コードギアス‐魔導のルルーシュ   作:にゃるが

11 / 34
原作から乖離した独自設定がヤマト同盟に付与されます。


サイタマゲットー攻防戦

 瓦礫の山となったゲットーを、ランスロットがランドスピナーによる疾走と跳躍による三次元立体機動を駆使して駆けまわる。

 ランスロットのモニターに映る次の相手はブリタニア軍所属のサザーランドが3機。いずれの機体もコックピット側面に5連装ミサイルポッド「ザッテルヴァッフェ」を装備し、その内1機が携行している大型キャノン砲をランスロットの進路上にあるビルに撃ち込んで崩落させランスロットを押し潰そうとする。

 スザクは崩落するビルの瓦礫を掻い潜り時には瓦礫を足場に跳躍し、サザーランドとの距離を一気に詰める。

 

「これ以上、やらせはしない!」

 

 ランスロットの手刀が、1機のサザーランドの腕部を抉り飛ばす。そのまま回転蹴りでもう1機のサザーランドに蹴り飛ばし、残る1機のアサルトライフルのフルオートをブレイズルミナスで弾きながら裏拳でファクトスフィアを破壊する。

 

『スザク、次はポイントN7に誘導したブリタニア軍のナイトメアを頼む!』

「分かった、ゼロ!」

 

 それぞれのサザーランドの脱出装置が機能してコックピットが射出されたのを確認したスザクは、ルルーシュからの指示を受けてゲットーを破壊する他のブリタニア軍ナイトメアフレームを止めるためにその場へと向かう。

 スザクとルルーシュが現在いるのはサイタマゲットー。関東圏ではそれなりに規模が大きいレジスタンス組織であるヤマト同盟が拠点としている地域だ。

 二人は扇グループと共にヤマト同盟と協力関係を結ぶ交渉のためにサイタマゲットーまで来た所、今回の襲撃に巻き込まれたのである。

 

『ゼロ、すまない。俺達が不甲斐ないばかりに……』

「今は悔やむ事よりも、時間を稼ぎ民間人を脱出させる事を優先するんだ! 奴等は抵抗できない民間人を優先して狙ってくるぞ!」

『わ、わかった』

 

 ヤマト同盟のリーダーであるバンダナを頭に巻いてメガネをかけた男、泉がモニター越しにハッとなって慌てて仲間たちに指示を出す

 ヤマト同盟の最大の特徴は、イレヴンとブリタニア人のハーフ或いはクォーター、そしてその親族が構成員を占める比率が他のレジスタンスと比較して際立って高い事だろう。

 エリア11において、イレヴンとブリタニア人の混血児の立場は非常に危うく不安定だ。

 容姿がブリタニア人に近く、ブリタニア側の親に引き取られれば、素性を隠す必要こそあるもののまともな暮らしをすることができる。

 しかし、イレヴンに近い容姿であったり、ブリタニア側の親に引き取られなかった場合、イレヴンとブリタニアのどちらからも拒絶され虐げられる日々を送る事になる可能性が高い。

 ヤマト同盟の母体は、元々はそう言った混血児の生きる権利を守るために組織された団体だった。

 泉本人は日本人だが親戚にブリタニア側の親を戦争で喪ったハーフがおり、双方から迫害されて命を落としたことが切欠で団体の活動に参加した。

 ヤマト同盟の下には全国から身寄りがなく迫害されてきたハーフやクォーターが多く集まり、イレヴンとブリタニア人の双方から向けられる敵意や悪意から身を守るために戦ってきた。その結果、日本解放戦線や過激派組織には劣るものの多くの人員を抱える勢力となったのは皮肉であろうか。

 

『ゼロ。こっちの区画に逃げ込んだ民間人の避難は、ブリタニア軍が把握しきれていない地下鉄網を利用して完了した』

「よし! 今はスザク達がブリタニア軍を引き付けている。その間に扇は杉山と合流し、逃げ遅れがいる区画へ向かえ! この戦いの成否はサイタマゲットーの民間人をどれだけ救えるかにかかっている!」

