愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローは麦わらの一味と邂逅する

 

 

 

 

 

「よし……っと」

 

 サニー号の船尾にて、ウソップが海に何かを括り付けた糸を浸し、ゴソゴソと作業をしていた。

 その時、焦った様子のサンジがひょいっと顔を出して、彼に声を掛ける。

 

「ウソップ!! 何やってんだ!! もう上陸するぞ!!」

「おう、すぐ行く!!」

 

 ウソップは船首の方へ走っていき、仲間たちと共にピリオ島を見た。

 そして、息を呑む。

 

「な、なんじゃありゃ……!」

 

 ピリオ島は、恐ろしい化け物達が集う戦場と化していた。

 海兵と海賊たちが暴れ回り、時折巨大な斬撃やピカピカとした光のレーザーが飛び、挙句の果てに隕石まで落ちてきている。現世の地獄とは正にこの事だ。

 

 ゾロが刀をカチッと鳴らし、大胆不敵な笑みを浮かべる。

 

「この世の終わりに集って来た奴らの戦場ってことか……面白え」

「な、何が面白いのよ……こんなの地獄じゃない!」

 

 ナミが怯えながらそう言った。チョッパーも彼女と同じように怯えているが、こちらは声も出せないようだ。

 集まった面々の強さはマリンフォード頂上戦争よりも上かもしれないが、何も麦わらの一味に狙いが向いている訳ではないため、危険度はトントンだ。ルフィはパシン!と拳と手のひらを合わせ、口角を上げる。

 

「マリンフォードの時と違ってみんなが付いてるんだ。何も怖くねえ。

 ……行くぞ!!」

 

 

 サニー号が島に乗り上げ、錨を下ろす。

 全員が一斉に船から飛び降り、武器を構えた。ピリオ島のあちこちからは血と火薬と舞い上がる土の匂いが漂っている。

 天候棒からゼウスを呼び出してあたりに雷を降らせながら、ナミが叫んだ。

 

「ラブヒーローがいるとしたら島の中央、エンドポイントの中心よ!」

「となると、まずはこの海兵と海賊が戦ってる海岸線を突破しなきゃいけねェってか……スーパー厳しそうだぜ」

 

 襲い掛かって来る海兵や賞金首狩りを倒しつつ、全員で固まって島の中央を目指す。

 海岸線には四皇幹部の姿も見える。カタクリが恐竜化したクイーンと大激戦を繰り広げるのが見えたが、流石に関わるつもりはなかった。

 といっても、カタクリの目は確かにルフィの事を捉えていたが。

 

 麦わらの一味が順調に前進し、海岸線の半分に到達した所で。

 聞き覚えのある声が彼らの耳に入った。

 

「ルフィ!?」

「ん……ハンコック! 何してんだこんな所で!!」

「この戦いには七武海も招集されておるのじゃ! それよりここは不味い、別の方角からエンドポイントへ向かうのじゃ!」

 

 何故?と問いかけるよりも速く。

 麦わらの一味に、巨大な斬撃波が襲い掛かった。

 

 ゾロが咄嗟に刀を抜いて受け止めるが、余りの衝撃に体が後方へ弾かれる。

 斬撃によって地面に深い一筋の亀裂ができ、その亀裂を辿った先には、七武海である『鷹の目 ジュラキュール・ミホーク』が黒刀を振り上げた状態で立っていた。

 

「再び相まみえたか、麦わら。そして腕を上げたな、ロロノア」

「ここはわらわだけでなくあやつもおる範囲なのじゃ、他の場所から行くがよい!!」

 

 ハンコックがそう言うが、ルフィは地面に腕を突き、体から蒸気を出し始める。

 

「他の場所から行ってる時間はねェ、ここを突破する!! ―――ギア(セカンド)!」

「それでこそ、うちの船長だ。おいブルック、お前も手伝え」

「いいでしょう! 肉を切らせて骨を立つ覚悟で……あ、私、もう切らせる肉がありませんでした!!」

 

 ルフィが真っ先に突っ込み、ゾロとブルックが続く。

 ギア2の素早い攻撃でさえミホークは見切ることが出来る。ルフィのJETピストルを夜で受け止め、ゾロとブルックの方からも視線を外さない。

 

「三刀流!! (ウル)虎刈り!!」

「鼻唄三丁……矢筈斬り!!」

 

