愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローは仕置きのためにルスカイナ島を訪れる

 

 

 

 ーーーーマリンフォード頂上戦争後。

 

 海軍本部に、麦わらのルフィと火拳のエース、冥王レイリーに海峡のジンベエが姿を現した。

 

 本部の復旧作業でてんてこ舞いな海軍に、唐突に現れた彼らを止める力はなく、あっけなく4人の進行を許してしまう。

 

 エースとルフィは、白ひげが死んでしまった場所まで行き、花を捧げ黙祷。

 

 そして2人でマリンフォードにある鐘を16回鳴らした。

 

 16点鐘と呼ばれるその行為は、年の終わりが来ることに感謝し、新しい年が来ることに感謝をする、いわゆる祈願のようなもの。

 

 その一見海軍への挑発にも見える行為は、実はカモフラージュ。

 

 本命は、ルフィの腕に書いた3Dにバツをし、2Yという文字を新たに書き足したタトゥーを新聞に載せることで、世界中に散らばった仲間たちに『2年後にシャボンディ諸島で会おう』というメッセージを送るためだった。

 

 そのメッセージは無事に麦わらの一味全員へ伝わり、彼らは各自、新世界でも通じる実力を身につけるための修行を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『俺は白ひげ海賊団に合流する。親父が死んだのは悔しいが......墓も建てて弔いもした。これ以上くよくよはしてられねェ』

 

 エースは橙色の帽子を被り直す。

 右手には、酒の入ったおちょこが握られている。

 

『これからは、親父を殺した黒ひげの奴らをぶっ潰し、白ひげの名を世界に轟かせ続けるために行動する。......要は、俺たちも大秘宝ワンピースを取りに行くってこった』

 

 ルフィは目を見開いた。

 彼の右手にもまた、酒が入ったおちょこが握られている。

 

『ワンピースを手に入れるのは俺だ!』

『ああ、お前ならそう言うと思ったよ。......だから、ここから先の海では、俺たちは敵同士だ』

『......』

『そう悲しそうな顔するなって。その為に今から()()をするんだろうが』

 

 エースとルフィは互いにおちょこを構えた。

 そしておちょこの縁をぶつけ、カチン!と甲高い音を鳴らす。

 

『俺は海賊王になる為に!!』

『白ひげの名を世界に轟かせ続け、墓前にワンピースを捧げる為に!!』

 

 2人が自身の夢を叫ぶ。

 そして、互いの目を見やってから、ニヤリと笑い。

 

『『そしてこの先何があっても、俺たちは......()()だ!!!』』

 

 一気に、おちょこの中の酒を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ」

 

 よだれを垂らしながら寝ていたルフィが目を覚ました。辺りは白み始めている。

 

 今の光景は、修行を始める前のこと......つまり、1年は前のことだ。

 

 ルフィは2年の間に新世界で通用する実力を身につける為、レイリーと共にルスカイナ島へ訪れていた。

 ルスカイナ島はジャングルのような環境をしていて、グランドライン前半を生き抜いた彼でも敵わない程の巨大な動物が住んでいる場所だ。

 

 そんな動物たちを倒す為には、新世界の海賊たちが当たり前のように使う......『()()』という力を習得する必要があった。

 その覇気を習得するためにルフィは必死こいて修行を続けている。

 

「ん......レイリー?」

 

 焚き火の近くで、2人の人間の気配を感じる。

 1人は今の自分の師であるレイリーだろう。だがもう1人は誰だ?

