「それでも」と言って立ち上がってくる系英雄 作:D.D.D_Official
この話を読まなくてもこの先の展開に影響はありません。
後編を投稿し次第、次の章(1〜2話)に進むつもりです。
それでは、お楽しみください
少女が彼を見つけたのは、全くの偶然だった。
彼は血まみれで、今にも死にそうであった。
しかし、彼の目はまだ死んではいなかった。燃え尽きたような灰のような瞳は爛々と輝き、消えゆく命の蝋燭に火を灯しながら生きようと踠いていた。
少女はその姿に、とてつもなく惹かれた。
故に、彼女は自身の身に残る最後の神秘を使った。
すると彼の傷は目に見えて癒え、彼は静かに寝息を立て始めた。重度の疲労と傷で、彼はとっくに限界だったのだ。
少女は彼を自身の家に運ぶ為、自身の弟と共に彼を引きずって運んだ。弟は精強な騎士見習いであったが、寝ている彼は鎧を着込んでいた上偉丈夫だったので、運ぶのは相当な苦労があった。
暫くして、彼が目を覚ました。
その事に姉弟は泣き、手を取り合って喜んだ。
少女は彼に言った。
「もし、宜しければ貴方様の名前をお聞かせください。その名前を知る事が出来れば、私達はきっと幸福だろうから」
すると彼はそれに応えた。
「申し遅れた。私の名はライカード。かつて、神の尖兵として戦った男だ」
────────────────────
あの後、俺はどうにか助かったようだ。
ワンチャンあると思って川に飛び込んだのは正解だったな。
飛び込んだ瞬間、視界に一瞬だけ機械的なノイズが走ったが恐らく幻覚だろう。
それにしても。
「わぁ…!ライカード様は神様の使いでしたのね!」
この子達は一体?
見たところ15になろうかといった歳に見えるが。だが、その割には
実際に神?みたいな存在のアラヤと対面した俺からしてみればあまり好ましい視線ではないのだが。
まぁ良い。今は情報を集めないとな。
情報はあるに越したことは無いからなぁ。
ひとまず、今が何年なのか聞いておかねばな。
「すまない、君たちは今が何年か知っているかな?」
「グレゴリオ暦?それなら弟のヴィエゴが知っているわ!わたしはそういったお勉強をさせて貰えないから、わからないのだけれど」
「自分が姉に代わってお答えします。現在は1194年。ライカード様の消息が断たれてから、丁度2年程経った所です」
「────────!」
二年間!?二年間も俺は流されていたのか?
いやいや、そんなの有り得ない。もし仮に本当に二年間流されていたとして、息が続くわけないだろう。
たとえ、どんな大英雄でも不可能に違いない。
しかしそれを本当に成し遂げたのであれば。
俺は前代未聞の偉業を成し遂げたということか。
「……?どうかなさいましたか?」
「あぁ、いや。珍しいこともあるものだなと思ってね、少し驚いてしまったよ。まさか二年間も流されているとは」
「なんと!?二年間ですか!自分はてっきり、今までどこかに御隠れになられていて、先日の海岸での騎士団の戦闘に巻き込まれたものだと…」
「………一応、聞いておくが。私はどこに倒れていたんだい?」
「ええと…姉さん?」
「そおねえ、確かあの海岸の名前は…ドーバー、だったかしら?ごめんなさいね、わたしあまり学のある方ではないの」
ドーバー…?どこかで聞いた事があるな。
ドーバー、海……まさか。
ここ、イギリスじゃね?
「い、一応…ここを治めている王様の名前を聞いても良いかな?」
「ヴィエゴ、貴方のご主人さまだったわね?」
「えぇ…自分の主は、イングランド王。【欠地王】ジョン陛下です」
ここイギリスかよ!?つーかリチャードのヤツはどうしたんだ!?俺が命を賭して守ったあの頑固な王サマは!
まさかとは思うが、死んじゃいないよな?
