愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

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ラブヒーローのからくり

 

 

 

 LEVEL6の囚人達はとある牢屋に少女が1人、頑丈に拘束されているのを知っていた。

 彼らは少女が何らかの重要人物、または特異な悪魔の実の能力者なのではないかと思い、彼女を誘拐した。

 

 アピールは強力な能力を除けば、ただの少女。

 しかも数年、海楼石の鎖で体を縛り付けられて生活の殆どを暮らしていたのだ。衰えた筋力でLEVEL6に潜む囚人に敵うはずもない。

 

 あえなくアピールはインペルダウンから連れ去られ。

 彼女を連れた囚人達がとある街に到着した瞬間、ウロボロスが発現し、囚人達ごと街の住民を皆殺しにした。

 

 

「……なんで。もう……あそこから出るつもりはなかったのに……」

 

 

 アピールは絶望した。

 自分がいたインペルダウンに戻ろうとしても、捕らえに来た海軍を無意識の内に殺してしまう。再び山奥に潜んで暮らすも、時折人里に降りた際に能力が自動的に発動する。

 

 そして彼女は、唯一自分を捕まえることのできたラブヒーローを求めるようになった。

 脱獄から2年と少し。幾数の街を滅ぼした彼女が、人型に戻った時に海に落ち、木片にしがみついて海を漂っていた時。

 

 麦わらの一味によってサニー号へ引き上げられ、そこで、待ちわびていたラブヒーローと再会した。

 

 

 

 

 ルフィ達を薙ぎ倒し、とある島に着地したラブヒーロー。

 彼の肩の上には目を覚ましたアピールが乗せられていた。地面に降ろし、ラブヒーローは水平線の方を見て彼女に背中を向ける。

 

「久しぶりだな、アピール。……やはり、インペルダウンから出ていたか。どうやって脱獄した?」

「他の囚人に、誘拐されて」

「……そうか」

 

 この島には、2人以外の人はいない。

 波打ち際に海水が打ち上げる音が、静かに響くだけだ。潮風は心地よく2人の体を撫で、暖かい日差しが空から降り注ぐ。

 

 十数秒そうして黙っていたところで。

 静寂を破って話し始めたのは、ラブヒーローだった。

 

「随分と前に……『()()()()()()』と、言っていたな。今でも、そう思うか?」

「? 一体どういうことですか」

「……少し、話そう。そのまま聞いてくれ」

 

 

 ラブヒーローは、ポツリポツリと話し始めた。

 少女が食べた悪魔の実の名前、そしてそれがどういった能力を持っているか。

 そして、ラブヒーローの計画である……『海を超巨大化した海洋生物で埋め尽くす』という目標についても。

 

 

 全てを語り終わったラブヒーロー。

 彼は日光を背に浴びながら、ゆっくりとアピールの方に振り返る。

 

「この計画は既に始まっている、エンドポイントを既に一つ破壊したからな。だが今なら……まだ、ギリギリ()()()()()

「――引き返せる?」

 

 言葉を反芻するアピールに向かって静かにうなずく。

 

「オペオペの実という物を知っているか? アレは能力者の命と引き換えに、不老手術が出来るそうだ。

 ウロボロスも似たような物だ。全海洋生物を巨大化させるなんて神に等しい御業には、相応のリスクが付き纏う。良くて全身不随、最悪死ぬだろうな」

「……それを承知の上で、私に、その計画を手伝えって事ですか?」

「…………」

 

 ラブヒーローは何も言わず、アピールに背を向けた。

 少しだけ顔を俯けたまま、言葉を続ける。

 

「私はラブヒーロー。愛のヒーローだ。……どうしても嫌と言うなら、強制はしない。この計画は今すぐ破棄――――」

 

「――いいですよ」

 

 確かに聞こえた、少女の声。

 いや、ラブヒーローは彼女がそう答えると分かっていた上で、こんな話をしたのだろう。特段驚きもせず、手のひらで顔のバイザーを抑える。

 

「ただ一つ、条件があります」

「何だ」

「……もしその計画が成就して、私が生き延びていたら……ちゃんと『()()()()()()()』ね」

 

 

 能力に振り回され、人を殺すことに絶望した少女。

 愛の為に生き、愛に固執し、自身を見失ってしまった男。

 

 

 

