愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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長いです


ラブヒーローはエンドポイントで待ち構えている

 

 

 

 

 

 セカン島のエンドポイント付近には海軍が大量に並び、警護している。

 そこに突如降り立つ、一筋の白い光。

 砂煙を腕で切り、現れたのは。

 

 身長3m。筋肉モリモリ。

 白タイツスーツで頭の先から靴先まで覆い、顔には表情が見えないほど濃い赤のバイザーをはめ込んでいる不審者。

 

 ラブヒーローだ。

 彼の側には、ウロボロスの持ち主であるアピールもいる。

 

 その2人を見た海兵たちは覚悟を決めた表情で隊列を組み、銃を構えた。

 

「敵影確認! 全員射撃用意!! ――――発射!!」

 

 放たれた無数の銃弾は、吹き荒れる嵐の様相に似ている。

 ラブヒーローは前方に空気の壁を展開し、銃弾を全て防いだ。海兵たちの銃弾があらかた切れた所で、空気の壁を解除する。

 

 その瞬間、海兵たちの後方から一人の人間が飛び上がった。

 海軍将校だ。六式も使えるであろう彼は、空気を蹴り、目にも止まらぬ速さでラブヒーローに迫る。

 

 ただ、海軍将校の使える剃や月歩程度ではあまりに遅すぎる。

 ラブヒーローは彼の頭を掴み、四肢の関節を外した後、頭から地面へ叩きつけた。

 一撃で気絶してしまったのだろう。白目を剥いたまま体をピクピクと動かすも、関節が外れているせいでマトモに体が動いていない。まるで芋虫のようだ。

 

 哀れな海兵にそれ以上気をやることもなく、ラブヒーローは手の骨をポキポキと鳴らす。

 こういう雑兵を相手にする時だけは、覇王色の覇気を持つ者が羨ましくなる。いちいち体を動かさず、覇気を流すだけで済むからだ。まあ、アレは生まれ持った素質が関係するのだからいくらごねても仕方ない問題である。

 

「アピール、少し離れていろ。3分もあれば終わる」

「……」

 

 蒼い髪の少女は特に逆らうこともなく、彼の言葉通りに5歩ほど後ろへ下がった。

 

 そして、ラブヒーローの言った通り。

 3分後には、大量に並んでいた海兵全員が、地面へ倒れ伏しているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 麦わらの一味がエンドポイントへ到達する。

 真っ先に目に飛び込んできたのは、倒れ伏した大量の海兵。

 そして、海兵を倒し終わりエンドポイントの中心へ向かうラブヒーローとアピールの後ろ姿だった。

 

「―――ッ! 待てよ、おっさん!!」

 

 ルフィの大声が聞こえたのか、肩越しに振り返るラブヒーロー。

 だが、何も言わず、それ以上振り返ることもせず、再び中心へ向けて足を進め始めた。

 

「このッ……!」

 

 眉間にしわを寄せたルフィが彼を追いかけようと、足に力を込めた時。

 紫髪の大男が、恐ろしい速度でルフィに迫っていった。

 

「海賊風情が、出張ってきてるんじゃねェぞおおおお!!」

 

 ゼファーが右腕に着けたバトルスマッシャーを振りかぶり、ルフィに殴り掛かった。

 意識をラブヒーローに向けていたルフィには避けられない。顔に武装色の覇気を込めて耐えようとした瞬間。

 その雄々しい機械の腕を、受け止める2人の男。

 

「こいつは、俺とコックが食い止める!」

「早くラブヒーローを追いかけろ、ルフィ!!」

 

 バトルスマッシャーを受け止めたのは、ゾロとサンジだった。

 他の麦わらの一味も、何処からともなく現れた海兵の相手を始めている。中には海軍中将の姿も見えた。

 

「悪い! 頼んだ!!」

 

 麦わら帽子を片手で抑えながら、エンドポイントの中心へ向かう。

 

 