「──────前王、リチャード陛下は何処に」
自分でも驚くほど冷たい声が出た。
しかし、その理由は明白だ。長いリチャードとの逃亡生活は、俺とアイツの間に固い絆を築くには十分すぎたのだ。
その内、アイツも俺もお互い対して一人称を『我』だの『私』とか言わなくなって、素を出し合っていた。お堅い野郎かと思ったら案外面白い所もあって良いヤツだった。
だがアイツが殺されたのであれば俺は、必ずその報いを受けさせなければならないだろう。それが友人として過ごしたリチャードへの手向けだからな。
「っ、ぜ。前王…リチャード陛下は、未だ消息、掴めず。フランス側の死体を伴わぬ死亡報告以来、何も分かっていませんっ!」
「……………そう、か。」
死体が見つかっていないなら、まだ生きているかもしれないな。確率は低いが、探してみる価値はありそうだ。
だがまあ、本来なら死んでいてもおかしくは無いんだ。業腹だが、死んだと考えてみるのが正しいのだろう。俺は認めないがな。
「あ、あの…自分達が何かお気に触ることを?」
「いいや、何でもない。それよりも、私を介抱してくれた君達に恩を返したい。何か私に出来ることは無いかな?」
「良いのですか?であれば、姉と共に街まで行き癒しの儀式の手伝いをお願いしてもよろしいでしょうか?自分はこれから訓練がありますので」
「儀式かい?私はそう言った作法に疎いのだが」
「いえ、ライカード様には警護をお願いしたく。癒しの儀式を行う際、姉はよく獣や暗殺者に狙われますので」
おいおい、何だか胡散臭くなってきたな。
獣はともかくとして、暗殺者となるとこの"儀式"とやらは何か不特定多数の人間達に不利益になるのは確定だろう。
「あ、ヴィエゴ。わたし、奇跡を失ってしまったわ。貴方のを頂戴?」
「────あ、そういえばそうだった。仕方ないなリリィ姉さんは。あの、ライカード様。少し外して頂いても?英雄様に見せるには少し見苦しい事をしますので」
「そうか。では私は外で素振りでもしておこう」
「ありがとうございます。さ、姉さん。寝室へ」
「ええ、ヴィエゴ…ではライカード様。また後ほど」
「あぁ」
と、言うわけで俺は外で素振りを始めた。
無想するのは無敵の自分。絶対に倒れない、万夫不倒の英雄の姿。俺の目指す『英雄』としての在り方を俺自身に重ねて動く。
「ふゥ───────せやァ!」
何度か繰り返した後、俺は次の鍛錬を始める。
まずは剣を地面に刺しイメージする。
イメージはそう、『地面と自分の心臓を繋げる』感じだ。すると、俺の身体から何やら名状しがたい力が剣を通して辺りに充満する。
これが、アルス嬢から教えてもらった
まぁ、俺が使える魔術は現状『強化』しか無いみたいだが。
アルス嬢に聞いた魔術の知識によると、魔術師にはそれぞれ"起源"と言うものがあるらしく、俺はその中でもかなり珍しい『人』の起源だそうだ。
俺視点ではオタク女子にしか見えなかったアルス嬢も、名だたる魔術の名家だったわけで。それはもう驚かれた。
何でも、
「五大属性が…え"っ!?何ですかこれ!?見たことない!えーっとどれどれ…『ひ』『と』。人?人属性?嘘でしょ…まさかお爺様の書庫にあった『アラヤ』や『抑止力』関係…?ライカード様、貴方は一体…」
とかわけわからん事を口走るほどだ。俺に分かったのは、アラヤの存在は意外と知られていたという事ぐらいか?
俺はこの時代に来る時にアラヤに力をもらった。それ故に俺はアラヤを神だと思っている。
というか、人間に好き勝手に力を与えられる超常存在を神と言わずして何とするのか。
暫く鍛錬した後、流石に休憩を挟んだ。
この魔術の鍛錬は非常に集中力を使う上に、大変な疲れを伴う。だから、一回やったら少し休むと決めているのだ。
丁度姉弟の方も終わったらしく、何故か二人とも頬を上気させていた。
「終わったのかな?では、街へ行こうか」
「あ、あの…ライカード様…」
リリィが頬を赤らめたまま言う。
「わたし、少し腰が砕けてしまって…立てないの。だからまた今度にしましょう?」
「自分からもお願いします。その、少しはしゃぎ過ぎてしまって」
何でこいつらは顔を赤らめたまま話すんだ。
一体何してたんだ?奇跡の継承ってそんな小っ恥ずかしくて激しいモンなのか?
