とある科学の超電磁砲W 二人で一人の仮面ライダー   作:かなん

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もうひとりのF/妹からの依頼

 とある病院、そこに学園都市第一位、一方通行(アクセラレータ)は入院している。ある少女のために命をかけた彼はその子と一緒に平穏な生活を送っていた。

 

「ねぇねぇ、今日はどこにお散歩に行くの?ってミサカはミサカは尋ねてみたり!」

 

「あぁん?」

 

 眩しい彼女の笑顔に思わず顔をそむけた。外は青空で広がっていて、開いた窓から爽やかな風が吹きアクセラレータの白い髪をなびかせる。

 

「お前はどこか行きたいところがあんのか」

 

「うん、カラオケってところに行きたい!ってミサカはミサカは初めての場所に心を踊らせてみる!」

 

 少女は左右に揺れそのたびにアホ毛がぴょこぴょこと動く。

 

「チッ。今回だけだぞ」

 

「やったー!」

 

 後にアクセラレータはこの行動を後悔することになる。

 

 

 アクセラレータが外出するときは杖を使う。それは脳に深刻なダメージを受けてまともに歩くこともできないからだ。アクセラレータの能力はベクトル変換。指一本触れることができない脅威の能力で学園都市第一位に君臨した。最強の座を手に入れたアクセラレータは絶対能力進化(レベル6シフト)計画に参加。『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの』を目指したがある無能力者(レベル0)に敗北し最強の座を失った。唯一手に入れたのは少女、最終信号(ラストオーダー)との出会いだ。彼女が今のアクセラレータを支えている。

 

「ねぇねぇ、まだつかないの?ってミサカはミサカは我慢の限界を伝えてみたり」

 

「もう少しだ、我慢しろ」

 

 さらに歩いてついにカラオケ店の目の前に到着。うきうきで入ろうとするラストオーダーの首元を掴んだ。

 

「なにするの!ってミサカはミサカは怒ってみる」

 

「何かおかしい」

 

 アクセラレータに言われたラストオーダーは辺りをぐるっと見渡してみる。いくら平日の昼間とはいえアンチスキルの巡回くらいはいるはすだ。だが誰もいない。怖くなりカラオケ店に入ろうとしたがガラス越しに人の姿はない。辺り一帯ゴーストタウンだ。

 

「誰がこんなことしてんだ?」

 

「私だよそれは。第一位くんと二万一号ちゃん」

 

 気づかないうちに何者かが後ろに佇んでいた。スーツ姿でRのネクタイ、イアンだった。

 

「暗部のヤツか」

 

「まぁそうだね」

 

「何が狙いだ?」

 

「本当は君の能力が欲しかったが、君から能力を奪ってしまうと統括理事会が黙っていなくてね。だからラストオーダーちゃんだけ貰っていくよ」

 

 イアンはゆっくりラストオーダーに近づいていく。それを邪魔するようにアクセラレータは立ちふさがった。

 

「ンなことさせるかよ」

 

「いいでしょう。君の能力は全開で約十分、それまでに私を倒せるかな?」

 

 アクセラレータはチョーカーに手をあてた。そして地面を蹴る。すると地震のように大きな地響きが鳴りイアンの足元が爆発した。イアンは空中に投げ出され、アクセラレータは直接拳で殴り追撃した。地面にめり込んだイアンは苦しそうに立ち上がった。

 

「おいおい、つまんねぇな」

 

「……」

 

 アクセラレータはイアンの不気味さに眉をひそめた。彼は攻撃を受けて苦しんでいるのではない。笑っていたのだ。

 

「流石だよ。私も本気を出さなくてはね」

 

 イアンが手をかざした。その瞬間、アクセラレータは立っていられなくなるほどの頭痛に襲われた。

 

「チッ……なんだこりゃ!?」

 

「君の能力を無効化した。能力がない君は立っているのがやっとだろう」

 

「やめて!ってミサカは……」

 

 アクセラレータの前に立ったラストオーダー。イアンはやれやれと肩をすくめた。

 

「人間じゃない分際で感情を露わにするなんてね」

 

『カタストロフィ!』

 

 Cのイニシャルがはいったドーパントメモリを起動するとメモリは宙に浮いた。

 

「見せてあげよう。かつてある街を恐怖に陥れた組織、ミュージアムが使っていたゴールドランクのメモリと、新型ガイアドライバーの力を合わせたドーパントの姿をね」

 

 ダブルドライバーとは異なるがスロットつきのバックルを巻いてメモリを装填した。

 

『カタストロフィ!』

 