 

 目を擦りながら立ち上がり、焚き火の方に近づく。

 近づく度に漂う肉のいい匂いに腹の虫がぎゅるるるると鳴り響く。

 その爆音の虫の音で、2人はルフィが起きたことに気づいたようだった。

 

「......久しぶりだな。モンキー・D・ルフィ」

 

 レイリーの向かい側に座り、よく焼き上がったとろけそうなほど柔らかい肉を持つ男。

 身長3m、全身にピチピチの白タイツスーツを纏った筋肉モリモリの不審者。

 ラブヒーローだ。

 

「白いおっさん!」

 

 同じくよく焼けた肉を口に持っていき、頬張るレイリー。

 もぐもぐと口の中で咀嚼し、飲み込んでからルフィに言う。

 

「おはようルフィ君。まぁ腹も空いているだろう、君も座って食べるといい。ラブヒーローの肉料理は絶品だからな」

「ホントか!?」

 

 ルフィが大喜びで焚き火の前に座り込む。

 この島で食べるものと言えば焼肉、焼魚の2つだ。しかも、どちらも殆ど焼くだけ。

 別に飽きて嫌いになるという事はないが、今より美味く食べられるならそれに越した事はない。

 

 ラブヒーローがじとっとレイリーを睨む。肉料理を作るのは彼であって、レイリーが『食べるといい』だの何だの言うのは少しお門違いだからだ。

 だが、数秒もすると、諦めたように息を吐いて立ち上がった。

 

「......まぁいい。すぐに作る」

 

 ラブヒーローかレイリーか、どちらかが仕留めてきたであろう獣の肉。

 それを30cm程の大きさで切り取り、三本の切り込みを入れる。

 指先に空気の壁を作り、それで肉全体を細かく強く叩きながら、もう片方の手を火に突っ込む。

 

 火から取り出したのは、極小の熱の塊。

 それを自身がブレンドした特製の香辛料と共に切り込みの隙間へ揉み込むように入れる。

 

 パチン!と指を鳴らした瞬間、ジュッ!という音と共に肉が一瞬で焼き上がった。

 その焼き上がった肉の表面に香ばしい匂いをしたラメ色の液体、恐らく何かのタレを均一に塗りたくる。

 

 そしてもう一度指を鳴らし、ラメ色のタレが程よく焦げるぐらい焼けた時、ラブヒーローは肉を皿に乗せた。

 皿をルフィに渡す。

 

「うまそーーーーー!!」

 

 持ち上げただけで肉が傾き、肉汁とタレがとろりと垂れる。

 キラキラと目を輝かせながら肉を口に運ぶルフィを横目に、ラブヒーローは話し始めた。

 

「それで、今日は2つ用があってここに......」

「おかわり!!」

「早すぎるわッ!!」

 

 30cmの肉塊を使った料理となると常人には相当な量ではあるが、ルフィの胃袋を満たすには至らなかったらしい。

 ラブヒーローはため息を吐き、自身の前にあった皿を渡した。

 

「まだ口をつけていない、これを食え。......今度はゆっくりだぞ」

 

 その言通り、ルフィはゆっくりと食べ始めた。

 

「......それで、今日は2つ用があってここに来た。1つは、モンキー・D・ルフィ、お前に渡した宝石を回収する事だ」

「ん、これのことか?」

「ああ。随分と前にした、助けるという約束は果たしただろう? 赤犬相手に殺されそうだったところをな。もうそれを渡している必要はない」

 

 ルフィがすぐに取り出した緑の宝石、それを受け取るラブヒーロー。

 一度二度、指先でそれをこねくり回し、宝石を懐に入れる。

 

 パチパチと焚き火の音が静かに響く中、太陽の光が徐々に辺りに差し始める。

 その温かい日光には似つかわしくない声で、ラブヒーローは言った。

 

「2つ目は......モンキー・D・ルフィ。インペルダウンから囚人を脱獄させたお前に、仕置きをしに来た」

「ほう?」

 

 立ち上がるラブヒーローに、顎髭をさすりながら面白そうな声を上げるレイリー。

 

「ちょうどいい機会だ。ルフィ君、新世界で生きる者の覇気がどれだけのものか体感してみるといい」

「えッーーーー」

 

 

 ルフィが何か言うのを待つ前に、ラブヒーローが頭を掴み、遥か遠くまで放り投げた。

 吹っ飛んでいく彼に余裕で追いつき、地面に叩き落とす。

 地が割れ、クレーターができ、周辺の木々が根元から折れた。そのクレーターの中心にいるルフィが体を持ち上げる。

 

