とある科学の超電磁砲W 二人で一人の仮面ライダー 作:かなん
「この前言ってた財団Xって何?」
なんとか『能力強盗事件』を解決した翔太郎たち。犯人である鎌里晴はアンチスキルに逮捕され、更生施設へと移送された。
いつものファミレスで集まった御坂たち。翔太郎は財団Xについて語り始めた。
「俺たちは風の街、風都で様々な事件を解決した。ミュージアムと呼ばれるガイアメモリ製造組織の壊滅。そのスポンサーである財団Xも痛手を負った。風都でガイアメモリを使った犯罪は激減し、平和に近づきつつあったんだ」
フィリップは続けて語る。
「財団Xはガイアメモリの研究開発をやめ、新たな力を研究し始めた。僕ら以外の仮面ライダーに関する研究をね。コアメダルやアストロスイッチ、最近ではバイスタンプちいうのも開発しているらしい」
「つまり翔太郎さんやフィリップさん以外にも仮面ライダーがいるということですの?」
「あぁ。この世界には存在していないが。平行世界、つまりパラレルワールドにはたくさんの仮面ライダーがいる。財団Xの狙いはそれだ」
「パラレルワールドって存在したんだ……」
「つまり、他の世界に行けるってことですよね?その世界には別の私がいるはず!」
オカルトな話に盛り上がる佐天。フィリップは首を横に振った。
「行くことはできない。かつて『エニグマ』と呼ばれる平行世界合体ゲートを財団Xの科学者が作った。未完成のままだったらしいけどそれで平行世界の研究をしていたらしい」
「そのエニグマは後輩たちが破壊したけどな。完成したらやばかったし」
「でもその財団Xはガイアメモリの研究をやめたんでしょ?アイツの言ってたイアンウルスランドってやつは財団Xだって言ってはずだけど」
死神事件の鎌里晴にガイアメモリを渡したイアンという男は財団Xの幹部と名乗っている。
「考えられるのは財団X内部の分断だな。ガイアメモリ肯定派が別の組織として確立してるんじゃないか」
フィリップは黒子が何か言いたげな顔をしているのに気が付く。
「初春ちゃん。何か考え事かい?」
「はい……先日の能力強盗事件についてなんですけど。ガイアメモリを破壊し奪った能力が元に戻ったはずなんですが……一部の方はまだ能力が使えないままらしいです」
翔太郎は目を丸くした。
「まさか……グリムリーパーの能力は消失しているはずだ」
「事件は解決しても謎は多く残ったね。イアン・ウルスランド。消失したままの能力。そして新たな組織。わからないことだらけだ」
全員が頭を抱え込む。沈黙を破り佐天が立ち上がった。
「気晴らしに都市伝説シリーズでもどうですか?人類を脅かす脅威の悪魔、ギフ!とか」
「ワタクシは結構ですわ。ジャッジメントの仕事が残っているので。行きますわよ、初春」
「は、はい!」
二人は腕章をつけると店を出ていった。残ったのは翔太郎、フィリップ、御坂、佐天だ。
「僕も失礼するよ。少し気になることがあってね」
「俺も行くぜ、相棒」
「君も気になるかい?いちごカレー」
「は?」
翔太郎はてっきりドーパント絡みの件かと思ったが、違ったようだ。実にフィリップらしい。一人で行ってろと叫び、結局残ったのは三人。
「……どうすんのよこの状況」
噂のいちごカレーを食し満足気なフィリップ。ついでなので辺りを散策していた。街の至るところに警備ロボが巡回。さらにジャッジメントやアンチスキルも加わりものすごい警備だ。とても風都では考えられない。
ふと学園都市に来たときのことを思い出した。外部の人間が学園都市に入る際のチェックはとても厳しい。ダブルドライバーやガイアメモリ、メモリガジェットはもちろん、普段移動に使っているバイクのハードボイルダーでさえも持ち込みが許可されなかったのだ。まぁダブルドライバーなどは自律型ガイアメモリにこっそり運ばせたが。
いちごとカレーが混ざった微妙な味が舌にこびりつく中、考え事をしていた。イアン・ウルスランドについてだ。地球の本棚で検索をしたら、ネオン・ウルスランドの息子であったことがわかった。ネオンは財団Xの局長でありかつてダブルが戦った加頭順という男の上司だ。その姿を見たことはないが、財団Xがガイアメモリから手を引いたのは彼女の判断だったらしい。イアンは財団Xの幹部として今も活動しているのだろう。