もしかしてアレか。厨二病的な痛々しいダンスか何かなのか?それを俺にバレるのが恥ずかしいと。ほうほう、中々に可愛らしい奴らじゃないか。
「そう言う事なら仕方ない。なら私は鍛錬に戻らせてもらうよ」
「鍛錬ですか?」
「あぁ、私の友人…というよりは、妹に近いかな?みたいな存在が居てね。その子が私に魔術の鍛錬方法を教えてくれたんだ。彼女は『絶対にやらないように』と言っていたがね」
「もし宜しければ…見せていただくのは可能でしょうか?」
「良いとも。少し、静かにしていてね」
そう言って、俺は意識を沈めた。
─────────◆─────────
英雄ライカード様がわたし達に魔術の鍛錬を見せてくださると仰られて、わたし達は固唾を飲んでその光景を見ようとした。
あのライカード様ともあろうお方の鍛錬。
それはきっと凄まじい物なのだろう。
ライカード様は剣を地面に突き刺し、剣に魔力を流し始める。
段々と魔術光によって辺りが照らされる。
やがて、ライカード様を中心に美しい花が咲き始める。花は淡い光を発していた。
わたしが試しに触ってみると、ヴィエゴによってめちゃくちゃにされた身体の疲れが癒えていく。それどころか、失ってしまった魔術刻印すらも復帰の兆しを見せている。
「これは……まさに奇跡です…」
思わず呟いてしまう。
わたしの持つ900年続く魔術刻印よりも濃い神秘。まるで、神からの使者かのよう。
けれども、わたしは見てしまった。
ライカード様が自殺まがいの事を行っているのを。
剣に伝っている魔術回路は初めは3本だった。しかし、今は4本に増えようとしている。あんな事をしたら、魔術回路が焼き切れて死んでしまうのに。
いけない、と思って手を伸ばす。
ヴィエゴも同じ事を思ったのか、手を伸ばしていた。
すると突然、ライカード様の背中から血が噴き出した。
あぁ、そんな。
英雄がこんな所で倒れてしまうなんて。
そう思ったのも束の間、ライカード様は更に回路を増やした。だめだ、これ以上は死んでしまう。
そうだと言うのに、ライカードが死ぬ気配は一向にない。
その時だった。
一瞬だけ、わたしの眼に砂嵐のようなものが走った。ザー、と音を立ててライカード様をみるのを遮ってくる。
まるで、
ふと、砂嵐が消えた。ライカード様がわたし達を心配げに見ている。あぁ、わたし達は██を見て気絶してしまったのだろう。
でも、これでわたし達の一族は安泰だ。
だって、目の前で██に接続されたのだ。
出来ない筈がない。いや、やってみせる。
丁度、ライカード様のお陰で魔術回路も魔術刻印も回復したもの。好機でなくて何になるの?
わたしは自分が悲願を、冠位命題を成し遂げる様を夢想して意識を手放した。
──────────────────
なんか気絶された。
見せてと言われて見せたのに寝てるとかどう言う了見だよ。傷つくわ。仕方ないから、この子らを家に入れて俺は街に繰り出すとしよう。
恐らく、8年後には第4回十字軍があるだろう。そこで行われる極悪非道な行い。これを打倒すれば、俺は真なる英雄として歴史に名を刻む事になるだろう。
街は案外近く、歩いて15分ぐらいの所にあった。道中変色した猪が襲いかかって来たので叩き潰した。街へのお土産はこいつの牙にした。
俺が街へ着くと、そこはまぁ大きくもなく小さくもないが、活気はある所だった。俺に向けられる視線は当然『なんだコイツ?』で、たまに尊敬する様な目つきを感じる。
よしよし、俺の叙事詩を書け。
「あ、あのっ!もしかして、リチャード陛下のご友人であらせられるライカード様でしょうか!?」
突然、メガネをかけたナヨっとした学者らしき男に話しかけられた。何だァコイツ。何で俺とリチャードが友達だって知ってんだよ。
「む、君は?」
「私はレオコーンと言って、不束者ながら前王リチャード陛下の臣下を務めさせて頂いております。主が貴方様に会いたがっています。どうか、私と共に」
「なんだとっ!?それを早く言え!アイツ、生きてたのか!はは、やっぱりな!死ぬわけねえと思ったんだ!」
「ラ、ライカード様…?」
「──────あぁ、すまない。取り乱してしまった。行こうか」
