愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローは宇宙を生み出す

 

 

「……殺してください」

「何だと?」

 

 捕まえに来た少女が、突然そういうものだから、ラブヒーローは驚いた。

 元は艶のあったであろう髪はみすぼらしく汚れ、頬はこけている。目の下にはクマを作り、誰が見ても一目で衰弱しているのがわかるほどだった。

 

「私……意識を失って、目が覚めたら、周りでいっぱい人が死んでいるんです」

「……まさか、能力を制御しきれていないのか? 馬鹿な、自分の悪魔の実の能力を使えないというのならともかく、暴走させるなど聞いたことがない」

 

 ただ、嘘とも思えない声色だ。

 ラブヒーローは少し悩み……それが本当なのだろうと思い至った。だが、彼のやることは変わらない。

 

「殺すことはしない。だが、人を殺すのが嫌だと言うのなら、牢屋の中で大人しくしていろ」

 

 そう言うと、少女は少し顔を伏せ、軽く頷いた。

 この様子なら気絶させる必要もないだろう。体を鎖で縛り、『LEVEL6 特別収容 希望』と書いた紙を挟む。特別収容と言うのはつまり、海楼石の鎖で全身を雁字搦めにされ、個室で幽閉されるという物だ。

 

 彼女の懸賞金額から見て、確実にLEVEL6にぶち込まれる。

 あそこは粗暴な者も多い……鎖で動けないとはいえ、個室で暮らす方がマシだろう。絶対に反映されるという訳でもないが、判断の材料にならない訳ではない。故に一筆したためた。

 

 特に抵抗もしない彼女を海軍本部の前に置く。

 そして、ふと気になったラブヒーローは、少女の能力を調べ始めた。

 

 図巻にも殆ど情報が載っていない、その悪魔の実。

 しかし、昔から制御が非常に難しく、幾つもの国を破壊してきたという悪魔の実があることを、とある亡国の資料から知った。

 

 空に円環の青龍が浮かぶ時、生物から生の気が抜け、地には死の気が降り注ぐ。

 その悪魔の実は、『ウオウオの実幻獣種・モデルウロボロス』と言った。 

 

 

 ……そして、彼女が収監された日からちょうど3年後。

 モンキー・D・ルフィによる、インペルダウンの脱獄事件が発生したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 麦わらの一味が猛攻を始めた。

 黒い武装色と白い武装色の軌跡が交錯する。

 攻撃を全て間一髪の所で防ぎながら、時折カウンターも交えるラブヒーロー。いくら人数が増えて攻撃を当てられる可能性が増えたとはいえ、生半可な攻撃では駄目という事である。

 

 

「必殺緑星!! プラタナス手裏剣!!」

 

 いつのまにか彼の背後に回っていたウソップが撃った弾から、手裏剣のように鋭く回転する草が発生した。

 それを振り返りもせずに左手で捌きつつ、ギア2状態のルフィの攻撃を右手で受け止める。

 

 ルフィの体を遠くへ弾き飛ばし、ラブヒーローは周囲に小さな黒い球を大量に放り投げた。

 それらは全て、雨あられのように周囲へ降り注ぐ。

 

圧縮弾(ラムル・ショット)

「ッ! 全員避けろォ!!」

 

 ルフィがそう呼びかけた瞬間。

 10m以上は積み重なった鋭い瓦礫の山が、麦わらの一味を全滅させんと大量に発生する。しかし流石は新世界を生きる海賊、全員が傷もなく瓦礫を回避していた。

 

 ただ、突然発生した瓦礫を無理に回避したため、どうしても不安定な姿勢にならざるを得ない。

 ラブヒーローはその中で特に無茶な避け方をした者に目を付け、その者の目の前に降り立った。

 

「ひっ!! 私ィ?!」

 

 彼が降り立ったのは、ナミの目の前だった。

 武装色を覆う格子を何のためらいもなく振りかぶり、頭を撃ち抜かんとする。

 

「ナミさんに何しようとしてやがんだァ!!」

「ナミッ!! 柔力強化(カンフーポイント)!!」

 

