愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる 作:ペン汁
ラブヒーロー。
懸賞金32億2000万ベリー。
異名は天竜人殺しのラブヒーロー。
「て、天竜人殺し〜〜〜!?」
ガープの背後で会話を聞いていた海兵たちが叫んだ。
当たり前だ。
天竜人とはこの世で最も高貴で身分の高い存在であり、目の前を横切る事すら死に値する重罪。
そんな人物を殺すと言うことは、世界政府に真正面から唾を吐きかけ中指を立てるような物だ。海軍に姿を見られた瞬間バスターコールをされたっておかしくない存在である。
天竜人は絶対。
この世の殆どの人物に刷り込まれている当たり前である。
さて、その当のラブヒーローはと言うと。
「ガープ。私の懸賞金は20億ぐらいではなかったか?」
「ぬかせ大馬鹿者。
「ま、マリージョアを30回以上襲撃ィ〜〜〜!!??」
マリージョアとは、天竜人たちが住む場所のことである。
レッドラインの最も高い場所にあり、立ち入る事すら容易ではない場所だ。
そんな場所を30回以上も襲撃したらしい。
海兵達は既に顎が外れそうであった。
「天竜人殺しにマリージョア襲撃だと......!?」
「ルフィ、あんたいつの間にこんなとんでもない男と関係持ったのよ!? 」
天竜人の意味がよくわかるフランキーが動揺し。
懸賞金32億2000万ベリーに気圧されたナミがルフィの体を揺さぶる。
「懸賞金32億かー......おっさん、実はとんでもねェ奴だったんだな。サンジ、飯!」
「のんきか!!」
ビシッとルフィの頭にナミの手刀が刺さる。
「まぁ、白いおっさんは別に悪い奴じゃねェからな。変ではあるけど」
「悪い奴じゃあ! 勝手なこと言うなルフィ!」
「愛のために動く私が善か悪かは後の世が決めることだ」
三人の意見が交錯し、場の状況がいささかカオスになってきたところで。
突然、背後の海兵達が騒ぎ出すと共に、刀と刀のぶつかり合う金属音も聞こえてきた。
ガープが背後を肩越しに見る。
「ん? 何事じゃい!!」
「賞金首の海賊狩りのゾロですね」
背後で控えていたガープの補佐役、シルクハットを深めに被ったボガードがそう言った。
「ルフィの仲間じゃな。威勢がいいのはいいが、今の状況で......」
「好きにすればいいだろう」
「何?」
「確かに海軍と私は敵同士だが、海軍の英雄とは戦いたくない。今回呼び出されたのは明らかに無駄足なようだし、私は帰るとしよう」
「......あー、そーかい。ならとっとと帰るんじゃな」
冷たくあしらうガープ。
その様子に、近くにいたボガードが問い掛ける。
「いいんですかガープ中将。その大犯罪者を捕まえなくても」
「ここで奴を捕まえたら、この場にいるルフィも捕まえなきゃならん。それにワシでは奴の逃げる速度に追いつけんからな」
彼の言葉を背後に、ルフィの方へと歩いていくラブヒーロー。
ルフィは海兵達を相手に暴れているゾロを止めに行こうとしたまさにその時であり、スックと立ち上がっていた。
「モンキー・D・ルフィ」
「ん? おっさん、悪いけど俺ゾロを止めなくちゃ!」
「聞け。......今回は下らない用だったから、ノーカウントにする。もう一度、本当に困った時に駆けつけてやろう」
「ああ.....じゃあ宝石を持ってろってことか?」
「そういうことだ。察しが良くて助かる」
そしてゾロの方向へ走っていくルフィ。
それを一瞥し、静かに呟いた。
「強くなったな、以前より数十倍も......」
瞬間。
彼は姿を消した。
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『こっから俺たち、本気で逃げるからな!!! またどっかで会おう!!!』
そう言い残して、麦わら海賊団の乗るサニー号は何処かへと飛んで行ってしまった。
船が空を飛ぶなど普通ありえないが、それをありえるにするのが麦わらの一味の特徴......と言っても過言ではないのかもしれない。
もっと言い換えると、何を仕出かすかわからない危険分子になるのだが。
「まったく、あんの馬鹿者が......」
大量の砲弾を横に、その場に座り込むガープ。
手のひらで顔を隠すが、そこから見える口元は、にっこりと笑っていた。
数分そうしていた後、正義のコートを着て立ち上がった。
砲弾を片付けておくよう部下に指示し、船の甲板で寝ていた海軍大将『青雉』の横へ行く。
「ワシらも帰るとするか。その前に、ラブヒーローのことも報告せにゃいかんがのう。......代わりにやってくれんか?」
そう話しかけられた青雉は、アイマスクを片目だけ外し、寝っ転がったまま答えた。
「勘弁してくださいよガープさん。ラブヒーロー絡みの報告って、海軍元帥と......『
「ああ。けどラブヒーローの話題を出すと面倒臭いんじゃアイツ。どうか代わりに......」
「ぐー」
「ね、寝おったこいつ......!」
青雉は一瞬で寝ることで、ガープから厄介な仕事を押し付けられるという窮地を脱した。
まぁ、絶対にバレないように様々な細工を施しただけの寝たふりだが。
仕方なく、本当に仕方なく、渋々とボガードの持ってきた電伝虫を受け取るガープ。
元帥であるセンゴクに報告しても面倒なのは事実だが、それよりもさらに面倒臭い男が1人。
先にそちらの方から片付けることにしたガープは、電伝虫の受話器を口に近づけた。
プルプルプルプル......ガチャ。
『何の用だ、ガープ』
聞こえてきたのは、壮年の男の声。
何かをしていた途中のようで、邪魔な電話をしてきたガープに少し苛ついているらしい。
「いやー、そのじゃな。何を聞いても落ち着いていてくれんか?」
『話による』
「ぐっ......」
悪い奴ではないが、いささか堅物。
それに、ガープよりも口喧嘩が強い。
「『
......ラブヒーローがウォーターセブンに姿を現しおった」
数泊の間、静寂が広がる。
嵐の前の静けさだ。
そして。
『......なぁぁあああああああんんだと、ガァァァアアアアアプ!!!!!』
ブチッ
ガープは電話を切った。
「これでよし」
「何もよくないと思いますが」
「一応報告はしたんじゃ。あとはセンゴクに任せればいい」
海軍元帥の胃痛の種が増えた瞬間であった。
ガープって青雉のこと何て言ってたっけ…..
青雉?クザン?
赤犬のことサカズキって言ってたし、やっぱりクザン?