「はっ!」
到着したのは、小ぢんまりとした一軒家だった。
こんな所に本当にリチャードが?アイツはプライド高いからなぁ。こんなとこに住んでるなんて考えつかないな。
「陛下!ライカード様をお連れしました!」
「おお!通せ、俺が許す!」
あぁ、やっぱりそうだ。
この声はまさしくリチャードの物だ。
「よお、リチャード。元気してたか?」
「当たり前だろう?お前と共に死地を駆け巡った俺がそう簡単にくたばる訳ないだろう!それに俺にはエクスカリバーがあるしな!」
「それ確か偽モンだろ?大丈夫かよ」
「俺が思うに、エクスカリバーとは在り方だ。つまり、ブリテンの王たる…今は王ではないが。この俺がエクスカリバーと認めたのなら、それはエクスカリバーなのだ!」
「適当言ってんな。つーかどうやって生き残ったんだよ」
「それはこちらの台詞だ。お前こそどうやって生きてここまで来た」
「あー、俺はな。川に落ちてな?流されて、いつの間にかここにいた」
「は?お前大丈夫か。二年間も流されて生きている人間がいるか。まぁ、お前の勇猛果敢ぶりと不死身ぶりを見たら納得できるが」
「ははーん、さてはリチャード。お前忘れてるな?俺達が敵に囲まれた時、前に向かって後退して一人も死なずに生き残ったのを」
「忘れるわけ無いだろうが!あれは地獄だった。二度とやりたくない」
「んで?お前はどうやって生き残ったんだよ」
「あぁ。話せば長くなるが…俺がフィリップの奴を説得して死んだことになった。まぁ条件付きだがな?条件は、『二度と俺がブリテン王にならない』事だ」
「ほーん、つまりお前はもう王様やる気ねえんだ」
「無いな。というか、在期に在って俺が国にいたの6ヶ月だしな。変わっても誰も文句は言うまい」
「そうか?ジョン王は無能との話だが」
俺がジョンの話をすると、リチャードは苦々しい顔をして空を仰いだ。やはり思うところがあったのだろう。暫くリチャードは唸っていた。
「だがなぁ、俺がもう王をやる訳には行かんのでな。悔しいが、俺はここで隠遁生活を送りながら余生を過ごすがお前はどうするのだ?何も死んだ事になった訳ではあるまい?」
「どういう事だ?」
「いや何。フィリップとの約定を決める時、しきりに聞かれたものだ。『ライカードはどこか』ってな。何でも、大切な話があるとか」
「大切な話ぃ?どうせ『仕えろ』ってんだろ?嫌だよ俺は。俺の忠誠はとっくにリチャードのモンだからな」
「はっ、当然だ。しかしあの女…お前の生をまるで疑ってはいなかったぞ。余程腕を買われているんだろうな」
「どうかな。俺は別の理由だと思うが…まぁ、言いたくねえ理由だ。聞かないでくれ」
絶対にリチャードに言えるもんか。フィリップ2世に(性的に)襲われて子供こさえたかも知れないなんて事。リチャードの事だ、絶対に「会いにいけ」って言うに決まってる。こいつはそう言うやつだ。
「深くは訊ねん。してライカード。お前はこの後どうするんだ」
「俺?俺は…そうだな、故郷に帰るついでに困ってる連中を片っ端から助けてやろうかな」
「お前…英雄街道も程々にしておけよ?英雄の末路は決まって裏切りか噛ませ犬になって死ぬんだ。お前に限って噛ませ犬は無いだろうが、裏切りには注意しろよ」
「だが、その時俺が英雄として死ねるなら本望さ。ま、お前と死に別れるのは嫌だがな」
「言うじゃないか。よし、ならば征け。汝の主たる我リチャードが命ず。我が騎士ライカードよ、その精魂尽きるまで人を助け、弱きを救え」
「御意に」
その後も、二人で夜通し話し合った。
リチャードとの再会は俺の心を癒していった。
──────────────────
翌日、俺はリリィと共に儀式場へ来ていた。
リリィはスケスケの巫女服へ着替えて、深呼吸をしている。普通に見ればドスケベな光景だが、不思議とその様には感じなかった。
淡い水色の羽衣から透けて見える白く透明な肌は神秘的で、神事を行う神父のようにも見えた。
「では、始めます。ライカード様。わたしの護衛、お願いしますね」
「任された。騎士ライカード、この身命に代えても汝をお守りしよう」
「ありがとうございます。いきますっ…!」
