青空戦記   作:烊々

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新たなる旅立ち

 

 

「おい! シェルターのハッチを開ける前に天井を突き破る奴がいるか!」

「し、仕方ないでしょ! 人型機動兵器なんて動かしたことないんだから!」

「士官学校首席なんだろう⁉︎ それぐらい初見でなんとかしてみせろ!」

「無理言わないでくれる⁉︎」

 

 発進の時、勢い余って天井を破壊して地上に出てしまった。隣からレイの怒号が飛ぶ。

 とはいえ、マニュアルも無しにいきなり動かせだなんて、首席がどうとか関係無しに無理に決まっているから許して欲しいものだ。

 

「あぁクソ! 戦闘機と感覚が違う!」

「何やってるんだい下手くそぉ!」

「あなたよりは上手いわよ絶対!」

「ってほら! 前見ろ前!」

 

 コックピットの作り方は私の戦闘機とほぼ同じなのに、動かし方が全く違う。

 だからこそ、操縦が上手くできないことに気を取られ、敵機が腕の銃口をこちらに向けていたことに気がつくのが遅れてしまっていた。

 

「……っ⁉︎」

 

 慣れない操縦で、上手く回避をできる筈もない。

 そして、敵機の銃口が光る。

 これは、死……

 ………………

 

「…………っ」

 

 …………

 ……んでいない。

 

「……あれ?」

「なに目を閉じてるんだい?」

「……今ので死ぬと思った」

「そんなにヤワじゃないさ。この機体は」

「らしいわね」

 

 流石は旧世代のオーバーテクノロジー。

 敵機のビーム砲撃を受けても、傷がついた様子はない。

 私の戦闘機だったら、今の射撃で木っ端微塵になっていただろう。

 

「ふーっ……」

 

 深呼吸をして落ち着く。

 敵の攻撃を受けても即死することはない。

 なら、焦らずにこの機械の動かし方を理解すれば良い。

 

「ていうか、武装とかないの? 旧文明のオーバーテクノロジーって言うんなら、なんかそれっぽいのがあってもいいでしょ」

 

 戦闘機のビーム機銃を撃つ時の要領で、右手で握っている操縦桿のレバーに付いているボタンを押してみる。

 すると、レイゼオンの右腕からビームの刃が伸びた。

 

「おっ、なんか出たね」

「なんであなたが驚いてるのよ? これ作ったのあなたでしょ」

「しょうがないだろう? 私だって動いているところを見るのは初めてなんだ」

 

 戦闘機の武装を使う要領で操作したら、この機体でも武装が使える。

 なるほど。同じようなものは同じ、か。

 なら、何が違うかで覚えていけばいい。

 そもそも、自律型の敵機とは違い、こちらは人が乗って動かすもの、人が動かすためのもの。

 当たり前だけど、動かせないようにできているわけではない。

 理屈がわかれば、簡単に動かせるようになる……はず。

 

「武装はこれなら……」

 

 敵機が、銃モードだった腕を剣モードに変形させて迫り来る。

 射撃でダメなら、接近戦でレイゼオンを破壊するつもりなのだろう。

 

「攻撃はこう!」

 

 レイゼオンの腕を動かし、敵機の剣にビーム刃を叩きつけ、弾き飛ばす。

 追撃がしたいけど、無理に動かそうとして失敗はしたくないから断念。

 

「少し慣れてきた。思ったより動かしやすいわ、コレ」

「教育型コンピュータの学習機能によって、多用される動きはオートでやってくれる。例えば歩行とか」

「こっちでやらなきゃいけないのは、攻撃とか回避とかアドリブが必要な動きってことね」

「そういうことさ」

「ていうか詳しいわね」

「電子マニュアルがあったからね。君が戦っている時、モニターの端で読んでた」

「それ、後で読ませて」

「アレを倒して生き延びられたらね」

「了解!」

 

 飛び方も戦闘機とそう変わらないはず。

 先程シェルターの天井を破壊した時の操作を思い出し、機体を浮遊させる。

 

「よっ……と」

「おぉ……! 飛んでいるよゼシル君! 私たちは飛んでいるぞ! はははっ!」

「うるさい」

「はい」

 

 当たり前だけど、機体の形状が違うから、飛んでいる感覚が戦闘機とは違った。

 

「……あれ?」

 

 すると、敵機の挙動に違和感を得る。

 こちらを見上げ、ダメージにもならないビームを撃ってくるだけ。

 

