ほどなくしてトレーナー寮に到着し、チーフが待っている談話室の扉の前にやってきた。
やばい、緊張で吐きそう。
先程のことが影響しているのか、余計に精神が削られているような気がする。
一度深呼吸をして気持ちを整える。よし、行こう。
「失礼します!」
扉の先には一見トレーナーには見えない高齢の女性が椅子に腰かけていた。
「あらいらっしゃい、お久しぶりね」
「はい!本日付でトレセン学園中央校に配属になりました、姫島北斗です!よろしくお願いします!」
「ふふ、そう緊張しなくてもいいのよ?」
まるで小さい子を見るかのような暖かい目で見られ少し気恥ずかしさを覚えてしまう。いかんいかんこの人は僕の大大大大大先輩なんだぞ、失礼があったら絶対ダメだ。
グッと表情を引き締め「これからサブトレーナーとして沢山学ばせていただきます!」と改めて宣言をしたが、目の前の女性にはやはり暖かい目で見られてしまった。
「さて、それじゃあ私達の可愛いウマ娘ちゃんに会いに行きましょうか」
「は、はい!」
スッと立ち上がる所作さえも美しい、やはり一流のトレーナーは違うな。
そんなことを思いつつチーフの後ろをついていく。
すれ違うウマ娘達から次々に挨拶をされる辺り、この学園においても有名なトレーナーなのだろう。そんな人の元で勉強できるなんて...
感慨にふけようとした時、チーフの足が止まった。
「あら?いつもはここにいるはずなんだけど、おかしいわねどこにいっちゃったのかしら」
止まった場所は僕が先ほど近寄らないでと言われたコースの近くだった。
「まぁじきに来るでしょうし、少しここで待ちましょうか」
これからトレーニングということでもないので、お互いの話をしながら担当ウマ娘が来るのを待つこととなった。
「そうえばチーフの担当ウマ娘はどんな子なんですか?」
「そうねぇ...一言で言うならとっても可愛い子よ」
にこっと微笑みながら言うチーフ。すいません僕が知りたいのはそういうことでは...
「誰かに答えを言われたらつまらないでしょ?自分の目で見て、耳で聞いて、頭で考えるから面白いのよ」
なるほど。聞くよりもまずは自分で話してみて考えろということか。
こっちの意図はわかった上でそう答えたんだろう。こういった小さなことも長年の経験が伝わってくる。
「なんだか会うのが楽しみになってきました」
「そうでしょう?そう思ってくれてよか...ふふ、そんなことを言ってたらやっと来たようね」
その言葉が耳に入り振り返る。ついにトレーナーとして初の担当ウマ娘とご対面だ。
そして僕の目に映ったのは...
「紹介するわね、この娘が私達の可愛いウマ娘ちゃんの...」
鬼気迫る表情で無理な走り込みをしていて
「メジロドーベルよ」
注意した僕に近づくなと言ってきた、とっても可愛い子だった。