 ラブヒーローはバイザーを手で抑えたまま、肩越しに深く頷いた。

 

 馬鹿な決断だ。

 

 今まで愛の為に生きていたというのに、まさか、愛の為に人の命を奪うことを約束してしまうなど。

 だが、この計画が成就すれば……多くの愛が守られる。天竜人を殺した時だってそうだ、多くの人が喜んでいた。ならこれは、賞賛されるべき行いであるはずだ。

 

「…………フッ。馬鹿だな…………」

 

 多数の為に少数を犠牲にする。こんな理不尽がまかり通るから私の母は命を奪われたはずなのに。

 自分で自分を嘲るくらい、嫌で嫌で仕方ない。何もかもに愚直で、愛を守るためだと素直に挑んでいた頃が懐かしい。

 

 せっかくロジャーに貰った名前が……今ではボロボロだ。

 

 だが、ここまで来たらもう止まれない。

 自分で自分を止めることなど、もうできない。私の中のラブヒーローが言っているのだ、愛を失わない世界を作れと。

 

 

 誰か止めてくれるだろうか?

 いや、きっと無理だろう。私に一対一で勝てる者など、四皇か海軍の英雄か……数えるほどしかいない。例えそれらが相手でも、場所とタイミングさえ良ければ退けられるだろう。

 

 

 誰にも止められないのなら、全てを蹴散らして進む他あるまい。

 

 強者としての特権を享受し、自身の意のままに世界を変えよう。かつてのロジャーのように、時代を新たな場所まで進めてみよう。

 世界中の誰もが愛を失わない世界を目指して。

 

 

 愛の為に生き、世界の愛を守る。

 そのために、誰も海に出ることができないような世界にしよう。愛を失わない世界を作ろう。

 

 これが……私の答えだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――そうして、アピールとラブヒーローは海軍本部を襲撃し。

 世界に向けて、()()を行ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ラブヒィィィロォォオ~~~!!」

 

 

 ギア4・スネイクマンの状態であるルフィが、ラブヒーローに素早い連打を行う。

 その連打の影に隠れつつ、攻撃を加えようと走る人影が2つ。ゾロとブルックだ。

 

 

ダブル・メガティック・コア(2つの大きな太陽)

 

 ラブヒーローは両手に太陽を作り出そうとするも、右手の太陽をブルックによって潰される。

 左手の太陽をルフィに投げつけ、二方向から迫りくるゾロとブルックの剣を両拳で受け止めた。

 

「そこだ!! 必殺緑星、ドクロ爆発草!!」

 

 がら空きになったラブヒーローの腹に向けてウソップが撃つ。

 そう遠くもない距離。一瞬で着弾し、激しい爆発と共にどくろ型の煙を発生させた。

 ゾロとブルックも巻き込んでしまったが、多少ダメージは与えられただろうと微笑を浮かべて煙の中心を見るウソップ。

 

 ……だが。

 

「威力が余り高くないな」

 

 全くの無傷で、ラブヒーローはそこに立っていた。

 ゾロとブルックを地面に叩き込み、ウソップに向けて素早く駆けだす。

 

「なッ!? 必殺緑星、衝撃狼草(インパクトウルフ)!!」

 

 ウソップが早技で弾を撃つ。

 緑色の弾は一瞬で大量の葉っぱを展開し、大きな狼の形へと変貌する。そして向かってくるラブヒーローに鼻を向けて突進した。

 鼻がラブヒーローの右手に着弾した瞬間、強力な衝撃波が発生する。

 

 だがその衝撃波を意にも介さず狼の頭をもぎ取り、圧縮した熱でそれを焼き消した。

 驚愕の表情を浮かべるウソップを、言葉を発する隙も与えず横に蹴り飛ばす。

 

五本樹(シンコ・マーノ) スパンク!!」

「!」

 

 ウソップを蹴った瞬間、地面から生えた五本の腕に軸足が突き飛ばされた。

 耐えきれず体勢を崩したその時、後方からは太陽を破壊したルフィの拳、前方からはフランキーとチョッパーの拳が迫る。

 

「ゴムゴムの大蛇砲(カルヴァリン)!!」

将軍の右(ジェネラル・ライト)ォォ!!」

「喰らえェぇえッ!!」

 