 サンジと形態変化したチョッパーがすぐさまラブヒーローの前に立ち塞がる。

 渾身の一撃を白い拳にぶつけるも、覇気の硬さと規格外の腕力には勝てず、ナミがサンジとチョッパーの体に巻き込まれる形で3人丸ごと吹き飛ばされた。

 

 瓦礫の山に突き刺さる3人を横目に、ラブヒーローは見聞色の覇気で未来予知をする。

 

死・獅子歌歌(し ししそんそん)!!」

 

 ゾロが瓦礫の山を居合で切り裂きながら突っ込んでくる。

 それを右手で受け止め、空から落下しながら攻撃してくるルフィに放り投げた。

 

「おわっ!?」

マキシマム・コア(強大な太陽)

 

 直径30mの太陽を2人に撃ち、成す術もなく飛ばされていくのを横目に他の麦わらの一味に体を向ける。

 それを見て、他の者達は更に警戒を強めた。

 

 

 

 30億という懸賞金額を軽んじて見ていた訳ではない。

 だが、ここまで強いとは思っていなかった。

 

 絶対に貫けない武装色の覇気。

 1秒という僅かな時間ではあるが、未来を見通すことが出来る見聞色の覇気。

 瞬時に状況を判断できる戦闘センスとその判断をより正確な物にする豊富な戦闘経験。

 更に悪魔の実の能力による、強力かつトリッキーな攻撃。

 

 1つ1つは、そう脅威でもない。

 だがこれらが全て揃った時、海の皇帝に並ぶほどの強さを発揮する。

 

 

「なるほど、今まで戦ってきた中じゃあ一番凶悪かもな……。しかも逃げることも出来ねえ」

 

 フランキーがそう悪態を吐いた。

 主力のルフィとゾロが太陽で吹き飛ばされた今、残された者達は固唾を飲む。

 

メガティック・コア(大きな太陽)

 

 周囲の熱気を圧縮し、直径10mの太陽を放つ。

 サンジとフランキーとチョッパーが協力して攻撃し、何とか破壊することが出来た。

 だがその影に身を隠すように接近したラブヒーロー。

 

「人数は揃っているが……連携が足りていない」

 

 3人の鳩尾を打ち抜き、後方に吹っ飛ばす。

 追撃をしようと足に力を込めるも、体から無数の手が生え、関節を極められる。

 

「連携が足りていない事などありません! 革命舞曲ボンナバン!!」

 

 ラブヒーローの無防備な腹にブルックが剣を構え、突進する。

 その突きの威力は鋼鉄ですら容易に貫くだろう。だが覇気を纏った腹部は貫けず、ガキン!!と金属音を鳴らして受け止められた。

 

「そのまま止めておいてブルック!! ゼウスブリーズ=テンポ!!」

「えっ嘘! そんな雷浴びたら私丸焦げに……あ、もう燃える肉ッーーーーー」

 

 ナミが生み出したウェザーエッグを食べ巨大化した、ビッグマムのホーミーズであるゼウス。

 彼は瞬時に空へ超巨大な雷雲として浮かび上がり、超密度の雷をラブヒーローに落とした。

 

 辺り一体が光に包まれる。

 技を撃ったナミにすら電撃がピリピリと伝わる威力だ。中心にいる2人はどれだけのダメージを食らったのか。

 光で潰れた目が治り、視界が戻った彼らの目に飛び込んだのは。

 

「……」

 

 体のあちこちを焼け焦がしているが、大した怪我は負っていないラブヒーロー。

 元々アフロな髪型がさらに膨れ上がり、口から白い煙を吐くブルック。

 

「……あまり、効いてる風には見えないわね」

 

 彼らと同じく、両腕に多少の火傷を負ったロビンがそう言う。

 電撃が落ちる瞬間に必要最小限の腕以外を引っ込め、ダメージの減少を図ったのだ。だがゼウスの雷撃は強力、腕に火傷を負うぐらいのダメージは来たようだった。

 

 周囲に、雷撃によって発生した熱気が込み上げる。

 ラブヒーローはブルックの顔面を殴り、麦わらの一味の方へ吹き飛ばした。

 彼らがブルックを受け止め硬直した瞬間に太陽を撃つ。

 

 麦わらの一味はそれを回避し、ナミが申し訳なさげなゼウスを横に悲鳴混じりに声をあげた。

 

 

