愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる   作:ペン汁

5 / 41
ラブヒーローは知らないところで過去を明かされる

 

 

 

 ラブヒーロー。

 

 革命家ドラゴンほどの知名度はないものの、知る人は知っている大犯罪者。

 

 行き過ぎた愛への執着と行動は、時に一般市民に危害を及ぼすこともあるが。

 その行動の大抵は、一般市民の生活を危ぶむ危険分子を排除するものである。

 グランドライン内に限らず、彼に助けられたことがあると言う者は多い。

 

 天竜人殺しという異名を持つが、「フィッシャータイガーの猿真似だ」とやっかみを持つ海賊もいる。

 だが殆どの海賊はラブヒーローに敵わないため、手も出そうとしない。

 

 

 また、一部の古参海賊や海兵は、ラブヒーローの素顔を知っているというが。

 その真偽は定かではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 シャボンディ諸島。

 麦わらの一味は人間オークション会場にて天竜人を殴り飛ばすという世紀の大罪を犯し。

 偶々オークション会場に商品としていた『シルバーズ・レイリー』と共に、安全地帯である『シャッキー’s ぼったくり BAR』へと駆け込む。

 そしてそこで、レイリーが海賊王の船の副船長であったこと、シャンクスが海賊王の船に乗っていたことを知ったのだった。

 

「シャンクスが海賊王の船に……ハハッ、やっぱりシャンクスはすげェや」

「……そういえばルフィ」

 

 愉快げに笑うルフィに話しかけたのは、サンジだった。

 

「あの例の()()()……確か、お前のじいさんが海賊王がいた頃から活動してたって言ってたろ。聞いてみたらどうなんだ?」

「白い男って誰だ?」

「私も知りませんね、ヨホホ」

「話を聞いてりゃ分かるさ」

 

 ウォーターセブンで偶々一味を抜けていたウソップ、スリラーバークで一味に入ったブルックはラブヒーローの事を知らない。

 

 サンジに「わかった」と返したルフィは、懐から緑色の宝石を出して、レイリーの方に向けた。

 それを見た瞬間、彼は目をカッと見開く。

 

「こ、これは……ハハハハハ! 『()()()()()()()()()』じゃないか!! これを何処で手に入れた?!」

「本人から貰った」

「そうか……フフフ。面白い物を持っているな、いや、そういうものが集まる星に生まれたのか……」

「白いおっさんの事知ってんのか? 俺らは懸賞金ぐらいしか知らねェんだ」

 

 ルフィがそう言うと、レイリーは懐かしそうな目をしながら顎髭を触る。

 

「よく知ってるとも。初めて会った時......奴は13歳だったか。私達の船に突然乗り込んできてな。

 『愛を邪魔するお前らを潰す』とか何とか言って、シャンクスとバギーを薙ぎ倒していたよ。まぁ、それを面白がったロジャーにボコボコにされていたがな」

「しゃ、シャンクスを!?」

「あの時点で既に新世界を一人で渡り歩いていたからな。入ったばかりの見習いでは勝てんさ」

「す、すっげー……」

 

 

 大海賊時代以前から活動していた上、伝説の海賊王の船へ殴り込む。

 その上今の懸賞金は32億2000万ベリー。

 

 麦わらの一味が戦々恐々とした顔をしている中、レイリーは一人で微笑みながら、あの面白かった坊主の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 ゴールド・ロジャーが海賊王と呼ばれる6年前のこと。

 彼らの海賊船は、グランドラインの後半『新世界』へと入っていた。

 

 

 

 ―――ドドンッ!!

 

 

 

「な、なんだァ!?」

「敵襲! 敵襲だー!!」

 

 ロジャー海賊団の船であるオーロジャクソン号が少し傾くほどの衝撃。

 どこかの船から砲弾でも撃ち込まれたのかと、ドタドタと甲板に集まってきた船員たちは、目を見開いた。

 

「……子供?」

「何でこんなとこに……」

 

 船の縁の近くに、ボロボロの黒髪の子供が立っていたのだ。

 齢は10も行っているか怪しいだろう。身長はおよそ140~150cmほど。

 顔を隠すようにボロい布をグルグル巻きにしているため、表情はわからない。が、頬の痩せこけた顔をしているだろうことは見なくても分かった。

 

「一体何事だ」

「あっ、レイリーさん。どうしたもこうしたもないっすよ~」

 

 遅れてやってきたレイリーが問いかけると、すぐ近くにいた赤鼻が特徴の『バギー』がおちゃらけた様子で答えた。

 

「襲撃者かと思えば、只の小汚い()()が紛れ込んじまったみてぇで。ったく、しょうがないっすよねぇ~」

 

 完全に油断しきったバギーが、大股で例の子供に近づいていく。

 

「おいバギー! 危ねぇぞ!」

「何があぶねぇんだこんなガキ相手に。お前はビビりすぎなんだよ、シャンクス。ほれ、ほれほれ」

 

