青空戦記   作:烊々

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 通信に罫線を入れてたんですけどあんまりしっくりこなかったのでやめます



悪虐の王

 

「あれが……例の戦機ね」

 

 村から飛び出した私は、接近する戦機にレーダーを合わせる。

 

「え? ……何アレ?」

 

 レイゼオンが解析した敵機のデータを見て、言葉を漏らす。

 頭、胴体、右腕、左腕、右足、左足、バックパック、それら全てが別の機体のものと認識されており、あらゆる戦機からパーツを寄せ集めて作った、いわば合成獣のような機体だ。

 常識的に考えれば、そんな機体の制御は安定するわけがない。しかし、現に動いているし、中の人間は動かせている。

 つまり、あの戦機のパイロットは、それができるほどの操縦技術が高いということ。

 

「じゃあ、あれに乗ってるが『ラヴォラス・ヴァンガロード』ってこと……?」

『──ボクの名前を知っているのか。アカム君に聞いたのかな?』

「……っ」

 

 しまった。通信を切り忘れていたから、私の独り言が敵機に通ってしまった。

 そして、賊のトップだからどんな人間なのかと思ったけど、ラヴォラスは予想に反して物腰が柔らかそうな声色をしていた。

 

『ゼシル! 先行しすぎだ!』

「あ、ごめんアカム」

『あの機体、見たことがないが……やはりラヴォラスか』

『ふふ、久しいねアカム君』

『まさか直接お前が来るとはな。探す手間が省けた』

『キミがボクの大切な部下たちを処理しまくるからだろう?』

『お前も処理してやる』

『おっと、その前に少し話をしよう』

 

 ラヴォラスは通信を切り、コックピットを開いて外に出てきた。

 

「あれが……賊のボス……?」

 

 私より背が少し高い程度、男性にしては小柄。俗をまとめ上げている人物だから、武闘派の巨漢みたいな見た目だと思っていたが、その逆。ひ弱そうにすら見える。

 

「さて、最後の忠告だよ、アカム君。ボクの仲間になれ。一緒にこの世界を支配しよう」

「お前がこの村の人々の安全を保障するなら考えてやる」

「それはできないよ。ボクは繁栄なんて望んでいない」

 

 繁栄を望まない、ラヴォラスの言葉に理解が追いつかない。

 賊をまとめ上げ、この辺一体を支配しようとしてる人物の言葉とは思えなかったからだ。

 

「要らないんだよ。こんな安定した生活基盤が整っている村なんか。ボクはね、自分が気に入ったものだけの世界を作りたいんだ。そしてボクの手で滅ぼしたい。旧文明では不可能だったろうけど、今の世界ならそれができる。だからね、女子供は全て殺したいんだ。未来なんて要らない。ボクが死ぬ時が、世界の滅ぶ時でいい」

 

 無邪気な笑顔を見せながら、邪気しかない言葉を発するラヴォラス。幼稚で、傲慢で、そして残虐。ここまで歪んだ悪意というものを、私は今まで触れたことがなかった。

 成程、こいつは生かしてはおけない。

 

「やはり話にならないな。耳を貸した俺が愚かだった。お前はここで仕留める」

「確かに、同じ条件なら、ボクではアカム君に勝てないね。だからこそ、この『グライフォード』だ」

「それが……その機体の名か」

 

 ラヴォラスが『グライフォード』という名の戦機に乗り込み、再び起動させる。

 あのアカムの前に堂々と現れるぐらいには、実力もあるし機体の性能も高いだろう、と私に緊張感が走った。

 私たちも戦機に乗り込み、起動させ、臨戦態勢に入った。

 

『キミを殺すのは勿体無いけど、ボクの思い通りにならないのなら目障りだ。死んでもらおうかな……!』

『死ぬのはお前だ。ラヴォラス』

 

 ルシフルとグライフォードがぶつかり合う。本気のぶつかり合い……ではなく、小手調べのような軽い斬り合い。アカムは全ての武装を駆使しているわけでもないし、おそらくラヴォラスもグライフォードの真価を発揮してはいないだろう。

