愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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???は海賊王と語らい時代の変革を見届ける

 

 『ラブヒーロー』という名を半ば強制的に受け取ってから、数年。

 子供から青年へ、恐ろしいほどの成長を遂げた彼。身長は2m20cmまで伸びたが、成長痛は収まらないので、きっとまだまだ伸びるだろう。

 

 

 この数年の間、様々な事があった。

 

 

 ロジャーが不治の病にかかるも、最後の航海を続けると宣言し。

 オーロジャクソン号に訪れた時、偶に襲撃してくるガープという化け物のような男や、ゼファーという昔家族を助けたことのある男と交戦したこともあった。

 

 特にガープは、もう意味が分からなかった。

 武装色の覇気と見聞色の覇気を使っても全く防ぐことができない。

 頭を守ったら腹に拳が、腹を守ったら頭に拳が、拳を受け止めたと思ったら地面に叩き込まれていた。何が何だか分からない。

 

 そう考えると、ゼファーの方はまだ優しかったように思う。

 海軍大将という海軍最高戦力の肩書を背負うだけあって、全く敵わないが、殴る拳にどこか優しさがあった。

 結局、ボコボコにされることはガープと大差ないが。

 

 

 ……そんな2人を相手にできるロジャーとレイリーはおかしい。絶対。

 

 

 とにかく、そんな化け物相手にスパルタな戦闘を続けていたら、いつの間にか覇気も完全に身についていた。

 見聞色の覇気、武装色の覇気は扱えるが……残念ながら、俺は覇王色の覇気を持っていなかった。

 こればっかりは生まれつきの才能なので仕方ないのだと言う。

 

 まあ、それから。

 覇気を習得してからメキメキ強くなるシャンクスと手合わせをしたり、うっかり斬られたバギーがバラバラの実の能力を開眼させたり、交戦した際に面白がったガープに顔の布を剥がれてボコボコにされたり…………。

 

 色々あった。

 けど、ロジャーの不治の病が治らない以上……終わりは訪れるものだ。

 

 

 

 オーロジャクソン号にて、相変わらずロジャーにボコボコにされ。

 甲板にある樽の上に座り込み、頭に布を巻き直していると、ロジャーがすたすたと近づいて来た。

 

「……おう、ラブヒーロー」

「ラブヒーロー……。その名前もいつの間にか定着してしまったな……。この海賊団の皆が皆そう呼ぶから、いつの間にか海兵にもラブヒーローで通るようになってしまった」

「ハッハッハ! まぁいいじゃねェか」

 

 そう笑うと、なぜか突然、ふっと静かになるロジャー。

 珍しい。いつもはここで俺に酒か食い物かを渡してくるのに。

 こんな神妙な雰囲気を纏わせているロジャーを見るのは初めてだ。

 

「俺達は、もうすぐグランドラインの最後の島に着く」

「最後の島……ロードポーネグリフが4つ集まると行ける島だったか? 誰も到達したことのない、正真正銘前人未到の島……」

「そうだ。そして、そこに辿り着くと、俺達は名実ともにグランドラインを制覇したと言える」

 

 ロジャーは顔を上げた。

 そして、俺の顔を見つめる。

 

「ラブヒーロー。最後の島……俺達と一緒に来ねえか?」

「!」

 

 目を見開き、驚く青年。

 

「お前とはもう長い付き合いだ。海賊と襲撃者なんて珍妙な関係だが……面白れェ関係だった。

 だから……最後の旅だけ、仲間として俺に付き合ってくれやしねえか」

 

 話は終わった。

 

 青年は目を閉じる。

 せっかく顔に巻いた布を外し、ふうと息を一つ吐いてから、空を見上げた。

 

 どこまでも透き通るような青い空だ、雲一つない。

 そんな空を数秒見つめ……青年は口を開いた。

 

「断る」

「! おう……そうか」

「別に嫌と言う訳じゃない。だが……最後の島への旅というのは、今まで苦楽を共にしてきた仲間だけで行くものだろう? けど俺は仲間じゃない。どこまで行っても、ただの」

 

 そこまで言うと、口から歯を覗かせ。

 

 

「――愛を乱す()()みたいな奴らが嫌いでしょうがない、愛のヒーロー……『()()()()()()』だからな」

 

 

 どこまで行っても、青年とロジャー海賊団の関係は襲撃者と被襲撃者。

 どちらも我が強く相容れないからこそ、互いに関わり合ってきたともいえる。個性と個性が凹凸のようにぴったりとハマり合ったとも言うべき関係だったのだ。

 

 だから、今ここで仲間になってしまうと、俺達はお互いに個性が擦り消えた仲良しこよしの関係で終わってしまう。

 そういう物じゃないんだ。

 生易しい関係じゃなく、いつまでも殴り合っているような、そんな関係が一番合っているんだ。

 