『了解!』

 

 トウキョウ租界に比較的近いサイタマゲットーを拠点としていながら、今まで大規模な掃討作戦が行われてこなかったのは、幾つか理由があった。

 一つは穏健派に分類されるヤマト同盟よりも危険で過激なレジスタンスが各地に存在した事。軍部が捻出できるリソースには限りがあり、被害が少ないテロ組織よりも危険で過激なテロ組織の掃討にリソースを割きたいとクロヴィス総督時代の軍部は考えていた。

 もう一つは名誉ブリタニア人となれなかったイレヴンの不満の受け皿。クロヴィス総督時代、イレヴンに対する弾圧・迫害は他のエリアのナンバーズと比較しても激しく、当事者であるイレヴンからの不満は大きかった。その不満がテロリストへの協力という形になるわけだが、過激なテロ組織に協力されるくらいならば穏健なテロ組織に協力される方がまだマシだという理由で意図して残されていた。

 しかし、コーネリア・リ・ブリタニア第二皇女のエリア11新総督就任によって状況が一変した。

 コーネリア総督は就任早々、中部最大の「サムライの血」を筆頭とした3つの過激派テロ組織を自らの親衛隊と一部の精鋭のみで瞬く間に壊滅させる事で、自らに課している「命を懸けて戦うからこそ統治する資格がある」という信念を世間に示し、市民からの信頼が失墜しガタついた軍部の再編を速やかに行っていった。

 ならばこのヤマト同盟が拠点とするサイタマゲットーを廃墟とするような苛烈な攻撃もその一環なのか? それは否である。

 コーネリアにとって反ブリタニアのレジスタンスは全てテロリストとして鎮圧するべき相手とはいえ、その中でも優先順位はある。ヤマト同盟よりも優先すべき過激派組織はまだいくつもあり、ヤマト同盟の鎮圧作戦は本来ならばまだ幾分か猶予があるはずであった。場合によっては副総督であり妹のユーフェミアに総督の座を譲る際の功績のために、規模に対して危険度が低いヤマト同盟を残していたともいえる。

 ならばこの状況は何なのか? それは、コーネリア第二皇女に遅れてエリア11に赴任したナイトオブファイブ──ヴィクトリア・ベルヴェルグが独断で主導したものだ。

 ヴィクトリアがサイタマゲットーを狙った事に関して、特に大きな理由はない。比較的近い所にそれなりの規模のレジスタンスが残っている。だから準備運動代わりに殲滅する事にした。それだけだ。

 ヴィクトリアはコーネリアが過激派レジスタンスの鎮圧に向かっている間に、素行に問題があり軍部に拘束されていた軍人──その中でも特に気性が荒い者たちをラウンズの権限で条件付きで釈放させ、独自にサイタマゲットー殲滅のための戦力として出撃したのだ。

 召集されたブリタニア軍人にヴィクトリアから与えられた命令は至ってシンプルだ。

 

 ──サイタマゲットーを更地にし、テロリストと協力者を殲滅せよ。

 

 皇帝直属の騎士からの命令通り、サイタマゲットーを殲滅するためにインフラ機能さえも気にせず嬉々として攻撃を加え虐殺を行っていくブリタニア軍兵士。

 それに対し、ルルーシュは撤退やブリタニア軍の撃退よりもヤマト同盟とサイタマゲットーの民間人を救出する事を優先した。

 自分達が逃げるだけならば、ヤマト同盟を囮にすることで容易く遂行できるだろう。ブリタニア軍の撃破も、サイタマゲットーを壊す覚悟があれば問題ない。

 だが、そんなことをすればイレヴンや主義者といった反ブリタニア感情を持つ者たちからの支持は得る事はできないし、何よりも自分たちが立ち上がった元々の目的に反する。

 

