悩める少年と気にする少女。
絡まった思いが解けた末にたどり着いた、ふたりだけの時間
月曜日、梅雨の中休みはまだ続くようですこし蒸し暑くすら感じてしまう。
じめじめしていた先週とは違いここ今日の学園は活気に溢れているように感じる。
多くの生徒が元気な表情を見せている昼休み、僕 早瀬暁斗は教室の片隅で頭を抱えていた。
「やって、しまった」
思い出すだけで頭を抱えて絶叫したくなるほどの恥ずかしさ。
多分あのときは変にスイッチが入ってしまったんだ、そうだと思いたい。
正直自分の口からあんな言葉が出てくるなんて想像もできない。
結局あれ以降、桜坂さんとは会っていない。
ライブの次の日は日曜日なので当然と言えば当然だが、確実に顔を合わせる部活の時間は刻々と迫っている。
正直言って、顔を合わせるのがものすごく恥ずかしい。変なやつだとか、ましてや口説いているとか思われたりはしていないか、どうしても気がかりだ。
どうしてもシナリオのことを考えるのも億劫になる。
「……き夫、あーきー夫!」
「んあ、中須か」
顔を向けずともこの声の主はただ一人。
騒がしき隣人、中須かすみのものである
「ぬぐぐ、あき夫のその言い方どうしても気になる……」
「おかしなことを言うんだな。中須は中須なのに。で、なんだ」
「なんだもなにも、なんですか、そんな顔して。隣にいるこっちまで暗くなります」
「単なる悩み事よ」
そう一言だけ言っててまた前を向く。人に言えるわけでもないこの話をどう片付けるか、今の僕にとってそれが一番の問題だ。
「なら! そのお悩みというのをこの名探偵かすみんが当ててみせます! もしかしてさっきの小テストの点数が……」
「それは断じてない」
「じゃあ、おこづかいが足りなくなったとか、いやそれとも……」
隣で勝手に探偵ごっこを始めている中須を横目に一人ため息をつく。部活の時間までこの問題を処理するのは相当難しい。まったく悩みどころだ。
「もしかして、部活で何かあったんですか?」
正解をかすめる質問に心がざわめく。
「まあ、そんなもん、かね」
「えーなになに! 気になりますぅ!」
「君には関係ないだろ」
「かすみんには関係なくても、演劇部ってことはしず子に関係ありそうなことだから知る権利があります!」
しばらく無意味な押し問答が続いたが、おそらく答えが出るまで中須は聞いてくるだろう。僕は観念してそう呟いた。
「あの部長にイジワルされたとか……」
「それは断じてない」
「じゃあ、誰かと喧嘩したんですか?」
「べつに」
今中須が言ったようなものが一般的な部活における悩みと言えよう。その一般的からは程遠い「同級生の女子にキザな事を言ってしまった」なんて悩みを持っているのはおそらく僕ぐらいしかいないだろう。
それにしても中須はどうしてうちの部長の事をあんなに意識するのか甚だ謎だ。
「……もしかして……しず子のこと……?」
中須の事だから予想はしていたが、ついに核心を突く質問が来た。
気まずくなって思わず目をそらすが、あからさまな反応に中須も気が付いたようで顔を一段とこちらに寄せてくる。
そして少し間を開けて、僕はゆっくりとうなづいた。
「……なに」
先ほどまでとはうって変わって真剣な表情となり多少声も低くなる。
いざ話そうとすると、どう言っていいのかなかなか言葉が出てこない。そう簡単に人に話せる内容ではないし、その相手が桜坂の親友の中須とならばなおさらだ。
しかしここまで来て離さないわけにはいかない。
「……この間のライブあっただろ、それに行った時に……」
僕は一度深呼吸をした後ゆっくりと話し始める。
「知ってる。かすみんもステージの上から見えてたし。ずーっとしず子の色にしてたでしょ。控え室に挨拶まで来ちゃって」
「ああ、その。その後なんだが……」
そして観念した僕は慎重に言葉を選びながらも中須に先日の事を何とか伝えた。
