「それでも」と言って立ち上がってくる系英雄   作:D.D.D_Official

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テストなどで大遅刻しました!申し訳ございません!!!


幕間: ライカードの旅 後編

 

 

「どう言う事だ!?リリィ、君は正気か!?私はともかくとして、弟のヴィエゴが命をかけて守った命を散らせと言うのか!?」

 

「いえ、違う。違うのですライカード様。わたしはただ…」

 

「何が違うんだ?言っておくが、私に斬られた者は皆死んできた!私が強いからだ。そして君は、私に君を斬れと言った!解っているのか!?私に斬られる事は即ち死を意味すると!」

 

「…………すみません。ですが、わたしは見てしまったのです。世界の真実を。そして私は悟りました、これは決して世界に広めてはならない。と」

 

「だから君は死ぬと言うのか?」

 

「違います、違うんです。ライカード様はお気づきになられてはいないようですので、わたしから言わせて頂きますと、ライカードの持つその血の色をした特大剣。それには『魔術師殺し』の概念が付与されています」

 

「だからどうしたと言うんだ」

 

「『魔術師殺し』は文字通り、魔術師を魔術師として殺す概念武装です。魔術師に対する絶対殺害権…とまでは言いませんが、恐らくは魔術回路や魔術刻印を"殺す"ものかと」

 

何が何だかさっぱりわからない。

沖田総司の謎と言い、リリィの意味不明な説明も訳がわからない。第一、俺は魔術師じゃないし概念武装などもよく分かっていない。

 

だが、聞いている限り命の危険は無さそうだ。

 

「………分かった。では腕を出してくれ、僅かに傷をつける」

 

「はい。お願いします」

 

 

そして俺は、剣を恐る恐る振るった。

 

 

 

 

翌日。俺は激しい痛みに苛まれていた。

夜中に傷が全て回復していたのだが、無理矢理塞いだのか知らないが呼吸をしているだけで何処かが痛む。

朧げながら知覚出来たのは、リリィが昨日と儀式についての記憶を全て失っているという事だけだった。これで良かったのだろうかと思いつつも、俺は苦しみに悶えていた。

 

暫くすると痛みが引いてきたので、俺はリチャードの所へ遊びに行った。無論、今回の件を報告する為だ。

 

「で、お前は満身創痍と。だから言っただろう」

 

「暗殺者の奴ら、異様な程強い上に変な技を使ってきたからな。正直、あれがどうして今まで隠れていたのかが不思議だ」

 

因みに、沖田総司の事はぼかした。

リチャードに言っても仕方ないというのはあるが、何より俺はリチャードに心配をかけたくない。コイツはもう十分頑張った。だからこれ以上は休ませてやりたいと言うのもある。

 

「フン、そんな事はどうだって良い。お前、これから旅に出るつもりだろう?それなら、レオコーンを連れて行け。役に立つ」

 

「何故それを?」

 

誰にも言っていないのに何故分かったんだ。

 

そう。実のところ俺は旅に出ようと思っていた。リリィやヴィエゴには恩を返せたと思うし、あとはコンスタンティノープルへ向かおうと思っていたのだ。

何せ、あと数年で第四回十字軍だ。

ラテン帝国の成立は阻止しなければいけない。あんな物無くとも歴史に大した影響は無いだろうしな。

 

「……認めるよ。お前の言う通り、俺は旅に出る。行き先はコンスタンティノープルだ。目的は、正義のためだ」

 

「そうか。どうせお前のことだ、道中人助けをするんだろう?逃亡生活中も夜盗から関係のない村を何回も守ったのを忘れていないぞ俺は」

 

「それも込みでこの長い期間をかけて移動するんだよ。船はまぁ…小舟でも作るかな」

 

「死ぬ気か?というか、そういう時こそレオコーンを使ってやれ。アイツは優秀だ、船の一つぐらい用意させるが」

 

マジかレオコーン。凄えな。

あんな弱そうなのに実は超有能だったか。

そんな奴が俺の旅に着いてきてくれるなんて嬉しい限りだ、頼りにさせて貰おう。

 

「恩に着る。出発はまぁ…船が用意出来たらかな」

 

「それなら明日だな。生きて帰ってこいよ」

 

「早くねえ?」

 

 

 ──────────────────

 

 

