愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラノアはマリージョアに訪れ憎き男の場所に向かう

 

 

 ゴルモンド聖。

 

 天竜人の中でも特にヒューマンショップ巡りを好み、シャボンディ諸島のみならず、世界中の奴隷販売店を回っているのだという。

 そのため、他の天竜人達よりもマリージョアにいる期間は少ない。

 

 例のフィッシャー・タイガーの襲撃による奴隷解放により、彼の奴隷も根こそぎ逃げ出してしまった。

 

 彼は再び奴隷を集めるため、世界中のヒューマンショップを巡る。

 そして、マリージョアに帰ってきたのが、フィッシャー・タイガー襲撃から一か月と数日が経った時の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レッドラインの頂上、聖地マリージョア。

 

 フィッシャー・タイガーが暴れ回ったことによって、かなりの損害を受けたはずだが……。

 流石世界最高の権力を持つ者達が住む地ということか、わずか一ヵ月程度でマリージョアは元の美しい景観を完璧に取り戻していた。

 

 マリージョアを警備する、全身を覆う鎧に長物の槍を持った兵士。

 それらが4人集まり、ピッタリと歩幅を揃えて歩いている。

 

 

 ――――ドン!

 

 

「?」

 

 何処かから、何かが勢いよく破裂するような音が響いた。

 先のフィッシャータイガー襲撃の件からか、兵士たちは一瞬で臨戦態勢を取り、辺りに警戒を向ける。

 

 

 ――――ドン!

 

 

 再び響く破裂音。

 やがてその音が聞こえる間隔は3秒、2秒、1秒と短くなっていき―――。

 

 ズドン!と、兵士たちの前に巨大な何かが勢いよく着地した。

 着地した何かは、ゆっくりと体を起こし、周囲に巻き上がった砂埃を腕の一振りで払う。

 

 顔を隠すように頭に布を巻いた、身長3mの巨大な男。

 ラブヒーローだ。

 

 

「…………ここが、マリージョア」

 

 

 焦る兵士達をよそに、ラブヒーローは辺りの景色を眺める。

 

 まさに絶景。

 自然あふれる木々と厳かな雰囲気の建造物は、太陽の光に反射して神秘的な印象を抱かせる。

 天国という物はきっとこういう場所なんだろう。そう思ってしまうほどだ。

 

 

「――――っ、襲撃だァ~~ッ!!」

 

 

 兵士の一人が、懐から取り出した小型の電伝虫にそう吠えた。

 マリージョア内は一気に騒々しくなり始め、木々に留まっていた小鳥たちは一斉に飛び立ち、揺れる木々は葉っぱを散らす。

 

 だがラブヒーローは一歩も動こうとせず、飛び立つ小鳥たちを目と共に顔を動かしなら眺めていた。

 

「こんな天国のような場所に住んでいて……どうして、あんな風になるのだろうな」

「何を意味不明なッ!」

 

 兵士の一人が槍を構え、ラブヒーローの心臓めがけて突き出した。

 ただの警備兵とはいえども、マリージョアを守る一人だ。実力は決して低くはない。

 

 しかし、マリージョアをひたすら歩き続けるだけの兵士と、世界中を巡り強者も弱者も関係なく殴り続ける男では、実力差がありすぎた。

 

「ッ!」

 

 覇気の籠っていない指一本で槍を受け止められる兵士。

 槍の柄を掴まれ、そのまま空高くに放り投げられた。

 

 高さ10m辺りから、鎧の重量ごと重力に従って落下し地面に衝突する。

 ぴくぴくと痙攣している姿から、行動不能のダメージを負ったのが一目でわかった。

 

「こういう時、覇王色の覇気を使えるのが羨ましいな。……相手を余計に傷つけなくて済む」

 

 ラブヒーローは自身の右手を見ながら、そう呟いた。

 『相手を余計に傷つけなくて済む』。この言葉は相手の怪我を心配する余裕があるほど弱いと煽っているようなものだ。

 

 兵士たちは激高してラブヒーローに襲い掛かるが……3秒後に、同じように痙攣する者が増えただけだった。

 