「なーに言ってるんですか!!!」
やはり予想通りと言うべきか、中須から激しいお叱り?を受ける。
「し、しず子はスクールアイドルなんですよ! それに向かってな、な、なーんてことを言ってるんですか!!!」
「だって魅了されたのはほんとだったし」
「でも! 言い方が良くないですぅ!! そ、そんなの!」
「そんなの?」
「そんなの……そんなの……」
すると先程の威勢から打って変わって中須は急に言葉に詰まる。
「だから何が」
「とにかく! しず子は特に何か気してる様子もなかったし、たぶん気にしてないと思う……」
色々と気になるところはあるものの、とかく『気にしていないと思う』という中須の言葉に心底ほっとした。
「でも! あき夫がそう思ってるならしず子にちゃんと言った方がいいってかすみんは思います! 以上!! 返事!」
「は、はい!」
言葉の勢いつられて勢いよく返事をする。
中須は目を細めて腕を組んでいるが、今になって考えると中須に話したのはある意味正解だった。中須は桜坂さんに一番近い人物と言っても過言ではない。
「ありがとう、話せてよかったよ。あと」
「なに」
中須はぶっきらぼうに返事をする。
「初めてライブを生で見たけど、かわいかったぞ。衣装も曲もパフォーマンスも全部中須らしさが出てて見てて楽しかったよ」
「と、当然です! かすみんはとーってもかわいいんです! あき夫も分かってますね~」
ライブの感想を伝えた途端に態度を変えて機嫌よさげな様子になった。全く、喜怒哀楽の激しい人である。
「ただ、あまり目立ちたがりすぎるのも良くないぞ。全員でやった時アドリブでフリを大きくしすぎて立ち位置ずれかけてただろ」
「げぇ、気づかれてたとは……」
「あとで桜坂さんに怒られても知らんぞ」
「うちの同好会は自由な方針なんですぅ!」
表情がころころ変わる中須はまさに百面相という言葉がふさわしい。
そんな騒がしくも愉快な隣人と話しているうちに、先ほどまで抱えていた羞恥心と焦燥感が合わさった感情はかなり楽になっていた。
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「うん、粗削りだけど話も良く出来てる。あれだけ悩んでたのが嘘みたいだね」
「これでこそ暁斗だよ~」
勢いで書いたものだったので自分でも出来には多少不安があったものの、僕が書いてきたシナリオは部長と彩花先輩たちにも好評だった。
「やっぱり早瀬さんはすごいです! こんな素晴らしい作品を一日で完成させるなんて!」
同じくシナリオを読んだ桜坂さんは目をキラキラさせてこちらに語りかけてくる。
「素晴らしいなんてほめすぎだよ。僕にとってはまだまだ」
「しずくちゃんは本当に暁斗の各作品が好きなんだね~」
「はい! 早瀬さんのお話はどれも魅力的で、今回も主人公の少女が本当に一途で……」
演劇の話になると桜坂さんは俄然積極的になる。普段ならいつものことかと思うだけだが今日に限ってはどうも落ち着かなくなる。
「こらしずく、あんまり自分の世界に入らないの」
ありがたく部長の助け舟が入った。
「ありがとう、まだ初稿の段階だから手直しは必要だけど、ともかく大筋を完成できてよかったです」
「早速明日から練習ですね! 腕がなります!」
「しずく、暁斗そのことなんだけど」
桜坂さんのやる気に満ち溢れた言葉を遮るように部長が言った。
「明日は、休みにしよう。今日も早めに切り上げようと思う」
「ええっ」
「休み、ですか?」
予想もしてなかった部長の言葉に戸惑う。ようやく台本が出来上がってまさにこれからというところで休みとはまさに水を差された形だ。
「たしか予定では普通に練習だったはずです。それがどうして急に休みなんて……」
「特に何かあるわけではないなけど、ちょっとみんなの疲れがたまってきてるかな、って思って」