 見聞色を用い、状況を一瞬で把握。

 両手に武装色の覇気を込め、フランキーとチョッパーの拳を受け止める。その瞬間背中に突き刺さる、ルフィの黒い拳。

 それに少し呻くような声を漏らしたものの、殆どダメージを喰らっている様子もなさそうだ。

 

 フランキーとチョッパーの手を弾き飛ばし、開いた両手を前に着きだす。

 

「ッ―――大気崩壊(エア・ブレイク)!!」

 

 巨人族より多少小さい程度の彼らは勢いよく吹き飛ばされた。無数に散らばる星にぶつかり、背中を焼き焦がされる。

 

 すぐさま背後に振り返り、ルフィに迫るラブヒーロー。

 みぞおちへ内臓を抉り取るような強烈な一撃を叩き込み、ルフィの鼻っ柱に頭突きを入れる。動きを止めた彼を背負い投げの要領で地面に叩きつけ、熱の星でじっくりと体を焼いた。

 

 

「―――ギャアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 轟くルフィの悲鳴。無理もない。

 

 

 

「ぐ……クソ、ルフィ!!」

 

 傷だらけのサンジがよろよろと立ち上がり、足を白熱させラブヒーローに飛び掛かる。

 その瞬間、もう一方から恐ろしい速度で刀を構え駆けてくるゾロ。尋常ならざる闘気が彼の周りに2人の刀を構えた男の姿を浮かび上がらせる。その姿はさながら阿修羅。

 

「鬼気九刀流『阿修羅』”弌霧銀”!!」

悪魔風脚(ディアブルジャンブ)   首肉(コリエ)ストライク!!」

 

 麦わらの一味、その主力の2人による同時攻撃。

 だが、ラブヒーローは両拳に覇気を纏い、その2つの攻撃を防ぎ切った。猛々しい衝突音と共に空間が揺れるような衝撃波が辺りに散る。

 確実に、この主力の2人を潰そうと力を入れた瞬間。

 

 

「―――ゴムゴムの(かね)ェ!!」

 

 

「ッグはァ!?」

 

 

 ラブヒーローの顎を下から上へ跳ね上げる、ルフィの頭突き。彼の額は黒い覇気で覆われており、ギア4のスネイクマンであったからか、殆どノーモーションで首を伸ばし頭突きをする事ができた。

 

 予想外の方向からの攻撃だった。モロに喰らってしまった。

 ルフィは地面に押さえつけられ、熱を圧縮した星で今も背中を焼かれ続けている。その痛みは想像を絶するはずだ。皮膚どころではない、筋肉を溶かし骨を焼き焦がすほどの温度なのだから。

 それなのに、ルフィは強靭な精神で痛みを抑え込み、ラブヒーローの隙を突いた。

 

 頭突きの勢いで体が吹っ飛ばされるラブヒーロー。

 空中で一回転しながら、少し離れた地面へ着地する。彼の顎は皮膚が切れ、少し血がにじんでいた。

 

 

 一気に飛び上がり、熱そうに背中をはたくルフィ。

 そんな彼の前に立ち、ラブヒーローと相対するサンジとゾロ。サンジは振り返らず、肩越しに言葉を投げかける。

 

「やったな、ルフィ!!」

「ああ……一発は当てられた。でも、このままじゃ勝てねえ。スネイクマンじゃ当てられはするけど、力が足りてねえんだ」

 

 自身の手を見た後、ギア4を解く。

 

 スネイクマンはスピード重視。攻撃を当てることは出来るが、その代わりに殆どダメージが入らない。

 少しずつダメージを蓄積させれば良い……という考え方もあるが、そんな鈍らな行動をしていては、ラブヒーローの生み出したこの疑似宇宙空間で全員蒸し焼きにされるだけだ。今の温度は体感40度付近、これ以上は耐えるのも厳しい。

 

 

 手首に空気を吹き込み、体を膨らませるルフィ。

 筋肉を膨張させ、どんな大型生物にだってダメージを与えられるような形態に変化する。

 

 足で地面を叩き、跳ねる。

 その様はまるで金属製のゴムまりのようだ。

 

 

「―――ギア”4” バウンドマン!! ……この形態で攻撃を当てるしか、勝つ方法はねえ!!」

 

 

「了解だ、船長。……足手まといにはなるなよ、血だらけコック」

「誰がなるか、火傷マリモ」 

 