『スザク、井上にエナジーフィラーの替えを用意させた。ポイントN6アンダーで受け取ってくれ』

「分かった」

 

 向かった先のブリタニア軍ナイトメアを撃破したスザクは、指定されたポイント──地表ではなく地下鉄網内部──に向かい、エナジーが心もとなくなっていたランスロットのエナジーフィラーを交換する。

 

「井上さん、ありがとうございます」

『良いのよ、私達も貴方達に助けられているんだから。でも、無茶はダメよ? ゼロにとっても貴方の存在は必要不可欠なんだから』

 

 井上は何かと無理をしがちに見えるスザクに心配の声をかける。

 井上を含めた扇グループが保有する識別のために黒に塗装されたサザーランドは、ロイドを筆頭とした特派メンバーによってランスロットのデータをフィードバックした改造を施されていた。

 格闘戦用のスタントンファーは取り外され、代わりにサザーランド用に出力を調整したブレイズルミナス搭載のシールドと大型のスラッシュハーケンが一つずつ別々の腕部に装備されている。

 これはブリタニア軍に押収された特派のヘッドトレーラーを盗み出す事は出来なかったものの、設計図や必要な資材を彼ら自身が頭の中に記憶していたことが大きい。

 改造に必要なパーツのためにブリタニア軍基地から資材を盗み出して確保する以上に難航したのは、この改造サザーランドの名称だった。ゼロとスザク、扇グループの男性陣及び特派メンバーが一夜掛けて激論を交わした結果、最終的にサザーランド・リベリオンに落ち着いた。

 サイタマゲットーの他の戦場では、カレンとマーヤ──扇グループにはブリタニア人のハーフである百目木と名乗っている──が連携してブリタニア軍のナイトメアに奇襲を仕掛けては離脱を繰り返すヒット&アウェイによる遅滞戦術で戦線をくぎ付けにしている。

 それでもブリタニア軍の攻勢を止めるには至っていないのは、そもそもの物量差とエース級以外の練度の差、何よりもヴィクトリア本人が最もサイタマゲットーを破壊していることが大きかった。

 ルルーシュの魔導師としての感覚が、不可視の膜状の結界がサイタマゲットーを覆うように包み込むのを察知する。それと同時に此方に向かって建造物などを倒壊させながら最短距離で接近するブリタニア軍のナイトメアが1機。

 

「これは……転移阻害用の結界。やはりブリタニアにも魔導師がいたか!」

 

 ルルーシュはサザーランド・リベリオンを走らせながら、ブリタニア側の魔導師を撃退するための策を巡らせ始めるのであった。

 

 ────────────────────

 

 

 ヴィクトリア・ベルヴェルグにとって、サイタマゲットーの殲滅にゼロが介入してくる事態は嬉しい誤算だ。

 エリア11の統治における大きな障害の一つを排除できる機会であるのもそうだが、何よりも7年前の屈辱を返す機会があちらからやってきたのだから。

 専用のグロースターのファクトスフィアとは別に自身のセンサーを稼働させ、魔力を保有する者たちを広域探査で探し出す。もしもあのゼロが7年前の人物と同一人物ならば、これでかなり絞る事ができる。ゼロの方も此方の存在に気が付くだろうが、空間転移を阻害するフィールドはサイタマゲットーに展開済み。魔法による逃走はできない。

 この戦場に於いて、手勢の配下を除けば魔導師となりうる魔力量を保有しているのは3名のみだ。内2名は此方のナイトメア部隊相手に遅滞戦術を行っていてゼロとは魔力パターンが異なる事を確認済み。そちらには数合わせの駒ではなく配下の者を向かわせるとしよう。

 

「キヒ、キヒヒ……! 見ぃつけたぁ!」

 

