とある科学の超電磁砲W 二人で一人の仮面ライダー   作:かなん

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復讐のT/照らし出す希望

「誰……?どいうつもり?邪魔しないで!コイツを初春たちと同じ目に……いや、もっとひどい目に遭わせてやるんだから!」

 

「俺に質問するな……!」

 

 トルネードドーパントとなった佐天は生身の髪矢を攻撃しようとしたが謎の赤い戦士に妨害された。髪矢は泣きそうになりながらもメモリを掴んだまま逃げる。

 

「照井竜……!」

 

「待たせたな、フィリップ」

 

 照井と呼ばれた赤い戦士はフィリップに肩を貸した。翔太郎も反対側を支える。

 

「なんでお前がここに?風都はどうすんだよ?まだ裏の住人たちだっているってのに!」

 

「左!少し黙っていろ」

 

 フィリップを翔太郎に任せると、トルネードドーパントと戦闘態勢に入る。

 

「お前が復讐に呑まれた子か。今助け出してやる」

 

「うるさい!私は初春たちを救いたいだけ……そのためなら悪魔にでもなってやる!だから邪魔しないで!」

 

「無理だな。俺は左やフィリップと同じこの街を救う仮面ライダー、アクセルだ。君の心も救ってみせる」

 

アクセルはベルトにあるバイクのハンドルのレバーのようなものを握るとグリップを何度もひねった。

 

『アクセル!マキシマムドライブ!』

 

 トルネードドーパントの作った嵐を走り抜け大きくジャンプした。そしてそのまま回転し回し蹴りを喰らわせる。トルネードメモリは砕け呪縛から開放された佐天は座り込んだ。

 

「私……誰も救えなかった……」

 

 アクセルは変身を解除し彼女に近づく。てっきり殴られると思った佐天は目をつむるが肩にポンと手が置かれただけだった。

 

「確かに君は復讐にこだわりすぎて正義を履き違えていた。だが、人は変われる。約束してくれ。もう復讐という言葉を使うな」

 

「……」

 

 照井と目が合い赤くなった顔がメモリの毒素のせいで徐々に青ざめていく。照井は佐天を抱きかかえると自分のバイクの後部シートに乗せた。

 

「近くの病院まで行く。俺に掴まれ。安心しろ。他の友だちもじきに来るアンチスキルが病院まで運ぶ」

 

 佐天はなんとか照井の腰に手を回し赤いバイクは走り出した。

 

「ってか何でハードボイルダーがダメであれは持ち込みOKなんだよ!」

 

「とにかく今は照井竜に任せて僕らは髪矢の後を追おう……ッ!」

 

「フィリップ!?……まずはゆっくり休め。俺がヤツの足取りを掴む。白井は任せた」

 

 まだウルフドーパントのダメージが残るフィリップに黒子を任せ翔太郎は走り出した。

 


 

「はぁ……はぁ……」

 

 トルネードドーパントに大ダメージを負わされた髪矢。なんとか走り廃墟ビルに逃げ込んだ。

 

「なんなんだよアイツ……しかもあれはシルバーメモリ……俺と同じじゃねぇか」

 

「そのとおり。だから言ったでしょ。やばいって」

 

 どこからともなく歯牙が現れた。入り口とは逆方向から歩いてきたようだ。どうやってこのビルに来たかは謎である。

 

「おい、頼む!このメモリより強いやつをよこしてくれ!」

 

「無理」

 

「なんでだよ!レールガンの能力だって奪ったし、お前らの言うとおりにしてきたじゃねぇかよ!」

 

 髪矢は歯牙の肩を掴むが、歯牙の嫌そうな顔を見て一歩下がった。

 

「そのメモリだってなかなか強いはずよ。足りないのはあなたの実力。ね?イアン」

 

 歯牙と同じく突然柱の陰からイアンが顔を出した。イアンは中学生くらいの女の子を連れている。

 

「そうだね。実力は後々身につけていくと良い。でも、彼女たちの始末はこの子に任せてくれないかい?」

 

「誰だよソイツ。……ってレールガン!?」

 

 その少女の見た目は御坂にそっくりだった。ただ、髪は縛ってあり透き通った青い目をしている。子供っぽい御坂と対称的で麗しく上品な雰囲気である。

 

「この子は御坂美琴のDNAマップを元に作ったクローン、変異個体(ワールドキー)だ」

 

「く、クローン?」

 

「この子はまだ目覚めたばかりでね。調整をしたいんだ」

 

 ワールドキーは会話の最中も全く動かない。瞬きもせずただ正面を見ている。

 

「君には新しいミッションを与えよう。歯牙くん、アレを」

 

 髪矢に渡されたのはレールガンのアビリティメモリだった。

 

「ほら。これを持ってて」

 

「は?せっかく手に入れたのにもう用済みかよ」

 