外での長時間に渡る検索は危険だ。敵に襲われるかもしれない。仕方ないので今の住居(翔太郎と住むボロボロのアパートの一室)に帰ることにした。
第十九学区。学園都市にしては古臭い町並みが特徴的な場所。その端、学園都市を囲む大きな壁が見えるところにある研究施設がある。そこには約六十人近くの研究員がいて、日々能力に関する実験などが行われている。
……というのは表向きの話。裏では非人道的な実験や、外部組織との提携などを行う『暗部』の組織である。その名は『リベンジ』 復讐や恨みを原動力として活動する者たち。そのリーダーこそグリムリーパーの少女にガイアメモリを与えたイアン・ウルスランドだ。
「ガイアメモリの流通は思ったより早いスピードで成功したよ、母さん」
ガイアメモリ製造ラインを一望できる場所でイアンは母親であるネオン・ウルスランドに経過報告を行っていた。
「リベンジでのガイアメモリ開発の成果は出たようね。その調子で例のメモリを完成させなさい」
イアンと違い日本人ではない顔つきのネオンは手に持っていた白いストップウォッチを止めるとどこかへ去っていった。母の姿が見えなくなったのを確認し、携帯を取り出す。
「ワールドキーはどうなっている?……そうか。あとはネットワークに繋ぐだけか。ならば最終信号の回収を急げ」
電話を切り、側にあった大きなカバンの中を開く。そこにはダブルが使うものと同じ形をしたガイアメモリが収納されていた。唯一、端子の部分の色が異なるがジョーカーやサイクロンなどのメモリもある。
「そろそろばら撒くとするか」
イアンは自分のメモリを自身の左腰に挿した。
ファミレスを後にした翔太郎、御坂、佐天の三人は移動販売車のアイスクリームを頬張っていた。
「美味いな!これ!」
「ですよね!ただのバニラなんですけど深い味わいで最高ですよ!」
はしゃぐ二人だったが御坂の様子がおかしいことに気づいた。
「どうしたビリビリ?」
「……アンタってどうして仮面ライダーになったの?力が欲しかったから?」
その言葉に過剰に反応する佐天。力を欲しがるなんてまさにあのとき、レベルアッパー事件の私と一緒だと感じた。
「……ビギンズナイト。俺たちはダブルになったあの日をそう呼んでいる」
そして翔太郎は語り始めた。師匠であるおやっさんこと鳴海荘吉が仮面ライダーだったこと、そのおやっさんが死んでしまったこと、フィリップとの出会いのこと。
「そして俺たちはダブルとなってその島を脱出した」
「……いろいろあったのね」
「悪魔と相乗りする勇気……ですか」
「そうだ。出会ったばかりのフィリップに対して悪魔と言ったことを皮肉にしたんだろうな。今でも俺は悪魔と相乗りだ」
「仮面ライダーは正義じゃないの?悪魔と相乗りってことは仮面ライダーは悪ってことでしょ?」
「確かに正義さ。でも、使い方を誤ればそれは誰かを守る力でなく命を奪うためだけの戦闘兵器と化す。まさにそういう奴がいてな、運命が少しでも違えば悪でなく正義の仮面ライダーになれた奴さ」
翔太郎の頭に思い浮かぶのはEのメモリの仮面ライダーだ。風都を地獄に変えたテロリストであり、箱庭の住人たちを救おうとした英雄でもある。
「……もし私がガイアメモリを使ったらヒーローになれますか」
「ちょっと、佐天さん!」
「わかってます。レベルアッパーの件で痛いくらいに。けど私が仮面ライダーになれればみんなの力に……学園都市を脅かす連中に復讐が」
「そんな甘くねぇよ。涙子ちゃん」
佐天の言葉を遮るように言い放った。その目はさっきよりも険しい。
「復讐。アイツが一番嫌いな言葉だ」
「アイツ?」
「俺の知り合いさ。家族がドーパントに殺されてな。ソイツは復讐の化身となってそのドーパントを追っていた。そして俺たちともぶつかり合ったりして復讐にこだわるのをやめて、人々のために戦ったんだ」
翔太郎が微笑むと佐天は申し訳無さそうに頭を下げた。
「ごめんなさい!都合のいいことばかり言って……翔太郎さんたちがどんな想いで戦っているのか分からなくて……」
「いいんだよ。友達を想う気持ちは必要だ。でも、それを復讐の心に変えるんじゃなくて友達を守りたいって勇気に変えるんだ」
「翔太郎さん……」
「アンタめちゃくちゃカッコつけてたわね今」