 グロースターのコックピット側面に装備された2門の6連装対艦ガトリング砲で進路上の建造物を粉々にしながら、最短ルートでゼロがいるポイントへと向かう。

 ゼロも此方に気が付いたのだろう。此方をどこかへと誘導するように反応が移動しているのが分かる。

 

「グレイス隊はこれから送る座標のビルを指定した方向に倒壊させろ!」

『イエス、マイロード!』

 

 近くにいたグレイス隊の者たちに、ゼロの逃走経路上にある廃墟ビルを倒壊させる事で、ゼロの逃走経路を塞ぐ。

 それでもゼロは即座にルートを切り替えて逃走をしながら、私のグロースターの進行経路上にある道路を爆破して地下へと叩き落そうとする。しかしこの肉体のセンサーは道路に爆弾が埋設されていた事をすでに把握済み。爆破に合わせて跳躍し周囲に潜んでいたサザーランド──いつの間にか強奪されていた通常の機体──を蜂の巣にしながらゼロのサザーランドを追いかける。

 すると線路を横切ったゼロのサザーランドの脇を白いナイトメアがすれ違い、私の前に立ちふさがる。

 

「あれは確か、特派が開発していた嚮導兵器ランスロットか……」

 

 ランスロットが二振りのMVSを抜き、赤く染まる。事前に得ていた情報ではシンジュクゲットーで強奪された時にはMVSは装備していなかったはずだが、どうやらそちらも後で奪われたか製造されたかしたようだな。

 

「諸共に殲滅してやろう!」

 

 6連装対艦ガトリング砲の照準をランスロットに向け、掃射を開始する。ランスロットはサザーランドでは困難な三次元立体機動を駆使して破壊の嵐を躱しながら私に接近を試みる。

 如何に第七世代の最新鋭機と言えども、軍艦さえも蜂の巣にしてしまう対艦ガトリング砲の雨を被弾し続ければ耐えられないと考えたのだろう。

 それにしても、この重火力の機体ならば懐に入り込めばどうとでもなると考えたのか? だが、その考えは甘いと言わざるを得ない。

 私は対艦ガトリングの掃射を一旦やめて対ナイトメア用大型ランスを構えたグロースターをあえてランスロットに突っ込ませる。この機体のスペックは、私のIS(インヒューレントスキル)によって通常のグロースターを遥かに凌駕するのだよ! 

 ランスロットのMVSと私のグロースターの大型ランスがぶつかり合う。パワーは……加速しながらの刺突であった分だけ此方が若干有利。……若干程度だと!? 

 

『ランスロットが押されている!? このグロースター、パワーが違う!』

「この新型、私が強化したグロースターと張り合えるというのか!」

 

 互いに驚愕し、互いに同時に行動する。

 私は空いているもうグロースターの片腕でランスロットを殴打しようとし、ランスロットはそれを腰のスラッシュハーケンで弾きながら距離を取る。

 

『普通の機体ならば、さっきので破壊できるはずなのに……。何なんだ、あのグロースターは!?』

「反応が早い! ランスロットの性能頼りという訳ではないという事か」

 

 こうして目の前のランスロットと攻防を交えている間にも、ゼロのサザーランドはどんどん離れていく。目の前のランスロットを撃破しなくては追いかけるのは無理か。

 対艦ガトリング砲とアサルトライフルの斉射に対し、ランスロットはアサルトライフルの弾幕だけブレイズルミナスで弾きながらヴァリスで反撃する。

 一発がグロースターに被弾するが、通常の機体ならばともかくこの私のIS(インヒューレントスキル)によって装甲も強化されたグロースターならば、チャージが短い射撃ならば十分に耐えられる。むしろ武装を破壊される方が面倒だ。

 しかしこのままでは埒が明かない。ならばと大型ランスに魔力を伝搬させてエナジーランス化させようとしたところで、今回の作戦の仮拠点としている陣地から信号弾が打ち上げられた。

 

「なに? 撤退命令だと!? 誰が勝手に!」

 

