青空戦記   作:烊々

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決戦に向けて

 

 

 アカムとラヴォラスが纏めた勢力、ラティナの私兵、それらを合わせると丁度三十機。小隊程度の規模の戦機隊ができるほどの数が集まった。

 その中で、代表者たる私たち五人の戦機乗りにレイを加えた六人で、対空防衛システムの撃墜にあたって本格的な作戦会議が始まった。

 ちなみに会議場は野外。ファン爺が自身の戦機に乗りながらスピーカーで参加するためだ。そうしないとボケてて会話が成立しないから。

 以前アカムとはっきり会話していたのは奇跡のようなものだ、とシンは言っていた。

 

「さて、私たちの作戦に必要不可欠なものがマスドライバーなのだが……」

 

 作戦会議の司会進行を務めるのは、私たちの勢力の戦機整備責任者となった『レイ・キリシマ』。

 ちなみに本人は役職なんて要らないと言ったが、私たち五人が満場一致で推してほぼ強引に就かせた。

 

「質問ですわ! マスドライバーってなんですの⁉︎」

 

 『シュベリア』のパイロット『ラティナ・ハーヴェイン』が勢いよく質問する。

 

「シャトルなどを宇宙に射出するための設備さ。これがなければそもそも対空防衛システムの元に辿り着けない。マスドライバーは、旧北米、ユーラシア、ヨーロッパそして旧国名ニホンにあったと言われている」

『ユーラシアと旧北米のは現存してねえぞ。ユーラシアはあのザマだし、旧北米のは昔オレが空爆した時にぶっ壊したからな』

 

 『白龍』のパイロット『ファン・ラオフォン』が語る。

 何やってんだこの爺さん……まぁ当時はそういう仕事だったんだろうからしょうがないけど。

 

「ヨーロッパのは? この村から近い。それに、機獣の分布なら俺が実際どの程度か知っている。作戦も立て易いだろう」

 

 『ルシフル』のパイロット『アカム・シュトロイム』が作戦を立案する。

 

「単純に数が多すぎる。マスドライバーがあるヨーロッパ都市部は今この世界で最も機獣の数が多い地点だ。マスドライバーを使って空に行ったとして、地上隊がその後全滅しかねない」

「そうか……」

「都市部の機獣には、ボクのグライフォードにあった制御装置が効かないんだったよね? と、なると、残りはニホンってとこだね。東の国だったっけ?」

 

 『グライフォード』のパイロット『ラヴォラス・ヴァンガロード』が、適当に用意した飲み物を啜りながら喋る。

 

「そうなるね。ゼシル、君の意見は?」

「もう決まったようなものでしょ?」

「だとしても、君が決めるんだよ"リーダー"?」

「その呼び方やめてよ」

 

 そして、最終決定権はリーダーこと私、『レイゼオン』のパイロット『ゼシル・ゼオン』に委ねられた。レイ同様、みんなに推されてリーダーになってしまったのだ。私としてはアカムが適任だと思っていたのが、そのアカムが私をリーダーだと言うのだからしょうがない。

 

「リーダー扱いが不服か? ゼシル」

「少し……だって私って具体的に何かしたわけじゃないじゃん。殴り合いなら誰にも負けないと思うけど、それだけだよ」

「確かにパイロットとしての腕は俺の方が強い、とても強い」

 

 ……なんで強いって二回言った?

 

「レイの方が頭も良いだろうし、ラヴォラスは……まぁ統率力があるな」

 

 アカムは私には無いものを挙げていく。

 いくら私が士官学校の座学でトップだったとはいえレイの頭脳は私の比じゃないぐらい優れているし、私の方がラヴォラスより腕っぷしは強かったけど、私ではラヴォラスのように武力で荒くれ者をまとめ上げることはできない。

 ラティナのようにいつも明るくて人から好かれやすくもなければ、ファン爺のように壮絶な環境で生きてきたバイタリティがあるわけでもない。

 なんか、羅列していたら自分に自信がなくなってきた……

 

「リーダーは、必ずしも一番優れていなくても良いと思いますの! この人について行きたい、この人を支えたい、そう思わせてくれる人もまた、リーダーに相応しい人ですわ! ね、お姉様!」

 

 すると、私の肩を抱きながら、ラティナが語った。

 

「ゼシル、なぜ俺が君の夢に手を貸したいと思っているかわかるか?」

「いや……」

「青空を見る夢に想いを馳せながら語る君の目が輝いて見えたからだ。そんな君の情熱に、俺は素直に心を動かされたんだ。ラヴォラスは狂気とか言っていたがな」

 