 まばゆい光を放ち現れたのは赤と紫の怪物だった。火山や隕石を彷彿とさせるカタストロフィドーパントは抵抗するラストオーダーを抱え姿を消した。

 

「……くそがァァァァァ!!」

 

 アクセラレータはカタストロフィドーパントの能力が切れ自身の能力が使えるようになったが既に活動限界に達している。カタストロフィに叫んだ後に意識を失ってしまった。

 


 

 それから一日経ち、翔太郎は昼飯を買いにスーパーに来ていた。

 

「平日だから学生はほとんどいないな。ゆっくり買い物ができるぜ」

 

 弁当を買い店を出ようとすると、見慣れた制服の少女を発見した。御坂だ。御坂は何かを探すように辺りを見渡し、目的のものがなかったのかスーパーを出ていった。翔太郎はそれを追いかけ御坂に追いつくと肩を叩いた。

 

「平日の昼間に何出歩いてんだよビリビリ」

 

 御坂は振り向いた。だが何か様子がおかしい。まるで別人のような反応だ。

 

「『ビリビリ』というのはミサカのことでしょうか」

 

「お前以外誰がいるんだよ」

 

「人違いです。あなたが言っているのはお姉様のほうではないでしょうか、とミサカは推測します」

 

 確かにいつもと違い大きなゴーグルをつけている。別人のようだ。

 

「ビリビリに妹がいたのか……しかも同じ顔で同じ制服かよ」

 

「あくまでこれはコスプレです、とミサカは釘を刺します」

 

「こんな時間に何してんだ?」

 

「人捜しです」

 

 まさに翔太郎の仕事だ。

 

「で、どんな人だ?」

 

「ミサカにそっくりで、かつ幼い姿の少女です、とミサカは説明します。あなたも手伝ってくださるのですか?」

 

「任せな。俺は探偵、左翔太郎だ。……ただ昼飯は食わせてくれ」

 

 空腹を満たすために一度自分の家に帰り弁当を食した。御坂妹も一緒だ。

 

「翔太郎と美琴ちゃんが一緒とは珍しいね」

 

 フィリップが別室から顔を出した。御坂ではないと気づいていないようだ。

 

「コイツは妹だとさ。人捜しを頼まれたんだ」

 

「お邪魔しています、とミサカは懇切丁寧に挨拶をします」

 

「へぇ。君の名前は?」

 

「ミサカはミサカ一〇〇三二号です」

 

 意味不明な発言に二人は首をかしげた。表情一つ変えない御坂妹がさらに不気味に思えてくる。

 

「と、とにかく検索だ。なぁ御坂妹。その子のことをなんでもいいから教えてくれ」

 

「はい。彼女は二〇〇〇一号、別名最終信号(ラストオーダー)と呼ばれています。恐らく彼女を誘拐した目的は『ミサカネットワーク』でしょう。ミサカネットワークを乗っ取って全個体のミサカを制御しようと……」

 

「まてまて!情報が多すぎるしわけわからんことばっかりだ!」

 

 御坂妹が発言の中に残したキーワードをもとにフィリップが検索を始めた。ラストオーダー、ミサカネットワーク、御坂妹……何冊か本が残ったが、気になるタイトルの本が一つあった。

 

「『絶対能力進化(レベル6シフト)計画』……これは一体?」

 

 本を読み進めていくフィリップの顔がだんだんと暗い表情へと変わっていく。そして全て読み終えたがそれを話すかどうか迷い黙り込む。

 

「どうしたフィリップ?検索は終わったか?」

 

「……翔太郎に話してもいいかい?妹ちゃん。いや、一〇〇三二号ちゃん。『妹達(シスターズ)』のことを」

 

「はい。その件についてはすでに凍結されているので情報の共有は構いませんが、何故あなたがそのことを?とミサカは疑問を投げかけます」

 

「僕も君たちと同じ『元人外』だからね。特殊な能力があるのさ」

 

フィリップは翔太郎に目を向ける。

 

「翔太郎。この話を聞けばきっと君はこの街を嫌いになる。その覚悟はあるかな?」

 

「あぁ」

 

そして完全に置いてけぼりな翔太郎にフィリップは語り始めた。

 

「彼女は美琴ちゃんのDNAマップ、つまりは遺伝子をもとに造られたクローンさ」

 

「クローン……どおりでビリビリと瓜二つなわけだ」

 

「ちなみにミサカは全てで二万人、そこにラストオーダーなどの特殊個体は含まれません、とミサカは補足します」

 

