ピィのピコピコ大冒険   作:あーすの子

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3話 パクノダとピィのネコカフェ来店

 賑やかな街並みで、パクノダは迷っていた。目の前にはガラスのドア。ガラス越しにはふわふわでふかふかの……ネコたちが昼寝をしている。

 

パクノダはネコカフェの前に立っていた。が、そこから一歩も動かない。

 

 何時間こうしているだろうか?人が通る度に、持っているケータイを確認するフリをしている。

まるで、ネコカフェに入りたいなんて悟られないように。

 

パクノダは蜘蛛、幻影旅団の一人だ。欲しいものなら力ずくで奪う。それが幻影旅団。パクノダ自身、欲しい物は力で手に入れてきた。

 

 しかし、ネコというものは力ずくで上手く奪えるものではない。

気まぐれで繊細。無理矢理従わせようとしたらすぐに爪を出す。ネコという存在は蜘蛛でも上手く扱えないのである。

 

ネコを操作するかネコが懐くような念があれば、無理矢理にでも手に入れられるかもしれないが……。

 

それかオーラを飛ばせば大人しくなるだろうが、ネコを怖がらせるのではなく仲良くなりたいのだ。意味が無い。

 

で、手に入れられないからこそのネコカフェ。

 

なのだが、パクノダは中へ入れなかった。

 

「ネコカフェなんて、柄じゃないのよね」

 

ため息を吐いて、ガラスの向こうのネコ達を見つめる。皆、思い思いにソファやネコベッドで眠っている。

客の一人がネコクッキーで釣っている。羨ましいとパクノダは呟いた。

 

入りたい。クッキーあげてモテモテになりたい。もふもふしたい。お腹撫でたい。

が、もし蜘蛛のメンバーに見られたりしたら?

絶対笑い者にされるに決まってる。

 

まあ、ネコカフェなんかに興味を持つ仲間達ではないだろうが。きっとここにネコカフェがあることさえ気づくわけがない。

 

なのだが、妙なプライドが邪魔をして、パクノダは一歩が踏み出せないのだ。

 

「はあ……いいなぁ……」

 

パクノダはもう一度ため息をついて、視線を足下に向けた。

 

ら、いた。

何かピンクの生き物が。

 

パクノダは目を見開いた。

 

 ネコのようなピンク色の耳と尻尾。赤いパーカーに白いワンピース。くりっとした目。小さな口。

ネコ……だろうか? よくわからない。

人間らしいオーラを感じないことに気づく。念獣だろうか、この生き物は。

敵意はないのはわかる。いや、むしろ危険を感じさせない変わった雰囲気だ。

 

不思議な生き物とパクノダはしばし見つめ合う。それから少しして、ピンクの生き物がにっこり笑った。

 

「こんにちは〜」

 

「え? あ、どうも……」

 

開いた口から小さな牙が見える。やはり念獣だろうか。それか魔獣?  念獣なら何かしら攻撃する意図があるかもしれないのに、不思議とこの子はそんなことをしないと確信できた。

 

「どうしてこの店の前をウロウロしてるの?」

 

核心を突いてきて、つい声を上げる。

ネコカフェに入りたいのに気づいているだろうか、いやそうだろうな、とパクノダは考える。

そう考えると自然と顔が熱くなってきた。

 

(いけない。バレバレだ。いつものクールビューティーはどこへ行ったのよ)

 

あまりの動揺に、自分でクールビューティーと言ってしまっている。

 

「別に、なんでもないわ。メール見てたの」

 

苦しい言い訳だが、そう言うしかなかった。

 

「ふ〜ん」

 

ピンクの生き物はジロジロとパクノダを見ている。バレバレだ。

 

「ピィちゃんどうしたの?」

 

と、ネコカフェの店員の男が顔を出した。どうやらこの生き物はピィと言うらしい。

さらにネコカフェの店員たちにも認識されているようだ。

 

「あ! あのね、お客さん!  だよね、お姉さん?」

 

「えっ、いや、別に私は」

 

「ああそうなんですか! いらっしゃいませ! さ、どうぞどうぞ」

 

「どうぞどうぞ〜」

 

と、店員とピィに無理矢理ネコカフェに連行されてしまった。

 

 

 

パクノダは入った瞬間こう言ったらしい。

 

「ここは天国!?」

 

ネコ好きなら楽園であるのがネコカフェ。

パクノダはすでにネコ達にノックアウトされそうだ。懐っこいネコが一匹、パクノダに近寄る。スリッとパクノダの足に体をこすりつけ、またどこかへと行ってしまった。

 

「さ、クッキーどうぞ!」

「どうぞぉ〜♪」

 

店員からクッキーをもらうと、ネコ達が一斉に寄ってくる。

ネコまみれになっているパクノダはデレデレだ。いつものクールな彼女はもういない。

多分蜘蛛のメンバーが今のパクノダを見たら、別人に間違えるだろう。

それくらい顔が溶けている。

 