 お互いの、ボロボロの姿をなじり合った後に構えるゾロとサンジ。

 ルフィを筆頭に、ラブヒーローと殴り合いを始める3人。

 

 

 

 

 そんな彼らを遠巻きに眺め、加勢のチャンスを伺う他の者達。

 だが、下手に加勢しては主力組の邪魔になるだけ。気温を下げるために霧雨を発生させ続けるナミを筆頭に、彼らは話し合いを始めた。

 

「これ以上温度を食い止めるのは無理! 何とかしてこの空間から脱出しないと……!」

 

 麦わらの一味を覆うは、小宇宙。

 熱を逃がさない暗闇と熱を放ち続ける星々。最悪の組み合わせだ。温度は上がりっぱなし、もう40度付近まで上昇しているが、放っておけば更に上がっていくだろう。

 

「つっても、どうするんだよ!? とてもじゃねえが、出れそうにはねえぞ!」

 

 ウソップは骨の折れた鼻を包帯でグルグル巻きにしつつ、辺りを見回してそう言った。

 この空間は、無数の熱を放つ星々で覆われている。触れれば一瞬で皮膚が焼き消えるような熱だ。

 

 そんな星々にも隙間はあるが、とても人が通れるような隙間ではない。小さくなったチョッパーですら通れない。

 つまりここからは出られない。四肢が焼き切れるのを覚悟すれば出れるかもしれないが……それは余りにも愚かな選択だ。

 

 

「……ブルックが見つけたように、何かからくりがあるんじゃないかしら」

 

 ロビンがそう呟いた。

 麦わらの一味はこてんと首をかしげる。それを見て、ロビンは垂れる汗を手で拭いつつ、話し始めた。

 

「この熱気に包まれているのは、ラブヒーロー……彼も一緒よ。なのに私達と違って、激しい戦闘でも全く熱がっている様子がないわ。

 つまり……その『熱さを感じない秘密』さえどうにかできれば、彼は自分からこの空間を解くんじゃないかしら?」

 

 理解したように、ポン!と手を叩く他の者達。

 確かに、ラブヒーローの能力には所々隙がある。その隙さえ突ければ、圧倒的に不利なこの状況を打開できるかもしれない。

 

「でも、その秘密ってなんだよ……?」

 

 毛に包まれ体温を逃がせないからだろう、既にグロッキー状態のチョッパー。巨大化は既に解け、小さくなった状態でぜぇぜぇと舌を出して息を吐いている。

 

「とんでもない力でぶっ叩けば何とかなるんじゃねえか!? フランキー将軍なら……」

「残念だが、ウソップ。フランキー将軍はオーバーヒートで動かねえ。熱耐性をもう少し上げとくんだったな……」

 

 そもそも先ほどから何度もぶっ叩いているのに、何もならないのだ。きっとこれではないのだろう。

 動かない金属の塊となったフランキー将軍を寂しそうに眺めるウソップとフランキー。

 

 そんな2人を横目に、所々黒く焦げた骨をさすりながら話すブルック。

 

「……逆に熱を与えてみるとか、どうですか?」

「熱を与える? さっきからサンジ君があの……悪魔なんちゃらで叩いてるけど、何にもならないし……」

 

 

「? ……!!」

 

 そんな何気ないブルックとナミの言葉に、何か勘付いた様子のチョッパー。

 ブルックは黄泉の冷気で、ラブヒーローの太陽を壊してた。ただ太陽の熱を冷やしてただけだと思ってたけど、黄泉の冷気じゃ流石にあんな温度は冷やせない。

 

 考えられるなら……内側。熱と一緒に冷気を圧縮し……その結果、内側から温度を保てなくなって自壊したと考える方が筋が通る。

 熱と一緒に、冷気も圧縮できる。もしそうなら……もしかしたら。

 

 

「事前に……冷気を圧縮して、服の中に仕込んでたんじゃねェか? 血管の太い所を冷やし続けていれば、この温度の中でもある程度は動けるはずだ……」

「冷気を、圧縮ゥ!? もはや氷だろ、それは! すぐ溶けちまう!!」

「熱気を圧縮してあんな熱の塊になるんだ。冷気を小さく圧縮して、氷みたいにずっと冷やし続けるなんて芸当も……できねえ訳じゃない、はず……」

 

