愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローは圧倒する

 

 

 

 

「三刀流・煉獄鬼斬り!!」

 

 一番に動いたのは、ゾロ。

 三本の名刀を構え、肩に少女を乗せたままのラブヒーローに素早く斬りかかった。

 

「バレットを倒した一味なだけはある。かなり速い攻撃だ……」

 

 ラブヒーローは見聞色の覇気を用いる。

 自身の限界まで鍛えた覇気は、カタクリのようなとびっきりの才能を持つ者には敵わないが、僅か1秒先の未来を見ることを可能にしていた。

 

 左足と右手を白い武装色で固め、ゾロの刀を受け止める。

 

「ッ! なんだこの硬さ――ぐッ!!」

 

 尋常ではない硬さの覇気に気圧された瞬間、頭を掴まれ甲板に叩きつけられるゾロ。

 即座に足で踏みつけ、ゾロの両肩の骨を外すラブヒーロー。その背後に、ブルックとウソップが襲い掛かった。

 

「必殺緑星、衝撃狼草(インパクトウルフ)!!」

夜明歌(オーバード)・クー・ドロア!!」

 

 ウソップが放った弾が緑色の狼に変貌し、ラブヒーローに突進する。

 ブルックの素早い突きが弾となり、ラブヒーローの首を狙う。

 

 そんな2つの攻撃に対し、ラブヒーローは振り返りもしなかった。

 

空気の壁(エア・ウォール)

 

 足元に作った空気の壁。

 それを解放させ、目に留まらぬ速さで何処かへと消える。

 

 2つの攻撃は見事に空を切り、焦るウソップとブルック。

 

「どこだ!? 一体どこへ――ぐえッ!!」

 

 上空から降ってきて、2人を思いきり甲板に踏みつけるラブヒーロー。

 650キロの巨体が思いきり踏みつけて来たのだから、たまったものではない。

 ウソップとブルックの首を再度踏み、意識を確実に奪う。

 

 

百花繚乱(シエンフルール)・クラッチ!!」

「むっ……」

 

 ラブヒーローの全身から無数の手が生え、体を拘束する。

 その全ての手が彼の背骨を叩き折らんと全力で力を込めていた。ミチミチと、彼の筋肉と骨の軋む音が鳴る。

 

 そしてロビンによりラブヒーローの動きが止まった所で、ルフィとサンジとフランキーの三人が彼の無防備な腹に向けて攻撃を叩き込んだ。

 

「ゴムゴムの火拳銃(レッドホーク)!!」

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)首肉(コリエ)ストライク!!」

「フランキーラディカルビーム!!」

 

 三人の攻撃力が完全に合わさった一撃。

 例え億を超える海賊でも、これを喰らって立っていられる者は少ないだろう。

 

 だがしかし。

 ラブヒーローは腹に白い覇気を纏い、その全ての攻撃を完全に耐えきっていた。

 

「私の覇気を貫くのは、お前たちでは無理だ」

 

 背筋に力を入れて上体を起こすことで、全身に纏わりつく手を無理やり引きちぎった。

 

 ハナハナの実で顕現した手にダメージが加わった場合、本体であるロビンにもダメージが入るという弱点がある。

 ロビンの両腕に無数の切り傷が発生し、ブシッと勢いよく血が噴き出す。

 

 それを見たサンジが咥えていたタバコを一瞬で噛み切り、こめかみに青筋を浮かばせた。

 

「!! てめェ、ロビンちゃんによくも!!!」

「ナミ!! 雷を攻撃に合わせてくれ!!」

「OK! 出番よゼウス!!」

 

 ナミがクルクルと天候棒を振り回し、中から雷雲の卵を生み出す。

 それを食べるために出てきたのは、ビッグマムの魂を分けた強力なホーミーズ、雷雲のゼウス。

 

 ルフィとサンジの攻撃に合わせるようにゼウスが雷を溜め、ラブヒーローに一直線に放った。

 

「ビッグマムのホーミーズ……。少しまずいな」

 

 肩に乗せた少女を遠くに放り投げ、両手で構える。

 バイザーの奥の目を赤く光らせ、見聞色の覇気で1秒先の未来を見た。

 

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)粗砕(コンカッサ)!!」

 

 サンジの赤く発光した脚による踵落とし。

 それを右手で掴み、技を放とうとするルフィに投げつけた。

 

 一直線上に向かってくるゼウスの雷に左手を向ける。

 どちらかの手が空いていてかつ完璧に受け止める必要があるが、相手の遠隔攻撃をカウンターで返すことが出来るのだ。

 

「圧縮」

 

 ゼウスの雷を圧縮し、吹っ飛んでいくサンジとルフィに投げつけて解放する。

 恐ろしい威力の雷が発生し、5mほど離れているラブヒーローにすら少し電気が流れてきた。その中心にいる2人へどれだけの威力の電気が流れているかは想像もしたくない。

 

