愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる 作:ペン汁
アピールという少女は、ウオウオの実幻獣種・モデルウロボロスを食べている。
彼女は元々、平和な村で暮らしていた。
だがある時村に訪れた海賊に誘拐、牢に幽閉されたが、命からがら脱走。じりじりと追い詰められる中、船の宝物庫にあったドーナツのような形をした悪魔の実を、「助かりたい」という一心で口にした。
その瞬間、彼女の意識は闇の彼方に消え。
気づいた時には、息絶えた海賊達と、粉々に砕け散った船の木片に掴まり、ぷかぷかと海の上に浮いていた。
木片に掴まり流されるまま、とある島に漂着。
故郷の村に戻る方法が分からず、そのまま島の街に住み着く。
三ヵ月もしたころ、街の人々から温和な性格も相まって認められるようになるアピール。
ただ、とある夜、彼女は眠気とはまた違う形で――意識を失った。
その瞬間、目の前にあったのは、滅びた街と死に絶えた人々。
アピールは目を疑った。信じられなかった。一体誰がこんなことを、と。
だが彼女も、聡明ではないが、何も理解できぬほど頭が悪いわけではなかった。
もう一度同じように滞在していた街が滅び、自分だけが生き残っていた時、悟った。これは自分が意識を失う度、無意識にやっているのだと。
ウオウオの実幻獣種・モデルウロボロスはその特殊かつあまりに強大すぎる能力ゆえ、彼女には制御することができなかった。生のエネルギーが溜まる場所にいると、体が勝手に能力を行使し、周囲に死のエネルギーをばら撒くのだ。
アピールはその日から、山奥でひっそりと暮らすようになった。
だが偶にどうしても必要な物が出来た時、人里に降りる。しかし人里に降りる度、何分の一の確率で能力が勝手に発動し、そこを粉々に破壊した。
いつしか、アピールには懸賞金が掛けられる。
彼女を捕らえに海兵が集まって来たこともあるが、気づいた時には皆死んでいた。
能力に振り回され、否が応でも懸賞金額が上がり続け、億を楽に超えるようになった時。
―――彼女の前に、白い大男が現れた。
――――――――――――――――――――――――――――
ラブヒーローが宣言した期限の最後、10日目。
ピリオ島には様々な強者が集結していた。
海軍からは、海軍大将の藤虎と黄猿。訓練教官のゼファー。
そして七武海のジュラキュール・ミホーク、ボア・ハンコック、バギー。
エドワード・ウィーブルは参加を拒否した。
新世界に生きる、億越えの海賊達も多く集結している。
その中でも際立って強いのは、ビッグマム海賊団の三将星、百獣海賊団の大看板。
他にも、最悪の世代の姿もちらほらと確認できる。
今ピリオ島は、世界のどこよりも危険な場所と化していた。
大看板のクイーンと三将星のカタクリが近づき、睨み合う。
「ようカタクリィ~! お前、麦わらのルフィってルーキーに負けたそうじゃねェか! そんな体たらくでよ~くここに顔を出せたもんだなオイ!!」
「……クイーン。相変わらず膨れた体だ、もちでもたらふく食ったか」
「俺はあえて痩せてねェだけだ!! ……それより、ビッグマムはどうした? 姿が見えねェが」
「ママは海だ。赤髪に足止めを喰らっている」
カタクリが海の方を見る。
思い出すは数十分前。船でこちらに向かっていた時、赤髪海賊団が突如目の前に現れ、ビッグマム海賊団に刃を向けたのだ。
『ビッグマム。お前たちはあの島に行き、何をするつもりだ?』
『あァ? 分かってねェな赤髪。世界を滅ぼすなんて大層な力……俺が欲しくねェ訳がないだろ?』
『やはりか……。そういう事なら、お前をあの島へ行かせる訳にはいかない』
シャンクスが刀を抜く。
それを見たビッグマムが、「マ~ママ」と笑い交じりに言った。
『おいおい、あのロジャーに付き回ってたおかしなガキの言うことだ。ありゃ、
『お前に力を持たせる方がよっぽど問題だ。それにラブヒーローは……俺達じゃ止められんさ』
『誰に何が止められねェって? ――プロメテウス!!』
ビッグマムとシャンクスが激突する。
両者が戦闘する隙を見て、長男のぺロスペローを代理の指揮官として、ビッグマム海賊団はこの島へ訪れたのだった。
クイーンがその話を聞いて、葉巻の煙をくゆらせる。