 ルフィから意識を外し、ゼファーに最大の警戒を払う2人。

 紫髪とその巨躯から、温泉宿で青雉と共に風呂に入っていた人物だと言うのはすぐに分かった。

 そして、並々ならぬ実力を持っていることも。

 

「大将でもねえのにこの圧力……海兵ってのはとんでもない化け物が混じってやがるな!」

「舐めんじゃねえ、俺は元大将だ!!」

 

 ゼファーがバトルスマッシャーを爆発させ、2人を吹き飛ばす。

 着地ざまの隙を見逃さず殴り掛かるゼファー。だがゾロとサンジがお互いの隙を上手くカバーするせいで、中々攻めきれない。

 

 正に拮抗状態。

 お互いに別の方向へ気を散らせば、すぐに決着がつくだろう。

 

「なぜ俺を止める、ラブヒーローを倒さなければこの海の全てが終わるんだぞ!!」

「お前が海兵だからだろう、がッ! 首肉(コリエ)シュート!!」

「うちの船長ごと殴り飛ばすつもりだろうが、元大将―――羅生門!!」

 

 ルフィを除く麦わらの一味は、島の海岸線で海兵たちを食い止め続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わり、エンドポイントの中心。

 恐らく海岸線ではなく、中心辺りにも警備を敷いていたのだろう。だが全員が顔か腹への一撃で気絶し、その場に倒れてしまっている。

 

 ルフィは中心に近づくにつれ、肌に刺さるような緊張感が張り詰めているのに気付いた。

 それでも足は止めず、ラブヒーローを追いかけ続ける。

 

 

 そして、エンドポイント……火山の火口に辿り着いた。

 人が乗れるぐらい固まった溶岩の上に立つ白い男と、蒼い髪の少女。

 

 ラブヒーローと、アピールだ。

 

 

「―――おっさん!!!」

 

 

 その場で飛び上がり、ラブヒーローに殴り掛かる。

 覇気も纏っていない右手で簡単に受け止められ、10mほど離れた岩へ投げ飛ばされた。

 

 岩を叩き割るほどの威力で投げ飛ばされたが、ゴムの体ゆえ物理的なダメージは受けない。すぐに立ち上がり、攻撃の姿勢を取る。

 

「私を止めに来たか、モンキー・D・ルフィ」

「止めに来たんじゃねえ、殴りに来たんだ!!」

「……まあ、それでもいいが」

 

 両者は睨み合う。

 アピールはいつもの如く、2人から少し離れた所へ移動した。

 

 腕に武装色を纏いながら、ルフィは問いかける。

 

「何で、世界中にあんな宣言をしたんだ?」

 

 ラブヒーローは何のつまりもなく、平然と答えた。

 

「……私は愛を何よりも尊重する。これからすることは、世界の為にはなるが……誰かの愛を潰す結果になることもある。だから、気に食わない者に私を止める権利を世界中に渡したのだ」

「そんなの滅茶苦茶だろ。そんな風に考えるなら、最初からやらなけりゃいいじゃねえか」

「元々、やるつもりはなかったさ。だが、この計画を始めた根本の原因は……お前だ」

 

 つらつらと、記憶をなぞるように話し始める。

 

「私の計画には、ウロボロスの持ち主であるアピールが欠かせなかった。だがアピールがインペルダウンのLEVEL6にいる以上、私も手を出す気はなかった。

 そんな時、インペルダウンから囚人脱獄のきっかけを作ったのが……お前だ、モンキー・D・ルフィ」

 

 そこで、彼は一度顔を伏せる。

 数秒そうした後、ルフィに優しく語り掛けるような、不気味な口調で話し始めた。

 

「大海賊時代が始まった時から、この世界は少し――――愛を乱す輩が増えすぎた。海賊だけではない、不法な利益を得る海兵や治安悪化で暴行を働く一般市民。

 だが私の計画を行えば、全てが丸く収まるんだ。手間はかかるが、世界をやり直すチャンスなんだ。

 

