コードギアス‐魔導のルルーシュ   作:にゃるが

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今回は普段より大分短めの小話


幕間-黒の騎士団の食卓-

草壁中佐が引き起こしたホテルジャック事件を解決し、鮮烈なデビューを果たした黒の騎士団。ゼロと黒の騎士団は法で裁けない様々な悪――民間人を巻き込むテロや横暴な軍隊、更に汚職政治家と結託する営利主義企業や犯罪組織等々――を断罪し、その罪を白日の下にさらけ出していった。

さらにブリタニア軍が張った罠を時に掻い潜り、時に堂々と突破し、時に利用していくゼロと黒の騎士団の活躍は、日本人からの支持を集めていく。

 

「っぷはぁ!いい事をした後の一杯は格別だぜ!」

 

その日も黒の騎士団として汚職政治家の不正の証拠を白日の下に晒し、アジトである大型トレーラー内で祝杯を挙げていた玉城。

 

「悪をくじき、弱きを助ける!それが俺達、黒の騎士団よ!」

「調子に乗り過ぎ」

「酒も美味けりゃ料理も美味いってな!それにしてもゼロの奴、こんな料理を何処から仕入れてきているんだ?」

 

玉城はカレンの小言をスルーしながら、ネギチャーシューを酒の肴にし、ふと疑問に思う。薄くスライスされたチャーシューはしっとりとしており、細切りのネギはラー油によってピリリとほんのり辛い事で味を引き締めてくれている。醤油ベースの味付けはしっかりとしていながらくどくなく、いくらでも食べれてしまいそうだ。

 

「確かにゼロが持ち込んでくる料理、いつも本当に美味いよなぁ。どんな伝手があれば買えるんだ?」

「この間のおにぎりも具材がシンプルだったけれども美味しかったしな」

「セシルの奴が準備したブルーベリー味おにぎりは忘れてないぞ?」

「それは玉城が食い意地張ってたからだろ」

「スザクか百目木辺りなら、何か知っているかもしれないわね」

 

ゼロが用意する料理(偶に混ざるセシルの料理)について話が弾む黒の騎士団メンバー。なお、セシルの料理の主な被害者は玉城とロイドである。

 

「待たせたな。軽食だけでは物足りないだろうから、追加も用意してきたぞ」

「ゼロ、丁度良かった。聞きたい……事、が……」

 

キッチンから出てきたゼロに料理の真相を訪ねようとした扇だが、ゼロの装いに言葉を失った。

基本は普段のスーツとヘルメット。これはいつも通りなので気にしない。いや、素顔とか気になりはするが問題はそこではない。問題はゼロがスーツの上からフリフリにエプロンを身に着け、キッチンミトンで取っ手を掴んだ大きな中華鍋一杯の炒飯を運んで来ていたのだ。

エプロンの上側は花柄、下側は和柄模様で、上下別々の生地をクマさんのアップリケで繋いだ様な装飾が施されている。一方のキッチンミトンはシルバーのチェック柄だ。どちらも新品という雰囲気はなく、補修した後が跡から見て随分と大事に使い込まれているようだ。

 

「どうした、扇?」

「あ、いや……それは?」

「昨晩仕込んでおいたネギチャーシューだけでは足りないと判断してな。今日の主食として炒飯も今しがた用意したところだ」

「あ、ありがとう」

 

後ろからゼロについて来ていたマーヤがテーブルに中敷きを敷き、ゼロがその上に中華鍋を置く。

 

「(おい、何だよ!あのエプロン。明らかに似合ってねえよ!)」

「(それより、ひょっとして……今までの料理もゼロが作ってたのか!?)」

「(しかも作り慣れている風だったぞ!?)」

 

玉城を筆頭にひそひそと話す元扇グループのメンバーを余所に、ゼロはお玉でお皿に炒飯を盛りつけ始める。

 

「設備の問題で本格的な中華の火力は出せないのでな。パラパラした炒飯ではなくしっとりした炒飯だがそこはどうか許してほしい」

「「「(問題はそこじゃねぇよ!?)」」」

 

ゼロの謝罪(?)に対して玉城たちの心の声が一致する。

そして各メンバーの前に並べられた、炒飯が盛りつけられたお皿。炒飯からは醤油の香ばしい香りが漂い、食欲をそそる。

 

「(玉城、さっきまでネギチャーシュー美味いって言ってただろ?まずはお前が食ってみろよ)」

「(俺を実験台にするなよ!?そう言う吉田こそ早く食ってみろよ)」

「(ちょっと!早く食べないと怪しまれるわよ!?)」

「どうした?早く食わないのか?……ああ、私としたことが、炒飯に紅生姜を添えていなかったな」

「「「(だから問題はそこじゃない!?)」」」

 

互いに一番槍を押し付け合う玉城たちの様子を勘違いしたゼロが、盛りつけた炒飯の山頂に紅生姜を添える。

 