「……てことは、あいつ飛べないんだ」

「らしいね。そもそも対人型機動兵器として作られたものではないと見える。おそらくは人間を虐殺するためのものなのだろう。だからこそ、この機体にダメージを通す手段をほとんど持ち合わせていないんだ」

「じゃあもう、負ける要素ないじゃん」

 

 敵のビーム砲撃を避けたり防いだりしながら、砲撃が止んだタイミングで降下し、攻撃を仕掛ける。

 レイゼオンのビーム刃で、敵機の右腕を装甲ごと斬り裂いた。

 

「ビームだからか、流石の斬れ味だねぇ」

 

 そもそも、このビームはどういうビームなのだろう。私の戦闘機に搭載されていたビーム機銃のものとは威力も燃費の良さも桁違いだ。これだけの出力で起動し続けているのに、エネルギーが切れる気配すらない。

 

『────!』

 

 敵機の赤く光る頭部から鳴る駆動音から、攻撃のタイミングを悟る。

 

「慣れてくれば、躱すのも苦じゃないわ」

 

 思った通りのタイミングに敵機が左腕を剣に変形させて斬撃を繰り出してきたので、これを回避。

 

「それ、目障りだしうるさいのよね!」

 

 そのまま頭部を握りつぶして破壊する。そして──

 

「これで、終わりよッ!」

 

 ──動きが鈍ったところを、ビーム刃で上下に両断した。

 すると、ビーム刃が動力部に誘爆したのか、敵機は爆発し、木っ端微塵に砕け散った。

 

「素晴らしい初陣だったねえゼシル君」

「ありがと」

 

 機体の動かし方さえ慣れれば楽な戦いだった。

 レイが言っていたように、敵のロボは対人間用で、私たちのレイゼオンに対しては赤子も同然だったし。

 

「……戦いによる被害で私たちの住居を全てを破壊しなければ、ね」

 

 レイが指さしたモニターに映っていたのは、粉々に踏み潰された私たちの住居だった。

 ……やってしまった。

 

「……ごめんなさい」

「良いさ。この機体さえあれば、このエリアに定住する必要もない。自律型ロボットに怯えることなく、新天地を探すことができるのだからねぇ!」

 

 何を言われても甘んじて受け入れるつもりだったが、どうやらレイはあまり気にしていない様子だった。

 それどころか、レイゼオンの完成と初陣で心が昂っているようで、見るからに上機嫌だった。

 

「……ねぇ、レイ」

「どうしたんだい?」

「二つ」

「一つ目は?」

「君付け要らない。ゼシルって呼び捨てにして」

「わかったよ。もう一つは?」

「新しい夢ができたの」

「聞こう」

「私は、このレイゼオンで、防衛システムを破壊して、地球の青空を取り戻したい」

「……不可能に近いね。私たちのレイゼオンは最強だと信じたいが、一機だけでどうにかなる問題じゃない。無謀に過ぎないよ」

「わかってる」

「だからこそ、気に入った!」

「……え?」

「どうせ私たちに戻る道などはない。それに、何もしないで一生を終えるか、それとも何かをしようとして一生を終えるか、私は後者の方が好きだからね」

「レイ……」

「私は君に賭けた。だからこそ、この機体を託したんだよ。そして!」

 

 レイは狭いコックピットの中で、腕をいっぱいに広げながら言う。

 

「君の夢は私の夢だ。共に叶えようじゃないか! 私たちの夢を!」

 

 そうだ。結果がどうなろうと、この道を進むことに後悔はない。

 この星の青空を、私たちが取り戻して見せる。

 これが私の、私たちの新たなスタートだ。

 

 

 





機体紹介

レイゼオン (RAY-ZEXON)

パイロット : ゼシル・ゼオン
全長 : 15.5m
重量 : 25.2t
武装 : ビームソード×2
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地上適正 : ◎
空中適正 : ◎
水中適正 : ○
宇宙適正 : ○

変形 : △ (○×△の三つ。○は変形有り、×は無し、△は戦闘用の変形ではない)

機体評価 (S〜Dの五段階)
駆動力 : A
機動力 : A
防御力 : S
火力  : B
総合  : A


 レイ・キリシマが発掘した旧文明の人型機動兵器。
 RAY-ZEXONという機体名称は、レイの名前とゼシル苗字から取った『レイゼオン』という発音を、ハッタリを効かせようとレイが若干いじってこうなった(『X』は発音しない)。 
 実は旧文明の人型機動兵器の中でも最高峰のスペックを誇る名機なのだが、ゼシルがまだ武装や機能のほとんどを把握していないため、その真価を発揮できていない。

 
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