 口に噛んだ刀と振り下げる2本の刀で、まるで虎が噛んだような強力な一撃を放つゾロ。その隙を見て、目にも止まらぬ速さの居合技を放つブルック。

 だがそのどちらも、ミホークには通じない。

 辛うじて彼の服の一片を切り取ることには成功したものの、それ以外は完璧に防がれてしまっていた。

 

「鋭い……だが、まだ足りん!」

 

 ミホークは腕力で刀を横に薙ぎ、3人を振り払った。

 そのまま黒刀を肩に担ぐように構え、体ごと1回転するように空を斬り、斬撃の嵐を発生させる。

 3人は嵐に服と体を切り裂かれながら、仲間たちの立つ場所まで吹っ飛ばされた。

 

「クソっ! 速くラブヒーローの所まで行かなきゃなんねえのに!!」

「この鷹の目から2度……運命よ、どうやって逃がす!!」

 

 麦わらの一味が丸ごと潰されかねないほどに強く、隙のないミホーク。

 彼らが固まっている場所に黒刀・夜を構え、突進していく。ハンコックが麦わらの一味と共に構え、世界最強の剣士を止めようとした瞬間。

 

 

 

 

「―――火拳!!」

「―――竜の鉤爪(かぎづめ)!!」

 

 

 

 

 何もかも焼き尽くすような炎とけたたましい金属音と共に、ミホークの一撃が受け止められた。

 世界最強の剣士に一歩も引かないその2人は、ルフィの方に向き直り、同時に笑う。

 

「よう、ルフィ。元気してたか?」

「コロッセオ以来だな、ルフィ!」

 

 その2人は。

 白ひげ海賊団2番隊隊長にして、ルフィの兄。

 革命軍No.2にして、ルフィの兄。

 

 

「え……()()()!! ()()!!」

 

 

 2人の兄が背中を合わせ、ミホークに向き合う。

 エースが振り返らずに、後方にいるルフィに大声で言った。

 

「こっちで大体話は分かってる。あのラブヒーローって男をぶっ倒しに行くんだろ?

 …………行ってこい、ルフィ!!」

「!! ああ、ありがとうエース!!」

 

 麦わらの一味は睨み合う両者の横を駆け抜けていく。

 

 ミホークはチラリと彼らの方を見たが、すぐに目の前の2人に視線を戻した。他に意識を裂いていて相手できるほど甘い2人ではないからだ。

 後方へ飛び下がり黒刀を正面に構えつつ、見聞色の覇気を周囲に放つ。そしてそのまま、エースとサボに話しかけた。

 

「なぜお前たちが、エンドポイントにいるあの男を倒しに行かない?」

「へッ、俺がぶっ倒しに行くつもりだったけどな。ルフィが行きたいってんならしょうがねぇ。それに、誰かがここで止めてねえと、ラブヒーローと戦うのに戦況がグチャグチャに入り乱れてりゃ勝てるもんも勝てねえ」

「偶には弟の頼みを聞いてやるってのも、兄貴の務めだからな」

 

 ふと。

 ミホーク達の横をすり抜けるように、億越えの海賊が走っていった。恐らくは何かの悪魔の実の能力者なのだろう。

 それを、空から飛来した青い炎の不死鳥が捕まえ、一発で仕留める。

 

 青い炎は空に溶けるように消えていき、やがて、1人の男を形作る。

 それは白ひげ海賊団1番隊隊長・マルコだった。足元の海賊を放り投げ、再び不死鳥に姿を変える。

 マルコに呼応するように、次々と姿を現す白ひげ海賊団の隊長たち。またそれと同時に、革命軍の幹部もぞろぞろと姿を現し始めた。

 

 エースとサボが、言葉を合わせて言う。

 

 

「「ここから先は、()()()()()()()()()が一歩も通さねえ。ルフィの勝負を邪魔しないでもらおうか」」

 

 

 その様子に、ミホークがニヤリと笑う。

 ラブヒーローの世界最硬度の白い武装色というのにも興味があり、ある程度海賊を蹴散らして自分も向かおうと思っていたが……どうやら、彼らは意地でも通してくれなさそうだ。

 

「……いいだろう」

 

 強者が集まり発する圧に釣られたか、海軍大将である黄猿と藤虎もやって来た。

 クイーンとの勝負に打ち勝ったカタクリも『土竜』という三又槍を振り回しつつ、ルフィを追いかけようとして、それを止めようとするマルコとの交戦を始める。

 

 武者震いがするような場のピリピリとした雰囲気に、ミホークは全力で刀を振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エンドポイントである島の中央へと駆けていく麦わらの一味。