「がはッ……!」

 

 ゴムの体であるルフィは無傷。だがサンジは耐えきれなかったようだ。

 全身黒焦げまみれになりながら、その場に膝を突いた。

 

 放り投げた少女をキャッチし、再び肩に乗せるラブヒーロー。

 あと動けそうな麦わらの一味は、船長のルフィと、航海士のナミと、船大工のフランキーのみ。

 

「1分かそこらだ。それだけで、殆どのメンバーが倒れた。まだやるか?」

「……当たり前だ……!!」

「まあ、そうだろうな……。ここで引き下がるような男じゃないのは知っている」

 

 じっと睨み合う両者。

 ただナミの腰は引け、フランキーは眉をひそめながら冷や汗を垂らしている。

 こんな状況では、勝ち目はないのが分かっているのだろう。無論ルフィも理解している。

 

 10秒ほど睨み合った所で、ラブヒーローが軽くため息を吐いた。

 

「もういい。これ以上時間を浪費する気はない」

 

 手を軽く振りながら、戦闘態勢を解くラブヒーロー。

 だがルフィ達は一向に覇気を緩める気配はない。

 

 それを見つつ、ラブヒーローは、地面に倒れている者達にも聞こえるよう少し大きな声で話し始めた。

 

「私は、これからエンドポイントを破壊する。モンキー・D・ルフィが爆破事件の事を聞きたいと言っていたが……あの島は1つ目のエンドポイントだったのだ」

 

 ロビンとナミが驚いたような表情をする。

 エンドポイント。

 

 それは考古学者と航海士なら知ってて当たり前の伝説の話だからだ。

 

 ラブヒーローは、続けて言う。

 

「そして、もうすぐ私が()()()()()()()()()()()。人が海に出れる時間は終わるのだ。

 ――――悪いことは言わない、今すぐ大切な者のいる場所に帰れ。間に合わなくなる前にな」

 

「!?」

 

 

 『大海賊時代を終わらせる』。

 海賊王ゴールド・ロジャーが始めた伝説の時代を、終わらせると言うのだ。

 

 そんな大それたこと、普通の者には言えない。言っても冗談だと思われるだけだ。

 だがもしかしたら、この男。ラブヒーローなら、本当に終わらせるかもしれない。そう信じさせるだけの威圧があった。

 

 ルフィは両腕に武装色を纏う。

 

「ふざけんじゃねェ!! そんなことさせる訳ねェだろ!!」

「……私は『()()()()』と言ったな。アレは、もう戦わないという意味ではなく……()()()()()()()という意味だ」

 

 ルフィが殴り掛かるよりも早く、ラブヒーローは上空へと飛び上がる。

 そのまま空中で空気の壁の上に直立し、右手を空に向けて掲げた。

 

 周囲の気温が下がり、ラブヒーローの上に直径30mの熱の塊が出来上がる。

 

マキシマム・コア(強大な太陽)。……近くに島がある、そこまで泳ぐことだな」

 

 その太陽を、眼下にあるサニー号に向けて、躊躇なく撃ち放った。

 銃弾よりもよっぽど早く進むその太陽は、一瞬でサニー号との距離を詰めていく。

 

 

「――ッ、ゴムゴムの象銃乱打(エレファントガトリング)!!」

 

 

 ルフィは甲板から、落下してくる太陽に向けて乱打し始めた。

 武装色の覇気を纏っているのに、皮膚が焼け焦げるような熱量。じゅわじゅわと体が焼けていくのも厭わず、サニー号を守るために太陽を殴り続ける。

 

 太陽の勢いは弱まるものの、その威力が衰えることは決してない。

 徐々に押し込まれていく最中、いつの間にか操舵輪を握っていたフランキーがこの海域中に轟くような大声で叫んだ。

 

 

「全員、どっかに掴まってろよォ!! 全力全開・風来(クード)バーストォォ!!」

 

 

 船尾に強大なエネルギーが充填され、発射。

 サニー号を丸ごと吹っ飛ばすほどの空気砲だ。全力全開で放たれた風来(クード)バーストによって、サニー号は一瞬でラブヒーローの視界の外へと消えていった。

 

 追おうかと考えたが、頭を振り、肩に乗せる少女の方を見る。

 

「再び私の前に現れたならその時はその時だ、追う必要もない。今は計画が先だ」

 

 ラブヒーローは少しだけ顔を俯け、その後に太陽を見上げた。

 雲一つない空の上にはいつも通り太陽が浮かんでいる。

 

「変わらないな、いつ見たって。私は……」

 

 

 その独り言は誰にも聞こえず、潮風と共に何処かへ流れて消えた。

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