「特に君たち二人」
そう言ってこちらを見る部長の目つきは少し鋭くなる。
「私たち、ですか?」
「暁斗はその様子だと昨日おととい徹夜で仕上げたんでしょ。夜更かしは体に毒だし、演技やアイデアにも影響が出るから、ほどほどにしないとだめだよ」
「気を付けます、でも、どうして……」
「その目元を見れば誰だってわかるよ」
そう言われて壁の大鏡に目をやる。
件の考え事のせいで気に掛けていなかったが、確かに言われた通りそこに映る自分の顔は確かに疲れを帯びていた。
「それにしずく、この間のライブの後も残って練習してたんだって、自主練もいいけど、休む時はちゃんと休まないと駄目だよ」
「でも、最近部活に出られていなかったので少しでも……」
「そんなに無理して、体調を崩したらどうするの。無理や疲労が演技にどんな影響をもたらすか、わからないしずくじゃないでしょ」
「はい……」
部長の厳しい言葉に桜坂さんは見るからにげんなりする。心の底から尊敬している人から言われるからこそ、僕よりずっと心に突き刺さるのだろう。
「だから今日明日は二人でゆっくり休んで、それからがんばって。君たちに倒れられちゃ、演劇部としては大弱りだからね」
そう言って部長のは少し広角を上げて僕たちの方を見た。
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長い間懸案だった台本はひとまず完成させられたので少しは気分転換にどこかに行こうかとも考えた。
前から休みが決まっていれば舞台のチケットを取って見に行くなり色々考えられたが、今回は急な話なのでそれはできない。
「いきなり時間ができてもねぇ」
そんな言葉が思わず口から出た。
図書館に行こうにも特に今読みたい本があるわけではないし、かと言ってどこかに遊びに行きたいわけでもない。
おとなしく家に帰って課題と改稿を済ませてしまおう、そう思い家路につこうと校門から足を踏み出す。
「早瀬さん!!」
すると聞き馴染んだ明るく透き通るような声が響く。振り替えるとその声の主である桜坂さんが駆けてきた。
「よかった、メッセにも返信無いからもう帰ったんじゃないかって思ってたんですが、間に合って良かったです!」
言われてスマホの画面を見ると、確かに桜坂さんから居場所を尋ねる連絡が来てた。
「いや、こちらこそ連絡気づかなくって申し訳ないね。それで、どうかしたの?」
「はい、実は早瀬さんをお誘いしようと思いまして」
そう言って彼女は制服のポケットから一枚の細長い紙を取り出した。
手渡されたそれを見るに、どうやら近くにあるお店の割引券の様である。
「ああ、ここたしか最近新しくなったんだっけ」
「はい、部長からいただいたんです。それで早瀬さんと二人で行けたらどうかなと思って」
そう言って桜坂さんは手に持った割引券をこちらに差し出す。
取り出した時から薄々と予想はしていたが、改めて言葉にして言われるとどう返答していいか迷う。
行先などに不満があるわけでもないし、お誘いは十分に嬉しい。
しかも桜坂さんとは先日の件もある。
「でも、僕でいいの? 例えば中須とかと……ああ、たしか補習だったな」
しかめっ面を浮かべる『かわいくない』表情の中須の顔が脳裏に浮かぶ。
「まったくかすみさんは。勉強も怠っちゃダメってあんなに言ったのに」
それと合わせて中須と桜坂さんの仲の良さを改めて実感する。いつも騒がしい中須とそれを見守る桜坂さん、まさに持ちつ持たれつの関係といった所だろう。
「それに、同好会の皆さんが今日は演劇部の方に顔を出してきたらって」
「それで僕の事を? なんだか悪いね」
「はい、早瀬さんとはお話したいと思ってたので」
『お話したい』
