青空戦記   作:烊々

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 ラティナは金髪ロング緑眼のお嬢様です。



邂逅、爆裂お嬢様【後編】

 

 

 

『おほほほほ! 決闘ですわ! 決闘ですわー!』

「……やけに上機嫌ね」

『領主ともなると、決闘でしか自身の腕を試せる機会はないんですのよ! 楽しみですわぁ!』

 

 街外れにある戦機用の決闘場で、向かい合うレイゼオンとシュベリア。

 シュベリアというのは、ラティナの機体。甲冑のような装甲を身にまとい、大型の槍を手に持ち、持つ片方の手に盾を携えている。

 

『さて、準備はよろしくて⁉︎』

「いつでもいいけど、いつ始める?」

『昨日あなたの機体にも導入していただいた決闘用のモードには、試合開始の合図もしてくれる機能があるんですの! それに任せればいいですわ!』

「おっけー」

 

 決闘となると、シュミレーションモードより実戦に近い方がいいらしい。私としても、その方がなんとなく都合が良い。シュミレーションだけじゃ強くなれないと思うから。あのアカムもラヴォラスもおそらく幾多もの実戦で強くなったのだから。

 

「……ふーっ」

 

 決闘モードのカウントダウンが始まり、私は深呼吸する。

 カウントが進むごとに緊張感が迸る。戦闘機の操縦じゃ、緊張なんてしたことなかったのに。

 けど、この感覚は嫌いじゃない。

 

「よし!」

 

 カウントがゼロになり、レイゼオンもシュベリアも動く。

 レイゼオンはライフルからビーム砲を、シュベリアは槍の先端側面からビームマシンガンを放つ。

 出力が限定されていることもあり、互いに大したダメージにはなっていないが、こういう積み重ねがあとになって効いてくるものだ。

 

「……っ!」

 

 牽制射撃を撃ち合った後、ビームソードと槍をぶつけ合う。

 どうやらシュベリアには見た目通りのパワーがあるようだ。パワーが売りのレイゼオンに負けていない。

 そして、ラティナの操縦技術も相当なもの。まるで自らの腕で動かしているような槍捌きに、付け入る隙がない。

 

『おやりになるわね!』

「あなたこそ」

『ふふ、そうですわね! 何故わたくしがノウェンの領主か! それは、政治力や人望だけではございません!』

 

 その時、私は何か嫌な気配を感じ取り、シュベリアから距離を取る。

 

『わたくしがノウェンの誰よりも強いからですわ!』

 

 すると、シュベリアの盾の後側から何かが飛び出した。

 

『さぁ、お行きなさい! カローラビット‼︎』

 

 『ビット』。戦機と独立したジェネレーターを動力とし、脳波制御により遠隔で誘導、操作する攻撃端末。

 カローラビットとは、名の通り花弁のような形状のビットであり、ラティナは四個同時に動かすことができる。

 

 そういえば、ビット兵器の存在はアカムから教わったな。その時に対処法も教わったっけ────

 

「ビット兵器は無敵に見えるが、対処は容易い。敵の位置と視点から考えればビットがどこから攻撃してくるか大体わかるからな」

 

 ────って、当然のように言われたけど……

 

「……わかるかそんなもん‼︎」

 

 あの天才児が……! とりあえず旋回と後退を繰り返し、回避優先で動く。

 敵機のビットから放たれるビームを全て回避できるわけではない。しかし回避できていないものは、くらっても致命的なダメージにはならない部位への被弾のみ。問題ない。

 今は問題ないが、被弾が続くとピンチになりかねない。早くビットをなんとかしなくては。

 

『むぅ……! わたくしのビットから逃れられたお方はいませんのに……!』

 

 焦りからか、ビットの動きが雑になった。その隙を狙い、まずはやれそうな二機のビットから撃ち落とす。

 

『あれま!』

 

 ラティナの動揺で再び生まれた隙を狙い、もう二機のビットを斬り砕く。

 

『二度目はありませんわ!』

 

 しかし、隙は隙ではなかった。ラティナはあえてビットを囮にし、レイゼオンに急接近して槍を突き出してくる。

 

「く……ぅっ!」

 

 これは避けられない。

 シールドの耐久値が大きく削られてしまい、機体の外傷にまで至っている。つまるところ、ピンチだ。

 だが、これでいい。

 以前のシステムも、ピンチになった時に発動した。レイゼオンの真価を引き出す為には、何かリスクを背負う必要があるのだろう。

 

「さぁ……私に何か見せてみなさいよ! レイゼオン‼︎」

 

 すると、狙い通りレイゼオンのコックピットの光り方が変わる。

 

「これで!」

 

 そして、レイ特製の強制的にデータを保存する回路を接続する。レイは、レイゼオンのブラックボックスが非常に気に入らなかったようで、不気味な笑みを浮かべながら夜な夜なこの装置を開発したらしい。

 

「おっ?」

 

 液晶モニターを確認すると、今まで存在しなかった兵装を選択できるようになっていた。

 

「全く……ピンチにならないと使えない武装って何? ピンチにならないための武装じゃないの?」

 

 なんてぼやきながら操作すると、レイゼオンから背部羽が展開され、そこから二機のビットが射出される。

 

『あの機体にもビットが……⁉︎』

「えっと……」

 

 ビットを展開したはいいものの、どう動かせばいいか分からない。ビットの操作が分からずに足を止めてしまっているレイゼオン、フヨフヨと漂うビット、未知の武装に対して様子見の為に距離を取るシュベリア、戦いの最中というのに少しシュールな光景だ。

 

『……ぁー、手足を動かす感覚ですわ!』

「え?」

『難しく考えすぎないで勢いでやってみれば意外といけますわよ!』

 