翌日。俺の眼前には海ぐらい渡れそうな船が鎮座していた。

レオコーンやば過ぎだろ。どっから持ってきたんだこれ?昨日はなかったのに。

 

「レオコーン、お前凄えよ」

 

「いえいえ、当然の事でございます。それではライカード様。行きましょうか」

 

「応、しかしこんな立派な帆船を用意できるとはなぁ。リチャードは部下に恵まれたな」

 

「そうでしょうとも。リチャード陛下は人を見る目に長けています。無論、ライカード様を勧誘なさったのもそれ故にございます」

 

「そうか。俺がリチャードの目にかかって良かったわ。まさしく、終生の友であり主でもある人間と出会える事は奇跡だからな」

 

「お上手ですね」

 

 

船旅は案外すんなり終わった。上陸したのはカレー周辺のフランス領。俺は当初、敵対国に上陸して大丈夫かと思ったがレオコーンが名前を貸してくれた。

つまるところ、俺はこれからフランスに居る間「レオコーン」と名乗らなければならない。

 

まぁ正直、レオコーンって名前カッコいいからアリだな。と思う。俺の本名は別にライカードじゃなくてアルベルトだもんな。偽名を名乗るのには違和感を感じない。

 

 

そこからの旅は、色んな事があった。

まず、レオコーンの奴が「今の貴方はフランスの元諸侯の内の一人であるレオコーンなのですから、フランスを見て回るといいでしょう」と言ってきた。

お前フランス諸侯だったのかよと突っ込んだら、レオコーンはどうやらスパイとして諸侯をしていたそうだ。こいつ有能すぎんか?

 

初めに向かったのは、勿論パリである。

いきなり敵地のど真ん中に行くのはどうかと思ったが、レオコーンの強い勧めで行くことになった。

花の都パリは、案外綺麗だった。

ドブやクソ塗れの中世タウンかと思ったら、きちんと綺麗に保たれていた。フィリップ2世が女だからかもしれないが。

 

パリでは意外にも困っている人が少なかった。何でも第三回十字軍から治世が変わり、税の使い道がハッキリし、尚且つ週に何回かサーカスも行われていたらしく景気も回っているようだった。

 

金持ち喧嘩せずとはよく言ったもので、パリで俺がなし得た人助けは修羅場の仲裁ぐらいだった。

 

次に向かったのはオルレアンだ。

聖女ジャンヌの活躍する土地とやらを見ておきたかったのだ。ほら、なんか神聖パワーとかありそうだろ?

道中、デカいトカゲを見つけたのが印象的だった。レオコーンもビビっていなかったので、大した奴じゃなかったんだろ。しかし、トカゲにトカゲと言ったら怒り出したので、きっと飼いトカゲだったんだろう。

 

オルレアンはまぁ酷い物だった。

糞尿垂れ流し、水は汚くて飲めた物ではないような元日本人の俺にとって終わりのような場所だった。

だから当然、病人が沢山いた。

そこで俺は以前から気になっていた魔術の効果を確かめてみる事にした。慣れた物で、目を開けながら使用する事が出来るようになった。

その結果分かったのが、俺の魔術は癒し系らしい。病気に喘ぐ患者達は俺の剣からフワッと出た光に当たると快復の兆しを見せていた。

 

お陰で、レオコーン聖人伝説が出来かけたが。

当のレオコーンは少し赤面していた。当然だ、民衆が揃って

 

「レオコーン様万歳!」「レオコーン様ありがとう!」「レオコーン様大好き!」

 

などと口走る物だから、照れて当然である。

寧ろ、あそこで自己顕示欲を出して名乗り出なかったのは驚嘆に値する。やっぱりレオコーンは凄えよ。

後でそう言ったら膝を蹴られた。なんでさ。

 

 

トゥールとポワティエに行った時はそりゃあもう大変だった。噂がもう広まっていたのか、街や村に入る度に助けを求められた。

内容は決まって、野生動物の駆除や腐敗貴族の打倒だったが。

 

流石に他国の貴族を勝手に始末するのはタチが悪いので、民衆を引き連れずレオコーンと二人で説得しに行った。

すると、大半の貴族はやれ「ライオンと戦え」だの「盗賊を何とかしろ」だの言ってきたので、数十分で、モノによっては一瞬で終わらせていたら逆に泣き付かれた。

 

