生まれて初めての対機動兵器戦。
そして三対一。
まず注力すべきは、囲まれないこと。これは戦闘機でも機動兵器でも同じ。
敵は、前衛二機、後衛一機にフォーメーションを変える。
前衛二機の内、右の機体は装甲の一部が青く塗られ、左のは赤く、後のは黄色く塗られている。なんとも原始的な色分け、機体のオーバーテクノロジーに似合わない。
「さて……」
機動兵器を無力化する方法は主に三つある。
一つは、当然ながら機体を破壊すること。しかし、一部のパーツを破損させるならともかく、機体そのものを破壊するとなると時間がかかるため、多対一の今の状況では狙いづらい。
二つは、コックピット部分を攻撃してパイロットを直接殺害すること。これも今の時点では非推奨。この状況で、コックピットを狙わせてくれるとは思えない。
三つ目は、装甲にダメージを与え続け、機体をパワーダウンさせること。機動兵器は、機体の装甲表面に目視できないほど薄膜のバリアのようなものが展開されており、見た目以上の防御力がある。通常の物体が当たれば消し飛ぶビーム砲が直撃しても、ある程度は耐えられるのだ。とはいえ、流石にビームソードや一定以上の硬度を持つ実体剣は防ぎきれない。そして、機体へのダメージを受け続けるとエネルギーの消費が激しく、機体全体のエネルギーを動力にすら回せなくなってしまう。レイが持っていた旧文明の資料によると、旧文明の機動兵器戦ではこれによる決着が主流だったらしい。
「来るよ」
「わかってる」
青と赤が実体剣を携え、左右から同時に攻撃を仕掛けてくる。おそらくは私が後退しようとしたら、後ろの黄色が砲撃してくるのだろう。
息のあった連携に見える敵の攻撃だが、赤の方が少しタイミングが早い。
「そこっ!」
連携の綻びを見逃さず、赤の方に突撃し、体当たりする。後退すると思っていた私が前進してきたからか、反応が遅れたようだ。
そして、黄色との射線を赤で塞ぎながら、青に銃口を向け、ビーム砲を放ち牽制。
抑えつけたはずの赤が動く気配を見せたから、赤の頭部にビーム剣を突き刺す。
装甲が硬いといえども、この直撃は防げない。
「ひゅ〜、やるねぇ」
レイの軽口は適当に聞き流す。まぁ、無言でいられるより時々喋ってくれた方が良いけど。
レイゼオンのマニュアルに書いてあったが、基本的に機動兵器のメインカメラやセンサーは頭部に付いており、頭部を破壊された機体は大きくパワーダウンする。
「それっ!」
赤を黄色に放り投げ、トリガーを引き、ビームランチャーを放つ。
狙いは装甲にダメージを与えることに加え、ビーム砲直撃による衝撃で巻き上がる土埃での目眩し。
「本当に二回目の戦闘とは思えないね」
「月ではエースパイロットだったのよ? 容易いわ」
「戦闘機と全然違う、とか言って嘆いていたくせにかい?」
「うっさい」
赤と黄色が一旦行動不能なうちに青を仕留めたい。
解析システムからモニターに映し出されたデータで、敵機の戦闘力が数値化されたものを見て、敵の三機ともレイゼオンよりもパワーが大きく劣ることは確認済み。
これほどの差なら、武装を使わずとも無力化できる。
「……やっぱり私たちのレイゼオンは最強ね」
全面にシールドを構え、背部ウイングを展開し、突撃。駆動力の優位を生かして敵機を抑えつける。機体の性能差を考えれば、このようなゴリ押しも成立する。
『──なっ⁉︎』
接触回線により、一時的に向こうのパイロットの声が拾われる。こっちもオフにしておけば良かったかな。
「どうする? 続ける?」
『──ガキが! 舐めるなッ!』
声が伝わるなら、と半ば挑発とも言える降伏勧告をしたが当然受けられるはずもない。
「なら、続けるわ」
敵が銃から剣に持ち替えようとしたらところに蹴りを叩き込み、ビームソードで右腕を切断する。
姿勢が崩れたところに、ビームソードで左腕も切断し、青の頭部センサーに銃口を当てがい、ビーム砲を放つ。
この時点で機体をほぼ無力化しているが、赤と黄色にもトドメを刺したいし、完全に動かないようにしておいた方がいい。
ボディを踏みつけ、位置を固定したコックピットに、ビームソードを突き入れ────
「やめるんだゼシル!」
────る前に、レイの制止を聞き、位置をずらして腕部を切断した。
「……何で止めるの? 殺す気で来たんだから、容赦とか要る?」
「そうじゃないさ。私たちはこの土地に疎いんだ。利用できるものは利用しないと」
「それもそうね」
確かに、殺してしまえば得るものがない。
「さて、"機体と物資を置いていけ。そうすれば命だけは保証しよう"だったかしら?」
『──ぐ……この……っ! クソっ、聞いてないぞ! アカム以外にもこんな強いのがいるなんて……!』
「無駄話する余裕あるの? こっちはあんたを消しとばしてやっても……」
『──こうなったら、自爆してお前らも道連れだ!』
「……っ、自爆⁉︎」
その言葉に反応し、少しだけ後退ると、敵機のコックピットから"何か"が射出された。
「……っ! ……あれ?」
咄嗟にシールドを構えたが、何かが起きる様子はない。
『──なんてな! じゃあな‼︎』
攻撃と思った私がシールドを構えた隙に、敵機から射出されたコックピットブロックが小型の戦闘機のように変形し、高速でその場を離脱して行った。
「あっ……!」
そして、赤と黄色も、既に同じように離脱して行ったようだった。
追おうにも、反応が遅れたせいですぐに見失ってしまった。
「……やられたね」
「はぁ……勝ったのに釈然としないんだけど……」
「見事な戦いぶりだったよ。私たちも休めるところを探さないと。あんな賊まがいの連中がいるんだ。人々が暮らしている集落のようなものも、そう遠くないと思う」
「逆に、人が住めるところだとあんなのがいるってわけね」
「治安なんてないようなものだね」
しょうがないので、私たちも集落探しを再開することにした。
「……」
賊(レイがそう言っていたから私もそう呼ぶことにした)の一人が言っていた『アカム』という名前。
私ほど強いらしい機動兵器、それともパイロットがいるらしい。
「どうしたんだい? 考えごとかい?」
「ううん、なんでもない」
「わかった。お腹が減ったんだろう?」
「あなたの中の私って食いしん坊キャラなの?」
まぁ、もし戦うことになっても、私が勝つ。それだけだ。
・機体紹介
ブラックハウンド (BLACK HOUND)
パイロット : 賊
全高 : 15.2m
重量 : 35.4t
武装 : 実体剣
小型ビームライフル
地上適正 : ○
空中適正 : △
水中適正 : △
宇宙適正 : △
変形 : ×
機体評価
駆動力 : C
機動力 : C
防御力 : B
火力 : C
総合 : C
賊たちの乗っていた機動兵器。
量産機ゆえに武装は少なく性能は高いとはいえないが、安価で操作も簡単なため、終末戦争では地球のあらゆる戦場で使用されていた。
『ブラック』ハウンドという名称は機体のカラーリングから来ており、白い同型機は『ホワイトハウンド』、青い同型機は『ブルーハウンド』と呼ばれる。