ピィはそんなパクノダを見てニコニコだ。パクノダの方は猫に夢中で気が付いていないが。

 

カランカランと、ドアベルの音にパクノダは我に返った。

 

「いらっしゃいませー!」

 

ネコカフェのドアが開き、新たに客が入る。

 

「いらっしゃいませ〜」

 

ピィも耳をぴくりと動かすと、客の元へと駆けて行く。

 

「ピィちゃんやっほ〜!」

「ピィちゃんに会いたくてまた来ちゃった!」

 

新しい女性客にチヤホヤされて、まんざらでもないらしい。パクノダはそんなピィをじっと見つめていた。

なんなんだろうか、あの生き物は。

 

「ピィちゃんが気になりますか?」

 

パクノダは一瞬戦闘態勢をとる。突然現れた男が念能力者だったからだ。

男は敵意がないというように、肩をすくめる。

 

「私はここの店長、タマです。どうぞよろしく」

 

「……そう」

 

念能力者が経営しているネコカフェとは、とパクノダは驚きを表情から消して考える。

タマに敵意は無いし、パクノダもきっかけなく戦いを挑むタイプではない。

一応タマの動きを気にしつつ、さりげなく口を開く。

 

「あの子、念獣に見えるけど、貴方の念獣?」

 

タマが小さく笑って首を振る。

 

「いえいえ。彼女はうちでたまにバイトをしにやって来るんです。どうもハンター協会と繋がりがあるらしいんですが、私もそれ以上知らなくて」

 

嘘を言っているようには聞こえない。

 

「ふーん……」

 

パクノダはもう一度ピィを見た。

 

 すると、パクノダとタマの視線に気づいたのか、ピィがこちらを振り向く。女性客達と何かを話すと二人めがけて走ってきた。

足が小さいので、ゆっくりとたとたと駆け寄ってくる。

パクノダの足元までやって来ると、パクノダを見上げて歯を見せた。

 

「お姉さん、楽しんでる?」

 

「ええ……まあ、そうね」

 

「デレデレだったもんね〜お姉さん。よかったねえ」

 

「確かにデレデレでしたねえ」

 

ニコニコ笑うピィとタマ。パクノダは、今の自分を旅団のメンバーに見られなくてよかったと心から思った。

 

「じゃあ店長、あれいく? いっちゃう?」

 

「ふふふ、いきますか? いきますか?」

 

何やら二人の表情が怪しくなる。

 

「お客様、よろしければこの金額をお支払い下されば……VIPルームなどもあるのですが」

 

ささっと電卓を見せる。なかなかの金額だ。

だが、きっとそれなりのネコ天国へ招待するということだろう。

 

「今ならわたしもサービスしますよ〜。わたしはふかふかぷにぷにで最高だよ!」

 

「ぜひお願い」

 

パクノダは悩むこともなくそう答えた。

 

即答すると、そっとピィの頭を撫でる。

ピィのピンク色の髪は、確かにふかふかで気持ちがいい。

ここで触ったことで、パクノダの念能力が発動する。ピィの記憶がパクノダに流れた。

 

最初は無機質な白い部屋で涙を落とす姿が見えた。一転し、年老いた男に優しく撫でられるピィのイメージが浮かぶ。

 

ピィは心から幸せそうだ。

不思議とパクノダの心も温かくなる。

 

「では、VIPルームへどうぞ。こちらです」

 

お金を支払うと、タマがネコカフェ内にある小さなドアへ案内する。パクノダはピィを抱き上げて、勧められた部屋へと入った。

 

「こ、これは……ネコ?」

 

VIPルームに入ると、パクノダは今日二回目で驚愕に目を開いた。

パクノダより大きなネコ(?)、ふっかふかの羽毛みたいな毛皮をもつネコ。気品を感じさせる模様のネコ。

パクノダより大きな巨大ネコが、パクノダを見るなり襲って……いや、戯れてくる。

 

これは念能力者でもないかぎり、押し潰されて死ぬやつだ。パクノダはネコを受け止め悟った。なるほど、念能力者でなければ楽しめないネコ(?)達のカフェか。

 

「どの子たちも合法に保護し、飼育・営業許可を受けています。安心して下さいね。あ、よろしければこちらの募金箱にお金をお願いします。ネコの保護や密猟者の討伐などに使わせてもらいますので」

 

しっかり宣伝もされ、パクノダは少しだけ募金する。

 

「ね? すごいでしょ〜。わたしもここの子達と仲が良いんだ! みんなとっても優しいの!」

 

ピィはネコ達にボールにされているが、ネコなりに戯れているのだと……思う。

 

パクノダはネコやピィと時間ギリギリまで触れ合った。

その日以来、パクノダはネコカフェの常連になるのだった。

 

 

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