愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローの目的を明かそうとする

 

 

 

 

「見た目はひでェが、船を動かす機械はそこまで壊れてねえ。折れたマストは偶々船に引っかかってたから、元通りに繋げりゃすぐに直る」

「けどよ……あ~あ。厨房の冷蔵庫やコンロなんかは総潰れだ。いくら動力部が無事でも、これじゃあな……」

「動力部ってより、そういう船の暮らしに欠かせねえ物を直すのに時間がかかりそうだな。他にもまだ――」

 

 ここは、ラブヒーローから逃げた先に偶々あった島。誰もいない砂浜を超えた島の中央には、小規模ではあるが街が見える。

 その島の砂浜で、フランキーとウソップが壊れたサニー号のあちこちを点検しながら、カンカンとトンカチを振るっていた。

 

 船から少し離れたところで、キャンプ用の柔らかなシートが地面に敷かれている。

 その上で、先ほどの戦闘で負傷した者たちの治療が行われていた。

 

 両手に氷嚢を包帯で巻き付けられたルフィが、同じく顔面を包帯でぐるぐる巻きにしているチョッパーに話しかける。

 

「チョッパー、大丈夫か?」

「……みんなごめん。俺が変な意地張ったから、こんな事に……」

「何言ってんだ、あそこで意地張るからチョッパーなんだろ? 気にすんなって」

「る、ルフィ……!」

 

 傷の程度は各々で差がある。

 まず一番酷いのは、ゼウスの雷をまともに食らったサンジだろう。全身からブスブスと焦げる音が鳴っている。

 その次に、顔面へ蹴りをモロに食らったチョッパー。

 そして650キロの踏み付けを食らったブルックとウソップ、両手に無数の切り傷があるロビン。

 最後に、肩を外されたゾロと両手を火傷したルフィだ。

 

 サンジを除けば、どれも大した傷ではない。

 しかし少し間違っていれば、命に関わる大怪我になっていた事は全員がよくわかっていた。

 

 そしてそのその少しの間違いとは。

 『ラブヒーローが明らかに手を抜いていた』事だろう。

 

「肩に人間一人担ぐハンデありで俺たちを倒しやがったんだ。本気ならもっと強いだろうな。……それにしても、なんだあの白い武装色の覇気は? あんなの見たことがねえ」

 

 ゾロが自身の刀を整備しながらそう言った。

 奴の白い武装色、見たことのない色であったのもそうだが、特に異常だったのはその硬さだ。

 己の覇気とはまさに格の違う硬さ。ともすれば、あの鷹の目よりも硬いかもしれないと思う程に。

 

「ああ~……あの白い武装色か。レイリーは『世界で一番硬い』って言ってたな」

「世界で、一番硬い……!?」

 

 ゾロの驚く声に、ルフィはぽわぽわと過去を思い出しながら話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それはルフィがルスカイナ島での修行を、殆どやり終えた頃だった。

 2人は雪の降る夜の中、火を囲んで食事を取っている。

 

 その時にふと、ルフィが何かを思い出したように話し始めた。

 

「レイリー。これでオレは、覇気を習得できたんだよな?」

「うむ。見聞色も武装色も基礎はバッチリだ。覇王色に関しては、君の成長次第だが……」

 

 ルフィが肉を頬張りながら、レイリーに問いかける。

 

「じゃあ……白いおっさんがやってた『()()()()()』、アレって何なんだ?」

「! ……そうか、気になるか。まあ、アレは例外中の例外のような技だがな……」

 

 レイリーが食器をその場に置き、右腕を出す。

 その腕に武装色の覇気を込め、一気に黒く硬化させた。

 

「まず、君が思い浮かべる強者とは誰だ?」

「強者? ……レイリーとか白ひげとか、あとは海軍大将とか……ムカつくけど」

 

 思いつく限りで、自身の会ったことのある強者の名前を出していく。

 今名前を上げた人物の全てに、今のルフィでは敵わないだろう。

 レイリーはゆっくりと右腕を動かしながら、静かに話し始める。

 