「これ以上嫌がらせ思いつかないんだよ!」

と苦言まで呈された。知らねえよ…。

そんな感じでやっていたら、どこからか来たとか言う詩人がいつの間にか着いてきていた。

 

当初はハープやら何やらを俺の耳元でポロポロ鳴らしていて鬱陶しかったが、面倒くさくなって放置していたらしおらしい態度を見せ始めたので、流石に哀れに思って曲を聞いてやった。

アリアネッラと名乗ったその詩人は、歌がとても上手かった。少なくとも、前世で聞いたどの歌よりも美しく、そして甘美で妖艶だった。アリアネッラの可憐な容姿も含め、そこには一つの美の極致があったように思える。

それを受けて、俺とレオコーンはアリアネッラの同行を許可。男二人の浪漫旅に紅一点が加わり、素敵旅行になった。

 

その後、リヨンを越えドンレミ村に辿り着いた。

レオコーンとアリアネッラの二人から「意味がわからない」と反対されたが、俺はどうしても聖人の生まれる場所ってのを見ておきたかったのだ。

 

しかし、悩ましい事にこれを説明するとまるで俺が変な奴みたいに思われてしまって、後世に『英雄』としてではなく『法螺吹きの大馬鹿野郎』として記録されてしまうかも知れない。

だから俺は、崩れかけていた教会の整備という名目でドンレミに立ち寄ったのだ。

まぁ、コレといって特別な物は感じなかったな。

 

 

 

そしてフランスで約一年ほど経ち、俺たちは俺の故郷である神聖ローマ帝国に足を踏み入れた。神聖ローマ帝国は数多くの諸侯が治めていて、その中の一つが俺の実家であるフリークス領だ。

ドイツでも相変わらず人助けをしていると、丁度貴族のおじさんが話しかけてきた。

 

「もしやその声、我が子アルベルトではないか?」

 

「───まさか貴方は、父上!?」

 

なんと、父上だった。いつのまにか俺は故郷に帰ってきていたようだ。人助けに夢中で気にしていなかったからな。

久々にみる肉親の顔に、少し涙が出そうだ。

 

「如何にも!ワシこそ、アルベルト2世である。我が息子ライカードよ。よくぞ戻った。そちらの方々は?」

 

「紹介しましょう。こちらが我が主であり友であるリチャードの配下が一人、元フランス諸侯レオコーン・リエルカーナ・セシレッツァ殿」

 

「ご紹介に預かりました、レオコーンです。私の事はライカード様の召使いだと思ってくれて結構です。」

 

「次に、吟遊詩人であり我らの心を魅了する歌声を持つ素晴らしい女性のアリアネッラ・ダ・ゴーマ殿」

 

「ゴーマ村出身の、アリアネッラと申しますわ。わたくしの詩を大層お気に召されたご様子で、そのご温情から不肖ながらライカード様の旅に続かせていただいております」

 

全員の紹介が終わると、父上は「それだけか?」と言って当たりを見回す。暫くそうした後、本当に3人だけだと気づいた父上はため息をついた。

 

「ライカード、ワシはかつてお前に言った筈だ。旅をするときは、何があるか分からないのだからせめて5人は連れて歩けと。教えはどうした?」

 

「父上、違います。私にはこの者ら以外に信ずる相手がいなかったのです。レオコーン殿は同じ主を頂く同胞として、アリアネッラとはまた別の形で深く通じ合っております。私は、彼ら以外の旅の供を思いつきません」

 

「であるか。そういうことなら仕方があるまい。お前が真に信じた者であればワシとて安心できよう。一度屋敷に戻ってくると良い、ミリアレーネが待っておるぞ」

 

「あっ」

 

ミリアレーネというのは、簡単に言うと俺の婚約者だ。と言っても、俺が10歳の頃に決まった話だから、俺にとってはいつまでもミリアレーネは子供のつもりで居たんだがもう俺はもう23歳だ。

婚約が決まった時のミリアレーネの年齢が6歳だから、今は19くらいか?丁度妙齢ってとこだな。

 

というか、ミリアレーネの存在を今の今まで忘れていた。そもそも、英雄として活躍する以上女性と結婚生活を送る暇は無いと思ったから、ミリアレーネとも最低限の付き合いしかしていないしな。

 

「それ見た事か!貴様、ミリアレーネの事を忘れておったな!?あーあ、可哀想になぁミリアレーネ!自分の婚約者ぐらい覚えておけ!」

 