 海岸線から離れるにつれ、先ほどまでの戦闘音が嘘のように、辺りは静寂に包まれるようになる。異様な雰囲気を感じ取りながら走っていると、やがて彼らは、とんでもない光景を目にした。

 ウソップが冷や汗を垂らしながら、言葉を漏らす。

 

「おい、こりゃ……何だよ?」

 

 踏みしめることが出来るぐらいに固まった溶岩の地面。

 そこに倒れる、無数の億越えの海賊やそれを倒すことのできる名のある海賊狩り。

 新世界に住む強者たちが、数えきれないほどに倒されていた。全員顔か腹を殴られ、完全に気絶し、ピクリとも動かない。

 

 サンジが倒れている人々の1人に手を触れる。それは特徴的なまでに、この場にそぐわないカッチリとした黒いスーツを纏った男だった。

 

「こいつァ、サイファーポール……まさか全部、あの男がやったのか?」

「その服……CP9かしら。こっちには海軍中将も倒れているわ」

 

 全員が息を呑む中、島の中央から地響きのような音が響いて来た。

 空から大量の何かと共に人間が飛来し、麦わらの一味のすぐ目の前に落下する。その人間は、ルフィとナミが非常に見覚えのある男だった。

 

「ちょっと、ルフィ! こいつ……」

「ああ。三将星の……ビスケット男だ」

 

 全身を殴られ、体のあちこちが焼けこげ、白目を剥き倒れているのは。

 ビッグマム海賊団の三将星の1人であり、かつてルフィとナミが協力して倒したシャーロット・クラッカーだった。彼と共に飛んできた、粉々に砕けたビスケット兵も辺りに散らばっている。

 

 クラッカーはビスケット兵という非常に硬く、強力な兵士を幾人も生み出すことができる。

 当時のルフィはその兵士を破壊することが出来ず、水でふやかすとビスケットは柔らかくなると言う弱点を突いて何とか破壊し、倒したのだが……。

 

 地面に散らばるビスケット兵は明らかに水でふやけておらず、カチカチに乾燥したままだった。

 つまり、ルフィですら破れなかった完全な状態の兵士を真正面から砕き割り、クラッカーを撃破したのだ。

 

「ここに居る全員……やったのは、ラブヒーローのおっさんだ」

 

 ルフィが静かにそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 彼らは倒れる人々の地面を超え、ついにエンドポイントの中心である火山の火口に辿り着く。

 そこには、体から少し血を流しつつ、大きな岩に腰掛ける白い大男と蒼い髪の少女がいた。

 

 先頭にいるルフィが火口に真っ先に飛び降り、その男の名前を呼ぶ。

 

 

「……ラブヒーロー!!」

 

 

 ゆっくりと顔を上げ、ルフィの方を見る男。

 

 

 全身に白いタイツスーツを纏い、赤いバイザーを顔に嵌める男。

 その風貌からは正義の色を感じるが、顔の赤いバイザーからは異様な血の匂いが漂う。その姿はまるで、自身の目的のためには手段を選ばないと主張しているようだ。

 異様な圧を感じさせる筋骨隆々とした体はまさに強者の証。傷すらつかず、圧倒的な強さで、大いなる太陽を操る白い男の姿はまさにヒーロー。

 

 愛のヒーロー。

 ――ラブヒーローが、そこに居た。

 

 

 

 ルフィに続くように火口に降りてくる麦わらの一味を見て、ラブヒーローが低く呟く。

 

「なるほど、来てしまったか」

「……ラブヒーロー。なんでこんな事したんだ?」

 

 険しい顔をしたルフィが、厳しい声色で問いかけた。

 ラブヒーローは手のひらで顔を抑えつつ、以前言ったようなことを復唱する。

 

「私は世界の愛を失わせないためにこの計画を行うが……気に食わない者もいるだろう。だから、私の愛を止める権利を与えたのだ」

「……ホントの事を聞いてるんだ、()()()

「!!」

 

 驚いたように顔を上げるが、すぐに顔を下げる。

 誰に聞いたかなど、考えるまでもない。きっとあの紫髪の、お節介焼きな男だろう。

 

「……私の本名を知っているとなると……過去に何があったかも知っているな?」

「ああ」

「そうか。……私の過去を聞いて、どう思った?