その言葉を近た瞬間、体中に冷たいものが駆け巡る。もしかしたら先日のことではないか、そんな不安がよぎる。その表情や口調はいたって自然なものであるが、自分の罪の意識から余計に勘ぐってしまう。
たしかに中須の言う通り桜坂さんが先日の件を気にしている様子は特に見られないし、『お話』が何の事なのか分からない。
要件が先日の件のことかもしれないし、単に昨日今日あったとりとめもない話かもしれないが、今の僕には気になって仕方がない。
『ちゃんと言った方がいい』という中須の言葉が脳裏をよぎる。
確かにこのままはっきりしない関係を続けてしまうと、後々作品の完成に影響が出ることは目に見えてわかる。
絡み合った思考のせいで二人で並んで歩くこの時間が永遠のように感じられた。
「早瀬さん?」
考え込んでいてつい目線を下に下げていると桜坂さんがこちらを心配するな表情で覗き込んできた。察するにどうやら考え込んでいる内に難しげな顔になっていたようだ。
「やっぱり疲れてますか? もしそうならまた後日でも……」
「いや、全然そんなことないんだ」
平静を装ったが、不自然な答え方をしているのは他から見ても明らかである
「早瀬さん……?」
「えっと」
桜坂さんの声色には先ほどよりも心配の色が強く出る。
「もし何か悩みがあったらぜひ私に……」
何も知らない桜坂さんは更に心配した様子でこちらに問いかけてくる。その純真な優しさが今の僕にとってはなんとも言えないほど苦しい。
「え、えっと」
「私は早瀬さんが書くシナリオが大好きなんです。だから、私は早瀬さんの力になりたいんです。だから……」
純真な瞳を向けられながらここまで言われて隠し通すのはもう無理だ、そう直感した。
しかし、言葉が出てこない。何と言っていいかわからない。
必死に頭の中で言いたいことをまとめようとするがうまくいかない。
「あのっ、実は!」
とかくなにか言わなければいけないと思い、思わず声が大きくなってしまった。
そこからは理性より感情が先走って全くまとまりがないが、とかく自分の気持ちを洗いざらい正直に話した。
桜坂さんを不快にさせていたら申し訳ない、とかく変な意味はない、勢いばかりで全くまとまってなかったが僕の言いたいことは伝えられた。
とうの桜坂さんはきょとん、とした表情とでも言うべきだろうか、状況が飲み込めていないようであった。
しばらくの間僕と桜坂さんの間に沈黙が流れる。
「やっぱり」
なんとかこの沈黙を破ろうと必死に考えを巡らすが、先に桜坂さんがゆっくりと言葉を発した。
「早瀬さんって繊細なんですね」
言葉の意味が飲み込めず更に混乱する僕とは対照的に、くすっと笑って桜坂さんは続ける。
「全然気にしてませんし、早瀬さんのそういうところ、私は好きですよ」
『全然気にしてません』
それは僕が一番待ち望んでいた言葉だが、今の絡まった頭の僕には素直に受け止められない。
「それに」
「嬉しかったです。初めてライブを見に来てくれた人が、まだまだ未熟なスクールアイドルとしての私を評価してくれて、『目を離せない』とまで言ってもらえて」
そして、すべてを包み込むような優しい笑顔が続いた。
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そこからの時間は心のつかえが取れたかのようだった。
結果としては中須の言った通り異様なまでの僕の考え過ぎで、当の本人は全く何も感じておらず、むしろ感謝までされてしまった。
恐らくいろんなことで頭が一杯で冷静に考えられなかったのだろう。
その後は桜坂さんのお誘いに乗り二人で出かけることになったが、心の靄が晴れた分いつもよりも見える景色が違って見えた。
目的のお店では桜坂さんに勧められ、普段はまず頼むことのない いかにも「映える」限定スイーツをゆっくりと食べながら演劇談議に花を咲かせた。
