日本の各地にある競争ウマ娘養成機関「日本ウマ娘トレーニングセンター学園」通称トレセン学園。
数多のウマ娘とトレーナーが、共に力を合わせそれぞれの夢を掴むために日夜トレーニングに勤しんでいる。
中でもここ「トレセン学園中央校」は数あるトレセン学園の中でも最高峰の教育とトレーニングを行なっており、ここに通うことができるウマ娘は厳しい試験に合格した所謂エリートと評される者ばかりだ。
無論それはウマ娘だけではなく、彼女達を支えるトレーナーも同じだ。
彼女達が輝かしい道を歩めるように支えるだけではなく、時には厳しい言葉を伝えなければならない。生半可な覚悟や責任感だけでは到底任せる事はできないだろう。
父のようなトレーナーを目指し、そして父も成し得なかったG1制覇という夢を叶える為に努力をし、そしてついに今日から僕はこのトレセン学園中央校に配属になった。ついに僕もトレーナーデビューだ!
なんてことにはまだならない、というのも僕みたいに新人のトレーナーはまず先輩であるチーフトレーナーの下で研鑽を積むことから始まるのだ。
急いては事を仕損ずるというように、基礎をしっかり学ばなければウマ娘達の夢を預かることは出来ないし導くこともできないという父の教えもある。その為にも今日からお世話になるチーフトレーナーに早く挨拶に行こう。
いそいそとトレーナー寮へ向かっていると1人でコースを走っているウマ娘がいた。
うわぁ、すごい追い込んでるなぁ。鬼気迫るとも違うな、何か思い詰めているのかな?とにかくその姿は少し痛々しく見えた。フォームも崩れているし、このまま続けてたらどこか故障してしまうかもしれない。
「本当はダメだろうけど」
これが担当トレーナーの指示だとしても止めざるを得なかった。
「ねぇ!そこの走ってる君!」
僕に声をかけられた子はビクッと身体を強ばらせながらも足を止めた。
「ごめん口を挟んで、でもその状態で走っても身体を壊すだけだ」
彼女がいる所まで近づこうとすると
「近寄らないで!!」
そう叫び、彼女はこちらに見向きもせず走り去ってしまった。
完全にやってしまった。そりゃそうだ、見ず知らずの男にいきなり声をかけられるなんて普通に怖いし、あのような反応が当たり前だ。配属早々何やってるんだ僕は...でも、どうしても止めたかった。辛そうに走る姿は見たくなかった。
クヨクヨしても仕方ない、本来の目的であるチーフトレーナーの元へ向かう足は先程とは違って少し重かった。