愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる 作:ペン汁
ラブヒーロー。
革命家ドラゴンほどの知名度はないものの、知る人は知っている大犯罪者。
行き過ぎた愛への執着と行動は、時に一般市民に危害を及ぼすこともあるが。
その行動の大抵は、一般市民の生活を危ぶむ危険分子を排除するものである。
グランドライン内に限らず、彼に助けられたことがあると言う者は多い。
天竜人殺しという異名を持つが、「フィッシャータイガーの猿真似だ」とやっかみを持つ海賊もいる。
だが殆どの海賊はラブヒーローに敵わないため、手も出そうとしない。
また、一部の古参海賊や海兵は、ラブヒーローの素顔を知っているというが。
その真偽は定かではない。
シャボンディ諸島。
麦わらの一味は人間オークション会場にて天竜人を殴り飛ばすという世紀の大罪を犯し。
偶々オークション会場に商品としていた『シルバーズ・レイリー』と共に、安全地帯である『シャッキー’s ぼったくり BAR』へと駆け込む。
そしてそこで、レイリーが海賊王の船の副船長であったこと、シャンクスが海賊王の船に乗っていたことを知ったのだった。
「シャンクスが海賊王の船に……ハハッ、やっぱりシャンクスはすげェや」
「……そういえばルフィ」
愉快げに笑うルフィに話しかけたのは、サンジだった。
「あの例の
「白い男って誰だ?」
「私も知りませんね、ヨホホ」
「話を聞いてりゃ分かるさ」
ウォーターセブンで偶々一味を抜けていたウソップ、スリラーバークで一味に入ったブルックはラブヒーローの事を知らない。
サンジに「わかった」と返したルフィは、懐から緑色の宝石を出して、レイリーの方に向けた。
それを見た瞬間、彼は目をカッと見開く。
「こ、これは……ハハハハハ! 『
「本人から貰った」
「そうか……フフフ。面白い物を持っているな、いや、そういうものが集まる星に生まれたのか……」
「白いおっさんの事知ってんのか? 俺らは懸賞金ぐらいしか知らねェんだ」
ルフィがそう言うと、レイリーは懐かしそうな目をしながら顎髭を触る。
「よく知ってるとも。初めて会った時......奴は13歳だったか。私達の船に突然乗り込んできてな。
『愛を邪魔するお前らを潰す』とか何とか言って、シャンクスとバギーを薙ぎ倒していたよ。まぁ、それを面白がったロジャーにボコボコにされていたがな」
「しゃ、シャンクスを!?」
「あの時点で既に新世界を一人で渡り歩いていたからな。入ったばかりの見習いでは勝てんさ」
「す、すっげー……」
大海賊時代以前から活動していた上、伝説の海賊王の船へ殴り込む。
その上今の懸賞金は32億2000万ベリー。
麦わらの一味が戦々恐々とした顔をしている中、レイリーは一人で微笑みながら、あの面白かった坊主の事を思い出していた。
―――――――――――――――――――――――――
ゴールド・ロジャーが海賊王と呼ばれる6年前のこと。
彼らの海賊船は、グランドラインの後半『新世界』へと入っていた。
―――ドドンッ!!