「まぁまぁそう怒らないで髪矢くん。アビリティメモリは本来人工的に作ることは困難。能力者から能力を奪うしかない、ということは知ってるね?しかし、歯牙くんの研究によって一つメモリを作れば後は量産できるようになったんだよ。だからそれは君に返すさ」

 

「お、おう。でもそんな研究してんなら俺にも教えろよ。俺だって一応研究者だった身だからな」

 

「歯牙くんは研究に没頭すると暴走するからね。研究中は人に会わないようにしてるのさ」

 

 髪矢はウルフドーパントとなりアビリティメモリを自らの身体に挿した。全身の体毛が電気を帯びて左腕にレールガンを模した武器が生成された。

 

「こりゃ良いね!流石レベル5のメモリだ」

 

「どうせ試すならちょっと手を貸してよ。イアンはワールドキーの調整で忙しいし。人捜しをしてもらいたいの」

 

「は?どんなやつだ?」

 

 歯牙の手にはドーパントメモリがある。青色の『O』イニシャルだ。

 

「これと同じ力を持つ能力者よ」

 

 歯牙と髪矢が出ていったことを確認すると、イアンはワールドキーにメモリを渡す。そのメモリは今までのどのメモリとも見た目が異なっていて、イニシャルがない。透明で基盤が丸見えのメモリはまるで試作品のようだ。

 

「これは君のメモリだ。まだ未完成だが」

 

「……私にご命令を」

 

「仮面ライダーの抹殺だ」

 

「了解しました。探知モードに切り替えます」

 

 ワールドキーの目が青から黄に変わりビルを出ていった。

 

「御坂美琴たちは殺すのには惜しい……髪矢くんには悪いが彼女らはまだ殺さないよ。それよりも仮面ライダーのほうだ。エクストリームを使われる前に倒さなくては」

 


 

黒子が搬送された、初春や固法も入院している病院では佐天の検査が行われていた。その結果を聞くために照井は待合室で腕組をして待っていた。しばらくしてカエルと間違えそうな顔つきの医者が診察室から顔を出した。

 

「君、ちょっといいかな?」

 

 手招きされた照井は立ち上がり部屋に入る。

 

「検査結果だけど、特に異常はなかったよ。君が言っていたガイアメモリとやらの毒素は彼女自身の抗体でほぼ消滅したようだね」

 

「まだ彼女は毒素に飲まれていないということか」

 

「うん。君から聞いた話じゃ次に使えば体に影響が出るだろう。他の患者同様に意識不明になる可能性がある」

 

「毒素に侵された人間はメモリブレイクするしかない。なんとしても阻止しなければ……」

 

「まぁ、難しいだろうね……僕が思うにガイアメモリは薬物と同じようなものだ。一度でも使えば手放すのは困難だろう」

 

 確かに言うとおりだ、と照井は頷く。

 

「この街にはガイアメモリ使用で逮捕できる法がない。上層部が動かなければ無法地帯だ」

 

「まぁ上は動かないだろう。色々複雑な事情があるからね。アンチスキルどころか統括理事会すらも闇を抱えている」

 

「あぁ。とにかく助かった。また世話になるかもしれんがその時は頼む」

 

「なるべく怪我はしてほしくないが、街を守る仮面ライダーなら仕方ないね」

 

 照井がフッと笑い部屋を出るとカエル医者はため息をついた。

 

「やれやれ……また患者が増えそうだ」

 

 

 照井が病院のホールに出ると椅子に座っていた佐天が近づいてきた。気まずそうにしているが照井は気にせずついてこいと目で合図する。

 

「あ、あの」

 

「何だ」

 

「翔太郎さんから聞いてます。照井さん……でしたよね?ご家族がドーパントに……」

 

「何が言いたい?」

 

「その……すみませんでした!復讐に夢中になって」

 

 謝罪とともに頭を深く下げた佐天。照井のため息が聞こえる。きっと逮捕されちゃうんだとネガティブな感情が心を覆い尽くすが、照井は優しく佐天の上半身を起こした。

 

「物分かりの良い子で良かった。 前にも君と同じように親友を救って欲しいという子がいてな。その子はその『悪魔の言葉』を軽々しく口にしていた。自覚するまでにかなり時間がかかったが……」

 

「私……自分の心に負けたんです。ガイアメモリを渡されたときに、一度は断りました。でも……これがあれば友だちを助けられるって思ったんです。私も翔太郎さんやフィリップさんのように誰かを守るヒーローでありたくて……変身したんです」

 

「君は十分ヒーローさ。友達のために命をかけて戦った。だがもうそんな無茶はするな。君は守るだけじゃない、守られることも必要なんだ」

 

「守られること?」

 

「君は友達を救った。だが君を救うのは誰だ?今君の友達は動ける状態じゃない。君は孤独だ。俺達仮面ライダーが君を守る。だからこそ君は守られてくれ」

 

 照井の熱くまっすぐな目は佐天の心の雲を晴らしていく。そして雲は消え心の中は青空で満たされていった。

 