「ほ~う……そりゃご苦労なこった。――――俺達の方は、
「…………」
『来てる』の意味は、考えるまでもなかった。
カタクリとクイーンがお互いの武器を取り出し、衝突する。ラブヒーローという共通の敵がいるとはいえ、彼らが仲間であるという訳ではない。目の前に居れば戦うのが道理だ。
集結した海軍と海賊たちが島のあちこちで戦いを始めた。
「おわ~~~ッ!?!?」
何処かから飛んできた大砲の弾を、命からがらと言った様子で回避する、千両道化のバギー。
べしゃッと地面に転がり、すぐに立ち上がって戦場の目立たない場所へ逃げていく。
「く、クソ……なんで俺様がこんな場所に……部下共とははぐれちまうし……。あの
物陰に隠れながら悪態を吐くバギー。彼は嫌々ピリオ島に乗り込んだのも束の間、
誰も見ていないことで勢いが乗ったのか、つらつらと口から罵詈雑言が流れ出ていく。
「そもそもあの馬鹿も何考えてやがんだ、昔からおかしな奴だとは思ってたがついに頭がぶっ壊れちまったか? 愛だか何だか知らねェが、そんな
「……何がくだらないって?」
「あァ!? そんなもん―――…………え?」
背後から響いた、聞き覚えのある声。バギーがゆっくりと背後に振り返る。
そこには、白いタイツスーツを纏った3mの大男が、バギーの顔を覗き込むように身をかがめて立っていた。
その傍にはちょこんと、少し哀れそうな目でバギーを見るアピールもいる。
「何がくだらないって? バギー」
「ら……ラブヒーローさんじゃないですかー。やだなーもう、僕がそんな事いう訳ないじゃないですかー」
「まあどちらにせよ絞めるがな。インペルダウン脱獄の主犯」
ラブヒーローがバギーのこめかみを掴み、アイアンクローを決めた。
「結局やるんじゃねェか!!」と内心キレつつ、頭に走る激痛に鼻水を垂らしながら暴れるバギー。
そんな風に2人で暴れていると、やがて、周囲に居た海兵に見つかってしまった。
彼らを指さし、大声で叫ぶ。
「ラブヒーローが現れたぞ!!」
周辺で戦っていた海兵たちが一斉に反応し、将校が軍艦に砲撃指示を出す。
そしてラブヒーローに掴まれているバギー諸共、彼らに無数の砲弾が撃ち込まれた。
自身の周りに空気の壁を展開し、砲弾を全て防御する。
近くに居たおかげで守られていたバギーはラブヒーローの手からは離れ、海兵たちに指を差しながらキレ散らかした。
「てめェらふざけんなァ!! 俺は味方だぞ!!」
「味方……お前、本当に七武海になってたのか。よく招待が来たな、
「弱いだァ!? そりゃお前みたいな化け物には分が悪いかも知れねェがなぁ、俺には各地から集めた部下共が――」
「……その肝心の部下はどこにも見当たらないが」
ラブヒーローがわざとらしく辺りを見回す。
当然、辺りにバギーの部下は見当たらない。いるのはこちらに銃を向けた海兵だけだ。
だらだらと冷や汗を流し始めるバギー。
「いや……その~、だな」
「まぁ、別にどうでもいいが―――ッ!!」
瞬間、周囲に迸る威圧。
辺りの海兵が一斉に倒れ始める。アピールも意識を失い、バギーも一瞬白目を剥いたものの、すぐに意識を取り戻した。
ラブヒーローはビリビリと揺れる空気の中、その威圧の発生源を見る。
「な、なんだァ今のは? 海兵共も何で倒れてやがる」
「覇王色の覇気だ。…………バギー、アピールを連れて少し離れてろ」
「なんで俺がそんな事を――」
「いいから離れてろ。アピールを連れていないと、私はお前を守らないからな」
天を泳ぐように現れたのは、一匹の青い龍。
ラブヒーロー達の真上で一度大きく旋回してから、巨大な人型に姿を変え、彼らの前に降り立った。
黒い金棒を持ち頭から角の生えた大男。
身長が3mもあるラブヒーローが見上げるほどの大きさだ。目算で7~8mはあるだろう。筋骨隆々とした体からは只ならぬ圧を放っており、ラブヒーローが冷や汗を垂らす。
「――ウォロロロロ。ロジャーに付いて回ってたガキ……いや、
その大男の名は、カイドウ。
四皇の一角。百獣海賊団の長であり、最強生物と呼ばれるほどの実力を持つ男。
懸賞金額は46億1100万ベリー。
今生きている生物の中で、確実に、ラブヒーローよりも強い者の1人である。
バギーが大急ぎでアピールを抱えて逃げていくのを横目に、両拳を白い覇気で固める。
