愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローの居場所を探す

 

 

 世界へ向けて、大それた事を宣言したラブヒーロー。

 その言葉は一言一句漏らさず、モルガンズの世界経済新聞に掲載され、世界中に広められた。

 

 さて、そんなラブヒーローの宣言に対し、大衆の反応は。

 

『何を言ってるんだ。そんな事ありえない』

 

 だった。

 

 仕方のない話である。ある日突然、重要な交通手段である海に出れなくなる、だから故郷に帰れなどと言われ即座に信じれる訳がないだろう。

 ただ、嫌な予感を感じ取った勘の鋭い人々は故郷に帰ったり、大切な人のいる場所へ向かったりしている。

 

 ラブヒーローの行いを止めに行こうとする者は、更に少なかった。

 彼の愛への狂気を理解しつつ、その宣言が本当であると確信した上で、自分達にラブヒーローを止められるだけの実力があると思う者。

 

 麦わらの一味は、この厳しい条件に当てはまっていた。

 船上で戦った時も、新聞でも『大海賊時代を終わらせる』と宣言しているラブヒーロー。海賊王を目指す彼らにとってそれは絶対に許せない行為である。

 その上仲間を傷つけられて、サニー号を滅茶苦茶に破壊されたという恨みもある。全員の意向が一致し、ラブヒーローを追跡することが決定した。

 

 全速力で海を航海し、彼らが向かったのは『セカン島』。

 海列車と温泉が有名な島だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ついたぞ、セカン島!!」

 

 真っ先に船首から飛び降り、地面に着地したルフィはそう叫ぶ。

 ここまで来るのに、クードバーストを時折挟みながらでも5日掛かった。

 新聞でラブヒーローが上げた、エンドポイントの一つ。

 まだセカン島とピリオ島のどちらも破壊されていない。だがもう期限の10日、その半分が過ぎている。いつ破壊されてもおかしくない状況だ。

 

「まずは情報収集。この島にエンドポイントがあるのは分かってるけど、島の何処がそのエンドポイントと呼ばれる火山か分からないもの」

 

 ナミがコツコツと足音を鳴らして歩きながら、そう言った。

 肝心のラブヒーローがどこにいるのか分からなければ、止めようもないという事だ。

 

「情報収集は私たちがやっておくから……主力組はしっかり体を休めておいて」

「私はどうしましょう? 皮を被るのは得意ですよ。あ、私、もう皮がありませんでした! ヨホホホホ!!」

「骸骨に情報収集を任せる訳ないでしょ!!」

「そもそもブルックは、皮を被って演技するのも苦手だろ……」

「あ、バレました? さすがチョッパーさん、その慧眼を見習いたい! あ、私、もう目もありませんでした!!」

「アンタはもう黙ってろッ!!」

 

 ナミの拳がブルックの顎を捉え、「ヨホホホホ」と上下に揺れながら不気味に笑う。

 とりあえず、ラブヒーローとの戦闘の主力であるルフィ、ゾロ、サンジ、フランキー、ブルックは休息。

 情報収集はナミ、ウソップ、ロビン、チョッパーの組み分けとなった。

 

 情報収集組はそれぞれ変装し、人の集まる場所へ向かう。

 休息を取る主力組は、この島の名物である温泉へと向かった。

 

 

 

 

 

「……新聞でここにエンドポイントがあるって書いてたのに、随分と活気があるな」

 

 サンジがタバコを咥えつつ、辺りを見回してそう言った。

 確かにラブヒーローが逃げろと勧告していた割には、この島にはかなりの人が残っている。

 他の島からの旅行客までちらほら見かける始末だ。

 

「そう簡単には信じられねえってことだ、あんな大それたニュースなんざよ。……だがもし、残り2つのエンドポイントのどちらかが破壊されるなんて事があれば、一斉に世界がパニックになるだろうな」

 

 フランキーの言う通りだ。

 大衆はまだ、目を逸らしている状態である。

 世界を変えかねない大事件から、自分は関係ないと目を逸らしている。今まではそれで大丈夫だったかもしれないが、今回ばかりはそうはいかない。

 エンドポイントが実際に破壊され、ラブヒーローの言っている事が本当だと人々が理解できてしまったなら……どれほどの混乱が起きるかは想像に難くない。

 