 私はただ私のしたいことをしていただけなのに、人の心を動かしていたとか言われると、少し照れ臭くなる。ラヴォラスは後で殴る。

 

「ゼシルがいなければ、レイゼオンも完成せず、私はあのまま機獣に見つかって死んでいただろうね」

「俺は心にモヤモヤを抱えたまま、ラヴォラスと最後まで殺し合っていただろう」

「ボクとしてはそれでも良かったけど……まぁ、こうしてアカム君と気安く話せる仲になれたのは、ゼシルの影響があるだろうね」

「わたくしは、いうか地上を取り戻すという夢を見ているだけで、ずっとノウェンから出られなかったでしょう」

『オレはあのまま寿命で死んでただろうな。がはは!』

 

 皆の熱い視線が集まる。

 そこまで言われたならば、私も腹を括ろう。

 

「良いよ、わかった。そんなに私にやれって言うなら、やってやろうじゃない! 私がリーダーのゼシル・ゼオンよ!」

 

 そして、高らかに名乗りを上げるのだった。

 

 

 

 

「作戦の詳細は現戦力の計上後って、じゃあさっきのは何のための集会だったのよ……! 私をリーダーとして晒し上げるためのものってことじゃない……!」

 

 独り言で嘆いているとおり、先程の作戦会議的なものは、どうやら私をリーダーに任命するためだけのものだったらしく、私がリーダーを務めることが決まったら即解散となった。

 

『戦力の計上にはアカム氏、ラヴォラス氏、ラティナ氏の三人とやる。君はその間自由に過ごしていてくれて構わない』

『邪魔だからどっか行ってろってことね』

『理解が早くて助かる』

 

 会議用の小屋から追い出され、適当に村の中を彷徨いてると、ファン爺の車椅子を押すシンに声をかけられる。

 

「あ、ゼシルさん」

「どうしたの?」

「お願いがあるんですけど……」

「なーに?」

「ファン爺が模擬戦やりたいって言うんですけど、相手してあげてくれませんか?」

 

 どうやらファン爺も退屈していたようで、あまり者同士模擬戦といこうというわけだ。

 

「勿論!」

 

 二つ返事で了承。私としてもファン爺の実力と、あの白龍という戦機も気になっていたから、ちょうどいい。

 

「……さて」

 

 戦機用のコンテナの中のレイゼオンに搭乗し、模擬戦モードを起動。アカムと死ぬほどやった流れだ。

 

『……ふむ』

 

 すると、私と同じように戦機に搭乗し、意識が若返ったファン爺は、私よりも素早く模擬戦モードを起動した。やはり年季が違うんだな。実際に見たわけでないけど、操縦における身体の動かし方などは手慣れているのだろう。

 

『模擬戦とはいえ、アークと交戦するのは久々だな……』

「今はレイゼオンよ」

『そうだったな』

 

 模擬戦が始まり、コックピットのモニターがコンテナから仮想空間へと映り変わる。

 そして、試合開始の表示が出てから、機体の操縦ができるようになる。といっても、模擬戦だから実際に動かしているわけではないけど。

 

「……ん?」

 

 開始早々、何かが飛来してくる。

 

「……っ!」

 

 私はそれが、私を狙った敵の攻撃であることを、レイゼオンのレーダーよりも先に察知し、回避行動を取る。

 

「あれは……?」

 

 飛来してきたのは火の玉。

 そしてまだ敵機は見える位置にいない。

 機体のシステムによる補助はあれど、この遠距離から私の居場所を推測し、正確に弾を送ってくる。やはりファン爺が只者ではないことを意味している。

 

「……ん?」

 

 しばらくして、目視で確認できる距離まで敵機が接近する。

 すると、白龍が口から火の玉をバンバン撃ち出してきていた。

 

「……マジでドラゴンじゃんあの機体」

 

 更に接近しようとすると、白龍の口からビーム砲が射出される。

 今度は火球ではなく照射ビーム。

 弾速に優れているため、見てから避けることはできず、シールドでガード。

 もう片方の腕でビームライフルを持ち、三発射撃を行うも、白龍の動きが早く当たらない。

 

『空中戦で、白龍にはアークでは勝てんよ』

「なら、接近すれば……!」

 

 背部ウイングの出力を上げ、一気に白龍との距離を詰める。

 白龍はレイゼオンに背を向け、距離を取ろうとする。

 

「背中向けると……隙だらけになるよ!」

『どうかな?』

 

