青空戦記   作:烊々

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一つの終幕

 

 

「おい、おいおい、おいおいおいおい! レイゼオンボロボロじゃあないか!」

 

 損傷が激しいレイゼオンを見たレイが喚き散らながら私の背中をポカポカ叩く。

 

「しょうがないでしょ、ラヴォラス強かったんだから」

「何ぃ? なら何故ルシフルはあんなに綺麗なんだい?」

「それは……」

「グライフォードの機能だ。機獣を操作できる。俺は機獣を差し向けられ、ゼシルはグライフォードの本体を相手していたんだ。ボロボロにもなる」

「機獣の操作だとぅ……? ……ほぅ、ほほぅ!」

 

 アカムの話を聞いたレイの目が好奇に満ちて光る。既にレイゼオンの損傷からそちらに興味が移っていた。助かった。

 

「その機能があるグライフォードの右腕は回収できている。右腕自体の損傷は軽微だから、機能が生きているかもしれない」

「ならば、解析といこうか! レイゼオンの整備はその後だ! ふはは、心躍るねえっ!」

 

 いつになくハイテンションで、回収したグライフォードの元に向かうレイ。

 正直ついていけないのでしばらく放っておこう。

 

「そういえば、ラヴォラスはどうすんの?」

「奴か。とりあえず牢に入れてある。殺すのは、村長がそういうのはしたくないらしいから無しだ。それに────

 

 

「ボクを殺さないとは、甘いねアカム君」

「殺した数が罪の数なら、俺もお前も変わらん。俺はこの先何があってもこの村を守り抜く。お前はここで嫌いな繁栄を見続けていろ」

「……ゼシル君に一つ伝えておいてくれ。空に挑む時にはボクも力を貸す、とね」

「何……? お前がまさかそんなことを言うとはな。どんな心境の変化だ?」

「敗者は勝者に従うものさ。それに、ボクの目的はもう叶いそうにないし、なら彼女の夢という名の狂気に浸ってみるのも悪くないと思ってね」

「……そうか」

 

 

 ───と、奇妙なことを言っていたな」

「へぇ、意外と素直なんだね、彼」

「素直……? よく分からないが、刃を交えたモノ同士で通じ合うものがあったようだな」

「かもね」

 

 ラヴォラスという男は、自分の中のルールには忠実なのだろう。

 もしまた何か悪さをしたなら、今度は私が確実に殺せばいい。

 それに、戦力は多い方がいいから。

 

「……ふぅ、素晴らしい時間だった」

 

 その夜、グライフォードの解析とレイゼオンの整備を終えたレイが部屋に戻って来てから、今後について話し合う。

 

「ねぇ、レイ」

「む? そろそろ発つのかい?」

「うん。とりあえず世界中を飛び回って、対空防衛システムを破壊するための仲間を集めようと思う」

 

 今のこの世界に閉塞感を持ってる人は少なからずいるはず。その中で私の考えに賛同してくれる人たちを集めたい。

 

「簡単に言うが道のりは険しいよ? ただでさえ生き残りがどれくらいいるかわからないこの世界で、更に命知らずたちを集めようなんてね」

「わかってる。だとしても、私はやるわ。何もしないで生きるのなんて、死んでいるのと同じよ」

 

 だから私は地球を目指した。

 私にとって、月で生きていくことは、死んでいるのと同じだから。

 

「目標があるのはいいが、あまり死に急ぐなよ」

 

 レイの言葉を聞こえなかったフリをして、私は眠りに落ちていった。

 そして、翌日。

 

「……行くのか」

 

 身支度を済ませた私とレイを、村の人たちが見送りに来る。

 

「うん、ここは居心地が良かったけど、私は私の夢のために行くよ」

「『仲間集め』、だったか?」

「ラヴォラスを見て思いついたんだ。あんなやつだけど仲間っていうか手下はたくさんいたじゃん? 闇雲に動く前に、やりたいことのためにとりあえず仲間を集めようって」

「そうか。俺もついて行きたい気はあるんだが、村が心配なのでな。ラヴォラスがいなくなったことで、更にここら一帯の勢力が荒れる。なんだかんだで、奴は奴以外の勢力の賊を押さえつけていたんだ」

「アカムが来てくれるなら頼りになったんだけど、それはしょうがないね」

「私としてはアカム氏が来なくてよかったよ。私が仲間外れになってしまうからね」

「こら、そんなこと言わないの」

 

 まぁ、アカムと訓練ばっかしててレイをほったらかしにしていたのは少し反省している。

 

