。

 

 その本番が、これより始まるのだった。

 

 

 

 




戦争編難しすぎて予定してたのと全然違う展開になった……
ま、まぁまだ軌道修正できるでしょ(震え声)
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