 

 ―――私は記憶喪失だったが、子供の頃の記憶を思い出した時……天竜人に謂れもない怒りを感じたよ。

 殺してやる、殺してやると恨み……実際、殺してしまった。私が守るべき愛、家族を持っていたものをな」

 

 ラブヒーローの纏う雰囲気は暗く、重い。

 

「子供みたいに駄々をこね、何度もマリージョアを襲撃した。『私は間違っていない』とな。事実、天竜人は世界中から嫌われている。私の行った行為は大々的に賞賛はされなかったが、裏では何度も礼を言われたよ。『娘を殺したクソ野郎を殺してくれてありがとう』という風にな。

 私は絶望したよ。愛を奪った、責められるべき私が礼を言われるなんて。怒りは薄れ、自らへの罪悪感だけが積もるが、罪悪感を薄めるための感謝の気持ちを求めまたマリージョアへの襲撃を行うという悪循環に陥った。

 

 そんな時、フィッシャー・タイガーが死亡したという報……英雄に死んだ男の報を聞いて、私の浅ましさを痛感したよ。

 

 ……この白い服と赤いバイザーは、私が罪悪感にまみれ、道を見失いそうになっても……愛を守るヒーローとして生き続けるための楔だ。

 これがあれば私は道を見失わず、間違わず、ラブヒーローとして存在していられる」

 

 

 ラブヒーローは覇王色の覇気を持っていない。

 それは王になれる素質がないということだ。

 

 己を鍛え、王に刃を向けられるほど強くなったものの、元はただの凡人。

 王のように人を導く才もないし、集団を纏め上げる力もない。

 

「私にはもう何もない。誰かの愛を守ることしか、もう残っていないんだ。誰かの愛を守りたいヒーローではなく……それしかないから、愛を守っている。

 この計画は……私のような者を二度と作らないためにやるんだ。大切な者を失わなければ、私のような空虚な人間にはならない。だからやるんだ。

 …………酷く、滑稽だろ? 私をもっと崇高な人間かと思っていたかもしれないが、所詮こんな人間だ。笑ってくれてもいい」

 

 長く、辛く、茨の道を歩みすぎたラブヒーローには、最早『愛を守る』という事しか残っていない。

 

「笑わねェよ。それに、おっさんは何もない人間なんかじゃねえ。

 初めてあの砂浜で会ったとき、ただ漂流しただけの俺に飯をくれた優しさがあるじゃねェか。ちょっと変わってて面白い所もあるし、肉だって上手く焼ける。何もない事なんか絶対ねえ」

 

 その言葉を聞いたラブヒーローは、フフッと笑い。

 ゆっくりと腰を上げ、立ち上がった。

 

「…………本当はあの島で、生を終えてもいいかと考えていた。見え透いた嘘に乗っかって、愚かな私を縛り付けておこうとな。

 だが、お前はあの嘘の伝説を再現し、本当の愛を見せた。守るべき愛を再確認し、生きる活力を与えてくれた。あの時にも言ったが……本当に感謝している、ありがとう。

 

 そしてさよならだ、モンキー・D ・ルフィ。お前がくれた生の活力で、私は世界中の人々がこれ以上愛を失わない世界を作ろう」

 

 ラブヒーローの両拳が、白い武装色で覆われる。

 麦わらの一味は、覇王色も持っていない彼からピリピリと肌が震えるような圧が発されているのに気づく。いや、圧が出ているのではない、彼我の実力差に自然と体が震えているのだ。

 

「アピール。下がっていろ。……終わらせてくる」

「終わらせなんかしねえ! お前をぶっ倒して、俺達はこの先の海に進む!! 覚悟しろよ、ラブヒーロー!!」

 

 少女が離れていくのを見届け、ラブヒーローは麦わらの一味に振り返った。

 油断はしない。ガープやゼファーに向けるような、本気の戦闘体勢だ。それは彼らの実力を認めているということでもある。

 

 呼応するように武器を構え、戦闘体勢を取る一味。

 ルフィが両拳を武装色で覆い、背後の仲間達に力強い声で叫んだ。

 

「行くぞ! みんな!!」

「……来い。麦わらの一味!!」

 

 

 世界の命運を決する戦いが、始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後半仲間喋ってなくて草
本格的な戦闘描写……書けるかな? 難しくて、少し投稿が遅れるかもしれません

状況がややこしいので少し整理

海兵→ラブヒーロー倒したいけど海賊が邪魔して来そうなので先に掃除、一部は先行して倒しに行ってる

海賊→ラブヒーロー倒したいけど海兵が邪魔して来そうなので先に掃除、一部は先行して倒しに行ってる

一部の変な奴ら→ラブヒーローの計画でワンチャン利益が出るので手伝う、もしくは単純に海滅ぼそうとしてる手伝いするサイコ

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