リリは階層を登って9階層に来ていた。
「・・・人が良すぎますよベル様。【響く十二時のお告げ シンダー・エラ】」
リリがそう言うと犬人の特徴である犬の耳が消えた。
「・・・これで良いんです。・・・悪いのはベル様で、冒険者なんですから。リリの嫌いな冒険者なんですから・・・」
そう言ってリリは走って8階層に着いた時だった。リリは何か引っ掛かり転んだ。
「大当たりじゃねえか。オラッ!!」
「ガッハァ!!」
リリを転ばせたのはベルにリリを嵌める事を言い出した男だった。
「散々舐めてやがってこのクソ小人族がぁ!!!」
「グゥッ!!」
リリは男から顔や体を蹴られた。
「そろそろあのクソガキを捨てる頃だと思ったぜ。この階層でお前が使える道はそう多く無え。4人で手分けした甲斐があったぜ!!」
そう言ってリリからアイテムを奪った。
「か、返してください!!」
「誰が返すかよ!!ハハハァ!!良いもん持ってんじゃあねえか!!しかも魔剣までもよぉ!!」
「派手にやってますのう旦那!!」
道から男が3人やって来た。それはリリのファミリアの団員だった。
「おう、早かったなぁ。見ろよ魔剣もっていやがったぜ!」
「それは良かったですなぁ。・・・なぁ旦那。一つお願いがあるんですがぁ」
「あん?何だ?」
「そいつの物、全部俺達にくれませんかねぇ!!」
そう言って瀕死のキラーアントを投げた。
「!?て、テメェら、な、何してんのか分かってんのか!?」
「ええ、分かってますよ旦那。瀕死のキラーアントは特殊なフェロモンにより仲間が集まる。冒険者の常識ですよ」
3人の男は笑っていた。そしてキラーアントが集まっていた。
「て、テメェら!!」
「旦那。俺達とやり合っている間に奴らの餌食になりたくないでしょう?」
「く、クソがぁ!!」
男は逃げたが、
「アァァァァァ!!?」
逃げた先にはキラーアントがいて男は殺された。
「よお、アーデ。大変な事になったなぁ、同じファミリアの仲間のよしみだ。助けてやるからアイテム全部寄越せ。渡さなかったらどうなるか、分かるよなぁ」
「わ、わかりました!わかりましたから・・・」
そう言ってリリは男達に鍵を渡した。
「ありがとなぁ。じゃあ、最後に囮になってくれ」
「そんなぁ!?約束が違うじゃあないですか!?」
「サポーターなんぞと約束する冒険者が何処にいる?お前はもう用済みなんだよ!!最後に俺達の役に立ってくれ!!」
リリはキラーアントの群れに投げ飛ばされた。リリは投げ飛ばされながら思った。
(これだから冒険者は、・・・でもそうですよね。これはあのお人好しのベル様を騙した報い・・・でも最後にベル様に謝りたかったなぁ・・・さよならですベル様・・・)
リリが死を覚悟したその時だった。
「リリ!!頭を守ってろ!!」
(・・・ベル様の声?・・・ベル様が裏切ったリリを助けるなんてそんな筈ありません。幻聴ですね。・・・でも最後ぐらい言う通りにしようかな)
リリは頭を守った。
「そこだぁぁ!!!」
それと同時にリリの後ろで爆発音が鳴り響いた。
『『『キシャァァァァァァ!!!??』』』
「「「!?」」」
「べ、ベル様・・・?」
そこにはベルがいた。ベルは万屋で買った手榴弾を使ってキラーアントの群れを倒していたのだ。
「な、何だテメェは!?」
男の1人がベルにそう言った。すると他の男が言った。
「・・・思い出した。そこのガキ、アーデと一緒にいた奴だ!!」
「成程。つまりアンタはこのアーデに騙されてその復讐に来たと見るぜ!!」
「ッ!!」
男の言った事にリリは覚悟した。自分はベルに報復されると思ったが、
「復讐・・・誰にだ?」
「誰って・・・アンタを嵌めたサポーターのクソガキの事だ」
「・・・誰がそんな事を言った?」
「・・・え?」
「俺はリリに何も盗まれていない。それどころかこんな程度の裏切りなんて小さい方だ」
「「「は、ハァ!?」」」
「え?」
リリと男達はベルの言っていた事に困惑していた。まあ、ベルの前世では裏切りなんて日常茶飯事。リリのした裏切りなど前世での裏切りに比べたら小さいのである。
「俺はリリに復讐なんてしようと思わない。それに今はお前らに腹が立っている」
「な、なんだと!?」
「お前ら、こんな小さな女の子から色んな物を奪って、男として大人として恥ずかしく無いのか?」
「う、五月蝿ぇ!!テメェみたいなガキに何でそんな事を言われなきゃならねぇんだ!!」
ベルの挑発に男は怒っていた。
「それにサポーター如きに信用する冒険者が何処にいるってんだ!?」
「・・・お前ら同じファミリアなのによくそんな事が出来るな。腐ってやがる!!」
「生意気な口を聞いてんじゃねぇぞ!!このクソガキが!!」
男はベルに向かって叫んだが、ベルはそれを鼻で笑った。
「リリ少し下がってろ」
「べ、ベル様?」
「いいから、下がってろ」
「は、はい!!」
リリはベルから少し離れた。そしてベルは懐からバットを取り出した。
「今日はちょうど打とうと思ってんだ。ひねくれたカーブをな」
そう言ってバットの先を男達に向けた。
「んだとぉ!?」
「掛かって来いよ。その腐った心を叩き壊してやるぜ!!」
ベルと男達の戦いが始まった。