 バンバンと子供の背中を叩くバギー。警戒のけの字すらない。

 そもそもの話、どこにも障害物がない大海原の中で突如現れた子供。警戒しない方がおかしいのだ。

 

「おいおい痩せすぎだぜ?このガキ。ちゃんと飯食って―――おげぶふッ!!!」

 

 バギーが頭の布を取ろうとした瞬間。

 目にも止まらぬ速さで子供がその腕を取り、甲板にバギーを頭から叩きつけた。

 

 

「バギー!!」

 

 

 のちに赤髪、と言われるシャンクスがいの一番に駆け出した。

 腰のサーベルを抜き放ち、子供に向かって思い切り振り下ろす。

 

 ……しかし、相手は自分より一回り以上小さな子供。

 『サーベルでぶった切るのはまずいか――!?」』と一瞬、力を緩めてしまったのが命取りになった。

 

「い!? 嘘だろッ――ぐふっ!!」

 

 速度の落ちたサーベルの刃を二本指で挟んで受け止められた。

 ぐいっとサーベルごと体を引き寄せられ、崩れた体勢と無防備な腹に強力な殴打を叩きこまれてしまい、その場に倒れ伏す。

 

 何でもないと言った様子で倒れた二人を見下す子供は、他の船員たちに指を差し、声変わり前の声を努めて低くしこう言った。

 

「……お前ら、海賊だな。

 海賊は世界中の愛を乱してしょうがない存在だ。だから――()()()()()()()()()()

 

 

 普通なら、少し勘違いした子供が身の丈に合わない事を言っているだけだと、たいがいの大人は微笑ましく見守るだけだろう。

 だが彼は見習いとはいえ海賊の一員を倒してしまった。実力を見せてしまったのだ。

 

 こうなればいくら子供とはいえ、海賊側も警戒せざるをえない。

 一人でここまで来たとなると、悪魔の実の能力者であることも考えられる。

 

 仕方なく、この場で一番強いレイリーが「鎮圧するしかないか」と動き出した瞬間。

 

 

「おうおう。面白いガキが乗り込んできたじゃねえか」

 

 レイリーの背後から聞こえてきた声。

 甲板に積み上げられた荷に体重を掛けながら、腕を組みつつ、子供をにやにやと眺める男。

 

 それは後に、海賊王と呼ばれる――。

 

 『()()()()()()()()()』その人であった。

 

 

 

 その後は、まあ、語るまでもなく。

 船で一番強いロジャーに、意外にも食い下がる子供が、余計にロジャーを面白がらせ。

 割と悲惨なぐらいにボコボコにされ、子供はすごすごと逃げ帰っていった。

 名も名乗ることなく。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 時を今に戻し、シャボンディ諸島の一角では。

 麦わらの一味が天竜人を殴ったことにより、海軍から最高戦力である大将の一人が呼び寄せられていた。

 

「まったく……困ったことになったねェ~」

 

 呼び寄せられたのは、大将『()()』。

 普段からひょうひょうとした喋り方と性格をした彼は、大抵の事では感情を表には出さない。

 しかし今の彼は眉をひそめ、どことなくやりにくそうな顔をしていた。

 

 部下である戦桃丸とはぐれたことは、困ったと言えば困ったことだが、その程度は問題ではない。

 寧ろ、彼の困りごとの種は、今後ろにいる人物の方であった。

 

「何が困ったことなんだ? ボルサリーノ」

「いえいえ、何にもありゃしませんよォ~。『()()()()()()』」

 

 そう。

 彼の背後にいた人物とは、元海軍大将であり、今は海軍の教官。

 長らく海軍で教官を務めており、今の中将や大将には彼の教え子も多く含まれていることから、『()()()()()()()()()()()』とも呼ばれるほどの人物。

 

 72歳。右腕に大きな機械の腕『バトルスマッシャー』を付けた大柄な男。

 それが『()()()()』であった。

 

 

 そして、黄猿もゼファーの教え子ではあるのだが。

 二人はあまり仲が良くなく、場の空気は絶対零度に近い状態になっていた。

 

「にしても、ゼファー先生。どうしてわっしと一緒に出てきたんです~? いくら海賊が天竜人を殴ったとはいえ、わっしとあなたの二人が出る必要はないでしょうに~」

「俺が出てきたのはそっちじゃない。『麦わらのルフィ』はお前に任せる」

「となると、目的は~……この間の報告で上がってきた『ラブヒーロー』の事ですかい~?」

 

 ゼファーは黄猿の質問に、うなずくことで肯定した。

 

「あの男……『ラブヒーロー』だけは俺の手で捕まえてやらねばならん」

「……まぁ、天竜人殺しまで出てくる可能性があるとなると、あながちこの対応も間違っちゃいないのかねェ~」

 

 そうして、海軍最高戦力の二人が歩き始めた。

 

 シャボンディ諸島に滞在する、麦わらの一味を目的として。

 

 

 

 

 

 

 




お気に入り数の伸び方がすごくて怖い
このまま評価も付けられてしまうのがすごく怖い(まんじゅう怖い定期)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。