 その時、仮拠点からの全周波通信を通信機が受信する。

 

『サイタマゲットーを攻撃しているブリタニア軍は、直ちに破壊行為・戦闘行為を停止しなさい! エリア11副総督にして第三皇女、ユーフェミア・リ・ブリタニアの名のもとに命じます! 繰り返します! ──』

 

 それは副総督による停戦命令。

 見ればサイタマゲットーに投入したブリタニア軍のナイトメアが自ら直属の配下を除いて引き揚げ始めている。配下の者たちも下手に攻撃が行えない状況となっている。

 これでゼロ達が此方に攻撃を仕掛けてくるならば自衛のためと言って無理やり戦端を開くことができたが、相手も攻撃を止めて撤退し始めている。

 本来ならばコーネリアが政庁不在の間に手早く平らげる予定であったこの殲滅戦。ゼロ達の遅滞戦術によって予定よりも時刻は超過していたが、お飾りのはずのあの女(ユーフェミア皇女殿下)がこんな行動に出る事は想定外であった。

 総督や副総督に命ぜられない限りは自由に動ける権限があるものの、今回のように命令されてしまっては相手が皇族かつエリアを担当する要職の人間という立場上従わざるを得ない。

 

(この……脳内花畑の日和見主義者がぁ!)

 

 自らのライフワークを邪魔した副総督への憎悪を内心募らせながら、サイタマゲットーから引き上げる事となった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 サイタマゲットーを攻撃していたブリタニア軍が副総督の発した停戦命令を受けて撤退していくのを見て、泉はルルーシュに尋ねる。

 

『ブリタニア軍が……撤退していく?』

「守りながら調べ上げて連絡するのは苦労したが、上手くいったようだな」

『ゼロ、まさか……ユーフェミア副総督とつながりがあるのか!?』

「いや、私はただ善意の市民として『総督たちの許可なくサイタマゲットーがブリタニア軍に攻撃されている』事を副総督宛に送っただけさ。ユーフェミア副総督はブリタニア皇族としては珍しい平和主義者だ。レジスタンスはすべて鎮圧するつもりのコーネリア総督が他の過激派レジスタンスの壊滅のために出陣しているこの状況ならば、サイタマゲットーで起きていることを確認すれば市民への被害を抑えるために何かしら行動を起こすと予想してな。まあ、流石に停戦命令を躊躇せずに発令したのは良い意味で予想外だったが」

『そ、そうか……』

「今回の一件で、ラウンズも総督たちに無断で動くことは簡単にはできなくなるだろう」

 

 ルルーシュは電話でマーヤとユーフェミアが出会った事を知った時、彼女が昔のままであることを見抜いていた。誰にでも優しくて、活発で明るい、恐らくは自分の初恋の相手だったかもしれない少女。

 彼女を利用する事は心を痛めたが、誰かを傷つけるためではなくむしろ傷つけさせないために利用したのだからと、ルルーシュは自分に言い聞かせながらプランの一つとして彼女に情報を送った。

 ユーフェミアが動かなかった場合でも大丈夫なようにプランは複数用意してあったが、可能性は低いが一番厄介な状況──コーネリアが合流して共にサイタマゲットーを制圧するパターンにはならずに一番被害を抑えられるパターンの結果となりホッとしている。

 だがこれで、ヤマト同盟も此方に恩義を感じて協力的になるだろう。ブリタニア軍が撤退している間に、自分達も撤退した方がお互いのために良さそうだ。

 各員にそれぞれの撤退ルートを指示して自身も帰還する途中、スザクから通信が入る。

 

『ゼロ、無事かい?』

「ああ、おかげで此方は無事だ。スザクの方はどうだ?」

『ラウンズとの戦闘で危ういのがいくつもあったけれど、幸い大きな被弾は無くて済んだよ』

「そうか、それは良かった。あの異常なグロースターの相手はサザーランド・リベリオンでは荷が勝ちすぎているからな。お前には負担をかけた」

 