とうとう儀式が始まった。
リリィは厳かに座り、紅い十字架を抱えて祈る。
「詠唱、開始…予測演算から算出される抑止力介入率58.9%……拘束制御術式、全段階解放。【ヴォイド】による神性拡大領域展開。第三の祝詞『私は厄災の席に立つ』完了、冠位命題実証開始。」
「囚われし猛獣、揺さぶられし魂の鼓動、胎動するは忌むべき赤子、飛翔せよ、飛翔せよ、飛翔せよ。繰り返す都度に三つ。我は勝利を経由し王冠へと至る者。大いなる叡智、ゴエティアの落とし子たる我との約定に従い、月が消え失せ、陽が昇る時来れり。我が門は閉じ、世界の鍵を得。我が血族、我が魂、我が肉の一欠片を喰らい参上せよ。偉大なる門、大いなるソラの仔エルビュフラッセゥよ。いざ、いざ!」
「汝、星を焦がす者!【黝き刻にて啓け、昏き門よ】」
儀式場の天井が宇宙になり、グロテスクな門が出てくる。恐らくあれが"癒しの儀式"とやらなのだろう。それにしてはホラーチックだな。
突如、殺気。
飛来してくる
どうやら狙撃位置を変えたらしい。
殺気が遠のいていく。しかし、俺の認識は甘かった。目の前に褐色の女が飛び出して来たかと思うと、俺に向かって刀を振るって来た。
「フンッ!…ぐ、ずあっ!?このパワーは!?」
「邪魔を、するな…【絶剣・無窮三段】ッ!」
黒いビームが飛んでくる。慌てて特大剣を振るうとビームは逸れていく。これが暗殺者だと言うのか!?こんなの俺じゃなきゃ死んでたぞ!
ヴィエゴは今まで良く守り通せた物だ。
「退け、サムライ。『身体は剣で出来ている──』」
「この殺気、剣を撃って来た奴か!?」
「【無限の剣製】ッ!」
褐色の男を中心として、謎の世界が構成されていく。しかし、それはリリィの癒しの魔術?によって弾かれる。結果的に俺だけがその世界に取り込まれた。
「何だここは…剣の丘と言ったところか?」
「ご名答。では死んで貰おう」
「ッ!」
赤い外套の双剣士は大量に剣を飛ばしてくる。急いでここから出なくては、リリィが殺されてしまう。それだけは避けないとな。
「死ィ…ねぇえええええッ!!!」
「何っ!?向かって来るとは…!死にたがりか、愚か者!」
「俺はァ…!死なねえッ!俺を殺してみろ!俺には神様が付いてんだァ!」
向かって来る剣を弾き飛ばし、前へ進む。
何本か剣が刺さるが、関係ない。前へ。
「前へ!前へ!前前前ェーーーッ!!!」
「往生際の悪いっ!なッ!?」
「死ね」
剣飛ばし野郎の首を斬り飛ばす。
それと同時に謎の世界から解放される。慌ててリリィの方を向くと、ヴィエゴが辛うじて女サムライと応戦していた。だが、死ぬのも時間の問題だろう。
俺は痛む身体を無理矢理に動かし、剣士に斬りかかった。
「どうした、女。お前の相手はこの俺だ…!」
「驚いた。固有結界を抜けて来るとは。では、不肖魔神・セイバー。お相手致す」
「来いよ!ぶっ殺してやる!」
「────一歩、音越え。二歩、無間。三歩、絶刀!【無明三段突き】!」
次の瞬間、俺は死んだ。
─────────★─────────
「君、もう死んでしまったのかい?」
神サマか。そうだ、俺は死んだ。
「それで、諦めるのかい?」
諦める?そんなの、英雄らしくないな。
「でも、君は英雄ではない。初めからその器じゃ無かったんじゃない?」
そうかもしれないな。
「なら、諦める?」
そうだな、それもまた良いかも知れない。
「そっか、それは残ね」
だが。まだだ。
「へえ?まだ立ち上がるんだ?」
そうだ。まだ、俺の心は死んではいない。
「でも、君は死んでいる。これをどうにか出来るのは僕だけだ」
それなら、俺がお前の剣になってやる。
「へぇ?今なら魂までは殺さないよ?」
「は、はははっ!君、最高だよ。良いよ、協力してあげる。でも覚悟してね!僕が行うのはあくまで君に与えた権能の拡張だ。死ぬ時は死ぬからね?」
英雄として死ねるなら本望だ。
さあ、やれ。
「また会うのを楽しみにしているよ。
セントクロス・セイバー
─────────◆─────────
その褐色肌の戦士は、ライカード様を殺した。
自分の力が及ばなかったから。
