愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローと戦う者たち

 

 

 

 

 

 2つ目のエンドポイントが破壊されてから、2日。海軍は全海洋生物の巨大化という、ラブヒーローの真なる目的を秘匿した。

 

 しかし、それでは混乱は止まらない。真の目的を秘匿したとはいえ、ラブヒーローは宣言通りにエンドポイントを破壊してしまったのだから。一体何が起こるか分からないとはいえ、結果的に海が渡れなくなるという事は民衆は知っているのだ。

 世界中が喧騒に包まれる中、麦わらの一味は、静かな草原が広がる島に上陸していた。

 

 人が住んでいる様子はなく、爽やかな風が程よく伸びた草を揺らす。

 だが、その草原の中に、明らかに人工的に草を刈り取られ踏み固められた道が一本伸びていた。

 

 傷を癒したルフィを先頭に、その道を進む。

 やがて島の中央付近に辿り着くと、草が綺麗に刈り取られた広場の中に、大きな石碑が置かれていた。

 その石碑の前には紫髪の男が1人、花を片手に座っている。

 

「……来たか」

 

 花を石碑の前に置き、麦わらの一味に向き直る男。

 右腕に巨大な機械の腕、バトルスマッシャーを装着したゼファーがそこに居た。

 

「これは、何の石碑なんだ?」

「……この島で命を失った人々の墓だ。ここは元々、『()()()()()()()()』と言われていた場所でな。その名の通り、ゴミが大量に集まり地面を形成するような場所だったが……今は見ての通りだ」

 

 爽やかな風が彼らの頬を撫でる。

 とても大量にゴミがあったとは思えないほど、ここの空気は澄んでいた。草は青々と生え、水は透明度が高く、生き物は元気溢れる姿で生きている。

 ゼファーが言葉を紡ぎ続ける。

 

「ラブヒーローは、この島でしばらく生活していたことがある。そしてこの石碑を建てたのも奴だし、この島から根こそぎゴミを消したのも奴だ。……お前たちも、何度かそのゴミを見ているだろう?」

 

 そう言ってゼファーは、親指と人差し指の間から何かを撃ちだすような仕草をした。

 その動きは、忘れもしない、かつてパシフィスタを仕留める時に使った『圧縮弾』を撃つ動きだ。ラブヒーローの圧縮弾は全て、この島に大量にあった瓦礫やゴミを圧縮した物なのだった。

 

 ルフィが眉間にしわを寄せる。

 

「……それで。ラブヒーローのことについて話すって、何を話すんだよ」

「全てだ。奴がどんな風に生き、奴がなぜあんな風になったか、俺の知っている限りをな」

 

 

 

 ――そうして、ゼファーは語り始めた。

 

 ラノアという少年がいたこと。天竜人によって不当に、母の命を奪われた事。

 それからこの島に辿り着き、何らかの理由でこの島を出て、ゼファーの家族を救った事。ゴールド・ロジャーの海賊団と関係を持った事。

 

 ……そして、天竜人を殺した時から、おかしくなってしまった事。

 

 

 

 麦わらの一味の誰もが、その生い立ちに息を呑むことしか出来なかった。

 全てを語り終えたゼファーは、少し視線を下げる。それから再び、何かの覚悟が籠った目で、麦わらの一味を見つめた。

 

「ラブヒーローの計画が本当に実現したとする。そうすると……少なくとも、この時代に生きる俺達が海に出れることは二度とない。最後のピリオ島は火山があるだけの島、そこで生涯を終える事になる。

 それでもお前たちは、奴に……ラブヒーローに立ち向かうのか?