「力押しでも隙を突いても駄目って、そんなの、どうすればいいの!?」

「クソ! 俺の用意した秘策さえ決まれば、あんな奴一捻りに……」

「あんたでどうするってんのよ!!」

 

 怪しげな弾を持ち出して唸るウソップに、ナミがチョップを決めた。

 

 麦わらの一味でトップクラスの攻撃力であるゼウスの一撃でも、殆どダメージが入っている様には見えない。

 何もダメージが与えられていない状況からすれば一応前進してはいる。

 だがクマを裁縫針で刺せたとて、一体何回刺せば倒せるのか?という話だ。急所を突けば一発だがそこを攻撃させてくれるほど甘くない。

 

「フランキー将軍ならどうだ!? アレなら……」

「残念だがフランキー将軍にはなれねえ。クロサイFR-U4号とブラキオタンク5号がいねえからな」

「なんで連れてきてねェんだ!」

 

 興奮するチョッパーをどうどうと宥めるフランキー。

 クロサイFR-U4号は超大型オートバイ、スピードはある。問題は3人乗りの戦車であるブラキオタンク5号だ。

 攻撃力に大きく比重を置くブラキオタンク5号は、今の状況では致命的な程に速度が遅い。

 2つとも頑丈ではあるが、七武海や海軍大将が蔓延るこの場所では破壊される可能性もある。故に。

 

「この場所に来てそうな奴に予め持ってくるよう頼んでたんだ。物を守ることに関しちゃ右に出る奴はいねえ男にな」

「物を守る? ……まさか!」

 

 麦わらの一味が1人の男の顔を思い浮かべた瞬間。

 エンジンがブルルと駆動する音と共に、ラブヒーローと麦わらの一味が戦う火口よりも少し高い場所に、彼らは現れた。

 

「フランキーせんぱぁ〜〜〜〜い!!」

 

 そこに現れたのは、バルトクラブ海賊団船長のバルトロメオ。

 バリバリの実という絶対に破れない透明な壁を張れる能力を持っている。

 部下もちゃっかり付いてきており、2つの車両に乗るのが誰かで喧嘩しているのが見えた。

 

「おいコラクソボケラブヒーロー!! いずれこの海を制する麦わらの一味の御方々に喧嘩売るなんていい度胸してるべおい!! てめェなんか先輩方にかかりゃけちょんけちょんの首ったけに決まってんだべ!!」

 

 両手の中指を立てながら叫ぶバルトロメオ。

 周りにいた部下もそうだそうだと声を張り上げている。

 

 

 

 その様子に思わず、ラブヒーローは戦闘態勢を解き、麦わらの一味に問いかけた。

 

「誰だ?アレは」

「知り合いの馬鹿たちです……」

「……たしかに馬鹿……いや。……まぁ、同情はする」

 

 涙を流すナミにそう言ったラブヒーロー。

 シールドを前方に張ってゲヒャゲヒャ笑うバルトロメオ達に手を向け、空気の壁を展開し、下から上へ吹っ飛ばす。

 

 そのまま空気の壁をもう一枚展開し、海岸線の方へと吹っ飛ばした。

 ただバルトロメオが咄嗟にバリアを作り、持ってきた2つの車両だけはフランキーの目の前にしっかりと届けた。

 

「よくやったぜバルトロメオ! お前はただのバカじゃねえ、スーパーな品物を運んできた偉大なバカだってことを証明してやるぜ!!」

「結局バカなんじゃねえか!!」

 

 サンジのツッコミをよそに、フランキーは2つの車両と合体していく。

 明らかに物理法則を無視した大きさ、13m程の大きさまで巨大化し、両腕を合わせて空に掲げる。

 

 

「鉄の海賊! 『フランキー将軍』〜〜〜!!!」

 

 

 ウソップとチョッパーが目を輝かせ、フランキー将軍を見つめる。

 だがそれ以外のナミ、サンジ、ロビンは冷めた目でそれを見ていた。ブルックはなんとも言えない表情で辺りを見回している。

 

 気の抜けた空気が漂う中、ラブヒーローが低く言った。

 