自分がもっと強ければ。明らかに手加減していたこの剣士の体力を少しでも減らせていれば。
ライカード様は死ななかったかもしれない。
「あ、あ…!うあああああああっ!!!」
自分は半狂乱になりながら剣を振るう。
当たる気配は無い。しかし、自分には剣を振るわなければいけない理由がある。
愛する姉、そして英雄ライカードの為にも。
「無駄だ」
目の前に迫る凶刃。あぁ、自分はここで死ぬのか
そう、考えていたその時。
奇跡は起こった。
「すまない、少し寝ていた」
「ッ!?」
死んだはずの
絶望しかないと思っていたこの状況は、
たった一人の英雄の手で変えられるのだと。
そう気づいたのは全てが終わってからだった。
──────────────────
あ、危ねえ。
危うくもうすぐでヴィエゴが死ぬところだった。
俺は英雄になるから、俺の目の前で子供を殺されちゃあ敵わない。
「貴方は…死んだ筈ですが」
「さてね。これも神様の思し召しだろう」
「戯言を…冥府へ送り返してあげましょう」
アラヤのお陰かは知らないが、身体の調子が頗るいい。残念ながら心臓以外の傷は癒えていない様だが、それでも身体は動く。
この女侍は先程の剣飛ばしマンと比べて中々の手練れだが、この数年間戦い続けて来た俺には勝てまい。
何せ、手が綺麗だからな。
「フッ、その時はまた帰ってくるさ。さて、無駄話はここまでしよう。魔術師をも殺したこの剣、受けてみよ!」
「宝具、展開…」
俺は剣に魔力を通し、『強化』の魔術をかける。イメージは"地面と自分自身の心臓を繋げる"事で、剣に込められるだけの魔力を込める。
「受けるが良い、我が鍛錬の成果!【
「【絶剣・無窮三段】ッ!!!!」
黄金の光と黒い光がぶつかり合い、七色の閃光を生み出す。人理より遣わされた使命の剣に対するは、
「ぐっ!中々に、強い!だが…!私は、折れない!何故ならば!英雄であるから!人々の英雄として死ぬ時まで、俺は負けない!!」
「その力…成る程、そう言う事か!」
俺の光が敵の女剣士を貫く。しかし、女剣士はまだ倒れてはいなかった。この一撃をマトモに受けて立っていられるなんて、余程の豪傑に違いない。
ならば、すべき事はただ一つだ。
「最期に、貴公の名を聞かせてくれないか?」
「………近くに」
俺が彼女の近くに寄り、口元に耳を傾ける。
そして、彼女から出てきた名前は俺の想像を絶する物だった。
「私の、名前は…
「──────なん、だと?」
「おっと、そろそろ退去ですか。では、未来の同僚よ。貴方の事は覚えておこう。またな」
「何の話…なっ!?」
俺が問いただそうとすると、沖田総司と名乗った女は光の泡になって消えてしまった。一体、今のは何だったんだ。
それに、未来の同僚だと?新撰組は江戸末期の団体だ。今は中世、江戸幕府すら出来ていない。
何が何だか混乱していると、リリィが声をかけてきた。
「───あの、ライカード様。お願いがあるのです」
「何かな?言ってみてくれ」
「こんな事、お願いするのも酷なのですが…
わたしを、その剣で斬って下さい」
俺はブチ切れた。
《真名天与》
セントクロス・セイバー→英雄ライカード
クラス:セイバー
宝具:【螺旋する天聖の光剣】
ヘーヒステ・シュヴェーアト。至上の剣の名を冠するこの宝具は、かつて英雄として活躍したライカード自身が放った最高峰の一振りを起源としている。『英雄の旅』にてライカードと同一視されている聖騎士レオコーンの剣は「アルテマ」と呼ばれ、あらゆる物を切り裂いたという。Fate/GrandOrderに於いてはライカードの練った魔力を込めた一撃という解釈になっている。
スキル:
【人想英雄EX】
人々の集合無意識により創られた英雄である事を示す最上位のスキル。ビーストの持つ単独顕現と似た能力だが、ライカードの場合は「助けを求める人間」の前ならば何処へでも顕現できる」という力を持つ。
【不屈EX】
ライカードが英雄である内は決して倒れないというスキル。「そうあれ」と望み、望まれた事で元来のスキルが進化し開花した。通常のライカードであれば扱う事の出来ない程強力無比な力でもあり、諸刃の剣とも言える。