お店の後はこれと言って予定もなかったので二人でいろいろなお店を見て回り、たまたま入ったゲームセンターでも二人でゲームに興ずるあまりついお金を使ってしまった。
そして気づけば時間はあっという間に過ぎ、結局部活がある日と変わらない時間までお台場に残っていた。
そして、あてもない散策の末たどり着いたのはレインボーブリッジが大きく見える広いビーチであった。
だんだん夏に近づいていくからか、陽も随分と長くなった。夕方ながらも未だ多くの人が集まっている。
「私、ここ好きなんです。特にこの時間は」
「僕も、なんだよね」
寄せては返すさざ波の音に周囲に響くの楽しげな声が加わり、時たま聞こえる海鳥の鳴き声を聞きながらサクサクと砂を踏み分けてながら波打ち際のすぐ隣を歩いていく。
遠くに目を向ければ夕日に照らされた水面はオレンジ色に染まり、その向こうには灯がともりはじめたビル群や港湾施設が沈みかけている夕陽と合わさって一層きらびやかに輝いている。
「改めて、今日はありがとう。いいリフレッシュになったよ」
「こちらこそ、ゆっくりお話できてよかったです」
改めて桜坂さんにお礼を言う。今となっては『お話』も楽しい時間だった。
「そういえば今度僕の知ってる映画館で昔の映画の上映会をやるんだ。僕は桜坂さんほど詳しくないんだけどもし良ければ・・・」
「そうなんですか!ぜひ行きましょう!わからないことがあったら教えますので!」
桜坂さんはいつものごとく目をキラキラさせてぐいっと身体を近づけた。
やっぱり彼女の好きなものに対する情熱には到底敵わない、改めてそう実感した。
そしてまたしばらく素晴らしい景色を眺めながらしばらく歩いていると、ビーチの片隅に妙な動きをしている人物が目に入った。こちらとはまだ距離はあるが、その人物が誰なのか僕たちには一目でわかった。
「早瀬さん、あれって!」
「うん、間違いないよ!」
顔を見合わせた僕と桜坂さんは一直線にその人物の元へと駆けてゆく。
近づくにつれて僕たちの予想は確信へと変わっていく。間違いない、あの人だ。
「「部長!」」
「しずく、それに暁斗。その様子だと、二人で行ってきたみたいだね。どう?」
我らが部長、その人である。
「はい、おかげさまで。それよりも部長こそこんなところで一人芝居なんて。今日は全員ゆっくり休むんじゃなかったんですか」
「そうです! 自分一人だけ練習なんて……」
「ああ、それは悪かったね。別に練習ってわけじゃなくて私の好きでやってるんだ」
僕たち二人の問いかけに部長はいつもの如くふっとした笑みで答えた。
「それにしても君たち、その様子だとデートは楽しめたようだね」
一瞬あっけにとられたが、前にも似たようなことが言われたことを思い出す。
どうも部長はこうやって後輩をからかうのが好きなようだ。
「ぶ、部長! からかわないで下さい! お店だって部長が……」
「ん? 私はただ ふたりで 行ってきたら、って言っただけ。相手を指定した覚えはないよ」
「で、でも、うぅ……」
部長にからかわれたのがよほど恥ずかしかったのか桜坂さんは頬に手を当ててうつむいた。
「僕としては予定もなかったので桜坂さんのお誘いはありがたかったですよ」
「それはよかった。私としては二人が楽しんでくれたようで何よりだよ」
そう言って部長はふっと笑った。
桜坂さんと一緒に放課後を過ごすという予期せぬ出来事ではあったが、結果として僕の悩みは杞憂に終わ。ここ数日の不安や疲れが一気に楽になった。
「さて、昨日今日でリフレッシュできたと思うし、明日から、本腰を入れていくよ」
「はい! 明日から楽しみですね」
「ええ、色々と大変だとは思うけど、いいものを作ろう」
悩みが晴れた僕にとって、茜色に染まるお台場の街並みは実に美しく映った。
ふとして言った何気ない言葉、そこから巡るふたりの過去。
次回第九回 『変わった人』
お楽しみに。