青空戦記   作:烊々

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 私は、自分を"優れている"と思っている。
 それは過剰ではなく、自らの上昇志向と努力によるものだ。
 しかし、そんな私は目撃することになる。
 "優れている"のではなく"外れている"才覚。
 真の強者。その存在、その躍動を。



紅蓮の貴公子

 

 

「『アカム』……? こいつらが言ってた強い人がアレ……なのかな」

 

 そしてアカムという男が口にした『ルシフル』という名が、あの紅い戦機の名前なのだろう。

 

『──お前たちを見るのは三度目だな。警告は既にしている。これ以上俺たちの村を脅かすならば……命を奪う』

 

 次の瞬間、紅い翳が横切ったと思ったら、青の戦機のコックピットに剣が突き刺さっていた。

 

『──ァ!』

 

 断末魔をあげる暇もなく、青のパイロットは死亡し、機体は動かなくなった。

 

『──に、逃げ……』

 

 逃げようとする赤の機体にワイヤーが絡まり、ルシフルの元に引き寄せされる。

 

『──待……っ』

 

 そして、左腕に持ったビームソードでメインカメラを破壊し、抵抗力を削いでから右腕の実体剣でコックピットを突き潰す。

 言葉にすれば簡単な動作だが、それ故に感じられる一切の無駄のない動きに、少し見惚れてしまった。

 

『──っ、うわああぁぁぁっ!』

 

 最後に残った黄色がやぶれかぶれで突撃するも、ルシフルは繰り出された全ての攻撃を寸前で躱し、回避の動きと連動させて攻撃をくり出し、バリアが薄い装甲と装甲の隙間を出力を高めたビームソードで斬り裂き、両腕を切断する。

 抵抗力を全て奪われ無防備になった黄色の機体に、ルシフルはビームソードの出力を更に上げて機体をバリアごと両断した。

 

『──ッ』

 

 そして、ビームが動力部に誘爆し、機体は爆散した。

 数分も経たず、賊は一掃された。

 

「すごい……」

 

 村の用心棒が一人だけというのは危機感がない、私はそう思っていた。けど、この人が強すぎて一人で充分なんだ。

 

『──さて』

 

 すると、ルシフルの頭部がレイゼオンに向く、

 

『──あと一機か』

 

 アカムという男はそう呟くと、間髪入れずにレイゼオンに向かってきた。

 

「えっ?」

 

 おそらく、私のことも賊だと思い込んでいるらしい。

 賊を瞬殺した脅威の戦闘力が私に襲いかかってきた。

 私たちが戦う理由なんてないけど、向かってくるなら相手してやろうじゃない……!

 

「……来いっ!」

 

 ルシフルというこの機体は、おそらくレイゼオンよりも機動力が高い。だからルシフルの回避機動はレイゼオンには真似できない。

 しかし、レイゼオンの方が防御力は高い。全てを回避しようとするのではなく、受けられるものは装甲で受ければいい。

 

『──悪くない動きだ』

 

 賊よりは高いであろう私の実力を見たアカムが呟く。

 

『──だが』

 

 すると、ルシフルの掌部装甲と脚部装甲が展開され、ビームソードが伸びた。

 

『──"悪くない"程度だ。良くもない』

 

 両手に四本、足に二本の剣。

 手数が圧倒的に増えた斬撃に、次第に私は対応できなくなってくる。

 

「……このっ!」

 

 私も剣を振り返そうとするも、まるでそれを読んでいたかのようにスレスレで回避される。

 

「なら……!」

 

 近距離でやり合うのは不利だと判断した私は、距離を取って射撃戦に持ち込む。

 

『──逃がさん』

 

 しかし、先程賊にも使っていたアンカーがルシフルから射出され、それがレイゼオンに絡まり、更にアンカーを収納させることで一気に距離を詰めてくる。

 

「それは、見たわよ!」

 

 アンカーがあることは分かっていた。

 そして、収納か引き寄せで距離を詰めてくるであろうことも分かっている。

 だから私は、それを待って攻撃を叩き込めばいい。アンカーを利用したアクションは普通の戦闘ほど動きの自由度が高くはない。お得意の回避もできないはずだ。

 