 

 マリージョア内を歩く。

 ここは、頭がくらくらしそうなほどに日差しが強い。

 

 わらわらと蟻のようにあふれ出してくる雑兵達を片手で蹴散らしながら、兵から無理やり聞き出したゴルモンドの住む邸宅へと向かう。

 

 5分は歩いただろうか。

 ゴルモンドの邸宅に到着したが、その邸宅前の広場に妙な格好をした2人組が立っていた。

 

 不思議な模様と形をした仮面。

 裾が膝下まである長く白いローブ。

 

 天竜人直属の諜報機関・CP0(サイファーポール イージスゼロ)だ。

 別名『世界最強の諜報機関』とも呼ばれる、CP最上級の組織。

 

 恐らく、ラブヒーローの進む方角から、目的がゴルモンド聖の家であると推測して待ち構えていたのだろう。

 CP0の片方の男が、低い声で話し始めた。

 

「懸賞金額2億2000万ベリー……深き愛のラブヒーローだな」

「……()()()? いつの間にそんな異名が」

「そんなことはどうでもいい。問題は……ここは、懸賞金額が2億程度の犯罪者が来ていい場所ではないということだ!」

 

 言い終わった瞬間、男が剃でラブヒーローに詰め寄った。

 常人なら一切視界に映らぬほどの剃。

 

 しかしラブヒーローは余裕を持ってそれを避け、カウンターの一撃を放った。

 覇気を纏った拳がCP0の腹に深々と突き刺さる。

 嗚咽を漏らしうずくまりかけた男の顔面を、ラブヒーローは覇気の纏った足で蹴り飛ばした。

 

 立ったままだったもう一人のCP0が困惑の声を上げる。。

 

「!! まさか、2億程度の賞金首に攻撃を喰らうなど……!!」

 

 蹴り飛ばされたCP0もすぐに立ち上がる。流石は世界最強の諜報機関の一員だ。

 ラブヒーローは前方にいるそんな2人を見つめつつ、右手をグッと握る。

 

 彼固有の白い武装色の覇気が右手を覆っていた。

 左手も同じ風に白い覇気で覆われていく。

 

「あまり時間をかけても面倒だからな。CP0……最初から本気で行かせてもらう」

「ッ……」

 

 CP0の2人も黒い武装色で体を覆う。

 極限まで体を鍛えた者が習得できる技・六式を更に限界まで鍛え上げた2人。

 

 いくら初撃を貰ったとは言えど、まさかこんな、大して有名でもない賞金首に負けるはずがない。

 お互い目にも止まらぬ剃で、ラブヒーローに連携攻撃を仕掛け始めた。

 

 

 

 ――3分も経つ頃には。

 1人は全身丸焦げで、ヒューヒューと苦しそうな息を鳴らし。

 もう1人は、見るも無残なほどに全身を殴られ、瓦礫の山の中に生き埋めになっていた。

 

 ラブヒーローはそんな2人に目をやることもなく。

 憎き仇……ゴルモンド聖の住む邸宅の玄関扉を開いた。

 

 

 

 

 

 

 心臓が爆弾でも爆発してるみたいにうるさい。

 白を基調とした美しいバロック調の建物の中を、ゆっくりと歩く。

 

 紅いカーペットの上を足音もなく進んでいると……扉がある。

 その扉を開くと、大きな長机と無数の椅子が置かれた部屋に出た。 

 

 きっと大人数の食事で使うような部屋だろう。

 純白のテーブルクロスが敷かれた美しい机の先に……醜く慌てふためく男が一人、他の部屋に続く扉の前でへたり込んでいた。

 

「――――っ」

 

 忘れもしない、あの顔。

 母の命を奪う原因になったあの顔。

 

「誰か、誰か来るんだえ! あの下々民をさっさと殺すんだえ~!!」

 

 天竜人・ゴルモンド聖が、そこに居た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前話で翌日に投稿すると書いたのに、ギリギリ間に合いませんでした。
申し訳ございません。
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