 

 俺の言葉を聞いたロジャーは、同じく口角を上げ。

 

「――ぶっ、ワッハッハッ! 確かに、それもそうだ! 悪かったな、変なこと言って」

 

 彼が立ち上がる。

 俺は樽に座ったまま、ロジャーが背を向けて歩いていくのを見ていた。

 

「じゃあなラブヒーロー。また機会があれば、喧嘩しあおうぜ」

 

 不治の病に侵されているとは思えないほど、しっかりとした足取り。

 後ろ姿だけでも常人なら屈服してしまうような威圧を発するゴールド・ロジャー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――もう、彼と喧嘩をする機会は二度と訪れなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後の島に『ラフテル』と名付けたゴールド・ロジャー。

 グランドラインを制した男として、彼は『()()()()()()()()()()()()』と呼ばれるようになる。

 

 だが、その後すぐにロジャー海賊団が解散。

 一年間、どこかで過ごしていた後……海軍が彼を捕らえたらしい。だが病を負っているとはいえ海軍がロジャーを捕まえられるとは思えない……多分、自首でもしたんだろう。

 

 そして、東の海にあるローグタウンで、海賊王の公開処刑が行われることになった。

 

 

 

「…………」

 

 その日は、酷く雨が降っていた。

 ロジャーが処刑台の上に繋がれ、左右には処刑用の長い刀を持った男が2人立っている。

 

「ぜんちょう”……ロジャーぜん”ち”ょう”……!」

「ぐっ……う”……!」

 

 腕を組みながら処刑の様子を眺める、顔に布を巻いた青年。

 その近くには、バギーとシャンクスがいた。バギーは雨の中でも分かるぐらい顔をぐしゃぐしゃにし、シャンクスは麦わら帽子で顔を隠しながら声を殺して泣いている。

 

 突然、バギーが青年の足元に縋り付いてきた。

 

「な”、なぁラブヒーロー……! お前なら、処刑台から船長を助けられるだろ?! 助けてくれよ!!」

「…………」

「頼む”……!」

「――――断る」

 

 青年はきっぱり言い切った。

 納得のいかない様子のバギーに、言葉を紡ぎ続ける。

 

「ロジャーの体は、もう不治の病でボロボロのはずだ。そんな男を今助けたとして何になる? 苦しむ時間が増えるだけだ」

「――そんなの、何とかする方法があるはずだ! 病気ぐらいロジャー船長なら……」

「もうやめろ、バギー……!」

 

 シャンクスがバギーの体を羽交い締めし、青年の体から離す。

 どちらも酷く泣いていた。

 2人から視線を外す。

 

 

 

 

 

「おい!! 海賊王~!!」

 

 

 処刑台の前の広場。

 その何処かから、そんな大声が上がった。

 知っている声ではない。きっと、処刑を見に来ている誰かが叫んでいるんだろう。

 

 

「集めた宝は何処に隠したんだ!! グランドラインの中か!!

 あんたは手に入れたんだろ、あの伝説の大秘宝…………ひとつなぎの大秘宝、()()()()()をよ~~!!」

 

 

 ざわわっと広場中がどよめく。

 その声に反応したように、ロジャーが低く静かに笑い始める。

 

 ――そして、世界を渦巻く大きな力が、音を立ててうねりはじめた。

 

 

「俺の財宝か?欲しけりゃくれてやる」

 

 

「――探せ!」

 

 

()()()()()()をそこに置いて来た!!」

 

 

 ロジャーの体を、処刑用の刀が貫く。

 覇気で防いでもいない、明らかな致命傷だ。

 

 偉大な海賊王の死。

 一瞬、広場がしんと静まり返り。

 

 

 

「うぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

 

 一秒も経たずに場の空気が一変、広場の人間が大きく雄たけびを上げ始めた。

 異様な熱気だ。

 

 時代の歯車が、決して戻れないところまで進んでしまったのを感じる。

 ここからは、海賊王の宝を求めて海に出る海賊が一気に増えることだろう。

 

「……やってくれたな……」

 

 海賊が増えると言うことは、すなわち、愛を乱す輩が増えると言うこと。

 とんでもない置き土産を残して行ってくれたものだ。

 

 海賊王の死体に踵を返し、広場の外へ歩き始める。

 もう彼の姿を見ることはないだろう。

 だが何も憂う気持ちはない。

 

 

 

「ラブヒーロー……」

 

 彼から貰った名前を呟く。

 

「……やっぱ、この名前だせぇよ……」

 

 誰にも聞こえないボヤキを最後に、青年は姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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