『──だろうな』

 

 だがしかし、アカムはそれすらも読んでいたようで、アンカーを収納も引き寄せもせずに伸ばしたまま、思い切り振り回した。

 

「きゃっ」

 

 駆動力はレイゼオンの方が上であるが、咄嗟に操作することができず、レイゼオンは振り回され投げ飛ばされる。

 

「く……ぅ……」

『──終わりだな』

「……っ!」

 

 機体を立ち上がらせようと操縦桿を握り直すも、既にルシフルがレイゼオンを踏みつけており、機体が動かない。

 

『──お前に会うのは初めてだが、どうやら奴らよりも腕は立つようだし、まだ操縦に粗が目立つが成長性は高そうだ。脅威となる前に、ここで芽は摘んでおく』

 

 アカムは右腕のアンカーをビームソードに握り変え、私のコックピットに狙いを合わせる。

 ……ここまでか。

 

『──待てアカム‼︎ 待ってくれ!』

 

 ルシフルの腕が振り落とされる寸前で、通信が入った。アカム宛の通信だったようだが、レイゼオンも電波を拾ったため、私の方にも音声が流れる。

 アカムは狙いを逸らし、レイゼオンのすぐ側の地面にビームソードを突き刺し、その手を離す。

 

『──オルグ村長……?』

 

 レーダー反応の方向を向くと、巨大な農具を装備した戦機が、どしどしと走ってきていた。

 アレが村人の言っていた農作業用の戦機か。

 

『──その人は賊ではない! 賊たちを追い払おうとしてくれた旅人なんだ! 戦いをやめてくれぇ!』

『──……了解』

 

 村長の呼びかけを聞いたアカムはレイゼオンから足を退け、一歩後ろに下がる。

 

『──どうやら……俺の勘違いだったようだ。すまなかった。怪我はないか?』

 

 そして、心から申し訳なさそうな声で私に謝罪をしてきた。

 

「え……えぇ、大丈夫」

 

 しかし、その一方的な謝罪は更に私の心を削った。

 私とアカムが戦いになった理由は向こうの勘違いではあるが、私が事情を説明すれば回避はできたかもしれない。

 しかし、私が襲いかかってきたアカムと戦いたくなってしまったことも事実なのだ。賊たちを一蹴したアカムの実力に対抗心を燃やしてしまったのだ。そして結果は惨敗。手も足も出なかった。

 

「……少しぐらい、私のことも責めてくれれば」

 

 通信を切り、そう呟く。

 アカムはただただ申し訳なさそうにしていた。私に全く非がないかのように。

 だからおそらくは、アカムにとっては私の抵抗など取るに足らないものに過ぎなかったのだ。

 

「何が『最強』よ……」

 

 私は、自分の操縦に自信があった。歴が浅くても、センスのようなものはもっていて、そこらへんの戦機乗りより強いという根拠のない自信があった。

 

「全然弱いじゃん……私」

 

 しかし、本物の"実力"を目の当たりにし、それに手も足もでなかったという事実が、私の心に突き刺さった。

 

 

 






 機体紹介

 ルシフル (LUCIFUR)

 パイロット : アカム・シュトロイム
 全高 : 16.5m
 重量 : 19.7t
 武装 : 頭部ビームバルカン
    ビームソード
    太刀
    アンカーソード×2
    脚部ビームソード×2
    腕部ビームトンファー×2
   

 地上適正 : ◎
 空中適正 : ○
 水中適正 : △
 宇宙適正 : ○

 変形 : ×

 機体評価 (S〜Dの五段階)
 駆動力 : C
 機動力 : S
 防御力 : B
 火力  : C
 総合  : B


 アカム・シュトロイムが駆る機動兵器。
 機体評価はレイゼオンに劣り、駆動力や火力の低さも目立つが、対機動兵器に特化した武装構成とアカムの天賦の才ともいえる操縦技術が合わさり、何者も寄せ付けない強さとなっている。
 
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