とある科学の超電磁砲W 二人で一人の仮面ライダー 作:かなん
「目が覚めましたか」
翔太郎が目を覚ますと御坂妹が顔を近づけた。
「あ、あぁ……それよりフィリップが……」
ダブルドライバーを装着しているのでフィリップの状況がなんとなくわかる。殺されてはいないが敵に捕まってしまったらしい。
「ファングドーパント。あいつがなかなかだな……」
実は変身解除の直前に喰らった攻撃はエクストリームメモリが盾になってくれある程度緩和されていた。もしエクストリームメモリがいなかったら変身解除どころか変身したまま死んでいたかもしれない。
状況は最悪である。エクストリームメモリがあればフィリップを助けるのは簡単だ。だがダメージを負って機能停止している。強敵ファングドーパントが待ち構えているかもしれない以上黒子や御坂を巻き込むわけにもいかない。
「ビリビリ妹。依頼は必ず達成する。だからそれまで安全な場所にいてくれ」
翔太郎は立ち上がるとふらふらな足取りでどこかへ言ってしまった。
「……ミサカはあの人の体が心配です」
自分のアパートに帰った翔太郎は部屋の隅に置かれたデスクの引き出しを開けた。そこには報告書や請求書が山ほど入れられていた。その紙をどかすように放り投げ、奥底に眠っていた箱を取った。
「やるしか……ないか」
箱を開けると左側のスロットがないダブルドライバーがしまわれている。ダブルドライバーのプロトタイプであるロストドライバーだった。これを使えば翔太郎やフィリップは一人で変身が可能になる。
ある理由でしばらく使っていなく、ロストドライバーの場所もわからなかった。学園都市に来た際にフィリップが持ってきていたらしく、風都での依頼の報告書やガス代、水道代などの請求書をカモフラージュとして利用したようだ。
「あのフィリップがこいつの場所を伝えたってことは……これを使うしかないってことだ」
翔太郎が変身解除後に意識を失っている際、フィリップがスタッグフォンでメールを送っていた。
《ロストドライバーはデスクの紙山》
それはダブルに変身できない翔太郎にさした唯一の希望だ。
「待ってろフィリップ……ラストオーダー!」
再び製造工場に侵入した翔太郎。厳重な警備が敷かれているかと慎重に行動するが、先程と同じく無人だ。
「まさか丸腰で来るとはね」
工場の中央でイアンと歯牙が待ち伏せしていた。フィリップとラストオーダーの姿も見える。意識はないようだが。
「さっさと俺の相棒とその子を返してもらおうか」
「ファングどころか仮面ライダーにすら変身できないアンタに何ができるの?」
『ファング!』
歯牙はファングドーパントに変わり翔太郎の首に刃をつきつけた。だが翔太郎は怖気づく様子がない。それどころか立ち向かおうとしている。
「おいおい。二人してダブルは知ってるくせにアレは知らないのかよ」
「なんですって?」
「歯牙。例の計画は完了だ。三人とも殺して構わない。ここは任せたよ」
イアンはファングドーパントの肩を叩いて去っていく。
「あーあ。せっかくの変身を見れないなんてアイツはかわいそうだぜ」
「さっきから何を言ってんの?」
「覚悟しな、ファングレディ」
翔太郎はロストドライバーとジョーカーメモリを取り出した。
「へんし……!?」
ジョーカーメモリを装填しようとした瞬間、首に刃をつきつけていたはずのファングドーパントは遠くへ吹き飛んでいた。大きな瓦礫がファングを襲ったようだ。
「おい、もう終わりか?バケモンがよォ」
現れたのは白い髪で杖をついた少年、アクセラレータだった。
「能力者か?」
「てめぇこそただの無能力者か?」
「何でここにいんのかわかんねぇけど早く逃げろ!」
「俺はあのガキを連れ戻しに来ただけだ」
「お前がビリビリ妹の言ってた保護者代わりのヤツか?ならちょうどいい!一緒にいくぜ!」
あやうく喧嘩が勃発しかけたが二人は並び立った。
「変身……」
『ジョーカー!』
アクセラレータの隣で黒いダブル、すなわち仮面ライダージョーカーに変身。アクセラレータは目を見開いた。
「メタモルフォーゼか……?」
「フォーゼなら後輩だ。俺の名は仮面ライダージョーカー」
ジョーカーは格闘の構えでファングドーパントに歩み寄る。ファングは瓦礫を投げ立ち上がった。
「へぇ。アンタだけでもなれるんだ。それに……第一位も来るとは」
「第一位?こいつが?」
ジョーカーが振り向くとアクセラレータは面倒そうに首に手をあてる。
「自己紹介がまだだったな。俺はアクセラレータってんだ」
「アクセラレータ。俺があの怪物を引き付ける。その間に人質を助けてくれ」
「俺に命令すんじゃねェ!」
「ふっ。なんだか照井みたいなやつだな!」
二人は同時に走り出した。ジョーカーはファングドーパントにパンチを繰り出す。あっけなくかわされたがもう一度殴りかかる。
「アンタはダブルの半分。ファングジョーカーでさえ敵わなかったのに勝てるわけないでしょ」
「さぁどうかな?」
ジョーカーはメモリをマキシマムスロットに装填した。たちまち拳が紫色の炎を噴き出す。
『ジョーカー!マキシマムドライブ!』
「……ライダーパンチ!」
ジョーカーの必殺技をファングは真正面から受けた。それは受けて立つという意味ではない。もはやよける必要もないと思っていたからである。
「ふん……ッ!?」
完全に舐めていた。一瞬耐えた素振りを見せたがあっという間に数メートル吹き飛び大ダメージを負った。
