カワグチ湖ホテルジャック事件における黒の騎士団の登場、そしてそれから間を置かずに法で裁けない悪を白日の下にさらして裁くという、分かりやすい結果を次々と出している黒の騎士団には、数多くの入団希望者が現れていた。
ルルーシュは、幾つもの試験で入団希望者たちを篩にかけて一握りのみを団員として迎え入れている。
黒の騎士団は、数が多いだけの烏合の衆であってはならない。弱者を守り、ブリタニアと戦う事ができる洗練された精鋭集団でなければならない。そうでなければ組織は腐敗し、その目的を達成する事ができなくなるからだ。
ルルーシュは起業家ジュリアス・キングスレイとしての仕事と黒の騎士団のリーダーゼロとしての活動、そしてルルーシュ・ランペルージとしての日常という三重生活をこなしながら、持ち込んだノートパソコンに映し出されている入団希望者の情報を確認していく。すると、その中に含まれていた「ディートハルト・リート」という名のブリタニア人の項目が目に入った。
「ん? ブリタニア人の入団希望者か……。スパイにしては堂々としているな。主義者か?」
主義者とは、神聖ブリタニア帝国の国是に対して懐疑的・否定的な考えを持つブリタニア人の事を指す言葉だ。そう言う意味では、平和主義的な思想を持つユーフェミア副総督も主義者に近いと言って良いだろう。
今後は情報戦も一層激しさを増してくることを考えると、報道番組のプロデューサーとして情報を取り扱ってきた経歴を持つ彼は、能力面では黒の騎士団に必要になってくる。
残念ながら、今の黒の騎士団には知識層といえる人材はほとんどいない。ルルーシュが頭脳のトップに位置し、マーヤとカレンが上位に属して次点が扇である事からも、その深刻さは明らかだ。
これはブリタニアによる名誉ブリタニア人制度を含めた植民地政策によって、既存の知識層の大半が名誉ブリタニア人としてブリタニアに恭順するか抵抗の末に死亡した事で、在野に知識層がほとんど残っていないためだ。
特に若い世代の日本人は植民地政策によって碌に教育を受ける事もできず、その結果、スザクでも通過する事が出来たそれほど難しくはないはずのテストを合格出来ない所為で、新たな名誉ブリタニア人になる者の人数は年々減少傾向にある。
「キョウトからの支援にあったKMFは無頼……か。KMFの提供はありがたい事だが、黒の騎士団で使用しているサザーランド・リベリオンにスペックで劣るのはどうしてもネックだな」
エリア11のレジスタンスが主力として使用する無頼は、第四世代KMFであるグラスゴーを基にコピーして製造された量産型KMFだ。それに対して黒の騎士団が主力としているサザーランド・リベリオンは、グラスゴーを発展させた第五世代KMFであるサザーランドに、第七世代相当の試作KMFであるランスロットの技術を一部フィードバックして特派が改修を施したカスタム機である。
さらに、ブリタニアはサザーランドの発展機であるグロースターを既に実戦に投入している。はっきり言えば、無頼では力不足となってきているのだ。
勿論、キョウトもそれを見越して新型機の開発を進めているだろうが、今回の支援物資にはそれらに繋がる様なヒントになる物はなかった。
(恐らく、黒の騎士団が日本解放のために本当に支援するべき組織かどうか、見極めようとしている所なのだろうな)
大多数の民衆からすれば、黒の騎士団は法で裁けない不正や悪を白日の下にさらす正義の味方として支持を集めている。しかし、日本解放を願う組織から見た場合はどうだろうか?
