とある科学の超電磁砲W 二人で一人の仮面ライダー 作:かなん
フィリップは一七七支部を訪れていた。
黒子や固法はいない。巡回だろうか。
「やあ初春ちゃん。捜査は順調かい?」
「フィリップさん!それが……」
「何か問題でも?」
「月島留奈さんが誘拐されるかもしれないんです!」
初春はパソコンの画面を見せた。そこには数名の生徒の情報が並んでいる。学校も能力も性別もバラバラでまるで共通点がない。
「この生徒の共通点がインディアンポーカーなんです。全員それを使って昏睡状態になった後、何者かに誘拐されていて。今白井さんと固法先輩が月島留奈さんが入院中の病院に急行してます!」
「月島留奈以外の被害者が出たか。昏睡……ナイトメアドーパントの仕業だろう。犯人なら僕に任せたまえ。検索を始めよう」
フィリップは意識を集中させる。目を開けると真っ白い空間にたくさんの本が並んでいる。ここは地球の本棚だ。
「まず一つ目は、インディアンポーカー」
本棚が素早く動き回り、さっきよりも数が減っている。
「次に、悪夢、昏睡、誘拐」
四つ目のキーワードで無数にあった本は一つを残し消えていた。
白紙の本をペラペラとめくるフィリップを不思議そうに見つめる初春。本を読み終えたフィリップは眉をひそめる。
「その連続誘拐事件の犯人は分かった。けど、まだ引っかかる感じがする」
「どういうことです?」
「いや、今は月島留奈が危ない。翔太郎に連絡して犯人を捕らえる」
とある病院、月島留奈が入院しているこの場所では黒子と固法と数名のジャッジメントが厳重な警備体制をとっている。 それを外から眺めていたある男は花束を抱え病院へ入ろうとしたが、駆けつけた翔太郎に気づいて足を止めた。
「お見舞いにしてはコソコソしすぎじゃないですか、先生」
翔太郎の言葉に答えるようにその犯人はゆっくりと振り向いた。連続誘拐事件の犯人は月島留奈の担任、新谷だったのだ。
「何か用ですか?探偵さん」
「あぁ。アンタの邪魔をしに来た。月島留奈ちゃん誘拐の邪魔をね」
もう隠しても無駄だと悟った新谷はそれまでの爽やかな態度が嘘のように狂い始めた。
「あ~あ。これで十人目達成だったのになぁ。よく気づきましたね」
「相棒ととあるお嬢様のおかげさ」
フィリップが連続誘拐事件の犯人を特定し翔太郎に連絡をいれる数分前、食蜂から調査結果が届けられた。
『もしも〜し。月島留奈の件なんだけど、特に異常はなかったわ。あなたの聞いてたとおり良い子だったみたい。ケド……』
「なんだ?」
『実は一人だけ、変な考えがダダ漏れなのよ』
「どういうことだ?」
『月島留奈誘拐計画を企てているってことよ』
そして新谷が誘拐犯であると知った翔太郎はフィリップから連絡を受けた。
『翔太郎!月島留奈が危ない!彼女の担任の新谷は誘拐犯だ!』
「あぁ!今さっきそれを知ったとこだ!今から向かう!」
「相棒の調べではその連続誘拐事件の共通点があったらしいぜ。まずは学校だ。みんなバラバラだが、全てアンタが教員をやってた学校だったんだ。異動の後に起こったのが八件、在籍中のが一」
翔太郎はゆっくり歩み始める。
「次に能力だ。被害者の能力はそれぞれ違うが、レベルは3〜4。アンタが勤務する学校は能力開発以外で有名なところばかりで高レベルの能力者が少ない。なぜなら常盤台みたいな名門校に行きたくても許可が降りなかったからだ。だから数少ない高レベルの能力者を狙っては異動して次のターゲットを探した」
新谷の目の前まで迫り花束を思い切り蹴り飛ばした。落ちた花束の中からガイアメモリが飛び出す。
「そのゾーンメモリを使って眠ったターゲットを移動させ監禁した。違うか?」
地面に転がったメモリはゾーン。対象を瞬間移動させることができる力を持つ。新谷はため息をついてメモリを拾い上げた。
「やれやれ。彼女は金になると思ったが諦めるか」
「金?お前の目的は人身売買か?」
新谷は小馬鹿にするかのように鼻で笑った。
「違うよ。僕の目的は能力さ。高レベルの能力者から能力だけを奪い、それを高値で売るんだよ」