 すると、察したラティナが私に助言する。

 

「あ、ありがとう。でも良いの? いま絶好の攻撃チャンスだったけど?」

『がむしゃらに頑張るゼシルさんを見ていると、少し応援したくなってしまいまして! それに、勝敗を決めるためだけの決闘ではございませんし! こう言ってしまえば、もう決闘の答えは出たようなものになりますわね!』

「ふふ……けど、勝敗は別よ」

『当然ですわ! さぁ、決着をつけますわよ!』

 

 ラティナの助言を聞くと、なんとなくビットを動かせるようになった。

 レイゼオンのビットは、どうやらラティナのカローラビットとは違い射撃機能はない。ビット自体が敵機を斬り裂くソードのように使用できる所謂『ソードビット』というものだろう。

 

「行くわよ……ソードビット!」

 

 ビットを失ったシュベリアと、二機のソードビットと連携して近接戦闘を行えるレイゼオン、当然戦況はこちらに傾く。

 

『く……っ!』

 

 また、あのシステムの後遺症のような影響で、以前より敵の動きが見える。

 なんだ、私ちゃんと強くなってるじゃん。

 

「これで……っ!」

 

 槍を弾き飛ばし、無防備になったシュベリアにソードとビットを突き立てる。

 

「私の勝ちよ!」

 

 忖度してもらった感はあるけれど、勝ちは勝ちだ。ラティナに充分強さを示せた筈。

 

『そうですわ……わたくしの負けですわね……』

 

 レイへの手土産も用意できたし、良い戦いになった。

 

(意思も力も強いお方……素敵ですわぁ……!)

 

 

 

 

「ゼシルさん! いいえ、あなたこそわたくしの魂の姉妹! ゼシルお姉様と呼ばせてくださいまし!」

「はぁ⁉︎ いや、ちょっと待って、お姉様って……あなたの方が歳上でしょうが!」

「魂の姉に歳など関係ありませんわ! さぁお姉様! 試合で流した汗を綺麗にいたしましょう! 一緒に浴場へゴーですわ!」

「ちょ、た、助けてレイー!」

「私知らなーい。一人でなんとかしてくれー」

「この裏切り者ー!」

 

 決闘が終わると、私はラティナに妙な気に入り方をされてしまっていた。ラティナの執拗なスキンシップが、レイではなく私に向いてしまった。ちくしょう。

 ラティナの配下の人たち曰く年齢の近い友人がいなかった反動、とのこと。そう言われてしまうと断りづらい。私は凄惨な少女時代を過ごしてきたと思うが、独りではなかったから。

 

「ゼシルお姉様!」

「なに?」

「すぐにまた旅に出られるのでしょう⁉︎」

「まぁ……そうだね」

「わたくしもついていきたいところですが、わたくしはこのノウェンの領主! ついていくわけにはいきません!」

「だろうね」

「ので! わたくしはここでお姉様とレイお義姉様の旅の無事を祈っておりますわ!」

「うん、ありが……なんか文字おかしくない?」

「おほほほほ!」

 

 なんか、トントン拍子で話が進んでいくな。まぁそれもそうか、アカムみたいに自身の生い立ちに負い目を感じる人もいなければ、ラヴォラスのように邪悪な意思を持つ人もいないわけだし。

 ラティナ・ハーヴェイン、不思議な人だ。パワフルでありながら優しさも気品もある。過去の地球の権力者が皆ラティナみたいな人だったら、今の地球はこうなっていなかったんだろうな、なんて。

 

「……ねぇ、ラティナ」

「はい! お姉様!」

「青い空と機獣なんていない大地、絶対に見ようね」

「ええ!」

 

 ラティナとの誓いの握手を交わし、その後約一週間の滞在を経て、私とレイはノウェンを発つことにした。

 

「システムを解析したかったが……このソードビットだけでも充分さ……! さぁレイゼオン〜、ママに隠しごとなんてできないんだよぉ!」

 

 うわなにあれ怖、近寄らないでおこう……というわけにもいかず、レイと次の目的地について話し合う。

 

「ねぇレイ」

「なんだいパパ」

「そのおままごとに私まで巻き込まないでくれない? じゃなくて、次はどうするの?」

「このまま東へ向かう。北ユーラシアかな。そこに気になるポイントがあってね」

「そう。なら行こう」

 

 旅支度を済ませ、レイゼオンに乗り込む。

 ラティナをはじめとする街の人々が見送りに来てくれていた。

 

「ゼシルお姉様〜! レイお義姉様〜! いってらっしゃいませ〜!」

「うん、いってくる。ほらレイ、私の後ろに隠れないの」

「街の人からの熱い視線が……慣れない……うぅ……」

 

 北欧を発ち、北ユーラシアという地域に向かうことなった私たち。

 そこで、地球の過去……そしてレイの出自に関連する過去を知ることになるのを、今の私たちは知る由もない。

 

 

 






機体紹介


 シュベリア (SCHUBERIA)

パイロット : ラティナ・ハーヴェイン
全高 : 17.8m
重量 : 22.2t
武装 : ランス
   ランス内蔵ビームマシンガン
   カローラビット
   

地上適正 : ◎
空中適正 : ○
水中適正 : △
宇宙適正 : △

変形 : ×

機体評価 
駆動力 : A
機動力 : B
防御力 : S
火力  : B
総合  : A

 ノウェンの領主ラティナの駆る戦機。まるで西洋の騎士のような見た目をしており、武装はラティナの騎士道精神を象徴した構成をしつつ、ビットという搦手はラティナのリアリストな一面も反映させている。

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