 大海賊時代は終わる。だが、人々が、愛をこれ以上失わずに済む。

 私はな、モンキー・D・ルフィ。初めて出会ったあの砂浜で、本当の愛を見せてくれたお前に……この計画を、ぜひ手伝ってほしい。

 そのためなら、仲間を害したことはいくらでも謝罪しよう。私を殴りたいのならいくらでも殴らせてやる」

 

 それは本心なのだろう。

 ラブヒーローの口調や仕草は、嘘偽りで出来るようなものではない。全てが真に迫った動きだった。

 だからこそ。

 

 ルフィには、許容できない。

 

「手伝える訳ねえだろ! ……『()()()()()()』!!」

 

 白いおっさんからラブヒーローへ呼称を変えたのは、完全な敵対関係の表れだ。

 

 

 海賊王になる夢がある。

 シャンクスに麦わら帽子を届けねばならない義務がある。

 

 ラブヒーローの手伝いをすると言うことは、これらを捨てると言うことに等しい。

 そんなことは、モンキー・D・ルフィには出来るはずがなかった。

 

 

 

 

「――そうか。残念だ」

 

 悲しそうな声色。ラブヒーローが両手を白い武装色で覆う。

 それを見たルフィが、右手首に口を当て、勢いよく息を吹き込んだ。風船のように全身が膨張し、バインバインとゴムまりのように体が跳ね始める。

 

「ギア(フォース)! バウンドマン!!」

 

「……なんだその珍妙な姿は……」

 

 バウンドマンと呼ばれる、ルフィの新しい形態。

 それはルスカイナ島で修行をしていた時、そこに住む巨大な原生生物へ対抗するために編み出した形態だ。攻撃力に特化するため膨らんだ胴と腕、そのままの大きさの足と上下でちぐはぐなバランスをしている。ただ身長は相当に大きくなっており、3mあるラブヒーローよりも少々高い、4mほどにまで成っていた。

 

「この前みたいにはいかねえぞ!! ゴムゴムのォ、猿王銃(コングガン)!!」

「!!」

 

 ルフィの黒く巨大な腕が伸び、ラブヒーローに迫る。

 彼はそれを避けるでもなく、少し腰を落として、覇気で固めた右手で受け止めた。

 地面の方が耐えきれず少しひび割れるも、ラブヒーローは全く身を動かさなかった。完璧に受け止められたのだ。

 

「クソっ! なんて硬ェ覇気なんだ!!」

 

 殴られるよりも殴った方が痛くなるような、圧倒的な覇気の硬さの差。

 ラブヒーローは足元に空気の壁を展開し、痛みに気を逸らすルフィとの距離を一瞬で詰めた。みぞおちを右拳で深くえぐり、左拳で顎を下から上へ穿つ。

 常人の感覚で言えば、ダイアモンドの棒で腹と顎をぶん殴られたような感覚だ。人外の如き腕力もあいまり、ルフィはえづきながら後方へ吹っ飛ばされた。

 

 再び大岩に叩き込まれる。地面にひびが入るほどの衝撃だったが、ダメージは余りない。

 バインバインと体を跳ねさせながら、顎と腹をさする。生半可な攻撃ばかりしていたら、カウンターを喰らいまくってこちらが自滅してしまう。出す技を考えながら戦わなくてはいけない。

 

(力も速さも覇気の硬さもオレよりずっと上だ! 勝つためには、レイリーの言ってた…………『()()』を突くしかねェ!!)