 敗北した時の現実に耐える覚悟があるのか?」

 

 誰かが唾を飲む。今までに味わってきた危機とはまた毛色が違うのだ。

 過去の冒険で何度も行った強者との戦闘は、敗北すればその場で死ぬだけ。ただ今回は、もし敗北すれば、何もないその島で生涯を終えるまで生きなければならないのだ。敗北したこと、戦ったことを後悔しながら、何年も、何十年も。

 

 ともすれば、命懸けの戦いをするよりも重い覚悟が必要になる。

 今逃げ帰れば確実に助かるという道も用意されてるだけあって、余計に、覚悟を決めるのが難しくなっていた。

 

 

 数秒の静寂の後、ルフィが低い声で言い放つ。

 

「……そんな覚悟なんかいらねェよ」

「ほう……?」

「俺はラブヒーローのおっさんに、絶対に勝つ。だから負けた時の覚悟なんてする必要がねえ」

「大それたことを言うものだ、奴に傷もつけられず敗北した男が。今のラブヒーローは四皇、いやそれ以上に危険視されている男だ。世界政府から最優先で抹殺しろと連絡が来る程にな。

 ……それでも、絶対に勝つというのか?」

 

「――当たり前だ!! 俺は、『()()()』になる男だ!!」

 

 

 海賊王。

 それはラブヒーローが生涯を通して、一度も勝つことが出来なかった男に付けられた肩書き。

 

「よりにもよって、海賊王か。フン、馬鹿な海賊だとは思っていたが―――想像を超えるほど大馬鹿な海賊だったようだな」

 

 「ラブヒーローが手助けしていた理由がわかった」という言葉を飲み込み、立ち上がるゼファー。

 島の向こう側に海軍の軍艦が見える。彼は恐らくそれに乗ってきたのだろう。

 

「じゃあな。」

 

 石碑の裏に隠れていた道を歩き、軍艦に向かっていくゼファー。

 そんな彼に背を向けるように、自分たちが辿って来た道を戻っていく麦わらの一味。

 

 

 

 

 サニー号に乗り込み、芝生が生い茂る甲板の上に集まる。

 緊張した顔つきの仲間たちに、ルフィは声を発した。

 

「ああは言ったけど……正直、ラブヒーローのおっさんに勝てる見込みはねえ。スピードもパワーも覇気の硬さも俺より上だ。戦闘経験だって向こうの方が豊富だ」

 

 つらつらと、弱音ばかり連ねていく。

 思い出すのはラブヒーローと戦った時の景色。一瞬で姿が消えたと思えば、己の懐に入っていて、鋭い一撃を入れられた。アレを突破する術は……全く思いつかない。

 

「もし、帰りたい場所があるなら……俺は止めねえ。小舟に乗ってでも、俺はピリオ島へ行く」

「おいルフィ、そんな言い方……」

 

 一味の中で一番怖がっているだろうウソップが、そんな声を出した。

 彼には帰る場所があるし、待っている人達もいる。残してきた物があるからこそ、恐怖が発生するのだ。

 

 手を伸ばすウソップ。そんな彼の手を抑えたのは、横に立っていたゾロだ。

 どうやらルフィはまだ言いたいことがあるらしい。今までの重苦しい空気を吹き飛ばすように、息を大きく吸って、声を轟かせた。

 

「でも、俺は! 皆に助けてもらわねェと生きて行けねえ自信がある!! 今まで冒険できたのだって、みんなの力があったからだ!!

 

 ――だから……頼む!! ラブヒーローに勝つために……みんなの人生、俺にくれ!!」

 

 ルフィは、頭を仲間に向かって下げた。

 

 

 

 以前、青雉に言われたことを思い出す。

 『その考え方じゃあ、ラブヒーローには勝てねえ』、と。

 

 あれはきっと、ルフィの独断専行的な戦い方を見抜いていたのだろう。

 マリンフォード頂上戦争の時だってそうだ。ルフィは1人で先へ進んでいき、強敵と戦い続けていた。今まではそれで何とかなっていた。

 

 しかし、ラブヒーロー相手には1人では勝てない。

 2箇所の覇気をかいくぐりダメージを与える方法が分からない。だが、仲間となら……絶対に突破できる。色々な方向から全員で同時に攻撃すれば、2箇所だけの覇気では防ぎきれない。実に分かりやすい話である。