 

 一行は島で一番大きな温泉宿に入る。

 偶々他の客が殆どおらず、骸骨姿のブルックでも特に問題なく入浴することができた。

 

 上流から流れて来た湯が、斜面に設置されたいくつもの丸い風呂桶に流れているという少しユニークなデザイン。

 丸い風呂桶は水がパンパンに溜まり、古い水は自動で下へ下へと流れていくように設計されている。

 まあ水の循環率や利便性はどうあれ、見た目に美しい温泉であることは間違いなかった。

 

 

「ほへ~……」

「良い湯ですね~……」

 

 能力者であるルフィとブルックが風呂の湯につかり、脱力する。悪魔の実を食べ海に嫌われた彼らは、風呂釜に溜まった水程度でも力が抜けてしまうのだ。

 

「ここの湯はスーパー体に良い成分が含まれてやがるな! 肌がもちもちプリンみたいになりやがるぜ!!」

 

 フランキーが手の中央からスポイトのような吸引機械を出し、温泉の湯を少量吸い上げながらそう言った。湯に浸かるよりもまず成分を調べていたらしい。

 両手で湯を掬いながら、サンジは感心したように言葉を漏らした。

 

「へェ~。俺達が来るよりも、ナミさん達が来た方がよかったんじゃねェか」

「それに、体中に力が漲って来やがる。これも湯の成分か、フランキー?」

「いや、そんな成分は含まれてねェな」

「頭の雑なマリモはお得だな、色々な効果を勝手に感じられてよ」

「んだとぐる眉コック!!」

 

 ザババッと湯の中から立ち上がったサンジとゾロが睨み合い、がなり合う。

 

 

 そんな風に騒ぐ彼らを、上流に近い風呂釜に浸かり、見下ろす人物が2人。

 その1人、大柄で紫髪の男が、もう1人の男に話しかけた。

 

「……騒がしい奴らが来たな」

「ああ、ありゃあガープさんの孫の一味ですよ。ほら、噂の麦わら海賊団……」

「なるほど。アイツの孫か……なら騒がしいのも納得できる」

「ただ……ちぃっとばかし騒ぎすぎですね。――おい、お前ら!!」

 

 ルフィ達を呼ぶ、聞き覚えのある男の声。

 喧嘩しあっていたサンジとゾロですら一旦動きを止め、声の方に振り返った。

 

 そこに居た、声の主は。

 

「久しぶりだな。元気してたか?」

「あっ……()()ィ!?」

 

 ルフィが慌てるあまり、風呂釜の縁に引っ掛けていた足を滑らし、ぶくぶくと湯の中に沈む。

 

 声の主の正体は、元海軍大将青雉。

 そしてその横に居たのは、元海軍大将にして海兵訓練教官のゼファーであった。

 

 サンジとゾロが真っ先に構え、フランキーは手首からマシンガンの銃口を覗かせる。

 それを見たゼファーは目を細め、武装色の覇気を纏おうとしたところで、青雉が右手を軽く振って両者を制止した。

 

「おいおい、俺は別にお前らを取っ捕まえる気はねえよ。俺はもう海軍辞めてんだ」

「……じゃあ、そっちの男は誰だよ!!」

「こっちは……俺が新兵の時に鍛えてもらった人だ。この人はまだ海兵だから、下手なことはすんなよ」

 

 青雉がゼファーの事をそう軽く紹介する。

 だがルフィ達は一向に警戒を解かない。それどころか、海兵と紹介してしまったせいで、余計に警戒を強めてしまったようだ。

 「あらら~」と、どんな風に言葉を選ぶか悩む青雉。この場で戦闘など始めれば面倒な事この上ない。

 

 青雉が悩んでいるのを見て、ゼファーは風呂桶の縁を掴み、一気に立ち上がった。

 

「海賊とじゃれるつもりはない。俺はもう出て行く」

「あ~、そうですか。気をつけてくださいね」

「気を付けるのはお前だ、クザン。用がないならさっさとこの島から出て行け」

 