「ちょ、ちょっと待てよ!この街に二万人もビリビリと同じ顔がいるってことか?」

 

 質問に答えるのを渋るフィリップ。代わりに御坂妹が淡々と答えた。

 

「いえ、一〇〇三一号までのミサカは死亡しました、とミサカは質問に答えます」

 

 翔太郎はフィリップが黙っていた理由を知り同じく絶句してしまった。いくらクローンとはいえ命は命だ。それがたくさん失われたことに憤りを隠せずにいた。

 

「誰が……お前たちを殺したんだ。そんだけ死んでりゃ事故じゃねぇよな」

 

「……彼女が生み出されたのも、殺されたのも、全てこの学園都市のせいさ。学園都市統括理事会、そう呼ばれている」

 

 翔太郎は怒りで震えていた。風都と同じくらい良い風が吹くこの街でクローンの殺戮が行われていたことに。

 

絶対能力進化(レベル6シフト)計画。美琴ちゃんのクローン二万体を殺害することで未だ存在しないレベル6に到達できる。妹達は本来別の実験で生まれたがその計画で使われることになった」

 

「……ふざけてやがる。実験?殺害?この子らはモルモットじゃねぇ」

 

「あぁ。恐らく誘拐されたラストオーダーちゃんも何かしらの実験に必要なんだろう。この事件はガイアメモリとは関係ないだろうが……」

 

 既に捜す支度を始めていた翔太郎には聞こえていなかったようだ。フィリップはやれやれと立ち上がった。

 

「僕らは仮面ライダーである前に探偵だ。例えガイアメモリが関係していなくても依頼人のために動く。それが『二人で一人の探偵』さ」

 


 

「ラストオーダーが放った電波の最終地点はここです、とミサカは説明します」

 

「ここは……更地?」

 

 十〇学区のある場所、そこにラストオーダーがいるという。だが御坂妹が指差すのはただの更地だ。建物はまるでない。

 

「考えられる可能性は……地下か」

 

 フィリップだけ妙な胸騒ぎがしていた。広大な土地、地下の密閉空間。そして……

 

「妹ちゃん。電磁波を捉えるのは可能かい?」

 

「はい。お姉様よりは低レベルですが」

 

「Gマイクロ波はこの辺りにあるかい?」

 

「フィリップ……まさか!」

 

 翔太郎も遅れて気づいた。この事件はガイアメモリが大きく関係している。その理由はこの場所だ。一見何もない更地だが……

 

「はい。通常ではありえない謎の電磁波を感知しました、とミサカは答えます」

 

「やはり……この地下にガイアメモリ製造工場がある」

 

 フィリップは過去にガイアメモリ製造工場の条件を知った。広大な土地と地下スペース、ガイアメモリ製造時に必要な特殊電磁波のGマイクロ波、そしてそれを使用しても影響がない場所。それらが満たされたとき、製造工場が建設できる。

 風都ではそのような場所は限られているため、財団Xやミュージアムなどが主体となっているのがほとんどだ。広大な土地が必要なためかかる費用がとんでもない。だから個人で持つのはほぼ不可能である。

 

「そうなるとラストオーダーをさらったのは……」

 

「うん。恐らくリベンジだ」

 

 翔太郎はゴクリとつばを飲む。まさかの展開だ。

 

「地下にはどう行くのでしょうか、とミサカは尋ねます」

 

「簡単だ。無理やり掘ればいい」

 

「は?おいフィリップ!もっとまともな策はないのかよ?」

 

 頭脳派のフィリップが思いがけないほど脳筋な作戦を立てたので翔太郎は驚いていた。

 

「掘る、と言っても数メートルだけだ。この土の下にはコンクリートの層がある。だからファングでいこう」

 

「……仕方ねぇ」

 

 二人はベルトを装着してメモリを挿した。

 

『ファング!ジョーカー!』

 

『ファング!マキシマムドライブ!』

 

 右脚に鋭い刃、マキシマムセイバーが出現し回転しながら地面をえぐる。

 

「あれが仮面ライダーですか、とミサカは独り言をつぶやきながらどこからともなくロープを取り出して後を追います」

 

 空き地を囲っていたロープを外し地下へと降りていく。コンクリートの層を超えるととてつもない大きさの空間が現れた。人はいなく、稼働している感じはない。

 

「まだ作られたばかりのようだね」

 

 ダブルに変身したまま御坂妹と共に先へ進んでいく。

 

ヒュン!