ラブヒーローが低い声でカイドウに問いかけた。
「……私を止めに来たか」
「止める? 馬鹿言うんじゃねェ、むしろ手伝いに来てやったんだ。聞いたぜ? 世界中の海を超大型海王類で埋める……こんなに良い話はねえ。
SMILEで飛行可能な動物系の能力者を量産すれば、百獣海賊団だけが世界を行き来できるようになる。そうすりゃ海賊王なんて目じゃねェ、世界が俺の手の中に入る」
そこまで言った所で、カイドウが金棒の先を、ラブヒーローに向けた。
「お前も俺の軍門に下れ。大看板の1人くらいには加えてやるぜ? ウォロロロ……」
結果的に、悪い話ではないのかもしれない。
今ここでカイドウの助力を得れば、ラブヒーローの計画は成功したも同然だ。軍門に下れとは言うが、後で約束を反故にして百獣海賊団に挑めばいいだけなのだから。今嘘を吐くだけで、この場は全て丸く収まる。
だが。
カイドウは悪名を轟かす生粋の海賊。そんな奴に一瞬でも靡くようでは、ラブヒーローがそもそもこの計画を始めようとした『愛をこれ以上失わせない』という思想の意味がなくなってしまう。
故に、彼は、逆にカイドウを脅すような低い声で言葉を返した。
「―――断る。貴様の海賊団も著しく愛を乱すから、いずれ潰そうと思っていたんだ。良い機会だな」
その言葉を予期していたのか、カイドウが一瞬、口角を上げる。
だがすぐに口角を下げると共に眉間にしわを寄せ、覇気と共に棍棒を振りかぶった・
「てめェ……覚悟は出来てんだろうなァ!! 雷鳴八卦!!」
「くッ!!」
見聞色の覇気を限界まで使い、ようやく避けられるほどの速度。空中に飛び上がったラブヒーローは、両手を左右に広げる。
「
彼のそれぞれの手に一つずつ、直径10mの太陽が発生する。
今まであまり使う機会はなかったが……片手で熱を圧縮し太陽が作れるのだ。当然、両手で1つずつ作ることだって出来る。
2つの太陽を同時にカイドウにぶん投げた。
だが、カイドウは技を使うまでもなく、覇気を纏った棍棒を二回左右に振るだけで太陽を打ち消す。
勢いを保ったまま振り下ろしてくる棍棒を避けようとするが、余りの速度に回避しきれず、両腕を交差させて受け止める。
――――ガァン!!
「ッぐォ……!」
「
あまりの威力に一瞬怯んだ所を、横から思い切り蹴り飛ばされるラブヒーロー。体格差ゆえか、勢いよく吹っ飛ばされ、地面にヒビを入れた。
ガラガラと割れる地面から身を起こす。
顔に付けた赤いバイザーを一瞬外し、口の中に溜まった血をペッと吐いてから、再び付け直した。
(……確かに、覇王色の覇気を纏えない私では厳しいな。太陽も、カイドウ相手では少し火力が足りない)
覇王色の覇気は周囲に拡散して相手を威圧させる他、武装色の上に重ねるように纏い、攻撃の効果を更に上げることができる。武装色だけでも強いが、四皇クラスの強者相手となると、火力不足になることが稀にある。
チャラッと、圧縮して懐に入れているダイナ岩の数を指で数える。
残り8個だ。
最後のエンドポイントを破壊するのには、5個もあればギリギリ足りる。
ラブヒーローは立ち上がり、右手に太陽を作り出す。
それを見たカイドウはニィと笑い、肩に金棒を担ぎ、恐ろしい速度でラブヒーローに迫っていった。
総合的な戦闘力で負けているとはいえ、スピードならラブヒーローの方が上だ。
一瞬でカイドウの顔の前に移動し、太陽を押し当て、目を潰す。
いっそ眼球が焼き消えてくれれば良かったものの、最強生物の名は伊達ではない。目まで高い熱耐性を持っており、数秒目眩しをする程度に終わる。
だがそれで充分。
左手でダイナ岩を取り出し、カイドウに投げつけた。
数秒で爆発するようロックは解除してある。パパッと明滅し、起爆しそうになった瞬間。
「雷鳴八卦!!」
後方へ一歩下がり、ダイナ岩ごとラブヒーローを金棒で殴りつけるカイドウ。
余りの攻撃ゆえか、空気が捻じ曲がり、超威力の爆発が全てラブヒーローの方向へ向いた。火柱がカイドウの前から海の向こうまで一直線に伸びる。
島が丸ごと揺れるような爆風に、地面を掴んで必死に耐えるバギーとアピール。
「な、なんつーバケモン同士の戦いだ! 命がいくつあっても足りやしねェ!!」
雷鳴八卦に直撃した上、超威力の爆発をモロに食らったラブヒーローはタダでは済まない。