 ゼファーはルフィ達の横を素通りし、温泉宿から出ていく。

 その後ろ姿を見て、風呂桶の縁に肘を乗せ、頬杖を突く青雉。

 

「全く、ラブヒーローを追いかける時はいつも頑固なんだから」

「!? 青雉、お前白いおっさんの居場所知ってんのか!」

 

 ルフィが、『ラブヒーロー』の名前に強く反応する。

 風呂の湯が流れる音だけが静かに響く。

 

 そんな緊張感のある空気の中、数秒ほど経って、青雉は口を開いた。

 

「白いおっさん? 何、そんなファンシーな名前でアイツの事呼んでんの? ウケる」

「いやそこじゃねェよ!!」

 

 鋭い突っ込みを入れるサンジ。

 本人も場の空気を茶化した自覚があったのだろう。「悪い悪い」と風呂の縁を掴み、立ち上がった。

 

「そういう話は外でやろうか。少し、のぼせちまった」

 

 青雉は、失った左足を氷で作り、歩き出す。

 なぜ左足を失ったかは、彼が海兵をやめるきっかけになった赤犬との戦闘のせいなのだが……その辺りは今は関係ないだろう。青雉本人も詳しく話す気はない。

 

 

 麦わらの一味と共に温泉宿の外に出て、海岸線を歩く青雉とルフィ達。

 水平線に太陽が沈み始め、紅い灯が太陽から彼らへ一直線に伸び、ゆらゆらと揺れている。空は赤と黒が混じり合った紫色に染まっていた。

 

 静かに吐く息が白く染まる。

 

「俺がこの島に来たのは……馬鹿な事をやらかそうとしてる男を止めるため、だったんだがな。

 ラブヒーローの愛への執着は半端じゃねェ。姿や言動はどうあれ、海軍とはまた違う悪への抑止力、正義だったのは確かだ。そんな奴が世界を巻き込んで何かやらかすってんだ。きっと悪いようにはならねェ。

 ……俺は、傍観することにした。海兵でも何でもねえ俺が、手を下せるラインはとっくに超えたのさ」

 

 青雉は海岸線をしばらく歩いたところで足を止め、辺りに人がいないことを確認してから、背後のルフィ達に振り返った。

 

「お前さん方、ラブヒーローを止めに来たんだろ?」

 

 当然と言わんばかりに、全員が青雉の目を見つめる。

 先頭にいたルフィがもったいぶる青雉に腹を立てたのか、ラブヒーローへの怒りが抑えきれなくなったのか、少し声を荒げた。

 

「ああ。おっさんは俺の仲間を傷つけたんだ、一発殴らないと気がすまねェ!!」

「おいおい、大それたことを言うもんだな。分かってるか?

 ラブヒーローの懸賞金額は32億2000万ベリー。四皇の末席に加わってもおかしくねえ金額だぞ。それでも殴りに行くっていうのか?」

 

「――当たり前だ!!」

 

 彼の言葉に、青雉は目を閉じ、顔を俯かせる。

 そして実に残念そうに、口を開いた。

 

「気迫は認める。だが……

 

 ――――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()よ。お前」

 

 

「――!!」

 

 

 ルフィの驚愕した顔に目を向けることもなく、彼らに背中を向ける青雉。

 足を止めたままのルフィ達にひらひらと手を振る。そして3mほど離れた所で、振っていた手を人差し指のみを立てた矢印の形に変え、島の裏側を指さした。

 

「ラブヒーローがいるエンドポイントは島の裏側だ。ま……俺の言葉が信じられないなら、一度全力で戦ってみな。」

 

 

 去っていく青雉。

 彼の言い残した『その考え方ではラブヒーローには勝てない』という言葉。

 

 一体、どういう意味を孕んだ言葉なのか。

 ルフィ達には推し量ることもできない。

 

 

「ルフィ~!」

 

 

 遠くから、情報収集をしていたナミたちが走ってくるのが見えた。

 その様子から察するに、エンドポイントの場所でも分かったのだろう。こちらも今しがた分かった所だが。

 

 

 険しい顔をしたままのルフィを筆頭に、麦わらの一味はラブヒーローが待ち受けているであろう、エンドポイントの中心へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これ30話じゃ終わらなさそう
33、4ぐらい……?
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