愛こそが最高の宝と信じるラブヒーローはどこか壊れてる 作:ペン汁
ゼファーとの戦闘を終えたラブヒーロー。
白タイツスーツの所々に汚れはついているものの、大きな負傷をしていない。
さすが元海軍大将、老いたとはいえど相当な強さだった。下手な中将よりよっぽど強いだろう。
それのせいで、思ったより倒すのに時間がかかってしまったのだ。
......まさか70超えの老兵に十数分も粘られるとは......。
そうして、急いで麦わらの一味を追いかけた頃には、全てが終わってしまっていた。
「! ラブヒーロー......ゼファー先生は負けたんだねェ〜」
「嘘だろ......おじきの師匠が......」
追いかけた先にいたのは、黄猿と赤い前掛けの男。
そして、それと向かい合うように立っていた冥王レイリーと、現七武海の暴君バーソロミュー•くま。
ちょうどラブヒーローがその4人を高い位置から見下ろすように立っていた。
「おーい! ラブヒーローの小僧! 久しぶりじゃないかー!!」
レイリーはこちらに手を振ってくる。
正直、ラブヒーローはレイリーのことが好きでも嫌いでもない。良い人物であるのは確かだが、いかんせん、幼少期の頃に何度もボコボコにされたことが脳の奥に根付いてしまっていた。
「レイリー!! これは一体どういう状況だ!!」
「ふむ......ルフィ君たちは何処かへ飛んで行った! それ以外はこの男しか分からん!!」
そう言って、レイリーはバーソロミューくまの方を向いた。
確かあの男は、七武海でもあり、革命軍でもあったはずだ。
本当の本当に昔、一度だけ接触してきた記憶がある。革命軍に入って欲しいとかなんとか言っていたが......。
ーーーーラブヒーローの異名は天竜人殺し。
世界政府打倒を目指す革命軍にとって、迂闊に手が出せない天竜人を殺したというラブヒーローのネームバリューは絶大だ。
よって、彼は革命軍からほぼ一方的に信頼を寄せられている。革命軍に入って欲しいと打診したのも、天竜人を殺した経験のあるラブヒーローの名を借りて勢力を拡大しようとしたためだ。
もちろん、愛に関する事以外さほど興味がないラブヒーローにとって、そんな事は知りもしないのだが。
話を戻す。
ラブヒーローは、革命軍だとかなんだとかは知ったことではなかった。ただ、自分が助けると誓った者を殺された復讐をするだけだ。
右の手のひらをバーソロミューくまに向ける。
「
そこまで唱えたところで、くまの横にいるレイリーが首を横に振っているのに気づいた。
同時に、口が小さく動いているのも見える。
見聞色の覇気で彼の口元に意識を集中させる。
読唇術の要領で読み取った彼の言葉は、このようなものだった。
『い•ま•は•や•め•ろ』
意味が分からなかった。
分からなかった......が、取り敢えず、場の状況がよく分かっていない私が今どうこう手を出すべきじゃないのはわかった。
事情が分かったら殺そう。
そう思って手を下げる。
「冥王に、天竜人殺し......こりゃあ、わっし1人じゃかなり厳しいかもしれないねェ〜」
「おじき、引くんですかい」
「引くしかないでしょうよォ〜。せめて大将がもう1人いれば話は別だけどねェ〜」
黄猿は正義のローブを翻し、踵を返して去っていった。
赤い前掛けの男もそれに続く。
そして数歩進んだ所で、黄猿が肩越しに振り返り。
「くまァ〜。お前さん、今回の件、よ〜く覚悟しておくんだねェ〜」
それだけ言って去っていった。
......あの黄猿という男、すぐには帰らないだろう。憂さ晴らしにこの島の海賊を何百人か捕らえるつもりだ。
まぁ私には関係がないが。
レイリーとくまと同じ高さの地面へ降りる。
ラブヒーローは腕を組み、レイリーに問いかけた。
「一体どういう状況だ。モンキー•D•ルフィは死んだのか?」
「厳密には分からん。私も今から、彼に聞くところだ」
そうして、2人でくまの方を向く。
懸賞金が余裕で十億を越える2人からの圧がかかっていると言うのに、くまは堂々としていた。
ーーーーバーソロミューくまからの話を聞き終わった。
......つまり。
麦わらの一味は全員、くまの能力で、それぞれが自分を鍛えるのに適した場所に吹っ飛ばされだけであり。
命に別状はないどころか、危険なこの状況から逃したのだという。
......殺すのはやめておくか。
ついでに、バーソロミューくまは自分が革命軍だとも言っていた。
レイリーは疑っていたが、ラブヒーローが以前勧誘を受けたと言うと、すんなり信じた。
「なるほど......話は大体わかった。ならば、私がこれ以上心配しても仕方がないな」
レイリーはそう言った。
続けて、こうも言う。
「君はどうするんだ? 海軍大将の前で裏切り行為をしてしまったわけだが」
「碌な事にはならないだろう。だが、なるべく麦わらの一味に有利な方向へ事が運ぶようにするつもりだ」
「そうか。まぁ、私は隠居した身だ。頑張りたまえ」
変な所で非情で、冷徹。
人の良さそうな爺に見えて、レイリーもまた根っからの海賊なのだ。
「それより......ラブヒーロー! 久しぶりじゃあないか!」
そして身内や知り合いにはとことん甘い。
これまた海賊の習性だ。
「お前の噂が2年ほど途絶えていたが......一体何処で何をしていたんだ?」
「浜辺で立っていた」
「ブワッハッハッハ! 相変わらず行動が意味不明だな!」
レイリーが豪快に笑う。
「この後一緒に酒でもどうだ? 久しぶりに飲みながら話そうじゃないか」
「......悪いが、断らせてもらおう」
「ん? そうか......」
少し悲しそうな顔をするレイリー。
確かに昔は酒も飲んだ。だが、今はもう飲まない。
「......ラブヒーロー。お前は悪い奴じゃあないが、少し思い詰めすぎる所がある」
「何だ、急に......」
「発散したくなったらいつでも来るといい。このままだといつかパンクしてしまうぞ」
「知った風な口を聞くな。......私はもう行くぞ」
ぶっきらぼうにそう言い放つラブヒーロー。
レイリーはその物言いに怒るでもなく、不快な顔をするでもなく、僅かながらの笑みを浮かべた。
ズンズンと大股で歩き、レイリーとくまの姿が全く見えなくなった所で、ラブヒーローは空を見上げた。
天に昇る太陽を見つめ、右の手のひらで握る。だが、当然、掴めはしない。
「前回はくだらない喧嘩、今回は結果的に死ななかったものの、私が助けることは出来なかった」
「だから、次だ......。もう一度だけ、助けてやる。
その時は......私の
ラブヒーローの威信にかけてもな......」
ーーーそう呟いた後、ラブヒーローは姿を消した。
ルフィと再び出会う時は、そう遠くない。
いただいた感想は全てありがたく読ませていただいてます!
では何故返信しないのかと言うと、ペラペラ次の展開を調子に乗って書いてしまいそうで怖いからです!
先の展開がわかってしまうとどうしても面白くないので……ご容赦ください!