 

 突然何かが目の前を通過した。早すぎてよく見えなかったが、ファングのショルダーセイバーのようなものだ。右の扉には穴が空いていて、そこから発射されたのだろう。

 

「何かの気配を感じる。気をつけてくれ、翔太郎」

 

『あぁ』

 

 穴の開いた扉が開き、スーツの男が現れた。

 

「君がイアン・ウルスランドだね」

 

 御坂妹を守るように前へ出たダブル。男は爽やかな笑顔で答えた。

 

「そう。私がリベンジのリーダー、イアンだ。はじめまして、仮面ライダーダブル。いや、左翔太郎君とフィリップ君」

 

『俺たちの名前を知ってんのか。有名人だもんな。まぁそれはいいからとっとと少女を返しやがれ』

 

 ダブルは挑発するように左腕で手招きをする。

 

「彼女はまだ返せない。そんなことより、君たちの実力が知りたいよ」

 

『あぁん?』

 

 イアンの後ろからライトブルーの髪の女性が顔を出した。ショートカットだが前髪が長く、左目が隠れている。

 

「へぇ。アンタが噂の仮面ライダーね。……しかもファングじゃん」

 

「幹部か」

 

「そう。彼女はリベンジの暴れん坊、歯牙木場乃だ。使うメモリは……」

 

 青髪の女性、歯牙は白いメモリを見せた。端子は青、T2だ。

 

「運命ね。アンタとおんなじ」

 

 刻まれた記憶は『F』ダブルと同じファングだった。

 

『ファング!』

 

 メモリを起動し右の手の甲に挿した。華奢な体から一気に二倍近くのたくましい体に変化し、全身に鋭い刃が生えている。

 

「ファングドーパント……実に興味深い」

 

『んなこと言ってる場合か!ビリビリ妹!逃げろ!』

 

 来た道を戻ろうとする御坂妹を狙いファングドーパントは肩の刃を投げた。

 

「まさか!さっきの物体も彼女が投げたショルダーセイバーだったのか!」

 

 慌ててかばったダブルのボディに大きなキズがつく。

 

「なんて威力だ。僕以上にファングの力を引き出している……」

 

『なぁ。あいつまさか……』

 

「ハイドープの可能性が高い」

 

 ハイドープとはガイアメモリとの適合率が限界を超え、新たな力を覚醒させるドーパントのことだ。フィリップ以上にファングと適合しているためダブルよりも一枚上手なのかもしれない。

 

「歯牙くん、そのへんにしておこう。ワールドキーを……」

 

 イアンは撤退する素振りを見せたが、ダブルに攻撃を続けるファングドーパントは聞く耳を持たない。

 

「はぁ……彼女の悪い癖が出たようだ。すまないね、仮面ライダー」

 

 ファングドーパント、歯牙は決して自我を失っているわけだはない。確かにフィリップがファングを単体使用すれば暴走し敵味方関係なく襲いかかる危険性があるが、歯牙はその驚異的な適合率のおかげで自我を保っている。が、彼女自身一度夢中になると周りの声が聞こえなくなり自分の世界にのめりこんでしまう性格なのだ。

 

「オラァ!どうした仮面ライダー!そのままじゃ細切れになっちまうぜぇ!」

 

『なんだコイツ!?いきなり性格変わっちまったぞ!?』

 

 もはや防御するので精一杯なダブル。変身解除も時間の問題だろう。

 

『俺の体は地上だからエクストリームになれねぇ!どうする!?』

 

「くっ……せめて一瞬でも隙があれば……」

 

 そしてついに強烈な斬撃がダブルの胸アーマーを襲いフィリップの姿に戻ってしまった。

 

「これで終わりだァ!仮面ライダー!……あ」

 

 トドメの一撃があと少しというところで止まった。変身を解いた歯牙は後ろで腕を組んで待っていたイアンに頭を下げた。

 

「ごめんなさい。つい夢中になっちゃって……」

 

「いいんだ。それが君の魅力でもある。それに今攻撃をやめたということは僕の意思をわかってくれたという証拠さ」

 

 イアンは立ち上がれないフィリップを見下ろす。

 

「君のことも研究したくてね。死なれては困る」

 

 イアンをお構い無しでスタッグフォンを取り出したフィリップ。翔太郎に助けを求めようとしているのだろう。

 

「無駄だよ。もはや仮面ライダーになれない左側には何もできない」

 

 スタッグフォンを蹴り飛ばし背中を踏みつける。フィリップは意識を失ってしまった。

 

「さぁ行くよ歯牙くん。まずはワールドキーの起動だ」

 

 イアンはフィリップを抱え深部へ消えた。




次回更新は二週間後になります。

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