 

 ルフィは、ルスカイナ島でレイリーが白い覇気の次に話していた、ラブヒーローのとある弱点について思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルフィ君。ラブヒーローは『圧縮』の能力で、世界最高の硬さを手に入れたわけだが……。だからと言って、無敗だったわけではないのだよ。現に私やロジャーは奴をよくボコボコにしていた、覇気の硬さで劣っているにも関わらずにね」

「??? 何でだ? 覇気が世界一硬ェなら、誰の攻撃も効かねえんじゃねえのか?」

 

 こてんと首をかしげるルフィ。

 それを見てニヤリと笑うレイリーは、足元の、水を多く含んだ泥を手ですくった。

 

「この泥を覇気に例えるとする。今この、軽くすくっただけの泥は、私達が使う武装色の覇気だ。(覇気)の量を増やせば、面積が増えたり、泥の層が厚くなって硬さを増す」

「? よくわかんねーけど……」

「ここからが本題なのだよ。この、覇気に見立てた泥を……思いきり握る!!」

 

 全身全霊の力で、手に乗せた泥を握り込むレイリー。

 数秒そうした後、開いた手の中には小さくなった土の塊があった。圧力で水分が抜け切り、先ほどのべちゃべちゃの泥よりも圧倒的に固まっているのが分かる。

 

「先ほどの、すくっただけの泥と今のこれ。どう変化したかね?」

「……どうって。小さくなって、硬くなった?」

「そう。……『()()()()()()』のだよ、ルフィ君」

 

 レイリーは土の塊をその辺に捨て、パンパンと手の泥を払った。

 

「奴のギチギチの実の『圧縮』という能力は、物を小さく縮めて硬くする能力だ。これはラブヒーローの白い武装色も例外ではない。

 

 アイツの白い武装色は、『小さな面積』で『2箇所しか』覆えない。両腕なら前腕の中央まで、両足なら脛の中央より少し下。……つまり、私たちがどうやってラブヒーローをボコボコにしていたか、分かるかね?」

 

 そう問われたルフィは少し悩み、口を開いた。

 

「……体のどこか2箇所を覆った瞬間に、それ以外の所を殴る。2箇所しか覆えねえから……それ以外なら普通にダメージを与えられる」

 

 ルフィの言葉に、レイリーは嬉しそうにニコリと笑った。

 

「――――正解だ、ルフィ君。それがラブヒーローの世界一硬い武装色の、大きな大きな欠点だ。

 奴の『()()』は覇気で覆える箇所が少ないこと。

 逃げられないほど広範囲で、威力が高く、防ぎきれないほど素早い連打攻撃はモロに食らってしまうのだ。……今まで格上の強敵と何度も戦ってきた君なら、それに似た技をもう使えるのではないかね?」

「広範囲で、威力が高くて、素早い連打攻撃……?」

 

 今までの強敵たちとの戦いを脳裏に思い浮かべるルフィ。

 何度も何度も命懸けで戦ってきた。その中に、30億のラブヒーローの弱点へ刺さる技があるかもしれないと言う。今はまだ、思い出せないが。

 

「……まあ、そう悩まなくてもいい。今の君では、目の前に立った瞬間殴り飛ばされるのがオチだからな! ブワッハッハッ!!」

 

 豪快に笑うレイリーに、ルフィが少し腹を立てる。

 飯を食っていた途中であるため黙っていようと思っていたことを、ルフィは口にした。

 

「レイリー、さっき握ってた泥だけどな。アレ、そこら辺の猛獣が小便引っ掛けてた土だぞ」

「何ッ!? そっ、それを早く言わんかッ!!」

 

 

 ……ルスカイナ島の夜は更けていく―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ゴムゴムの猿王群鴉砲(コングオルガン)!!」

 

 ルフィの気迫からなのか、そのスピードからなのか、彼の腕がまるで左右に3つずつに並んで増えたような乱打が降り注ぐ。

 落ちてくる拳たちを全て捌きながら、ラブヒーローは右の手のひらに熱を圧縮し、ルフィに発射した。

 

ミニッツ・コア(小さな太陽)

「ッ! ゴムゴムのォ、獅子(レオ)バズーカ!!」

 

 直径3mの太陽に、腕の中に入れ込むようにして力を溜め、勢いよく両腕の掌底をぶつける。一瞬熱さを感じたものの、すぐに太陽が攻撃の威力に耐えられず霧散した。

 

 もはや太陽系の技で一番小さく弱いミニッツ・コアでは、ルフィを止めることは出来ない。

 ラブヒーローが体勢を整え切る前に、ルフィは両腕に力を溜め、更なる乱打攻撃を撃ち放った。

 