日本最後の首相である枢木ゲンブの息子、枢木スザクを擁していながらやっていることは警察の真似事とあげつらう者もいる。見る者によってはブリタニアが自らの膿を搾りだすために外部に作った組織ではないのかと疑う者もいるだろう。
特派が調整しているランスロットやサザーランド・リベリオン、キョウトから提供された無頼に興奮している新人たち。そして新たな団員に頼られることで浮かれている玉城や井上の様子に、聞こえないようにルルーシュがため息をついていると、スザクが此方に小走りで駆け寄ってきた。
「ゼロ、ちょっといいかな?」
「どうした、スザク」
「キョウトの人を介して伝えられた事なんだけど、ゼロと会談の席を設けたいって言っている人がいるんだ」
「ほう……誰からだ?」
「日本解放戦線の藤堂先生からだよ。渡された手紙には、僕も一緒に来てほしいって書いてある」
スザクが挙げた人物の名前に、周囲がざわめき始める。
「日本解放戦線の藤堂って言ったら、あの”奇跡の藤堂”の事だよな!?」
「ああ! 七年前の戦争でブリタニア軍に一矢報いたっていう」
「ゼロと奇跡の藤堂の会談かぁ……。絶対に凄い事になるって!」
新人たちは興奮に沸き立つ一方で、
「なあ……罠とかじゃねえよな?」
「日本解放戦線とは、カワグチ湖の一件があるからなぁ……」
「そうねぇ……」
結成当初からのメンバーは、何か裏があるのではないかと勘繰っている。
「ふむ……スザク、確かお前は藤堂が開いていた道場の門下生だったな? お前から見て、藤堂はこの会談に罠を張っていると思うか?」
「藤堂先生ならば、この会談に罠を張る事はないと思うよ。不安があるとしたら、日本解放戦線が組織内に残っている過激派をどこまで制御できているか、かな?」
ルルーシュも幼少期の頃に藤堂と面識があるし、スザクの縁でその人となりは知っている。藤堂は戦術家の軍人だが、同時に義を重んじる武人でもある。よって、今回の会談要請をキョウトに仲介してもらっている事も考えれば、騙し打ちの類はありえない。そのような事をすれば、キョウトの面目は丸つぶれとなり、日本解放戦線はただでさえ失ってきている民衆からの信頼が底値になりかねない。
態々スザクに尋ねたのは、少し調べれば藤堂との繋がりが分かるスザクを介する事で、黒の騎士団の者たちが納得しやすいようにするためだ。
「なるほど。ならばその会談要請、引き受けよう。週末に向かうと返答しておいてくれ」
「分かった」
「さて、今回こそは何事もないと良いのだがな……」
もしも今回も騒動に巻き込まれたら、今度こそ時間を作ってお祓いに行こうと思うルルーシュであった。
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そして週末のナリタ連山。そこにトウキョウを離れてナイトメアで移動する黒の騎士団の姿があった。
ナリタ連山は日本解放戦線によって徹底的に改造されており、それそのものが要塞化されている事から防衛線においては非常に堅牢だと言える。
会談に立ち会うメンバーは、日本解放戦線側は片瀬少将と藤堂中佐、そして数名の幹部。一方の黒の騎士団側はゼロとスザクの他に、技術顧問としてロイド、ロイドの護衛としてカレンが参加する事となっている。
他の黒の騎士団のメンバーは扇とマーヤ、C.C.が中心となって、日本解放戦線内部に怪しい動きがないかを確かめるための警戒を続けていた。
「よく来てくれた、ゼロ。まずは此方からの会談要請に応じてくれた事を感謝する」
「こうして直接会うのは初めてだな片瀬少将。日本解放戦線と我々との接点は、カワグチ湖の一件しかない。その上で、スザクから聞いた藤堂鏡志朗の人となりを信頼して会談要請引き受けさせてもらった。互いに実りある会談となる事を、切に願う」
「ああ、私としてもそうなってほしいと思っている」
対外的には黒の騎士団と日本解放戦線の接点は、ホテルジャック事件で敵対した事位しかない。本来ならば敵対関係となってもおかしくないが、ゼロはスザクを介して藤堂を信じるからこそ会談に応じたとアピールする事で、日本解放戦線の他の者たちにくぎを刺す。日本解放戦線にとっても藤堂の存在は大きく、此処でゼロを襲うような事をすれば、藤堂の面子に泥を塗る事になるからだ。
「では、お互いの今後に関しての──」
片瀬少将が黒の騎士団との会談を始めようとしたその時、廊下からドタドタと走る音が聞こえてきた。そしてノックもなしに扉を勢いよく開ける日本解放戦線の構成員。
「片瀬少将!」
「何事だ! 今は黒の騎士団との会談中だぞ!」
「緊急事態です! ブリタニア軍の敵襲です!」
「敵襲だと!?」
「ブリタニア軍はこのナリタ連山全体を包囲しています!」
構成員からの緊急報告の内容は、ブリタニア軍による襲撃。それも山一つを丸々包囲する規模を考えると、偶発的なものではなく周到に準備された計画的なものだ。
ほぼ同時に、ロイドに渡して置いた通信機にも、ブリタニア軍が攻めてきたという連絡が入った事で実際に起きていることだと確信する。
「片瀬少将、どうやら会談をしている場合ではないようだ。このまま手をこまねいていては、日本解放戦線と黒の騎士団は共に終わりだ。そうなれば、日本の独立運動の目も潰える事になる。ブリタニア軍を退けるための共同戦線を提案したい」
「藤堂、頼めるな?」