 限られた戦力の中でラウンズを相手できる最適解だったとはいえ、スザク一人に任せる事になったのはルルーシュとしても歯がゆい思いはある。

 ヴィクトリアのグロースターは軍艦さえも単騎で殲滅できる異常な火力を有していながら、機動力は通常のグロースターを凌駕している。しかも今回の戦闘でも明らかになったようにランスロットの武装でも一撃では破壊に至らない堅牢さまで持っているのは、ロイド達の話では投入されているブリタニアの技術力だけでは説明が付かない。

 ヴィクトリアは恐らく魔導師だ。それも先ほどの転移阻害の結界などの事も踏まえると、ゼロが魔導師である事を知っている人物となる。ひょっとして、7年前に俺が彼女たちと共に潰して回った次元犯罪者の誰かかその関係者なのか? 

 レジスタンスの過激派に魔力的な干渉を行っているであろう草壁の存在等も考えると、魔法に対処できるのが自分だけでは明らかに手が足りなくなる。

 

「マーヤとカレン、それとC.C.の三人に魔導師としての教育が必要になるか……。だがデバイスはどうする?」

 

 今回の戦いでは想定よりも民間人の犠牲を抑える事ができたが、今後もこう上手くいくとは楽観できない。

 マーヤたちに魔法に対抗するための教育が必要になった事を痛感しつつも、そのための道具を用意する当てがない。デバイスによる補助なしで魔法を実践レベルで運用するとなると、今度はナイトメアの操縦が覚束無くなるのは容易に想像できる事だ。それに、マーヤとC.C.はともかくカレンが魔法を信じるかという問題もある。

 自分の意思で選んだこととはいえ、大切な者を守るために得た魔法の力で戦争をしている現実に、ルルーシュはため息をつく。

 彼女たちが今の自分を見たら、どう思うだろうかと。

 

 

 ────────────────────

 

 

 サイタマゲットーでのルルーシュ達とヴィクトリアの戦いがユーフェミアの停戦命令で集結した頃、アッシュフォード学園のクラブハウスではナナリーを含めた生徒会女性陣が集まって話をしていた。

 

「──。という訳で、今度の生徒会メンバーの旅行にナナちゃんも一緒にどうかなって思ったの」

 

 ナナリーに積極的に話しているのは、茶色とオレンジ色の中間あたりのロングヘアーの少女。シャーリー・フェネットだ。彼女は生徒会メンバーとして活動しながら水泳部も掛け持ちをしている飛び込みの競泳選手でもある。明るく活発な性格で、足が不自由なナナリーの事もよく気にかけている。

 

「シャーリーさん。お気持ちは嬉しいのですが、私がいては皆さんに迷惑が掛からないでしょうか?」

「良いの良いの♪ ナナリーちゃんだって女の子なんだから、働いているルルーシュの分まで青春を謳歌しなさいな」

「ミレイ会長……」

 

 ブリタニア人の中には、身体が不自由な障害を持つ者に対する偏見や差別の意識を持つものが多い。

 生徒会の人たちは差別意識は持っていないが、足が不自由な自分が旅行に参加する事で生徒会の人達にまで迷惑をかけたりしないか不安に感じるナナリー。そんな彼女に対して、生徒会の会長でありアッシュフォード学園の理事長を務めるルーベン・アッシュフォードの孫娘、ミレイ・アッシュフォードは気にする様子もなく一緒に旅行する事を勧める。

 シャーリーとミレイがここまでナナリーを旅行に誘うのは、彼女がここ最近塞ぎこんでいるのを見て気晴らしになればいいなと言う親切心からだ。

 最近生徒会に所属したカレンは病弱で、マーヤは学園そのものをサボりがちなために参加どころか誘えるかも怪しい状況なのもあって、参加メンバーが多ければ多いほど賑やかで良いというミレイの考えもある。