「うるせぇ!これがハードボイルドってんだよ」
「こんなヤツ放っておいて黒子達のところへ行こうか。ね?佐天さん?」
御坂はわめく翔太郎をよそに佐天を引っ張りジャッジメント一七七支部へ向かった。
「こんにちはー」
一七七支部に初春と黒子の姿はなく、固法がパソコンとにらめっこしていた。
「あれ?白井さんと初春は?」
「二人ならある事件の捜査中よ」
「事件?」
時は巻き戻り、昨夜。とある寮の一室では月島留奈という女の子の誕生日パーティーが行われていた。六人の女子が豪華な料理を取り囲み、和気あいあいとしている。そんな中、誕生日プレゼントを渡す時間がやってきた。時計、化粧品、アニメのキーホルダーなどごくごく普通の品だ。ある一人以外は。最後に渡されたのはカード。オレンジ色のカードだ。
「これは?」
「インディアンポーカーっていう、夢を自由に見れるカードなんだって」
「へぇ〜寝るときに使ってみようかな」
そしてそのまま誕生日会は終わり、夜遅いこともあり全員部屋で泊まることに。少し狭いが布団は寮の貸出で揃えられた。月島留奈は早速インディアンポーカーを額に乗せて眠りについた。
目を開けるとそこは学園都市ではないどこかの街だった。街の中心では大きな風車が回っている。 興味本位で街を散策してみるとラーメンの屋台や風車をイメージしたマスコットキャラなど、普段見慣れないものばかりだ。どうしたものかと近くの広場で辺りを見渡す。夢とはいえ本当にそこにいるかのような感覚だ。街を歩く人々の会話も、どこか懐かしい雰囲気の匂いも、冷たくもどこか暖かさを感じる風も。
それからしばらくして、街の人々とは異なる異様な気配を感じた。突然目の前が真っ暗になり、意識が薄れていく。最後に聞こえたのは女の囁き声だった。
「夢の中で永遠に寝てな」
現実世界では朝を迎え、同級生達が目を覚ました。だが月島留奈だけ目を覚まさない。どれだけ叫んでも、叩いても起きない。一人が前髪で隠れたおでこに謎の印があることに気づいた。恐る恐る前髪をあげると、そこに書かれていたのは……
「『R』の文字だった、ってわけ。月島留奈は寝言で怪物がって呟いていたらしいわ。恐らくは……」
「ドーパントの仕業……」
「そう。だから白井さんも初春さんもその学生たちに聞き込みをしているのよ」
「アンチスキルとやらの組織は動かないのか?」
「それがこの件はジャッジメントに任せるって。投げやりよね」
「うーん。でもアンチスキルの中にもいい人はいると思うけどなぁ」
御坂たちは知っている。かつて
「白井がさらわれたときにも言ったが、何か大きな組織がアンチスキルを動かしているに違いねぇ。その組織こそ……」
「さっき言ってた財団Xってやつね」
「あぁ。とりあえず俺はフィリップと合流して犯人を割り出す」
「なるほど。夢の中の怪物。額に浮き上がる文字。恐らくはナイトメアドーパントだろう。検索するまでもない」
現在の翔太郎の住まいで合流した翔太郎とフィリップ。御坂も一緒だ。
「ナイトメア?」
「あぁ。前に一度戦った。夢の中に出てきて捕まれば最後、永遠に眠ったままだ」
「夢の中って……倒せないじゃないの」
「いや、あくまで他人の夢に入り込むだけで、本体は現実世界にいる。それを探すのが今やるべきことさ」
翔太郎は被害者とその友人の名前、悪夢、Rの文字、インディアンポーカーとフィリップにキーワードを言う。
「ダメだ。絞れない」
「やっぱあの文字の意味がわかればなぁ」
以前ナイトメアドーパントと戦ったときは額にHの文字が浮かんでいた。それはドーパントとなった加害者と被害者のイニシャルだった。今回のRも被害者の月島留奈のイニシャルだ。偶然かもしれないが。
「まずは彼女が狙われた原因を探してみよう。まだ他に被害者が出ていない以上彼女を狙った犯行の可能性がある」
「じゃあ私はインディアンポーカーをあたってみるわ。何かあったら連絡するから」
御坂はインディアンポーカーを調べるためにそ部屋を出た。翔太郎は早速犯人の目星をつける。
「まず怪しいのは同じ部屋にいた同級生たち五人だ。とりあえず被害者の学校で情報収集だな」
「じゃあ僕はナイトメアドーパントについてもう一度詳しく調べてみるよ」