「ふぅ……。遅れてごめん、みんな」

 

ランスロットの調整のために他のメンバーよりも車内に戻るのが遅れていたスザクが戻ってきた。

 

「スザク、ちゃんと手洗い、うがいはしてきたか?」

「ちゃんとしてきたよ。ん? 炒飯か。美味しそうだね」

「ああ、私の手作りだ。ナイトメアの調整をまだ行っている特派にも後で差し入れとして持っていくつもりだ」

「ありがとう。ロイドさんたちも喜ぶよ。じゃ、早速いただきます」

 

スザクはそう言いながら、用意されたお皿にこんもりと盛られた炒飯をレンゲで掬う。

見た目から分かる炒飯の具材は、玉子、細ネギ、人参、グリンピース、ナルト、チャーシューだ。人参とチャーシュー、ナルトは賽の目状に細かく均等にカットされている。

 

「はむっ」

「「「(いったぁ~!)」」」

「むぐむぐ……ごくん。美味しいよ、ゼロ」

「そうか、それは良かった。私も頂くとしよう」

「「「(!!?)」」」

 

スザクの反応で安心した玉城たちを、ゼロの言葉が再び驚かせる。いつも仮面を外さないゼロが、自分たちの目の前で食事をしようとしているのだから。

ゼロもテーブル椅子に座り、炒飯をレンゲで掬う。

 

「(おい、ゼロがチャーハンを食べるぞ……)」

「(これでゼロの素顔が見えるんじゃないか……?)」

「(というか、その仮面外さないのかよ!?)」

 

ゼロが炒飯を食べる様子を、扇達は固唾をのんで見守る。

炒飯を掬ったレンゲの先がゼロの仮面の口元に近づく。そして、そのままレンゲは仮面に吸い込まれるように通り抜け、仮面から離れた後には炒飯が消えていた。

そしてゼロから聞こえてくる咀嚼音と飲み込む音。

 

「うむ、上手くできているな」

「「「(……っえ?)」」」

「どうしたの、みんな?早く食べないと冷めちゃうよ?」

「あ、ああ……。それもそうだな」

 

目の前で起きた珍妙な出来事をスザクは気にする様子もなく、他の面々に食べる事を進める事でようやく各々のレンゲが動き始める。

 

「おっ!本当に美味い!」

「ゼロはパラパラした炒飯じゃないと言っていたが、米がべたつかないで口の中で自然と解れる良い具合じゃないか」

「身体を動かした後には、この塩気の具合もたまらないわね!」

 

ゼロのチャーハンのおいしさに舌鼓を打つ黒の騎士団。

しばらく和気藹々と食べる時間が経過していたが、ふと玉城がゼロに対して気になった事を尋ねる。

 

「なあ、ゼロ」

「どうした、玉城」

「その……ゼロが着ているエプロンなんだけれどもよ……」

「あぁ、これか。私の料理の師匠にあたる人が昔、私のために用意してくれたものでな。サイズも逐一手直ししながら使い続けているんだ。これがどうかしたか?」

「あ……いや~、良く使い込まれていて年季の有る感じだったから気になったんだが、そう言う事だったのか~!」

 

当初、生地が継ぎ接ぎでアンバランスなエプロンに関して玉城は茶化そうとしていた。だが、普段の威厳を感じさせる時とは違う穏やかな声色で話してくれた内容から茶化してはいけない思い出の品だと気が付いて咄嗟に話す内容を軌道修正した。

 

「ほう、その相手を随分と慕っているようだな、ゼロ。ピザはないのか?」

「ああ。私にとっては恩人であり、もう一つの家族のような存在だ。彼女がいてくれたからこそ、私はこうして生きていると言っても過言ではない。それとピザは後日、改めて作ってやるから今日は炒飯を食え」

「ふふ、しょうがないな。はむっ。うむ、美味い」

 

ゼロの返答にC.C.は一瞬意外そうな顔をするが、すぐに普段の表情に戻り炒飯を頬張る。

 

「つまり、ゼロにとってのお袋みてーな人の手作りって訳か!どんな人なのか会ってみたいもんだぜ!」

「どんな人なんだろう?」

「私も気になる」

 

玉城の言葉に、スザクとマーヤも興味が惹かれたようだ。

 

「今は会いに行くと迷惑をかけてしまうから無理だが、いつかは会いに行きたいものだ」

「そのためにも、ブリタニアを倒して日本を取り戻さないとね」

「ああ、そうだな。その時には、お前たちの事も紹介してやりたいな」

 

ゼロに関する新たな謎が生まれたが、その日の黒の騎士団は和気藹々とした雰囲気であった。




今週の前半は暑さで筆が進まず、ゼロにどんな料理を作らせるか悩んだこともあって結構迷走して遅れました。
はやて家に居候した主人公の二次創作は料理上手になる法則、あると思います!

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