「な、なんだァ!?」
「敵襲! 敵襲だー!!」
ロジャー海賊団の船であるオーロジャクソン号が少し傾くほどの衝撃。
どこかの船から砲弾でも撃ち込まれたのかと、ドタドタと甲板に集まってきた船員たちは、目を見開いた。
「……子供?」
「何でこんなとこに……」
船の縁の近くに、ボロボロの黒髪の子供が立っていたのだ。
齢は10も行っているか怪しいだろう。身長はおよそ140~150cmほど。
顔を隠すようにボロい布をグルグル巻きにしているため、表情はわからない。が、頬の痩せこけた顔をしているだろうことは見なくても分かった。
「一体何事だ」
「あっ、レイリーさん。どうしたもこうしたもないっすよ~」
遅れてやってきたレイリーが問いかけると、すぐ近くにいた赤鼻が特徴の『バギー』がおちゃらけた様子で答えた。
「襲撃者かと思えば、只の小汚い
完全に油断しきったバギーが、大股で例の子供に近づいていく。
「おいバギー! 危ねぇぞ!」
「何があぶねぇんだこんなガキ相手に。お前はビビりすぎなんだよ、シャンクス。ほれ、ほれほれ」
バンバンと子供の背中を叩くバギー。警戒のけの字すらない。
そもそもの話、どこにも障害物がない大海原の中で突如現れた子供。警戒しない方がおかしいのだ。
「おいおい痩せすぎだぜ?このガキ。ちゃんと飯食って―――おげぶふッ!!!」
バギーが頭の布を取ろうとした瞬間。
目にも止まらぬ速さで子供がその腕を取り、甲板にバギーを頭から叩きつけた。
「バギー!!」
のちに赤髪、と言われるシャンクスがいの一番に駆け出した。
腰のサーベルを抜き放ち、子供に向かって思い切り振り下ろす。
……しかし、相手は自分より一回り以上小さな子供。
『サーベルでぶった切るのはまずいか――!?」』と一瞬、力を緩めてしまったのが命取りになった。
「い!? 嘘だろッ――ぐふっ!!」
速度の落ちたサーベルの刃を二本指で挟んで受け止められた。
ぐいっとサーベルごと体を引き寄せられ、崩れた体勢と無防備な腹に強力な殴打を叩きこまれてしまい、その場に倒れ伏す。
何でもないと言った様子で倒れた二人を見下す子供は、他の船員たちに指を差し、声変わり前の声を努めて低くしこう言った。
「……お前ら、海賊だな。
海賊は世界中の愛を乱してしょうがない存在だ。だから――
普通なら、少し勘違いした子供が身の丈に合わない事を言っているだけだと、たいがいの大人は微笑ましく見守るだけだろう。
だが彼は見習いとはいえ海賊の一員を倒してしまった。実力を見せてしまったのだ。
こうなればいくら子供とはいえ、海賊側も警戒せざるをえない。
一人でここまで来たとなると、悪魔の実の能力者であることも考えられる。
仕方なく、この場で一番強いレイリーが「鎮圧するしかないか」と動き出した瞬間。
「おうおう。面白いガキが乗り込んできたじゃねえか」
レイリーの背後から聞こえてきた声。
甲板に積み上げられた荷に体重を掛けながら、腕を組みつつ、子供をにやにやと眺める男。
それは後に、海賊王と呼ばれる――。
『
その後は、まあ、語るまでもなく。
船で一番強いロジャーに、意外にも食い下がる子供が、余計にロジャーを面白がらせ。
割と悲惨なぐらいにボコボコにされ、子供はすごすごと逃げ帰っていった。
名も名乗ることなく。
―――――――――――――――――――――――――
時を今に戻し、シャボンディ諸島の一角では。
麦わらの一味が天竜人を殴ったことにより、海軍から最高戦力である大将の一人が呼び寄せられていた。
「まったく……困ったことになったねェ~」
呼び寄せられたのは、大将『
普段からひょうひょうとした喋り方と性格をした彼は、大抵の事では感情を表には出さない。
しかし今の彼は眉をひそめ、どことなくやりにくそうな顔をしていた。
部下である戦桃丸とはぐれたことは、困ったと言えば困ったことだが、その程度は問題ではない。
寧ろ、彼の困りごとの種は、今後ろにいる人物の方であった。
「何が困ったことなんだ? ボルサリーノ」
「いえいえ、何にもありゃしませんよォ~。『
そう。
彼の背後にいた人物とは、元海軍大将であり、今は海軍の教官。
長らく海軍で教官を務めており、今の中将や大将には彼の教え子も多く含まれていることから、『
72歳。右腕に大きな機械の腕『バトルスマッシャー』を付けた大柄な男。
それが『
そして、黄猿もゼファーの教え子ではあるのだが。
二人はあまり仲が良くなく、場の空気は絶対零度に近い状態になっていた。
「にしても、ゼファー先生。どうしてわっしと一緒に出てきたんです~? いくら海賊が天竜人を殴ったとはいえ、わっしとあなたの二人が出る必要はないでしょうに~」
「俺が出てきたのはそっちじゃない。『麦わらのルフィ』はお前に任せる」
「となると、目的は~……この間の報告で上がってきた『ラブヒーロー』の事ですかい~?」
ゼファーは黄猿の質問に、うなずくことで肯定した。
「あの男……『ラブヒーロー』だけは俺の手で捕まえてやらねばならん」
「……まぁ、天竜人殺しまで出てくる可能性があるとなると、あながちこの対応も間違っちゃいないのかねェ~」
そうして、海軍最高戦力の二人が歩き始めた。
シャボンディ諸島に滞在する、麦わらの一味を目的として。
お気に入り数の伸び方がすごくて怖い
このまま評価も付けられてしまうのがすごく怖い(まんじゅう怖い定期)