 しかし、彼らにとっての小手調ですら、今の私には付け入る隙がない。私の腕が足りないのもあるが、援護射撃をしようにもこの距離だと誤射が怖く、近接援護をしようにもアカムの動きに合わせられる気がしない。最悪足手纏いになる。

 歯痒いが、見てることしかできない。

 

「……ん? レーダーに反応?」

 

 方向からして、ラヴォラスの援軍とも考え難い。

 そして、戦機とは異なる周波数。

 

「まさか……殺戮ロボ⁉︎」

 

 目視できる位置まで接近してきたそれは、正しく私とレイが殺戮ロボと呼んでいるものだった。

 

「なんで⁉︎ ここって殺戮ロボの巡回エリアじゃないでしょ⁉︎」

『殺戮ロボ……? 君は機獣のことをそう呼ぶのか? それはともかく、戦機のエネルギーに釣られた機獣は、巡回エリアを越えてやってくるんだ。俺のルシフルはまだしも、君のレイゼオンと、奴の機体のエネルギーは出力が高い。そして、この村は巡回エリアと数十キロほどしか離れていないからな』

「割とギリギリなところにあるんだね」

 

 なるほど、そして機獣の方が言い易いから呼び方を変えよう。

 機獣の接近を見たラヴォラスは、少し後退し、武器を収納した。

 

『……ん〜、少し遊びが過ぎたようだ。興が削がれた。次は、機獣の横槍が入らないところで戦いたいものだ』

『逃げる気か』

『退いて"あげる"のさ。あの機獣から村を守りつつボクの相手するのは、たとえアカム君でも厳しいんじゃないのかい? ボクとしても、せっかくの新機体の初陣を、乱戦の最中にはしたくないしね』

『……次は仕留める』

『そうかい。期待しているよ。また会おう』

 

 去っているラヴォラスは追わず、機獣を蹴散らす私たち。

 接近してきた機獣の数は少なく性能も低かったため、すぐに殲滅することができた。

 

「正直、機獣から村を守りつつ、奴と戦うのは容易ではなかった。奴はああ言っているが、未知数の戦力である君を警戒して退いたんだろう。君がいなければ戦いを続けていたに違いない」

「回りくどい言い方は好きじゃないわ」

「……助かったよ。ありがとう」

「ん、どういたしまして。それにしても、あいつ、あんな簡単に引き下がるのね」

「拘りというものがあるのだろうな。そして、それだけあのグライフォードという機体に自信があるのだろう。だが、次こそは仕留める。君も俺の後ろで見ているだけじゃ不服だろう? 帰ってすぐに訓練だ」

「珍しいね。アカムから私を誘うなんて」

「ようやく、君が俺の訓練相手になれるぐらい育ってきたからな」

「ん〜、嬉しいけど、なんか複雑」

 

 敵がどんな奴かはわかった。後はそれに勝てるように強くなるだけ。

 そして、ラヴォラスという男の狂気に触れたことは、逆に私の夢に影響を与え出すことになることを、今の私は知るよしもない。

 

 





・キャラクター紹介

 ラヴォラス・ヴァンガロード
 性別 : 男
 年齢 : 27歳
 身長 : 165㎝
 好きなもの : 支配 破滅
 嫌いなもの : 安寧 未来

 若い身ながらも一帯の族をまとめ上げているボスの男。一人称が「ボク」だったり、落ち着いた物腰で喋ったりと、粗暴な部下達とは異なるどこか品のある気性の持ち主。
 しかし、その裏には狂気が潜んでおり、今の世界を支配した上で、支配した世界が滅びる様を見届けたいという一種の破滅思想の持ち主。
 殺戮ロボの巡回エリアが届かないギリギリの範囲まで支配権を拡大しようとしていたが、ある時からアカムに妨げられ続けると、アカムのことをいずれ仲間に引き入れようと村に執着し始めるようになった。

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