「……いちいち、集中を欠くような行為をするのはやめてほしいな」

「アレと私達を一緒に纏めてほしくないわ」

「そう褒めるこたァないぜロビン!! このスーパーなフランキー将軍のフラン剣なら、どんな敵だって一刀両断よ!!」

 

 フランキー将軍が背中から剣を抜き、ラブヒーローに切り掛かる。

 一瞬で意識を戦闘に切り替え、その巨大な剣を受け止めた。13mの機械の巨体から繰り出される上、そもそも剣の重量がトンに届くほど重い。

 

「――確かに、言うだけはある!」

 

 だが、カイドウよりは十数倍軽い。

 足腰の筋肉が一回り大きくなるほど力を込め、大剣を弾き返す。

 後方に飛び下がり、フランキー将軍の腹部に手のひらを向け、太陽を撃ち放った。

 

 何の防御もせず、太陽をそのまま受け止めるフランキー将軍。

 はじけ飛んだ熱気が白い蒸気を生み出し、彼の姿を覆う。

 

「大丈夫か、フランキー将軍!!」

 

 チョッパーがそう叫ぶ。

 その声に呼応するように、巨大な機械の腕が蒸気を掻き分け、自らを誇示するように両腕を空に掲げる。

 

将軍大丈夫(ジェネラルだいじょうぶ)!!」

「…………ダブル・メガティック・コア(2つの大きな太陽)

 

 2つの太陽をフランキー将軍に投げつける。

 それは彼の腹部にモロに直撃し、盛大に後方へ吹っ飛んだ。

 

「将軍~~~ッ!!」

「何やってんだこのアホども!!」

 

 サンジがウソップとチョッパーの頭部にキツメの踵落としを入れた。

 2人は悶絶し、頭に出来たこぶを抑えて地面にうずくまる。

 

 

 

圧縮弾(ラムル・ショット)!!」

 

 ラブヒーローが麦わらの一味に黒い球を撃ち、瓦礫の山を発生させる。

 それを間一髪で避け、ラブヒーローに向き直る。

 

「いい加減にしろ貴様ら!! いつまで茶番を続けるつもりだ!!」

 

 次に、右手に太陽を作り出し、彼らに投げつける。

 それも順当に回避する麦わらの一味だが、その中で唯一、ブルックが不可思議な事に気づいた。

 

 着地した際、ブルックが近くに居たサンジに静かな声で言う。

 

「サンジさん……私、あの『()()』の弱点を発見したかもしれません。確実ではありませんけど」

「何!? どんなだ!!」

「とにかく……一度、太陽を撃たせて見て下さい!」

「――ああ!!」

 

 サンジが足を白熱させるほどの熱気を纏い、ラブヒーローに正面から走っていく。

 彼はそれに負けず劣らず白い武装色を纏った拳を向けた。

 

「――悪魔風脚(ディアブルジャンブ) 焼鉄鍋(ボアル・ア・フリール)スペクトルッ!!」

 

 卓越した技術から放たれる、蹴りの連打。

 ラブヒーローは全ての蹴りを両拳で弾くように防ぐ。疲労で一瞬気が緩んだ隙を突き、彼の体を掴んで強烈な頭突きを入れた。

 

「がッ……!」

 

 額が裂け、鮮血が舞う。

 意識を失いかけたサンジの首を掴み、一度地面に叩きつけてから、上空に放り投げた。

 

 

「サンジ!! ランブルボール、怪物強化(モンスターポイント)!!」

「フラン剣――勝利のVフラッシュ!!」

千紫万紅(ミル・フルール) 巨大樹(ビガンテスコ・マーノ)スパンク!!」

 

 

 それを見たチョッパー、フランキー、ロビンの3人はラブヒーローへ大技を仕掛ける。

 三方向から同時に放たれた攻撃。

 

 ラブヒーローは状況を一瞬で把握し、周囲の熱気を手のひらに圧縮し始めた。

 その瞬間。

 

「ダブル・マキシマム――――」

「使いましたね…………黄泉の冷気!! 掠り唄 吹雪斬りッッ!!」

 

 突然死者のように地中から姿を現し、ラブヒーローの両手首を切るブルック。

 余りに想定外の攻撃に、ラブヒーローは回避することができない。剣が皮膚に当たったコンマ数秒後に反応が追い付き、ブルックの顔面を蹴り飛ばした。

 