カイドウより十数メートル離れた所で、体から血を流しているものの、空中にて直立していた。
「ウォロロロロ……まだ生きてるか。やはり強えな、お前。どうだ、今からでも俺の所に来ねェか?」
「断る」
「だろうな」
ラブヒーローは右手に直径30mの太陽を作り出す。
「
カイドウは金棒を構える。見聞色の覇気は使わない。
あの大きさの太陽はタダの横薙ぎでは壊せないが、雷鳴八卦で有れば充分壊せる威力だからだ。見るまでもない。
分かりやすいほど金棒を構えるカイドウに突っ込むラブヒーロー。
右手に持った自分の身を隠すように太陽を前に出し、撃ち放つ。太陽の眩しさに目がくらむカイドウ。
「雷鳴八卦!!」
目がくらんだとは言え、目の前に迫ってくる光源を見逃す訳はない。太陽を殴りつけ、予想通り、それをぶち壊す。
熱気が辺りに飛び散る中、カイドウは視線を辺りに巡らせた。ラブヒーローの姿が見当たらない。前後左右見渡してもいないと言うことは、つまり。
「上か!!」
「
咄嗟のラブヒーローの攻撃に対応できなかったのか、無理な体勢で防いだカイドウの棍棒が弾き飛ばされる。
重力に従うままカイドウの顔の上に落下し、白い武装色で足を覆って、前歯を叩き折った。
「いい加減、大人しくしろ!!」
先程使ったダイナ岩は1つ。今ラブヒーローが手に持つダイナ岩は2つ。前歯の隙間から圧縮ダイナ岩を投げ込み、口を無理やり閉じた。
ーーーーーーーカッ!!
超威力の爆発が2つ、カイドウの体内で爆発する。
口から吹き出した火柱をかろうじて避ける。流石に堪えたのか、金棒を手から落とすカイドウ。
何故生きている、というか、何故肉の形を保っているかわからない。人知で超えるほどの丈夫さが、最強生物と呼ばれる所以なのだろうか。
爆発の威力で数瞬、動きを止めるカイドウ。
その数瞬を、ラブヒーローが見逃すわけもなかった。
落とした金棒を奪い取り、フルスイングで、彼を海の方へ殴り飛ばした。おまけにマキシマム・コアもぶつけ、彼は空の彼方へ吹っ飛んでいき、やがて海へ着水し沈んでいった。
ラブヒーローは金棒を海に放り投げ、体の血を手で拭う。
「か、カイドウを倒したのか……?!」
「海に落として死ぬくらいならどんなに楽か。島の近くの浅い海なら、海底を歩いてまたここに登ってくる」
それでも、30分近くは登って来れないだろう。
爆風で砂埃まみれになっているアピールの服を払って肩に乗せ、エンドポイントの中心は歩き始めるラブヒーロー。
そんなラブヒーローの背中に、バギーが指を指して叫ぶ。
「ちょっと待てやラブヒーロー!」
「何だ」
「お前、ロジャー船長の処刑ん時は苛ついたが……今ならてめェの言ってた意味もよくわかるぜ。あそこで助けちゃ、海賊として生き恥を晒す羽目になっちまうってよ」
「何の話だ」
「つまり、あの時の事は許してやる。そこでどうだ、てめェ俺の下に付かねえか? シャンクスの野郎とタメ張れるお前なら戦力として申し分ねェ!」
「付くわけないだろ。殴るぞ」
ラブヒーローは若干苛つきながら言った。いつもより口調が多少砕けているのは、傷の痛みに少し意識が逸れている上、旧知の仲であるバギーだからかもしれない。
「よっぽどの事がないと貴様の下に付くなどありえん。貴様が私より強くなったら考えてやる」
「んなことできるわけねェだろこのアホンダラ!! いいか、人間何事も個より数の力がだなッほげぶァ」
ラブヒーローはそろそろ鬱陶しくなったのでバギーを殴り飛ばした。一応温情で、覇気は纏っていない。
きりもみ回転しながら空中に吹っ飛び、地面に落下。バギーは一発で白目を剥き気絶した。
「いいの?」
肩に乗せたアピールがラブヒーローにそう問いかける。
「いいの?の意味がわからないな。別に、何も思っていないぞ」
「仲よかったんじゃないの?」
「知り合いの雑魚。それだけだ」
ラブヒーローとアピールは、再び歩みを始めた。
書き終わってから思いました。
カイドウ戦別にストーリー上要らなかったわって。まぁバギーとの会話はしたしOKでしょ(適当)
まぁ、番外編みたいな感じで。不評ならここの話だけちょっと消して修正します
それより何でダイナ岩体内で爆発してカイドウさんは死なないんですかね?
自分で書いてて何だけど強すぎて怖い