 息絶え絶えのチョッパーの言葉に、他の者達は納得がいったようにうなずく。

 というか、これ以上の案が出ない。ならばこれを信じる他ないだろう。

 

 ナミが霧雨を降らしながら、チョッパーに問いかける。

 

「体温が冷えやすい、血管の太い所ってどこ!?」

「脇と……股の間と……『()』だ……」

 

 一斉に、戦っているラブヒーローの方に顔を向ける。

 ゾロの刀が首に迫った瞬間、他の攻撃を無視して真っ先にその刀を防いでいた。また先ほど傷つけられた顎をやけに気にしていて、何度もさすっている。まるでその傷の付近から、冷気が漏れるのを気にしているみたいに。

 

 

「どうやら当たりみたいですね。流石チョッパーさん、ヨホホ」

「でもどうすんだ? あんなバケモンの首から冷気の塊を奪うなんて……ロビンの手ならなんとか」

「無理よ。一瞬で引きちぎられるわ」

 

 そう簡単な話ではない。

 相手が一番気にしている急所を狙うというのだ、それも相手から冷気を()()などというとんでもない方法。

 

 ……奪う?

 

「奪う……盗む……」

「……何? なんでみんな私の方見て……えっ。まさか……嘘でしょ? いやいやいや」

 

 ――『()()』猫のナミ。

 

「私、宝物庫に忍び込んで盗むのが専門だったし! スリは全然できないから! いやホントに、ちょっと――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

獅子歌歌(ししそんそん)!!」

 

 ゾロの居合斬り。新世界にいる海賊ですら一部を除いて、防ぐどころか、見切ることもできないだろう。

 だがラブヒーローはそれを防ぎ、彼の体を弾き飛ばした。

 

「ゴムゴムの大猿王銃(キングコングガン)!!」

悪魔風脚(ディアブルジャンブ) 一級挽き肉(プルミエール・アッシ)!!」

 

 サンジの足を掴み、ルフィの拳を避けて彼の頭を掴み、重力に乗って地面に叩きつける。

 地面の星々で2人の体を焼き、勢いよく蹴り飛ばした。だがすぐさま空中で体制を立て直し、空気を蹴ってこちらに向かってくる。

 

「チッ……鬱陶しい!!」

 

 何度熱の星で焼いても、殴り飛ばしても、こっちに向かってくる。

 太陽を撃っても、3人で協力して破壊してくる。一番上の太陽を撃てば壊せはしないだろうが……アレは、出すのに少し時間がかかる。

 

 一体何が、ここまでお前たちを突き動かす?

 そこまでお前たちは、海賊王を求めるのか? ロジャーと同じ称号を求めるのか?

 

 私を一対一で倒せすらしないお前たちが……!

 

 

「―――雷骨剣・”革命舞曲(ガボット)ボンナバン”!!」

 

 

 怒りで見聞色が乱れた、その瞬間。

 ゼウスの雷を纏い、剣を構え高速回転するブルックがラブヒーローに突進した。

 

 革命舞曲ボンナバンは、かのスリラーバークでオーズと戦う際に使った連携技。威力は申し分ないどころか、あの頃より格段に上がっている。

 

「ッ!!」

 

 ラブヒーローは両手を使い、ブルックの剣を受け止めた。

 今まで全ての攻撃を片手で受け止めていた彼が、初めて両手を使った。それだけの威力という事だ。

 すぐにブルックを弾き飛ばす。

 

百花繚乱(シエンフルール)クラッチ!!」

「フランキー・ラディカルビ~~~~ム!!」

 

 体から無数の手が生えラブヒーローの関節を極めた瞬間、飛来するフランキーのレーザー。

 見聞色でレーザーの当たる場所を予知し、その箇所を武装色で覆う。腹に打ち込まれたレーザーを覇気で受け止めるが、当然無傷。

 

「今だ!! ()()()()!!

 

 体に生えた腕を背筋で引きちぎったその時、ウソップが何かの弾を放つ。

 その弾はある程度ラブヒーローの前に近づいた所で、眩い光を放った。ラブヒーローは思わずその光を直視し何も見えなくなるが、問題はない。

 

 見聞色の覇気を使い、警戒を張り巡らせる。

 先ほどあの長鼻の男は『()()()()』と言っていた。ブルックと言えばあの特徴的な骸骨の男、注意していれば攻撃を避けることは容易い。

 

 ブルックを弾き飛ばした方に体を向け、拳を構える。

 1秒待つが、一向に攻撃は来ない。何故だ、1秒もあればあの素早い骸骨なら攻撃できるはず。

 

 

 ―――まさか、騙されて―――!!