「レイもありがとう。君が解析してくれた機獣操作システムのおかげで、生活圏を増やせそうだ」

「礼には及ばないよ。しかし、あのシステムで操作できるのは、辺境を徘徊しているような機獣のみだ。どうやら旧都市部の機獣は、あのシステムよりも権限が上のマザーコンピュータで制御されているからね。気をつけたまえ」

「あぁ」

 

 機獣操作システムを使えば、簡単に都市部を奪還できると思っていたが、流石にそんなに万能ではなかった。

 

「……で、アカムさ、村の人たちに、自分の出自は話したの?」

「あぁ、話したよ。話したんだが……」

 

『アカムはアカムだろう? 先祖がどうなんて関係ない。君が気に病むことなんて何もないさ』

 

「……村長にもそう言われたし、皆もあまり気にしていないというか、俺だけ悩んで村の人たちと距離をとっているのもおかしくなってな」

「ふふ、だろうね」

 

 私からしたら簡単なことだと思うけど、アカムが自分でそれに気づくことができてよかったと思う。

 

「アカムも色々がんばってね」

「あぁ、君が仲間を集め、対空防衛システムを落とす時は呼んでくれ。君の力になる」

「うん、わかった。ありがとう」

「ゼシルさん。レイさん。もし旅に行き詰まったら、いつでも帰ってきてくれ。君たちは、この村の住人のようなものだ」

「ありがとうございます、村長」

 

 別れを告げ、レイゼオンに乗り込み、長距離飛行モードに変形する。

 そういえば、この機能があることにアカムから羨ましがれたな。

 

「……良いところ、だったね」

「あぁ、私たちは相当当たりを引けたようだ」

「じゃ、次どこ行く?」

「北西、だな。君がアカム氏と訓練してる間はかなり暇だったのでね、次に集落でもありそうなポイントの目星をいくつか付けていたのさ」

「流石」

 

 そうだ。レイに聞きたいことがあったんだ。

 

「そういえば、戦闘中に変なシステムが起動したんだけど?」

「システム……?」

「知らないの?」

「私は把握していないな……まさか、レイゼオンのデータにブラックボックスでもあったというのか……? 詳細を教えてくれ」

 

 レイに、ラヴォラスの戦闘中何かの弾みでシステムが起動してしまったことを話す。

 機体が分析した戦況のデータが直接脳内に提示されたような感覚に襲われ、多すぎる情報量に脳が負担をかけられ、更に身体にまで負担がかかる。

 しかし、そのシステムに従えば、まるで操られているかのように体が勝手に動き、機体を操縦することができて、尚且つ戦況を優勢に傾けることができる。

 初めは興味深そうに目を光らせながら聞いていたレイだが、身体への負担のことを聞いてから、その表情は沈んでいった。

 

「……ゼシル」

「乗るな、なんて言わないわよね?」

「だが……」

「ちゃんとOFFにでもできるし、私は大丈夫。それに、このシステムがあったからラヴォラスに勝てたし」

「君の心配もそうだが、私の知らない機能があるのが気に入らないし、そんな機体を人に使わせるのはもっと気に入らないのでな。どうにかして解析したいものだが……」

 

 ぶつくさと一人の世界に入り出すレイ。解析してくれるなら助かるけど。

 

「よし、行こう」

 

 それはさておき、旅は続く。

 次はどんな出会いがあるのかな。

 





 アカム編終わりです
 思ったよりちんたら続けてしまったので反省


・機体紹介コーナー
 
グライフォード (Greiford)

パイロット : ラヴォラス・ヴァンガロード
全高 : 17.7m
重量 : 30.5t
武装 : 右掌部機獣制御システム
   左腕部複合武装変形システム
   右肩部キャノン砲(ビーム、実弾)
   腰部サイドアーム収納ソード
   腰部サイドアーム収納レールガン
   膝部ビームニードル
   脚部スパイクダガー
   羽部ビームソード
   

地上適正 : ◎
空中適正 : ◎
水中適正 : △
宇宙適正 : △

変形 : ×

機体評価 
駆動力 : A
機動力 : A
防御力 : A
火力  : S
総合  : A

 様々な機体の有用なパーツや武装が継ぎ接ぎになった機体。性能だけを見るならレイゼオンをも凌ぐ強力な機体だが、姿勢制御システムの精度が大幅に低下していたり、パイロットへの負担軽減機能がほとんど機能していないなど、各部位やシステムの無理な結合による欠陥も多く、ラヴォラスの小柄ながら強靭な身体と機体操縦技術があってこそ動かすことができる(動かすだけならアカムにも可能だがアカムでは機体操縦による負荷に耐えられない)。

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