「わかりました。迷惑かけちゃうこともあるでしょうけど……それでもいいですか?」

 

「もちろんだ。俺は君をドーパントにはさせない」

 

 二人はヘルメットを被るとバイクに跨り走り出した。

 


 

「にしてもこの街での人捜しは大変だな……」

 

 髪矢を追う翔太郎の追跡は完全に止まってしまっていた。やはり顔なじみの人間が少なくお得意の情報集めができないのが原因だろう。

 

「あの……もしかして左翔太郎さんでしょうか?」

 

 声を掛けてきたのは茶色のウェーブ髪と黒髪ロングの常盤台生だった。

 

「あぁそうだけど……君たちは?」

 

「私は湾内絹保と申します」

 

「泡浮万彩ですわ。実は御坂様の件で力を貸してほしいと白井さんから頼まれていて……ずっと探していたんです」

 

「左翔太郎さんという方が御坂様の能力を奪った犯人を追っているとお聞きしたものですから探していたんですわ」

 

 湾内は白井から送られてきた髪矢の顔写真を見せた。

 

「この方が犯人でしょうか?クラスメイトや先輩方に協力していただいて目撃情報を集めたのですが……」

 

 さながら探偵のような湾内と泡浮に悔しさを覚えつつも二人が集めた情報に目を通した。

 

「すげぇ……行きつけの店もプレデターズのアジトも把握してるのか」

 

「テレパスや記憶系の能力を持つ先輩方のおかげなんです。これで御坂様の能力を取り戻せるでしょうか?」

 

「あぁバッチリだ!と言いたいところだが……ヤツのメモリは強力だ。早いとこ相棒が回復してくれないとな…ロストドライバーも修理中だし」

 

「そいつは好都合だな!」

 

 裏路地から髪矢と歯牙、そして御坂に似たクローンのワールドキーが現れた。

 

「そっちから来てくれるとはな」

 

「対象を発見。戦闘モードに切り替えます」

 

「お前は……誰だ?」

 

「この子は御坂美琴のクローン、シスターズの特殊個体。ワールドキーよ。アンタには調整に付き合ってもらいたかったけど、変身できないなら死んでもらうしかないわ」

 

 ワールドキーは御坂と同じ電撃で翔太郎を襲う。なんとか回避したが次々と攻撃してくる彼女に近づくのは困難だ。懐からスタッグフォン、バットショット、スパイダーショックを取り出し自分の身を守らせる。機械といえそれなりに電気に耐え、翔太郎の体に直撃しないよう必死で攻撃を受けている。

 

「やっぱコイツじゃダメじゃんかよ歯牙。俺の出番だな」

 

「気安く呼ばないで。ま、勝手にすれば?ただ……さっきのセリフは完全に死亡フラグだったけど」

 

「うっせぇ。じゃ、狩り開始だ!」

 

『ウルフ!レールガン!』

 

 ウルフドーパントの鋭い爪が翔太郎の背中に突き刺さった。

 

「ッ……!湾内ちゃん、泡浮ちゃん!早く逃げろ!」

 

「左さん……!」

 

「サヨナラだ。仮面ライダー!」

 

 ウルフの爪が背中をえぐり大量の血が噴き出す。翔太郎の悲鳴を聞き湾内と泡浮は腰を抜かしてしまった。

 もはや絶対絶命。そんなとき、男女二人が乗っている赤いバイクがウルフを跳ね飛ばした。

 

「くっ!誰だ!」

 

「俺に質問をするな!……佐天。君は左と女の子達を頼む」

 

「はい!」

 

 ヘルメットをとり照井と佐天がバイクを降りた。佐天はすぐさま翔太郎に駆け寄る。傷口が酷く開いていて今すぐ応急処置が必要だ。

 

「湾内さん、泡浮さん!近くにジャッジメントの支部があるので応援要請と救急箱を持ってきてもらえますか?」

 

「ええ、わかりました!」

 

「湾内さん、立てますか?」

 

「はい……いきましょう」

 

 憎き相手が倒れる姿を見ておどけていたウルフに対し照井は武器のエンジンブレードを振り下ろした。二十キロの重量を誇るこの大剣の斬撃はドーパント化した怪物でさえも怯むほどのダメージだ。

 

「いってぇな!ホントになんなんだよテメェは!」

 

「俺はこの街を守るもうひとりの仮面ライダー、アクセルだ」

 

「ナニィ!?」

 

 バイクのハンドルを模したバックル、アクセルドライバーを腰に装着すると、『A』アクセルのガイアメモリをスロットに装填した。

 

「変……身!」

 

 右のグリップを握り思いっきり回した。一回だけでなく、まるでバイクを吹かすように何度も何度も。

 

『アクセル!』

 

 照井の身体は赤い装甲に包まれ、顔の青いシールドにあるフェイスフラッシャーが輝く。

 

「さぁ……振り切るぜ!」

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