 

「ご安心を、ナナリー様。ナナリー様が旅行を楽しめるように私がサポートいたします」

「咲世子さん……分かりました」

 

 目が見えないナナリーに視線の高さを合わせて優しく手を握りながらそう答えるのは、アッシュフォード家の使用人として仕えながらナナリーの身の回りの世話もしているイレヴンのメイド、篠崎咲世子。

 ナナリーの手を握る彼女の言葉に嘘偽りや隠し事が無い事を察したナナリーは、ようやく旅行に参加することを決心する。

 

「よ~し♪ それじゃ早速、旅行先のホテルの宿泊予約を取らなきゃね♪ 最高の思い出にするわよ~♪」

「もう、会長ってば調子良いんですから」

「ふ~ん♪ そういうシャーリーはどうなのかな~? あっちの方、進展どうなの?」

「ふぇっ!? ルルとはまだそういう関係じゃ!?」

「あら、ミレイ会長はお兄さまとは一言もおっしゃっていませんよ?」

「それにまだ(・・)とな。ほほ~う♪」

「もう、ミレイ会長!」

 

 シャーリーは恥ずかしさで顔を赤くしながら抗議する。

 シャーリーには好意を寄せている相手がいる。ナナリーの兄であるルルーシュだ。とても頭が良くて妹を養うために起業し、エリア11の医療・福祉関係の分野ではそれなりに知名度がある同年代の少年。起業家としては顔の半分を隠す気障な仮面を被ったジュリアス・キングスレイという偽名で活動しているのは如何なものかと思うが、そのくらい格好つけたほうが相手に舐められ難いかららしい。

 始めはクラブハウスの近くでナナリーが同級生に苛められそうになっていたところを助けてナナリーと知り合いになったのが切欠だった。

 その事を知ったルルーシュが菓子折りを持ってシャーリーに感謝の言葉を伝えに来て、彼の人柄を知って興味が湧いた。

 それから合間を見つけてはナナリーとお話したりしていく内に、ミレイ会長の口車に乗って学園の外部の人間であるルルーシュと接点ができる生徒会にいつの間にか所属していた。

 そうやってルルーシュとも交流を重ねていく内に、いつの間にかシャーリーはルルーシュの事が好きになっていった。

 ルルーシュは色んな人達から好意を向けられている事に鈍感だ。

 例えば最近生徒会に所属したマーヤ・ディゼルさん。彼女もナナリーとよくお話をしているし、顔を出したルルーシュともよく話をして自然なほほえみを向けている。恋のライバル筆頭だろう。

 

「はぁ……もっと素直に言えたら、ルルも気が付いてくれるのかなぁ……」

「ルルーシュだからねぇ……」「お兄さまですし……」

 

 ミレイ会長はともかく実の妹であるナナリーにまでそう言われるのは、ルルーシュの他者からの好意に対する鈍感力が高すぎる気がするの。




ブリタニアの国是的に考えれば、独断行動はともかくとしてヴィクトリアがテロリストの殲滅のためにイレヴンの住むゲットーを更地にするのはそれほど問題ではないんですよね。(白目)
むしろユーフェミアがダダ甘で叱責されるくらいです。でも、無断でテロリストの殲滅のためにサイタマゲットーの住民を皆殺しにしようとする動きを彼女が知ったら止めに走ると考えました。

基本規格が同じであろうグロースターがザッテルヴァッフェを装備できるので、サザーランドもオプション装備として装備できると判断して装備させました。駄目だったらそういう改造を施したという事で。
ルルーシュはナイトメアの操縦技量こそ原作通りレベルBですが、魔法を使いながらでもレベルが低下しません。普通にやばいです。

シャーリーは原作通りルルーシュの事が好きになっているようです。
どうするか悩んでシャーリーの扱いをダイスで振ったら、見事に1/10のクリティカルを引いたんだ……。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。