「ばかなっ!」
「お前はジョーカーの力を舐めてたな?」
さらに追い打ちをかけるようにマキシマムスロットを叩いた。
『ジョーカー!マキシマムドライブ!』
「いくぜ!ライダーキック!」
右足を大きく上げファングの胴体にキックをお見舞いした。先ほどの戦いとは真逆、ジョーカーが優勢だ。
「ジョーカー……何故単体でこれほどの力を……?」
「ジョーカーはな、俺の想いに答えてくれる。俺の気持ちが熱くなればなるほど強くなれるんだよ!」
ジョーカーがもう一度キックを放ち、ファングの全身の刃が砕けた。
「左翔太郎……得体のしれないヤツ」
「おいおい。楽しそうだな。俺も混ぜてくれよ」
ラストオーダーとフィリップを救出したアクセラレータもファングを挟んだ。
「もう逃げ道はないぜ、どうする?」
「もういいよ、歯牙くん」
突如無からカタストロフィドーパントが現れ、ファングを逃がすようにワープゲートを作った。
「助かる、イアン」
「イアン?お前もドーパントだったのか!」
「想定外だったよ。ロストドライバーを持っていたとは。良いデータがとれた。ではさらばだ、仮面ライダーと第一位くん」
ワープゲートは閉じ、脅威は完全に消え去った。アクセラレータは手荒にフィリップを投げた。変身解除した翔太郎がそれを慌ててキャッチする。
「互いに用は済んだだろ。俺は帰る」
「おい待てアクセラレータ!」
アクセラレータを追おうとしたがフィリップが想像以上に重く歩くことができない。
「無事依頼は達成したようですね、とミサカは状況を確認します」
御坂妹はアクセラレータと入れ違いでやって来ると、翔太郎を手伝う。
「あいつに任せていいのか?あんな少女を」
「はい。彼は言いたいことをはっきり言わない人ですが、悪い人ではありません」
「お前を……お前の前任者を殺したのにか?」
「……彼は変わりました。口には出さないですが、私たちを破壊した罪を償うためにこうして彼女に優しくしているのかもしれません、とミサカは推測します」
御坂妹はポケットから何かを取り出し翔太郎に渡した。
「これは依頼代です。受け取ってください、とミサカは報酬を差し出します」
それは緑色のメモリ、T2ロケットだった。
「お前これ……」
「たまたま拾ったものですが、あなたの役に立つかもしれませんよ」
「まぁ使われるよりはマシか……」
一方、ラストオーダーを背負ったアクセラレータも御坂妹に出くわしていた。
「どうやら一件落着ですね。ミサカ一〇〇三二号に感謝してください、とミサカはミサカにも感謝すべきだという思いを押し殺しアドバイスを……」
「あぁ。テメェが俺の能力の演算を手伝ってたんだろ?」
この御坂妹は一〇〇四六号。翔太郎に依頼をした御坂妹とは別の個体だ。実はこの御坂妹がアクセラレータの能力を妹達の共有脳波リンクであるミサカネットワークで演算し、手助けしていた。彼女がいなければアクセラレータは歩くので精一杯だっただろう。
「俺に礼を求めるなんて馬鹿なヤツだな。俺がするとでも?」
「はい。なんせあなたはツンデレで……」
「口を動かす余裕があんならコイツを抱えやがれ。重いんだよ」
「むー!今重いって言ったね!女子にそれは禁句だよ!ってミサカはミサカは怒ってみたり!」
「起きてやがったのか。なら自分で歩きやがれ」
学園都市第一位アクセラレータ。彼はこれからも自分の罪と向き合っていく。罪を数え、たくさんの命を守るために。
「いってぇな!」
「あのね!あの子たちに会ったんなら連絡くらいしなさいよ!ってか何よそれ?タイプライターでローマ字って……」
「これは俺にとって必要なものだ!」
後に翔太郎の部屋を訪れた御坂に電撃を喰らい、悶絶した。フィリップは意識を取り戻したものの、全身にダメージを負っていてしばらくは戦えそうにない。街を守る仮面ライダーはジョーカー一人だ。
場所は変わり、とある路地裏。二人の少女は絶対絶命の危機にさらされていた。
「湾内さん!私が囮になるのでその隙に!」
「いえ!泡浮さんこそ逃げてください!私は大丈夫ですので!」
常盤台の水泳部員、湾内絹保と泡浮万彬はゴキブリのような姿をしたドーパントに襲われている。
「かわいいなぁ!二人とも美味しく食べてあげるよ!」
「来ないでください!」
ドーパントは湾内の腕を掴んだ。だが、突如背中に激痛が走った。何か刃物で斬られたようだ。
「なんだ!?」
ドーパントの背後には謎の赤い戦士が剣を構えていた。顔のバイザーのような部分が青く光る。
「君たち、逃げるんだ」
「え?……わかりました。行きましょう、湾内さん」
「はい……」
二人は路地裏を無我夢中で走り抜けた。ドーパントは悔しがり足で地面を蹴りつけた。
「なんなんだよお前は!」
赤い戦士はドーパントの問に答えることなく剣にメモリを挿した。
『エンジン!マキシマムドライブ!』
Aの形をしたエネルギーがドーパントの体を貫いた。メモリが大破し、中年の男が地面に倒れた。赤い戦士は男に向かって呟く。
「……俺に質問するな」
これからは二週間に一回のペースになります。よろしくお願いします。
『風都探偵』を見ていますか?
-
漫画のみ(スピリッツ連載)
-
漫画のみ(単行本)
-
アニメのみ
-
漫画(スピリッツ連載)&アニメ
-
漫画(単行本)&アニメ
-
少しだけ見た
-
見ていない