「んだと鬼父上!筋肉鍛えすぎて第三夫人に逃げられた男のセリフじゃないですねぇ!?脳筋にも程があるだろうが!」

 

「何ぃ!?生意気な口を聞くようになりやがって!ワシ可哀想だわ!ふざけんな!」

 

「ふざけてんのはお前だ父上ェ!俺ぁ戦場で活躍したがぁ!?」

 

「くっ、ワシが出陣していないからと調子に乗りよって!ワシだって出陣していたらお前より活躍してたわアホンダラ!」

 

「無理に決まってんだろ!俺は一人で城壁崩したけど父上はぁ!?出来んのかって言ってんだよ!」

 

「うるせー筋肉バカ!お前みたいなバケモンとワシを比べんな!……というか、お前の母のベルフェアも力強かったな…これが血か」

 

「え、母上ってそんな強かったのかよ」

 

「当然だ。お前の母ベルフェア・ゴール・フリークスはな、唯一ワシを負かした女じゃ。当時では『剛力無双』だの『暴食顕現』だの言われていたなぁ」

 

「おい嘘だろ母上。そんなバケモンがどうやったら野盗に殺されるんだよ。野盗は修羅か何かか?」

 

「思えばあの野盗も強かった。奴はかつて剣豪と…」

「もう良い、分かった」

 

今の下りで分かったと思うが、父上は大変ユーモラスなお方だ。こんな父上の元で育った俺だからこそ強く育てたのかもしれない。

それにしたって、客人が目の前にいるのにこの崩し方は貴族としてどうなんだ?

 

「───うおっほん。お客人方、見苦しい所をお見せした。ここに詫びよう。さてお客人方、屋敷へ案内しましょう。こちらです」

 

「「あ、はい」」

 

ほら見ろ、レオコーンとアリアネッラがドン引きしてるじゃないか。ん?何だレオコーン、俺の方を変な目で見て。それにアリアネッラまで。どうしたんだ一体…?

 

「その、ライカード様?この事は叙事詩にはしないでおきますわね…」

 

「私もそれが良いかと…」

 

 

あっ

 

 

 ──────────────────

 

 

「おかえりなさいませ、ダーリン」

 

屋敷へ帰るなりいきなり知らない女からすっとぼけた事を言われた。誰だこいつ?

 

「おお、ミリアレーネ!来ていたのか。ほれライカード、ミリアレーネに挨拶をせい」

 

え、こいつミリアレーネなの?

俺が記憶しているミリアレーネは、活発で粗暴。常に顔を泥まみれにしている美人とは言えない女だったのだが…今のこいつはまるで違う。

ほんのり緑がかった髪はキチンと手入れされ、子供らしかった体型は形をひそめ、美しい肉体美を漆黒のドレスで隠している。

 

「────君は」

 

「お忘れになりましたの?わたし、ミリアレーネでございます。ご存知でしょう?貴方様の婚約者です」

 

「いや、すまない。あまりの美しさについ我を忘れてしまったよ。綺麗になったね、ミリアレーネ」

 

「まぁ、お上手。ライカード様こそ逞しくなられて…」

 

「私は何も変わってはいないさ。手は少し、汚れてしまったけどね?しかし、綺麗なものもたくさん見た」

 

「もう、その心はわたしには無いのですね」

 

「む、何か言ったかな?もう一度君の可憐な声を聞かせておくれ」

 

「いえ。なんでもありません。なんでも」

 

「そうか…困った事があれば、私に言うと良い。これでも最近は名を変えてはいるが市井の英雄として名を馳せているからね。少なくとも、その辺の騎士よりかは頼り甲斐がある筈だ」

 

「────はい。そうさせて、もらいます」

 

どうにも変だ。時間というのはあっという間に過ぎていくもので、人が変わるのは一瞬とも言えるがこの変化はどうだ?

さっきまで何というか、好き好きオーラが出ていたのにすっかり消えてしまった。俺が何かしたかな?