「ぐほォッ!! ……ヨホホホ、やっぱり私の予想通りでしたね!!」

「チッ――!」

 

 ラブヒーローの手元に出来上がりかけていた太陽が消え去った。

 仕方なく、三方向から放たれた大技を全て受け止める。だが覇気で纏っていない足でロビンの攻撃を受け止めたせいで、ほんの少し血を流した。

 

 

 ブルックが発見した弱点とは、些細なきっかけから来る勘のような物だった。

 彼の圧縮という能力は、何をするにも周囲の物頼りだ。それは熱気もしかり、周囲の熱を手のひらに集めているだけである。

 

 周囲の気温が高い状態ならば、太陽は容易に作れる。

 なら気温が低い状態なら作れないかと言うと、そうでもない。僅かな熱を集めて作り出すだけだ。絶対零度なら作れないが、そもそもそんな環境では誰も戦えない。

 

 それならば、圧縮している最中ならばどうか?

 熱を圧縮している際、周囲の気温が急激に下がった時――ラブヒーローは太陽が作れなくなる。

 突然気温が下がった瞬間、熱と共に大量の冷気も一緒に圧縮してしまうのだ。

 

 そうすれば超密度の熱という姿で顕現する太陽は、形を維持できなくなり、霧散してしまう。

 

 

 

「この弱点に気付いたのは青雉だけだ……まさかこの土壇場で見つけるとはな。だが、太陽がなくともこれくらいの攻撃を受け止めるなど造作も―――」

「その為に俺がいるんだろうがッ!! ――地獄の思い出(ヘル・メモリーズ)!!」

 

 3つの攻撃を受け止め、動けないラブヒーローの背後に迫るサンジ。

 全身に業火を纏いながら高速回転し、覇気の纏っていないラブヒーローの背中に強烈な一撃をお見舞いした。

 

「―――ぐうッ!」

 

 背中から腹を貫くような蹴りと熱気。

 完全に無防備な状態で当てられたラブヒーローは、前方に吹っ飛んでいく。

 

「……やってくれたな、貴様!!」

 

 吹っ飛ぶ最中、空気の壁を展開して勢いを殺す。

 地面に手を突きさして減速し、立ち止まった瞬間、サンジに向けて突進した。

 

 

 覇気を纏った腕によるラリアット。

 弾き飛ばされたサンジに飛んで追いつき、背骨に強烈な蹴りを決める。そのまま再び彼の体が吹っ飛ぶよりも早く頭を掴み、地面に思い切り叩きつけた。

 

「サンジくん!!」

 

 ラブヒーローに迫る、ロビンが生み出した巨大な腕。

 それを両手で掴んで受け止め、背負い投げの要領で地面から引きはがして麦わらの一味に投げつける。

 

 麦わらの一味はそれを回避する。

 だがラブヒーローは空気の壁を展開し、彼らを一か所に集めるように吹き飛ばした。集めた場所は勿論、巨大な腕の落下する場所。

 

 何百キロあるか分からない腕をフランキー将軍とチョッパーが受け止める。

 ロビンは能力を解除してそれを消す。だが無理やり引きちぎって投げ飛ばされたからか、腕には多少の裂傷がフィードバックとして表れていた。

 

 

 そんな彼らに、ラブヒーローは首の骨をコキコキと鳴らしつつ、足元のサンジを強く踏みつけて言う。

 

「すまない、少し舐めていた。いつも格下ばかり相手しているが故の悪癖だな。今からは殺す気でやるから安心してくれ」

 

 放たれる圧。

 今までの、敵意が籠った物ではない。明確な殺意が籠った物だった。

 覇王色の覇気によるものでないのに、格下であれば恐怖で気絶しそうなほどの圧だ。それは頂上戦争の時、青雉とゼファーに放っていたものと同じ物である。

 

 だが、これで一段階前進したとも言える。

 ラブヒーローが殺意を放つという事はつまり、それだけの対応をしなければいけない強さを持つ相手ということだからだ。

 

 

 

「―――大蛇砲(カルヴァリン)!!」

「―――千八十煩悩鳳(1080ポンドほう)!!」

 

 