 

 

 そう気づいた瞬間。

 背後に何者かが抱き着き、ラブヒーローの首からタイツの隙間に手を突っ込み、冷気を放つ白い塊を取り出した。

 その白い塊は、触れているナミの体温が一気に下がるほどの冷気を圧縮した物だった。どれだけの冷気を小さくしたのだろうか、想像もつかない。

 

「それに気づいたか、貴様――!!」

 

 背中にいる人物に手を伸ばし、その体を掴もうとした時。

 再び体に生える無数の腕。ラブヒーローの関節を瞬時に極め、それを鬱陶し気に引きちぎる。そして再び腕を伸ばした瞬間、腹部に感じる熱気。

 

 

「――ナミさんに手を出そうとしてんじゃねェよ!! 地獄の思い出(ヘル・メモリー)ッッ!!」

 

 

 炎を纏ったサンジの強烈な蹴りが、覇気を覆っていないラブヒーローの鳩尾に突き刺さった。

 全身に感じる熱気と痛み。内臓がシェイクされたような衝撃。

 

 その衝撃でナミの体はラブヒーローの体から弾き飛ばされ、地面に着地した瞬間、腰の抜けた間抜けな姿でひぃひぃと逃げ出す。

 

 

 

 

 初めて体勢を崩すほどのダメージを負ったラブヒーローの体に襲い掛かる、45度近くの熱気。この疑似宇宙空間の温度だ。

 先ほどサンジから炎を帯びた蹴りを貰ったせいで、体感温度はそれ以上である。

 

 こんな環境で戦い続けることは……いくら彼でもできない。

 

「…………解除だ」

 

 ラブヒーローがパチン!と指を鳴らした瞬間、暗闇と星々が晴れる。

 曇天とした空が彼らの真上に広がり、火口の上ゆえ暑いことに変わりはないが、先程よりも格段に涼しい空気に麦わらの一味はほぅと息を漏らした。

 

 

小宇宙(コズモ)を解除させられたのは初めてだ。まさか、冷気の秘密に気付くとはな。それに、あの一瞬で盗んだ技術……泥棒猫のナミか」

「ひぃッ!! 違うんです、私じゃありません……」

 

 怯えるナミを横目に、ラブヒーローはルフィを睨んだ。

 

「良い仲間だな」

「……ああ。大切な仲間だ!」

「だが、分かっているか? 例え良い仲間がいても……船長のお前が弱ければどうしようもない。『()()()()()()()()』ぞ、モンキー・D・ルフィ」

 

 ルフィは口をつぐむ。

 それはラブヒーローからの、一種の脅し。海賊王を目指す者はもっと強くあらねばならないという脅しだ。

 弱ければ何も守れない。大切な仲間を失い、絶望の淵に落ちるだけだ。仲間の命を守れないほど弱い船長など存在する価値はない。

 

「海賊王という称号は生半可な覚悟で目指す物じゃない。それでも、お前は目指すのか?」

「――当たり前だ。俺は……ワンピースを手に入れて、海賊王になる!」

「…………」

 

 良い覚悟だ。

 だがその夢がかなうかどうかは……今、この時の勝負の行方次第だ。

 

 

 傷を負ったラブヒーロー。

 それ以上に傷を負いつつも、気迫で立ち上がる麦わらの一味。

 

 両者は、お互いを認め合っている。

 お互いを止める方法は、どちらかがどちらかを倒した時のみ。

 

 

 

 ルフィの腕を膨らます。

 素早く放たれたゴムゴムの大猿王銃を、ラブヒーローが殴り飛ばした。

 

――ガァン!!

 

 

 けたたましい、金属同士が衝突したかのような音。この島中に響き渡るような音。

 それが、お互いの雌雄を決める、最後のラウンドのゴングだった。

 

 




前回、後2話で終わると言いました。
すみません、戦闘が多すぎて後1話伸びそうです。

つまり、この話から後2話で終わります。


戦闘描写難しすぎて怖い……上手く書けてるのかな
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