「喰らえェ、ラブヒーロー!! ゴムゴムの猿王銃乱打(コングガトリング)!!」

 

 先ほどのコングオルガンよりも更に威力の高い連撃だ。

 地面を抉り取って余りある威力の攻撃。ラブヒーローは未来視を行いながらそれら全てを受け止めつつ、後方に飛び下がる。

 そうして、先ほどから連打攻撃ばかりしてくるルフィに対して、静かに言い放った。

 

「お前、私の武装色の弱点をレイリーから聞いたな。……レイリーめ、余計な事を」

 

 ラブヒーローが足元に空気の壁を展開、姿を消す。

 視界から消えたと思ったのもつかの間だった。すぐにルフィの前に姿を現し、みぞおちに鋭い突きを入れる。

 苦しそうに上半身を前のめりにするルフィ。自分から突き出してきた顎を横に弾いて脳を揺らし、動きが完全に止まったところを、白い両拳で滅茶苦茶に殴りまくった。

 

 秒間十数発は下らないスピードの連打。

 腕力と覇気の硬さも相まってルフィの体は一瞬で真っ赤に腫れ上がり、上空に吹っ飛ばされた。

 生まれた隙をみすみす見逃すはずもない。素早く右の手のひらを向けるラブヒーロー。

 

メガティック・コア(大きな太陽)

 

 生み出されたのは直径10mの熱の塊。未だ吹っ飛び続けるルフィの全身に直撃し、彼を空の彼方まで連れて行ってしまった。

 

「終わったか......」

 

 

 

 空に輝く白い点。太陽はあの様子では太陽は暫く消えることはないだろう。まあ、海に到達する直前ぐらいには消えるはずだ。

 そう思っていたのも、束の間。

 

「ゴムゴムのォ!! 大猿王銃(キングコングガン)」ッ!!

 

 突如、太陽とほぼ同等の大きさの黒い拳が現れ、勢いよく太陽をぶん殴った。

 数秒威力が拮抗していたものの、やがて太陽の方が押し負け始め、遂には貫いてしまう。圧縮の解除された熱気が周囲に大きく広がる中、空中を蹴ってラブヒーローの元まで戻ってくるルフィ。

 

「あの大きさの太陽を壊すか......」

「クソッ、バウンドマンじゃいくらやっても当てられねェ、反撃を喰らうだけだ......!!」

 

 だったら、と。

 ルフィは一度ギア4を解き、再び右手首に口を当て、勢いよく空気を膨らませた。

 10秒も経たないうちに変化した新しい姿は、先程の姿とは様相が大きく異なる。

 

 バウンドマンが体と腕が巨大化したチグハグな姿だったのに対し、今の姿は、元のルフィをそのまま3m近くにまで大きくしたような感じだ。両腕に覇気を集中させた細身の体からは、身軽そうな印象が伝わってくる。

 鋭い視線をラブヒーローに向けるルフィは、両腕を前に構えながら叫んだ。

 

「ーーーギア4(フォース)! スネイクマン!!

 今度はさっきみたいに反撃できねェぞ! ゴムゴムの、JET大蛇砲(カルヴァリン)!!」

「!」

 

 黒い腕が、先程までの攻撃とは比較にならない速度で空中を駆ける。

 それは十数m離れていたラブヒーローの眼前に一瞬で迫り、その体に衝突した。しかし覇気を纏った両手で防がれてしまっている。

 拳を振り払ったラブヒーローは足元に空気の壁を展開し、空に飛び上がった。

 

「まだだ!! 追え、大蛇(バイソン)!!」

「!? 高速の追尾攻撃か、厄介な......!」

 

 何度も何度も直角に曲がり、ラブヒーローを追いかけて伸びて行くルフィの拳。もう片方の拳も飛ばし、両拳でラブヒーローを追い詰めて行く。

 そして遂に、ラブヒーローの覇気を覆っていない頭を打ち抜いた。出血こそしないものの、白いタイツに汚れがつき、ガクンと大きく彼の頭が揺れる。

 