 後方から突如飛来する黒い拳と渦巻く斬撃。

 足元のサンジをそのままに、横に飛んで回避するラブヒーロー。

 

 黒い拳は地面のサンジを高速で回収し、麦わらの一味の前へと下ろす。

 その拳と斬撃を放った主は、すぐに姿を現した。

 

「悪い、太陽を切るのに時間がかかっちまった」

「ッ――サンジ!! 大丈夫か!!」

 

 ルフィとゾロだった。

 

 太陽で吹き飛ばした2人を強く睨みつけるラブヒーロー。

 彼らに当てたのはマキシマム・コア。太陽の中で上から()()()に強い技だ。頂上戦争ではゼファーですらこれを破壊できず、威力を弱めるだけだった。

 

「……本格的に、私の見当違いだったようだな。マキシマムを壊すとは」

「サンジに何した」

 

 恐ろしく低い声と共にラブヒーローを睨みつけるルフィ。

 そんなルフィの様子に、彼は腕を組んで答える。

 

「殺す一歩手前まで痛めつけただけだ。もう少し遅れていれば死んでいた。よかったな」

 

「――お前!!」

 

 ルフィの攻撃が飛んでくるが、軽々と弾き返す。

 

「海賊のくせに、殺す殺されるで喚くな」

「ラブヒーロー……!」

「貴様の目指す海賊王というのは、そういう海賊達の頂点だぞ。それとも今更、私が人を殺すのに躊躇するとでも思っていたか?」

 

 チラリと、遠くに離れているアピールの方を見るラブヒーロー。

 だがすぐに視線を麦わらの一味に向け直す。

 

「この島で一生を過ごすのは辛いだろう。私に傷を負わせた報酬として――今この場で()()()()()

 

 ラブヒーローが手を上空にかざす。

 瞬間、周囲から一気に熱が消えていくのにルフィ達は気が付いた。ブルックは先ほどと同じように冷気を放ってその技を妨害しようとしたが、ラブヒーローの周囲を冷やしても意味がない。

 

 

「―――小宇宙(コズモ)

 

 

 辺りは一瞬にして暗闇に包まれる。

 そして空、前後左右、地面にまで、小さく白い点が無数にキラキラと輝き始めた。

 

 まるで小宇宙の中に放り込まれたかのようだ。

 息を呑むほど美しい星空を再現したこの空間を作り出したのは他でもない、ラブヒーロー。

 

「光を当てられた物にできる影と暗闇を少し工夫して圧縮することで、熱を逃がさない空間を作らせてもらった」

「!? 熱ッ!!」

 

 ウソップが突然、足を上げる。

 地面に広がる白い点を踏んでいたようで、その点を踏んでいた箇所だけ、靴が溶けてしまっていた。

 

「その白い点は極小の熱の塊。美しさに見とれて触れば、骨すらも焦がす」

 

 

 熱を逃がさない空間。

 触れれば肉が焼ける、煌めく無数の星。これに覆われているせいで人が通れそうな隙間がない。

 まさにラブヒーローの独壇場だ。熱を逃がさないことで太陽を無尽蔵に作り出し、煌めく星で相手の動きを制限し回避させない。

 更に熱を逃がさず気温が上がり続けることで、体力が減っていく。ラブヒーローは平気そうにしていることから、何かからくりがあるのだろう。

 

 どうやって突破すればいいのか分からない。

 だが、これを突破してラブヒーローに勝たないと麦わらの一味に未来はない。

 

「ッ……ナミ、少しでも気温を下げてくれ!!」

「わかったわ!」

 

 とにかくこちらに不利な要素を1つでも減らし、ラブヒーローを倒すほかない。

 雨雲を大量に生み出すナミと傷で動けそうにないサンジ以外は、ラブヒーローに改めて構え直した。

 

「ここで勝たないと、どうせ俺達に未来はねェんだ!! 絶対に勝ってやる!!」

「勝つではなく、殺すぐらいの気概を出してみろ。最も、この技を出させて私に勝った者はいないがな」

 

 

 疑似的に生み出された小宇宙空間で、最後の勝負の火ぶたが切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




戦闘描写難しすぎだぁぁぁ それにギャグ入れすぎた
あと2話で完結する予定ですが、次回は少し遅れます(8/2とか8/3くらい?)
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