「いてて......クソ、武装色・硬化!」

「ふむ。武装色の覇気は使える、か」

「ゴムゴムの(ピストル)!!」

 

 ルフィの右腕が黒く染まり、ラブヒーローに向かって思い切り拳を飛ばした。

 覇気を習得し、島で1年間鍛えた拳は、グランドライン前半にいた頃よりも格段に強くなっている。

 

 そんな拳を、ラブヒーローは。

 ()()()()()を纏った右手で、たやすく殴り返した。

 

「ーーーーーッぎゃああああァァアアアアア!!!!」

 

 ルフィの右拳が赤く腫れ上がり、そこを押さえながら絶叫する。

 武装色の覇気の練度、つまり硬さに著しく差があった時、弱い方の覇気は押し負ける。その結果、今のルフィの拳のように真っ赤に腫れ上がるのだ。

 

 痛がる相手に情けをかけるほど慈悲深い男ではない。

 ラブヒーローはルフィの顔面を蹴り飛ばし、背後の木に激突させる。しかし一本の木ではその勢いは止まらず、何本もの木をへし折りながら吹っ飛んでいった。

 

「さて......何分耐えるかな」

 

 足元に空気の壁を作り、ラブヒーローはルフィを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 遠方から激しくぶつかりあう音が何度も響く。

 暫く経った後、一際大きな音が鳴り響いた瞬間、レイリーは顔を上げた。

 

「今のは決まったな」

 

 彼の予想は正しかったらしい。

 傷だらけで気絶したルフィの顔面を掴んでいるラブヒーローが空を飛び、レイリーの前に降り立つ。その体には一切の傷も汚れもない。

 

「......なるほど、傷も付けられなかったか」

「いや、拳がかすりそうな場面は幾つもあった。ただアレは覇気の練度というより......技の問題だな」

 

 ルフィの体を落とし、空を見上げる。

 そんなラブヒーローの様子を見て、レイリーは言う。

 

 

「何だ、もう行くのか?」

「......レイリー。今の、この世の中の状況をどう思う?」

「何......?」

 

 突然おかしな事を言い出すラブヒーロー。

 またいつもの突飛で意味不明な言動かと思ったが、どうも様子が違う。纏う雰囲気が、覚悟が、いつものラブヒーローとは桁違いに重い。

 レイリーは目を細め、厳な声を放つ。

 

「どういうことだ」

「......ロジャーの死が作った大海賊時代。この時代は、愛を乱すものが多すぎる。そう思わないかと聞いている」

「......」

「私はラブヒーロー、愛のヒーロー。だが......」

 

 そこで、言葉を切るラブヒーロー。

 何を言いかけたのかは分からないが、少し辛そうに顔を背けた。

 

「私も、実行に移す気はなかった。だが......ただの気まぐれが、最後のピースを揃える要因になった」

「最後のピース......?」

 

 レイリーの声に、ラブヒーローは顔を向けず堪える。

 

「......()()()()()()()()()()()......そして、ウオウオの実幻獣種・モデル()()()()()。」

「エンド、ポイント......!?」

 

 エンドポイント。

 それは半ば伝説と化している話である。

 エンドポイントと呼ばれる3つの活火山を刺激することで、大量のマグマが噴き出し、新世界は滅ぶという、迷信めいた話だ。

 

「新世界の海を破壊する膨大なエンドポイントのエネルギー......しかし、それでは駄目だ。別の形で、もっと広範囲、この世界の海中に広げる必要がある」

「お前、一体何をする気だ......ラブヒーロー!」

 

 レイリーがラブヒーローの手首を掴むが、それは呆気なく払われる。

 

「安心しろ、まだ時間はある。だがいずれ、海は人間の活動できる場所ではなくなる。

 それまでに終生の地を決めておくことだな、レイリー」

 

 そう言って、ラブヒーローは飛び去った。

 彼のスピードには、老いたレイリーでは追いつけず、ただそれを見送る。

 

「......私には、もう止められない......か。あの男は......」

 

 

 

 

 ラブヒーローの思惑は、今は誰にも分からない。

 

 

 

 

 

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