終末狂想曲   作:ももたろも

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7月2日・午後3

兵士は庭を伝ってそのまま家の敷地に入ってきた。

老夫婦への発砲、そして大臣の会見内容…

この非常時からしておそらく彼らはさっきと同様連行するか射殺するかのどちらかしかしないはずだ。

しかし、感染者はゾンビとしか言いようのない怪物になるらしい。

ならば感染の疑いがあるだけでも相当厳しい環境へ連れていかれるだろう。

こうなったからには一つ、

ここから逃げ出すしかない!

幸い弟の家は確かまだ感染者が見つかっていない沿岸地域にある。

そこに匿ってもらえればなんとかなるだろう。

ハルペリンは急いでカバンの中に必要そうなものを詰め込んだ。

水、懐中電灯、スマホの充電器、日持ちしそうな食料品、着替え。

そして悩んだ末に十得ナイフも放り込んだ。

カバンを用意した彼は二階のバーバラの部屋に向かう。

外からチャイム音がする。居留守がバレないといいが…

「どうしたのパパ?そんなに焦って?」

バーバラは疑問げに聞いてきた。

「今から叔父さんの家に行くぞ!」

「え!?そんなに急に?」

「叔父さん、新しいゲーム買ってくれたらしいぞ。遊びたくないか?」

「遊びたい!」

バーバラを半ばごまかす形でなんとか最低限の荷物だけまとめさせた。

ドアの向こうからはくぐもった声で話し声が聞こえる。

「いないみたいだな。どうする?」

「そんなわけねぇだろ。さっき二階のカーテンが揺れるの見えたぞ。」

「居留守か…扉こじ開けてでも連れて行くか処分せんと上に文句言われるぞ」

「バール取ってくるからちょっと待ってろ」

くそっ、バレたか!

慎重に2人は階段と降りるとそのまま勝手口から外に出た。

家の裏はちょうど小さい林になってる。

そこから進めば封鎖地区からは出れるだろう。

そう思って林に入ろうとした時、

「止まれ!そこを動くな!」

先ほどの兵士がこちらに短機関銃を構えていた。

「そんな簡単に逃げ出せるほどこちとら軍隊も甘かねぇよ!基地までご同行願おうか。」

手を上げながらとなりのバーバラを見る。体を小刻みに振るわせ見るからに怖がっている。

「分かった!着いていくよ!だから頼む。その銃を下ろしてくれ。娘が怖がってる。」

兵士は数秒睨みつけそのあとため息をついて銃を下ろした。

その瞬間。兵士の上に黒いものが飛び掛かってきた!

オオカミ!?こんな市街地に出るものか?

そう思いながらよく見るとそれは鬼のような形相をした肥満な男だった。

男は兵士の腹に食らいつき、必死に攻撃している。

「うわぁ!やめろ!よせ!」

兵士は銃を乱射している。

しかし腕に何発も当たっているにもかかわらず男は尚も喰らい続けている。

ハルペリンとバーバラは必死に家の裏の林へ回った。

何度も転びそうになりながらなんとか丘のある草原まで逃げ延びた。

2人とも息絶え絶えといった様子だが、バーバラに水を飲ませ一旦落ち着いた。

冷静になったハルペリンは丘から周りを伺おうと登った。

しかしそこに広がっていたのはまさに地獄絵図だった。

燃え盛る住宅街。暴動とも略奪とも言い難い商店街の混乱。そして、高速道路を通って次々と入ってくる装甲車の列。

「ここからどうすればいいんだ…?」

冷静を装いながらも彼は動揺していた。

まず重要なのはこの街から出ることだ。

遅かれ早かれここは人が住めるような場所ではなくなるだろう。

沿岸へ行ける高速道路も軍がバリケードを築いている。

しかし、この林の中にある古道を使えばなんとか隣の州には行けるだろう。

だが隣の州までは20km近くある。徒歩では無理だろう。

そのために車が必要だが家に停めてある車の周りはあのゾンビか兵士のどちらかがいて、安全に乗れるとも思わない。

「さっきの太った男は誰なんだ」

ハルペリンは地域の交流会やパーティにもよく参加するので人一倍は街の住民の顔などは覚えている自信があった。

だがあの男は見たことはない。

そしてあの服装はキャンプなどのためのもの…

ピンときた彼はバーバラと共に草原の周りを散策した。

やはりだ。

そこには荒らされた形跡のあるキャンプセットとワゴン車があった。

おそらくあの男はキャンプしていたところでゾンビに襲われ、そのまま住宅地に向かったのだろう。

車に向かってみると鍵はついており、しっかりエンジンも入る。

これさえあれば!

「バーバラ、今からこれで叔父さんちまで行くよ」

「分かった!」

一応彼は電話番号を書いた置き手紙を置いて、そのまま古道へと車を走らせた。




ちなみに兵士のイメージはドイツ陸軍です
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