大臣は重々しくその口を開いた。
「現在我が国を含むヨーロッパの10カ国で新型の感染症が確認されています。この感染症の種別はEMA(欧州医薬品庁)が設立した疾病症対策チームの報告書によると現在確認されてるどの感染症とも当てはまらないとのことです。感染者の症例からこの感染症はいわゆる冬虫夏草の一種とされていますが、感染の拡大が菌類のそれとは一致しないなど不確かな点が多いのが現状です。」
大臣が話していると、秘書らしき男がスクリーンを運んできた。
「そして、現在分かっている感染の経緯は以下の通りです。」
大臣はをスクリーンを指差す。
1、感染症は血や唾液などの体液から感染する
2、感染者は最初の3時間は無症状でいる
3、無症状の後、感染者は突然高熱と吐き気を催し、昏睡状態になる
4、昏睡状態になってから2時間経過すると感染者は脳死に近い症状を見せる
5、それから20分後、感染者は知的能力を失った様子を見せ、非感染者に攻撃的になる
「感染者は知的能力や社会性を失い他者への攻撃性を増大化させます。また、感染者は生命力を非常に高め脳や肺、心臓などの重要な器官を損傷しない限り不死身に近い振る舞いをとることが確認されています。」
2時ごろに自分が轢いてしまった2人、銃で武装した警官…ハルペリンは段々嫌な予感がしてきた。
大臣が話す中、1人の女性記者が手を上げた。
「すみませんデズモンド大臣、現在この感染症の治療方法等は判明していますか?」
秘書が質問を止めようとしてきたが、大臣は壇上からそれを止めるよう顎で指示した。
「えぇ、今彼女が問いかけて来た質問に対するアンサーですが現在この感染症を治す手段は判明しておりません。」
記者たちはざわつき始める。その中大臣は少し大きな声で宣言した。
「現在EUと我が国は官民一体となり感染症の研究、封じ込めに尽力しております。そして、我が国はこれらの地域でロックダウンを行います。」
スクリーンに映っていた画像が地図に変化した。
「この地図で赤く塗られている地域は軍と警察によって感染者が発見され、今現在も封じ込めが行われている地域です。これらの地域では本日20時より軍による一週間の都市封鎖が行われます。」
記者たちはカメラのシャッターを切る。
ハルペリンは地図をよく見てみる。ミュング地方一帯にマンハウム、国の20%近くの地域が赤くなっているようだ。
自分たちの住んでいるレムシャブルグ東部は…赤だ。真っ赤に塗られている。
ハルペリンの予感は的中したように感じた。
やはりあの2人は感染者だったのだろう。
そう考えればパニックを抑えるために警察は隠蔽しようとしてたなど辻褄が合う。
「これからの一週間、国民の皆様には不便がかかると思われますが何卒ご協力していただくようお願いいたします。」
大臣は一礼するとそのまま会見場の裏へと行ってしまった。
記者からはさまざまな声をかけられている。
「大臣!感染症の発生源は特定されていますか!」
「封鎖地域の住民への補償はどうなっているんですか!」
「この度の感染症はゾンビに非常に似ているといった声がネット上で上がっておりますが、それについてどう思われますか?」
テレビから様々な声が届いてくるなか、家の外から車のエンジン音が聞こえてきた。
窓から様子を見てみると隣の家の前に軍用車のハンヴィーが停まっていた。
ハンヴィーから2人兵士が降りてくるとその家のチャイムを鳴らした。
「失礼する、陸軍の者だ。ロバートエイドリアンはここにいるか。」
玄関から不安げな顔をした老夫婦が現れた。
「なんだいあんたら、こっちだって暇じゃあないんだよ。」
夫が不満げな声を漏らす。
「エイドリアンだね、あなたには本日15時42分に新型感染症感染者が経営するカフェに来店した証拠がある。その時感染している可能性があるので至急隔離施設のあるアラウン陸軍基地までご同行願いたい。」
片方の兵士はなにやら書類を見せている。
「なんだって?会見でもあの大臣、唾液やら血やら飲まなきゃ問題ないって言ってるじゃねぇか。俺はあそこで飲み物は飲んでねぇし、なんで基地まで行かなくちゃならねぇんだよ。」
夫はほくそ笑んで言った。
「ご同行を、お願いします。」
兵士はゆっくりした口調で話した。
「あんたらもしつこいな、さっきも言ったが俺は…」
夫がまた話そうとした時、突如兵士がホルダーから拳銃を引き抜き夫の眉間を撃ち抜いた。
「な、な、なんて事するんですか!?」
妻が悲鳴をあげそうになった瞬間、兵士は妻にも銃声を響かせた。
兵士はホルダーに拳銃を戻し一言溜息をついた後胸の無線機に話しかけた。
「こちらシュナイダー、住民二名が同行を拒否したため処分を行いました。どうぞ。」
「了解。次は隣のフォード家のところに向かえ。その家の住民は数時間前車で感染者を轢いている。感染している可能性は高い。必ず同行させるか処分しろ。健闘を祈る。」
兵士は無線を切ると、この家の方へと顔を向けた。
まずい!このままでは!
地名とか大臣の名前で分かる人にはなんとなく分かったと思いますが、この小説の国はSPY×FAMILYの西国と東国が統一されて一つの国になった現代をイメージしてます。
だからといってアーニャとかロイドとかを露骨に出す予定はないので、別にSPY×FAMILYの二次創作として見なくても楽しめると思います。
今後もどうぞお楽しみに