 

 分かりやすくはあるが、簡単ではない。

 真に心が通った者同士の連携でないと、ラブヒーローは楽に反撃してくるだろう。故に、今まで冒険を共にしてきた仲間でないといけない。急増のチームワークでは絶対に突破できない。

 

 

 

 頭を下げたままのルフィ。

 その頭を、誰かが軽く小突く。

 

「馬鹿ね。小舟で行くったって、アンタ1人じゃ新世界の海は渡れっこないわよ」

 

 小突いたのは、ナミ。

 それに続くように、仲間たちがルフィの近くへ寄っていく。

 

 今までの無茶な冒険を共にしてきた彼らは、とっくに、船長の夢に自分の人生を預けていた。

 ビビっていたウソップですらルフィの肩をバンバンと叩き、「このウソップ様がいれば絶対に勝てる!!」などと嘯いている。

 

 ふと、何処かからサンジが巨大な樽を持ってきて、甲板の上にドン!!と置いた。

 

「『助けてもらわねえと生きて行けねェ自信がある』……。懐かしい言葉を聞いたからか、こっちも思い出しちまった」

 

 その樽を見て懐かしそうに目を細めるゾロ、ナミ、ウソップ。

 他のメンバーはその樽の事など知らない。首を傾げたブルックがサンジに問いかける。

 

「あのー、サンジさん。その樽は一体……?」

「ああ。俺達はグランドラインに入る時、こんな感じの樽に足を乗せて、自分の夢を宣言したんだ。ここらでもう一回、新メンバーを加えてやり直すってのも悪くねェだろ」

 

 

 それを聞いて納得した麦わらの一味。

 前回やった時より仲間が増えたからか、全員が窮屈そうにしている。その間に挟まれるルフィも窮屈そうにしていたが、どこか嬉しそうに笑っていた。

 

 

「――俺は、海賊王になるために!!」

 

 まず宣言したのは、船長であるルフィ。足を乗せる。

 それに続くように、皆が自身の夢を大きく叫んでいった。

 

「俺ァ、世界一の剣豪になるために!」とゾロ。

 

「勇敢なる海の戦士となるために!!」とウソップ。

 

「俺はオールブルーを見つけるために!」とサンジ。

 

「私は自分の目で見た世界地図を書くために!」とナミ。

 

 以前やったことのある者達が宣言するのを見て。

 それに倣うように、他の者達も宣言していく。

 

「なんでも治せる医者になるために!!」とチョッパー。

 

「フフ……。真の歴史の本文(リオ・ポーネグリフ)を解読して、空白の100年を知るために」とロビン。

 

「このサウザンド・サニー号が、海の果て(ラフテル)に到達するのを見届けるために!!」とフランキー。

 

「もう一度、ラブーンに再会するために!!」とブルック。

 

 

 全員が夢を叫び終わった後、樽に乗せた足を少しだけ上げ。

 一斉に踵を落として、樽を木っ端みじんに破壊した。心地よい木の砕ける音があたりに響く。

 

 各々が笑みを浮かべる中、ルフィが腕を伸ばして船首に飛び乗り、両腕を高らかに上げた。

 

 

「行くぞ、最後のエンドポイント!!」

 

 

 仲間たちは「おう!!」と力強く答える。

 

 

 ――そうして。

 夢を叶えることを宣言した者達が、終わりの地(エンドポイント)への航海を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 




ワンピースREDの新トレーラーが公開されましたね
本作品のシャンクスの懸賞金額倍くらい面白そうなので、みんなで見に行きましょう!


ラブヒーローの計画で島が沈んだりは……まあ、海はおっきいしそんなに海面上がらないでしょ(ガバ)

ここからの展開は荒らせば荒らすほど面白くなる(はず)なので気合い入れていきます
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