 

 

 

 

夜。俺は女心を知るためにアリアネッラの元へ行った。

 

「──────で、わたくしに聞きに来たと。ライカード様はつくづく女の子の気持ちが分かりませんわね」

 

「それは…そうなんだが。何とかならないか?私としても、婚約者と不仲なのは流石に避けたい。」

 

「成る程。では質問致しますが、ライカード様は純潔ですか?」

 

「………苦々しい思い出だが、純潔では無い。あれは半ば強姦のようなものだったからな」

 

「えっ!?ライカード様、強姦したんですの!?」

 

「違う!逆だ。私は襲われたんだ!魔術も使われてな」

 

「何ともまあ…叙事詩が厚くなりますわね」

 

「やめろ。…それはともかく、何とかならないか?本当に困っているんだ。アリアネッラも叙事詩の主人公が婚約者との付き合い方も分からない大間抜けだと都合が悪いだろう?」

 

「いえ別に…まぁ、他ならぬライカード様の頼みですから聞きますけど」

 

「恩に着る」

 

そうしてアリアネッラから話された内容は俺の想像を絶するものだった。

 

 

 

「いいですか?彼女は諦めたのです。何故なら、貴方がリチャード陛下に向ける深い愛ゆえにです。」

 

「なん…だと?」

 

「ライカード様とリチャード陛下はそれはもう深い絆で結ばれていますわ。まぁ、戦友は恋人よりも絆深いとも言いますからね。

わたくしの予想ですが、ライカード様はリチャード陛下との縁を絶対に切らないでしょう?そしてライカード様はミリアレーネ様よりもリチャード陛下を取る。そうですわね?」

 

「まぁ、そうだが…」

 

「それが問題なのです。ライカード様は不幸にも心の中で女性に対する不信感があるのではなくて?わたくしを仲間にするかしないかの時でも、『女性はちょっとな…』と仰っていたではありませんか。」

 

「うっ、確かに…そうかもしれん」

 

「ですので、解決は簡単ですわ。」

 

「それは……?」

 

 

「抱きなさい」

 

……………………へ?

何を言っているんだこの女。

 

「ですから、抱きなさい。と言ったのです」

 

「いや、少し待つんだアリアネッラ。意味が分からない。本当に分からない。第一、私とミリアレーネは婚約者とは言え大して仲のいい訳ではない。」

 

「ええ、そうですわね。抱きなさいな」

 

「お前何言ってんの?」

 

「あら、素が出ましたわね。わたくしはそちらの方が好ましいのですけれど。」

 

「訳を説明しろ。幾らなんでも突飛すぎる」

 

「はぁ…分かりませんの?わたくしはライカード様の女性に対する不信感や苦手意識を払拭なさいと言っているのです。もしライカード様が見事ミリアレーネ様を抱けたら、男として一皮剥けるのではなくて?」

 

「……英雄的にそれはどうなんだ?」

 

「英雄は色を好むものですわ」

 

「そうか」

 

う〜ん許せん。要するに、アリアネッラが言うには「お前女も抱けないチキン野郎なんだろ?え?」という事だ。ここまでナメられるとは、思ってもみなかった。

 

なら、仕方ない……行くかぁ!!!

 

 

 ──────────────────

 

 

俺は勇気を出した。

確かに俺はミリアレーネの部屋まで行き、同衾までした。しかし、その先にどうしても踏み出せなかったのだ。性欲がないとかでは無く、穏やかに眠るミリアレーネの顔を見たら毒気を抜かれたのだ。

俺はアリアネッラの言う通り、確かにクソチキン野郎だ。しかし、英雄の在り方とはオーソドックスな英雄像だけが英雄たらしめるのだろうか?否、断じて違うと信じている。

 

その日の内に俺たちは旅立った。アリアネッラから白い目で見られたが、俺は無視した。

 

それから、数年が経った。

俺たち一行は無事にビザンツ帝国へ辿り着き、俺は次の十字軍への備えを。レオコーンは帰国し、アリアネッラは再び旅を続けた。

俺はコンスタンティノープルの中で着々と地位を得て、住民の皆とも仲良くなることが出来た。付いた異名は「栄光の聖騎士」だ。なかなかどうして、イカしている。

 

 

「───将軍ライカード様!第四回十字軍が組織されるそうです!これでライカード様が懸念していた聖地の奪還も目処がつきそうですね!」

 

「あぁ……そうか、もうこんな時期か。」

 

俺は城壁の上に立ち、遥か遠くの西を眺める。ああきっと、あそこに敵が居るのだろう。しかし、俺がこのコンスタンティノープルを守り通してみせる。

 

 

この、命に代えても。




これで幕間は終わりです。
次からは第四回十字軍編を始めます。なるべく早く更新しますので、よろしくお願いします!
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