「まあその辺りだろうな。そして、その上でハッキリ言う。

 ラブヒーローの白い武装色は、その全員の武装色よりも遥かに硬い。武装色の硬さで言うなら、奴は世界一だ」

「せ……世界一!? レイリーよりも硬ェのか!?」

「全盛期の私でも奴の武装色は貫けんよ。それはロジャー……海賊王でも同じだった」

 

 懐かしむように空を見るレイリー。

 だがルフィが興味津々に食いついてきているのを見て、すぐに意識を話の続きへと戻した。

 

「見聞色の覇気を鍛え上げれば、次の段階に至ることは前に話したな?」

「ああ。確か未来が見えるとかどうとか……」

「武装色の覇気も同じだ。鍛えれば内部破壊という次の段階が……いや、今はいい。

 とにかくラブヒーローは、次の段階に至るまで武装色を鍛え上げている。その上で、誰も真似できない……奴だけの方法を選んだのだ」

「白いおっさんだけの方法?」

 

 レイリーがコクリと頷く。

 

「……全身に流れる武装色の覇気を、悪魔の実の能力で限界まで『()()』したのだよ。

 白く発光するまで覇気を圧縮した時、内部破壊は使えなくなったが、代わりに超然的な硬さを手に入れたと言っていた」

 

 異常な発光を放つ白い武装色。

 その正体は、3mの巨体に流れる大量の覇気を、硬さだけを求めて一点に圧縮させた物だった。

 体の外に流れる覇気すらも体内へと凝縮させたのだ。体外に覇気を纏う流桜とは真っ向から反するような技。

 

 ギチギチの実を食い、覚醒していてかつ覇気を鍛え上げている状態でしか使えない。

 まさにラブヒーローだけが選択できる方法と言えるだろう。

 

「……ところで、なんで覇気を圧縮したら白く光るんだ?」

「知らん。ラブヒーローもよく分からんと言っていた……。まぁ、熱を圧縮すると太陽みたいに光るのだし、そういう物なんじゃないかね?」

「そっか」

 

 真相は謎である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだよその中途半端な話」

 

 ゾロの小さな突っ込みが入る。

 誰にも分からないのだから、どれだけ考えても仕方ない問題ではある。

 

 それより今は、ラブヒーローが言っていた不可解なことについて話し合うべきだ。

 ロビンが包帯を巻いた腕をさすりながら、ゆったりとした口調で話し始める。

 

 まず前提として話されたのは、エンドポイントについてだった。

 航海士のナミと考古学者のロビン、それ以外はエンドポイントの事を殆ど知らなかったらしい。

 

 ・エンドポイントとは、破壊すれば新世界が滅ぶという、3つの活火山のこと。

 ・眉唾みたいな話で、信じてる者は殆どいないということ。

 

 大雑把に纏めてこの2点。

 話を聞いていた全員が理解したように頷いたので、ロビンは話を続ける。

 

「……確かにこの話では『新世界が滅ぶ』と言われているわ。でも、『人が海に出れなくなる』ほどではないの」

 

 

 ――確かに、エンドポイントを破壊すれば新世界に眠る溶岩があちこちに噴き出し、とても人が生きられる環境ではなくなるだろう。

 

 ただ、世界は広い。

 

 いくら新世界に行けなくなったとしても。

 グランドライン前半だったり、東西南北の海だったり、いくらでも活動できる場所はある。

 

 だと言うのに、『()()()()()()()()()()』とまで言い切ったラブヒーロー。

 ロビンはそこに強い引っかかりを覚えたらしい。

 

「これが、ただ大げさに言っているだけなのだとしたら――」

「――いや」

 

 彼女の言葉を遮るように、ルフィが目力を強め、低い声で言う。

 

「おっさんは大げさに物を言うような奴じゃねえ」

 

 一瞬、空気が固まるほどの気迫。

 近くの砂浜の中に居た生き物たちが大急ぎで彼の下から離れていく。

 

 だがそんな気迫に物怖じする様子なく、黒焦げのサンジがタバコの火を吹かしながら疑問を口にした。

 

「……でも、ラブヒーローは愛を守るとか何とかで有名だ。実際、俺達も何度も助けられてる。

 新世界の海を滅ぼしたりなんかしたら、大変なことになるんじゃねェのか? 愛を『守る』どころか『ぶっ壊す』羽目になるだろ」

 

 もっともな疑問だ。

 活火山が新世界のあちこちで噴火などすれば、そこに住んでいる住民はどうなる?