 すると、白龍の羽根が光り、そこから無数のビーム砲が射出される。

 

「うわっ……!」

 

 回避とシールドでの防御を繰り返し、機体のダメージを少なく済ませる。それに、派手なのは見た目だけ、数は多いが一発のダメージが少ない。落ち着いて対処すれば、防御力が高いレイゼオンにとっては大したことない。

 戦いながらレイゼオンのシステムで解析した結果、白龍は中遠距離の火力が高い代わりに、ソードの距離まで寄ればレイゼオンなら有利に戦える。

 爪っぽい部分に小型のビームソードが仕込まれているらしいが、そんなものではレイゼオンのパワーに太刀打ちできまい。

 

「そこっ!」

『……ふっ』

 

 すると、白龍が空中でいきなり回転し、変形する。

 ドラゴン型から、他の戦機のような人型へ、と。

 

「……っ!」

 

 尻尾が変形し、ビームソードへと姿を変える。

 

『白龍は、大戦時でも多くはない完全変形型の戦機だ』

 

 変形して人型になると、機体の性能も変わる。

 先程の中遠距離の機動戦に強いドラゴン形態と、レイゼオンに匹敵するパワーを持つ接近戦用の人型形態。

 

『そらっ!』

 

 剣の押し合いに気を取られていたところを蹴り出される。

 そして距離が空くと、白龍は即変形し、火球や羽のビーム砲で弾幕を張ってくる。

 

「く……ぅ」

 

 白龍の強さはその性能だけではない。

 状況に応じて瞬時に変形し、戦い方を変えて敵を揺さぶる、ファン爺自身の高いパイロット能力があってこその機体だ。

 

「……でも、負けたくない!」

 

 リーダーは一番強くなくても良い、ラティナは私にそう言った。

 けど、私は強くありたい。

 明確な理由や目的があるわけじゃないけど、強くありたいというのが、私の矜持だからだ。

 

『ビット……?』

 

 レイゼオンからソードビットを展開しながら白龍との距離を詰める。

 火球やビーム弾幕からは、シールドやビットで身を守る。

 

『そういえば……そんなものあったな』

「そっか、この機体知ってるんだもんね」

『……コックピットをオレが破壊したはずのアークが動くということは……今その機体は他の機体のコックピットをくっつけて使ってるってことだよな?』

「そうだけど?」

『そうなると……う〜む……』

 

 通信の向こうからファン爺の悩ましげな声が聞こえ、そして白龍からレイゼオンに模擬戦の停止要請が出た。

 

「え? 終わり?」

『……キリシマの嬢ちゃんの用事が終わり次第呼べ』

 

 そう言ってファン爺は白龍から降り、車椅子に座るとうたた寝をし始め、シンに運ばれていった。

 気まずそうに頭を下げそそくさと去るシンに手を振って見送り、試合が消化不良で終わったことに対して溜息を吐きながら、コックピットの椅子をリクライニングして寝転ぶ。

 

「ファン爺が言いたいこと……何となくわかるけどね」

 

 独り言を呟きながら、中断されるまでの模擬戦のフィードバックをしつつ、レイの会議が終わるまで待つのだった。

 

 




機体紹介


白龍 (BAILONG)

パイロット : ファン・ラオフォン
人型時
全高 : 22.2m
重量 : 32.4t
武装 : ドラゴンテール(複合型武装ツール)
   ドラゴンクロー(腕部小型ビームソード)
   
変形時 (ドラゴンモード)
全高 : 16.5m
重量 : 32.4t
武装 : ドラゴンテール(複合武装ツール)
   ドラゴンクロー(腕部小型ビームソード)
   ドラゴンキャノン(高濃度プラズマ火球弾)
   ドラゴンブレス(高濃度プラズマビーム砲)
   ドラゴンウイング(羽部小型ビーム砲台)

地上適正 : ◎
空中適正 : ◎
水中適正 : ○
宇宙適正 : ○

変形 : ○

機体評価 
駆動力 : A 変形時 : C
機動力 : A 変形時 : S
防御力 : A 変形時 : C
火力  : C 変形時 : S
総合  : B+


 旧文明でも多くはない、戦闘用の変形機構を完備した機体。
 変形時に多くの武装が使用可能になる特徴があり、癖がないが武装の少なさによる火力の低さがネックな人型時と、得手不得手がハッキリしている変形時を切り替えて戦う。変形を使いこなせるパイロットが使用すれば、各種形態の弱点を補いながら戦えるため、総合評価以上の機体性能を引き出すことができる。
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