青空戦記   作:烊々

11 / 24
修練の日々

 

 

 

「彼らが帰ってこないことからすると、アカム君に殺されたようだね。全く、こちらの貴重な人材を害虫駆除のように減らされては困る」

 

「……過去の地球には百億に届くほどの人間がいたと言う。そんなに人間がいたら、煩わしくてありゃしない。思い通りにならない人やモノが多いことほど不愉快なことはない。それに比べて今は良い時代だよ。文明は崩壊し、技術は退廃した。だからこそ、煩わしいものが少なく、支配するのは容易い」

 

「けど、いくらボクの思い通りにならないとはいえ、アカム君のような優秀な人間は、ボクが支配する世界に存在する価値がある。彼ほどの人間が、あんなちっぽけな村のために生きるなんて勿体ないさ」

 

「さて、機体の調整は済んだ。今度こそ、不必要なものを全て排除する」

 

 

 

 

「……っ! この……っ! うわっ!」

『俺の勝ちだ』

「くぅ〜……!」

『まだまだだな』

 

 シュミレーションモードでは対人戦をすることも可能なので、ここ数日はひたすらアカムに特訓させてもらっている。

 結果は散々ではあるものの、操縦における理解度が深まっている気がする……多分。

 

「もう一回!」

『良いだろう』

 

 基本起きている時は、アカムと模擬戦をしているか、村で農作業を手伝うかをしている。

 居心地の良いこの村に定住するのも悪くはないが、私には青空を取り戻すという夢がある。いつまでも停滞しているわけにはいかない。

 とはいえ、何をどうやって夢を叶えるかのビジョンが曖昧なため、無駄に動き回ることもしていないのだ。

 

「……そういえば、ゼシルに話しておくべきことがあったな」

「何?」

「君たちが賊と呼んでいる連中がいただろう?」

「アカムが瞬殺した奴ら? そういえば最近襲ってこないわね」

「あの三色戦機乗りたちは、あれでも奴らの中では上澄みの戦機乗りなんだ。それを失った奴らは、表立って行動するのを控えているんだろう」

「あれで上澄みかぁ……」

 

 いくらレイゼオンの性能が高いとはいえ、アカムとの特訓前の私にすら勝てない連中が上澄みとなると、賊たちの人材難を疑うものだ。

 

「とはいえ、奴らのボスはその比ではない」

「ボス……?」

「あぁ、名を『ラヴォラス・ヴァンガロード』、という」

「名前まで知ってるんだ。会ったことあるの?」

「一度な。仲間になれ、と勧誘された。勿論断ったがな」

「断ったんだ」

「それで得をするのは俺一人だ。村の人たちの安全まで保障できない、そう思ったんだ。それから、話が決裂して交戦したんだが、取り逃してしまいそれきりだ。しかも、その時を境にこの村への攻撃回数も増してしまった。俺は奴の根城を探すためにも、散策を繰り返していたのだが……未だに尻尾を掴めず今に至る」

 

 この前、用心棒のくせに不在だったのはそういうことだったのか。

 

「奴は危険な男だ。物腰は柔らかいが、その裏にある狂気は計り知れない。奴がいる限り、この地域の安寧は無い。君も戦機乗りならば、奴と合間見る機会があるかもしれない。警戒しておけ」

「部下の雑魚を減らして戦力を削っていけば、そのうち本人が出てくるんじゃない? それを私とアカムで叩けばいいじゃん」

「そう簡単にいけばいいがな」

 

 アカムとの話がそれなりに盛り上がると、わレイがコンテナに入ってくる。わざとらしく音を立てて。

 

「二人とも、いつまで模擬戦しているんだい? ご飯の時間だ。食べないなら食べないで良いけどね」

「なんで不機嫌なの?」

「気のせいさ」

 

 私とアカムが話していると、レイが不機嫌になる気がする。

 もしかして……レイはアカムに気があるのでは……⁉︎

 

「アカム氏、ゼシルは頭はいいが馬鹿だ。そこんとこをよろしく頼む」

「ん……? あ、あぁ……了解した」

 

 一旦アカムと別れ、レイと共に部屋で食事を摂る。

 

「当面の目標は、そのラヴォラスって人を倒すことにしようと思う」

「そうだね。ここに滞在するにせよ、旅に出るにせよ、その人物は脅威となるだろう」

「とりあえず、ひたすらアカムと修行かな。なんだかんだ、少しずつ差は縮まってると思うんだよねぇ〜」

「……ずっと、彼の話だね」

「え?」

「なんでもない。私はルシフルの電子マニュアルを熟読するとしよう。レイゼオンに応用できることがあるかもしれない。君はアカム氏のところに行けばいいさ」

「あ、うん。そうする」

 

 レイに追い払われるように、部屋を出る私。

 最近やけに不機嫌になることが多い気がするんだよね、レイ。どうしてだろう?

 やはり……アカムに気が……⁉︎

 

「……アカムばかりじゃなくて私にも構ってくれたまえよ、ゼシル。意外と寂しがり屋なんだぞ、私は」

 

 扉の向こうでレイが何か呟いていた気がしたが、気のせいかもしれないし、言われた通りアカムを倒しに行こうっと。

 

 

 

 

 翌日。今日も今日とて、変わらずアカムに挑み続け……

 

「中々仕上がってきたんじゃないか?」

「……まだまだだよ。一回もアカムに勝ててないし」

「それは難しいな。俺は誰にも負けるつもりはない」

「絶対勝ってやる」

 

 ……負け続けている。

 差が縮まったかと思えば、アカムは戦い方を少し変え、私はそれに対応できずにボロ負けしてしまう。

 

「それよりも、俺のところにばかりいてもいいのか?」

「村の手伝いはしてるよ。農作って大変だけどやり甲斐あるよね。月じゃこんなことできなかったからさ」

「いや、俺が言っているのは、レイのことだ」

「レイ……? なんで?」

「あまり俺ばかりに構っていると良い気はされない、と思ったからな」

「どういう意味?」

「恋人同士ではないのか、君たちは?」

「……え?」

 

 アカムの口から放たれた衝撃的な言葉に、一瞬固まる私。

 

「え、あっ、は、はぁ⁉︎ な、ななな何言ってんのアカムったら!」

「む、すまない。違ったのか。てっきりそういう間柄だと……」

「そんなわけないじゃんっ‼︎ 変なこと言わないでよ‼︎」

「痛っっ⁉︎ 急に叩くな……!」

 

 確かにレイは憎たらしいところもあるけど、頼りになるし、よく見たら可愛いし、柔らかくて良い匂いがするし……

 

「ゼシル!」

「ひゃあっ! レイ⁉︎」

 

 そんなことを思っていたら、突然本人が目の前に現れた

 

「……どうしたんだいそんなに驚いて? それよりも緊急事態だ。村の高台から、戦機の接近を確認できた。出撃の準備をしていて欲しい。アカム氏も」

「了解」

「……わ、わかった!」

 

 今はレイと顔を合わせたくないから、私はそそくさとコックピットに乗り込み、レイゼオンを起動させる。

 

「見事な手際の出撃準備だな……俺ですらあんなに早くはできないぞ……」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。