能力売買。グリムリーパードーパントも同じことをしていた。能力を奪い、他人に売る。彼にもそれができるようだ。
「このメモリデバイスを使えば能力者の力が入ったアビリティメモリが作れる。そしてこのメモリは通常のメモリと組み合わせれば強力な力を発揮できる。こんなふうにね!」
新谷はポケットから赤く光る基盤がむき出しのメモリを取り出して、ゾーンメモリと同時に両膝に挿した。
『ゾーン!テレポーター!』
ピラミッドのような見た目をしたドーパントに変わり、そこから更に進化を遂げた。手や足が生え、限りなく人に近い姿になり、まるでエイリアンのように気味の悪い化け物となった。
「前に戦ったゾーンドーパントと違う!?これがアビリティメモリか!」
翔太郎はダブルドライバーを腰にあてる。シュルシュルとベルトが巻き付き、変身準備が整った。
「フィリップ!変身だ!」
『あぁ』
ダブルドライバーを通じて変身を呼びかけジョーカーメモリのボタンを押した。
『ジョーカー!』
「変身!」
『サイクロン!ジョーカー!』
激しい風に包まれて仮面ライダーダブルとなった翔太郎はゾーンドーパントに殴りかかる。ゾーンドーパントは瞬間移動でダブルの背後にまわり鋭い爪で引っ掻いた。
『おかしい。前に戦ったゾーンドーパントとは見た目も能力も異なっている』
「いろいろあってな。ルナトリガーでいくぞ」
サイクロンとジョーカー、両方のメモリを入れ替えた。
『ルナ!トリガー!』
黄色と青のダブルが放つ銃弾はクネクネと曲がりゾーンドーパントに命中した。
「追尾弾か。ならば!」
直撃寸前の弾丸をダブルの背後にテレポートさせる。弾丸はゾーンドーパントを追うが目の前のダブルの背中に辺り火花を散らせた。
「くっ!なかなかやるじゃねぇか。どうするフィリップ?」
『ヒートに変えて炎でダメージを与える』
『ヒート!トリガー!』
ヒートメモリをトリガーマグナムに装填し、マキシマムドライブを発動した。
『ヒート!マキシマムドライブ!』
「『トリガーエクスプロージョン!』」
回転しながらの銃撃によりダブルの周囲は炎に包まれた。再び背後に回り込んでいたゾーンは体が炎上しもがき苦しむ。そしてゾーンにゼロ距離での必殺を行い大爆発を起こした。
爆発音を聞いた黒子がテレポートで駆けつけると、破壊されたゾーンメモリの横で倒れている新谷がいた。意識はまだあるようだ。
「この方が初春の言っていた……」
「そう。連続誘拐事件の犯人をとっ捕まえたのさ。連行よろしくな」
ダブルは右手でもう一つのメモリを拾った。アビリティメモリは傷一つない。
『このメモリはブレイクできなかったようだね』
意識のない新谷を手錠で拘束した黒子はホッと息をついた。
「これで悪夢事件は解決ですわね。夢の中の怪物はこの方だったのでしょう」
「ははは……これで終わりか」
「インディアンポーカーを使い生徒を眠らせた挙げ句能力を奪い取る……なんと悪趣味な。罪を償ってくださいな」
「インディアンポーカー……?なんのことだ?私は昏睡状態の生徒を誘拐しただけだ」
黒子は思わず「は?」と声が出た。
『いや、まだ終わっていない』
「コイツのメモリはゾーンだ。他にナイトメアドーパントがいるはず」
その後、新谷はアンチスキルに逮捕された。家宅捜索で被害に遭った生徒たちが発見されたが、夢の世界から開放されることはなかった。
[新谷]
月島留奈の担任。ゾーンドーパントに変身。数人の生徒を誘拐してその能力を奪った。
[アビリティメモリ]
学園都市の能力者の記憶を宿したメモリ。生成には能力者の力を奪う必要がある。ドーパントメモリと併用で強力な力を生み出す。メモリブレイクはできない。
[ゾーンドーパントT]
ゾーンメモリとテレポーターメモリの同時使用で強化されたゾーンドーパント。ゾーンメモリでは不可能だった自身の瞬間移動が可能。さらに光弾も強化されている。
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