 近くの海水温度が上昇するだけならばまだマシだ。

 最悪、島に溶岩が降り注ぐなんてこともある。甚大な被害は免れないだろう。

 

 

 狂人とも言えるほど愛に固執している彼のことだ。

 だからこそ、その行動の真意が理解できない。

 

 一味全員が首を傾げ黙りこくる中、ブルックがポンと手を叩いた。

 

「……そのための、ウロボロス……悪魔の実の能力、なのではないんでしょうか」

「? どういうこと?」

「私、脳みその回転が遅い物で……いや元々脳みそないんですけどね!! ヨホホホホ!!」

「冗談言っとる場合かッ!! はよ話さんかい!!」

 

 ナミのチョップに「ヨホホ」と意に介さない様子のブルック。

 いや意に介さないどころか、パンツがチラリしないかと様子を伺っていた。抜け目がない。

 

 軽く咳ばらいをし、ブルックが自論を話し始める。

 

「確か、ウロボロスの能力は『生のエネルギーを死のエネルギーに、死のエネルギーを生のエネルギーに変換する』……とかなんとか。

 実はあの時、みなさんの体から光のオーブが出てましたが、私の体だけなんともなかったんですよね。と言うことは、あの光のオーブが生のエネルギーなのでは? と思いまして」

 

 そう。

 あの時、空に浮かぶウロボロスに注目し、誰も気にしていなかったが。ブルックだけは光のオーブが体から抜け出していなかったのだ。 

 ロビンが顎に手を当てながら、呟く。

 

「生のエネルギーは……生き物からしか取れないって事ね。じゃあ……『()()()()()()()』は?」

「それは分かりませんが……私の体からは何も出ていませんでしたよ。少なくとも黄泉に繋がる物ではないみたいです。何か別の物ではないでしょうか?」

「…………」

 

 一味の中で特別頭のキレるロビンですら、これ以上は分からないようだった。

 つまるところ、考察の材料が足りないのだ。どうしようもない。

 

 話についていけなかったルフィとゾロが頭から煙を出す中、サンジがパン!と手を叩いた。

 

「とりあえず今日は休息するしかねェんだ。……フランキー!! 船はどれくらいで直る!!」

 

 彼の大声に、サニー号のあちこちを点検していたフランキーが両腕を合わせ、大声で返した。

 

「俺様のスーパー!な修復技術にかかりゃ、1日もすれば充分動かせるようになるぜ!!」

「よし。なら今から俺が買い出し行ってきて、とびきり美味い飯でも作ってやる」

 

 全身黒こげのサンジが立ち上がろうとしたのを、ナミが抱き着いて止める。

 その際、彼女の豊満な胸にサンジの顔がジャストフィットした。

 

「一番休まなきゃいけないのはゼウスの雷を受けたサンジ君でしょ!! 買い出しは私が行ってくるから!!」

「――――お……おぱ……絶景……」

「おいナミ、サンジが更に死にかけてるぞ……」

 

 白目を剥いて意識を失うサンジに、チョッパーが突っ込みを入れる。

 傷の浅い他の者達も立ち上がり、島の中央にある街への買い出しを手伝うことを決めたようだ。

 

 「牛乳が欲しいですね~」などというブルックを先頭に、街へ向かう一行。

 

 その最後尾で、ルフィが右手をじっと見つめ、眉間にしわを寄せている。

 同じく後ろに居たゾロが足を止め、彼に話しかけた。

 

「負けたのが、悔しいのか」

「……ああ。まさかあそこまで、手も足も出ないなんて思わなかった。俺もバレットを倒せるぐらい、強くなったはずなのに……」

「確かに、仲間に手を出されてすごすご逃げて帰るなんてのは……船長のやる事じゃねェ」

 

 心に刺さる一言を放つゾロ。

 ルフィは何も言い返さず、背後の、サニー号がたたずむ赤い海の向こう側を見る。

 

「だから……次は絶対に勝つぞ」

「! ―――ああ!!」

 

 2人は再び足を進め、先を進む一行を小走りで追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――翌日。

 

 ラブヒーローが、新海軍本部を襲撃した。

 

 

 

 

 

 

 




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