「当たった!!」

 

 バランスを崩したように、地面へ落下するラブヒーロー。

 それをチャンスと見逃さず、伸ばしていた拳を高速で縮め、再び打ち出す。しかし先ほどの何処までも追いかける拳とは異なり、上空から雨霰のように降り注がせるように攻撃した。

 

「ゴムゴムの、黒い蛇群(ブラックマンバ)!!」

 

 圧倒的な速さで襲い掛かる拳の雨。

 それはラブヒーローを持ってしても捌き切れる速さではなく、両腕を頭の上で交差させて防ぐほかなかった。

 

「ーーー」

 

 大きくグラつくラブヒーローの体。

 レイリーの言っていた通り、覇気で覆っていない箇所が生まれる事は大きな弱点だったらしい。速度重視のスネイクマンで攻撃し、当てられるようになってから、直ぐにラブヒーローへダメージが入るようになった。

 ......不自然なまでに。

 

 自身の思い通りに事が進んでいる高揚感からか、ルフィはその違和感に気づかない。

 両腕を引っ込め、直ぐに止めの一撃へと移る。それはゴムゴムのバズーカをスネイクマンの技へと昇華させた物。

 

「喰らえラブヒーロー!! ゴムゴムのーーー王蛇(キングコブラ)ッッ!!

 

 両腕を一点に集中させ、ラブヒーローを穿たんと放たれた一撃。

 それはかの三将星シャーロット・カタクリに最後の止めとして使った技だ。生半可な威力でもスピードでもない。故にルフィは、勝ちを確信した笑みを浮かべる。

 

 ラブヒーローの赤いバイザーの下にある目が、未来予知を行い。

 ルフィの必殺の一撃を両手で完璧に捕まえた瞬間、ルフィの顔からは笑みが消えた。

 

「なッ!?」

「相手が怯んだ所に強力な一撃を入れるのはいいが......()()()()()を見破れるようになることだな」

 

 拳を引こうとするも、ラブヒーローの手に掴まれていて、全く動かない。

 彼はスネイクマンが素早く、自身に防ぎ切れる速度ではないと即座に悟り、いつか来る必殺の一点集中攻撃を待っていたのだ。

 

「頭を殴る。覇気で防いでいないと死ぬぞ」

 

 ラブヒーローは、ルフィの手を強く掴んだまま高速回転を始める。それは極小の竜巻のように周囲の風を巻き上げつつ、ルフィの腕を糸でも絡めとるみたいに伸ばして行った。

 

「クソ、離せよ!!」

 

 ギア4の形態、特にスネイクマンとなったルフィの体は異様なまでに伸びる。

 ただどれだけ伸びるとしても、彼の体は結局ゴムでしかない。いずれ伸びる長さに限界は来るし、その限界が来た時、()()()()()()()()()()()方に体ごと引っ張られてしまう。

 

 その限界が来るのは、想定よりも少し早かった。

 40秒ほど経った所で抗いようもない力に体が引っ張られるルフィ。そのままラブヒーローの間合いの中へ自分から突っ込んで行く。

 そして。

 

 

 ーーー意識を刈りとって余りある白い一撃が、ルフィの顔面に突き刺さった。

 

 

「ーーーーーッッ」

 

 全身の骨という骨が丸ごと叩き折れてしまうような衝撃。

 そのタイミングでパッと手を離すラブヒーロー。その衝撃に逆らえず、ルフィは白目を剥いて後方に銃弾の如く吹っ飛んでいった。

 

 頭から血をドクドクと流すルフィ。

 演技のために攻撃をいくらか貰ったとはいえ、血の一滴も流していないラブヒーロー。

 

 

 

 ーーー勝敗は決した。

 

 

 

 

 

 

 




戦闘描写難しすぎる
元々予定してた展開と全然違う風になったけど、まあいいか!
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