翔太郎は被害者の月島留奈が在籍している学校に足を運んだ。同じクラスの子や教職員に話を聞いてみると、皆口を揃えてこう言った。
「彼女に恨みを持つ人間なんていない」と。
月島はクラスの学級委員と生徒会長を務め、もうすぐジャッジメントの適性試験を受ける予定だったらしい。学級委員というと翔太郎にとっては風紀が絶対の真面目ちゃんがやっているイメージで、不良などから嫌われている感じだ。だが月島は全然違うらしい。
「あぁ。いいヤツっすよ。アイツ」
体育館裏でたむろする不良たちの話は意外なものだった。翔太郎は驚きつつも耳を傾ける。
「俺たち、暑くてたまらなくなってアイス欲し〜ってぼやいてたんす。そしたら会長がその話を聞いたらしくて自動販売機を校内に置きたいって提案したみたいで」
確かに生徒会長としての役割を果たしているみたいだがそれでいいヤツ判定なのか?と翔太郎は首をかしげる。
「他にも携帯の持ち込み禁止を撤廃したりイジメの撲滅とか……アレはすごかったなぁ」
「そうそう。生徒同士はもちろん、センコーからのイジメも許さないヤツでな。探偵ばりに証拠を集めてジャッジメントに提出してたっけな」
もっと月島を恨む話かと思っていた翔太郎は頭をポリポリと掻いた。
「それいいヤツっていうか単に甘いだけなんじゃねぇのか?」
月島の担任の男とも話してみた。彼は現在の状況を聞いて大きなため息をついた。
「月島が意識不明か……彼女は何も悪いことをしていないのに何故なんだ……」
「あの、センセーから見て彼女はどんな子でしたか?」
「それはもう優秀で。学校の風紀と生徒の個性を大切にしている子でしてね。この二つを両立させるのは我々教員でも非常に難しい。だが彼女はそれを見事に実現させた。それで生徒からも教員からも好かれているんですよ」
「つまり恨まれるような子ではないと?」
「えぇ。才能ある者に批判はつきものですが彼女は例外です。彼女に対して嫉妬などの感情を持つ者はいませんよ」
いつもならこの聞き込みで裏に隠れた闇が露わになるはずだったが、今回はそうもいかない。他人の心の中でも見れれば良いのだが。
「……心の中を……はっ!アイツだ!」
翔太郎は思い出した。ここは学園都市。そんなSFチックなことも可能な場所。そして他人の考えていることがわかる人物がいることを。
「……で、私を探して常盤台の不審者になったのねぇ」
「ちげぇよ!確かに帽子を深く被ってて怪しかったんだろうけどな!」
守衛に訪ねたのがまずかったのだろう。すぐに怪しまれて別室に連れて行かれ事情聴取されたのだ。たまたまその一部始終を見ていた目的の人物、食蜂操祈に助けられ誤解を解くことができた。
「女の子をいかがわしい目で見るのはどうかと思うゾ☆ましてやそれをインディアンポーカーにするなんて……あの話はなかったことにしておきましょ」
「何言ってんだ?まぁいい、お前なら真実を突き止められると思ってな。やってくれるか?」
「ま、いいわよ。その代わり一つだけ聞いてもいいかしら?」
「あぁ。いいぜ」
食蜂はおちゃらけた態度から一変。鋭い眼差しであるものをカバンから取り出した。
「これのこと、詳しく聞かせてもらおうかしら」
それはQ『』と描かれたピンク色のガイアメモリだった。端子部分が青く光っている。
「T2メモリ……!」
T2メモリとはかつて風都にばら撒かれたもので、メモリの適合者と過剰に惹かれ合う性質を持つ厄介なもの。ダブルがメモリブレイクし破壊したはずだが……
「何故か私のカバンの中に入っていたのよ。あなたたちが使うガイアメモリ?だったかしら。それと似ているから気になるのよね〜」
「それは俺たちが変身に使うのとほぼ同じだ。そのメモリには変わった性質があってそのせいでお前のところに来たんだろう。勝手に挿さってドーパントになったりするかもしれないな」
食蜂はため息をつきメモリを翔太郎に渡した。
「な〜んだ。そんな危ないものならいらないわぁ。怪物になんかなりたくないし」
「お、おう。まぁとにかく頼んだぜ」
「えぇ。なにか分かったら連絡するわぁ」
食蜂は手をひらひらと振り去っていった。
『風都探偵』を見ていますか?
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