「無論だ」
「では、私の──」
「ゼロの口車に乗ってはいけません、片瀬少将」
ルルーシュは作戦を練るための情報を日本解放戦線から提供してもらう提案をしようとしたが、新たに会議室に入ってきた者たちに遮られる。
その人物は髪型をオールバックにした日本人だ。鋭い釣り目は神経質そうな印象を与える。
「矢車少佐。口車とはどういうことだ?」
「今回の襲撃、私はゼロがブリタニア軍に内通して引き入れたものと考えている」
矢車少佐と呼ばれた男は、ゼロに疑念の目を向ける。
カレンは思わず怒りの声を挙げようとしたが、ゼロはカレンを手ぶりでなだめると、矢車少佐に疑問を呈する。
「心外だな。私がなぜそのような事をしなければならない?」
「汚らわしいブリタニアの豚と混じり者を飼っていることが何よりの証拠だ」
あからさまな侮蔑の言葉に、カレンが強く憤る中、ルルーシュは仮面の内で矢車少佐に違和感を抱く。
クドクドと講釈を垂れる矢車という男、言っている内容は反ブリタニアの過激派そのものだがその言葉が薄っぺらい。本当にゼロを内通者だと思っている過激派ならば、このような言葉を交わさずに問答無用で銃撃などを仕掛けてくるはずだ。
それに、日本解放戦線の者たちに黒の騎士団が襲撃・拘束されたという連絡もない。連絡する間もなく瞬く間に制圧されたという可能性は、マーヤとC.C.からの念話がないのでありえない。
まるで、片瀬少将とゼロを協力させないようにしながら、矢車少佐は時間を稼いでいるように感じる。
「矢車少佐! 今はそのような問答をしている場合ではない! それよりも迎撃のために無頼を出撃させ、指揮を──」
片瀬少将も、この状況で疑心を生むような講釈を垂れる矢車に辟易して指示を出そうとする。しかし、
「片瀬少将、危ない!」
藤堂が片瀬少将の前に立ち、その直後に発砲音が会議室に響く。
発砲したのは矢車少佐。手には銃を持っていないが、右手首に銃口が露出している。藤堂は流血する左腕を抑えている。
「おや、惜しい。やはり隠密性を優先した仕込み銃では狙いが甘くなるか」
「ぐっ……!」
「藤堂! 矢車少佐、どういうつもりだ!」
矢車少佐の突然の凶行に片瀬少将が狼狽する中、ルルーシュは魔法で編まれた縄を展開して矢車少佐を拘束する。すると、矢車少佐の姿がぼやけ、オレンジ色の短髪の若々しい男に変わる。
「おや? まさかゼロがストラグルバインドも使えるとは。古代ベルカ式の魔導師だからと失念していたよ」
「な!? ゼロ、これは一体!」
「やはり、変身魔法で姿を偽装か。それに、瞳に何か細工を施して分からなくしているようだが、ギアスも使っているな」
「そこまでお見通しという訳か」
魔法による強化を無力化するストラグルバインドで拘束されてもなお、矢車に扮していた男は余裕を隠さない。
「貴様、本物の矢車少佐はどうした!」
「さあ? 今頃、海で魚たちの栄養となっている頃じゃないか?」
「なっ……!?」
「ヴィクトリア様への手土産はもっと欲しかったところだが、この場は退散させてもらうとしよう」
男はそう言って、ストラグルバインドを引きちぎる。魔法によらない力技のため、魔力強化を無力化できるものの拘束力そのものは弱いストラグルバインドでは抑えきれなかったようだ。
「逃がすものか!」「逃がすと思っているの!?」
「思っているさ」
スザクとカレンが男を取り押さえようとするが、男は人外離れした瞬発力でバックステップして距離を取り、懐から取り出したスイッチを押す。
すると、男の姿が忽然と消える。不可視化ではなく、転送による離脱だ。
「くそっ!」「逃げられた!」
「転送先を解析したけど、場所はナリタ連山の外だね。ヴィクトリアといえば、多分ラウンズの一人であるサイボーグの事だから、魔法と科学を併用しているってところかな」
「それに、あの口ぶりからすると奴も7年前に潰した犯罪組織の残党か。となると、ヴィクトリアも必然的にその仲間と言う事になるな。サイボーグというのは、戦闘機人の事か」
悔しがるスザクとカレン。解析した情報を考察するロイド。そして次元犯罪組織がブリタニアにも食い込んでいる事を突き止めたルルーシュ。
一方、片瀬少将と同伴していた幹部たちは、負傷した藤堂を心配する。
「藤堂、大丈夫か!」
「ああ、手当すれば命に問題ない。だが……これでは無頼ならばともかく、紅蓮の操縦は厳しい」
傷の状態を冷静に判断する藤堂の言葉に対し、
「そんな……この状況で切り札が使えないだなんて……」
「もう、終わりなのか……」
「四聖剣は既に無頼改で出撃している。あの機体を扱えるパイロットなんて、奇跡の藤堂以外には……」
日本解放戦線の幹部たちからは悲観的な声が聞こえてくる。
「諦めるな! 行動しなければ、可能性は生まれはしない!」
日本解放戦線の幹部たちに発破をかけたのは、ゼロだ。
「片瀬少将。この戦いに勝つためにも、ナリタ連山のデータを私のリベリオンに送ってほしい」
「わ、分かった。急いで準備させよう」
片瀬少将はゼロの提案を受け入れ、幹部たちに矢継ぎ早に指示を出していく。普段は優柔不断でトップには適していない人物だが、少将という地位についていた軍人だけあって能力そのものは高い。要は適性の問題なのだ。
片瀬少将と幹部が部屋を出た会議室で、簡易キットで傷口を塞いだ藤堂がゼロに話しかける。
「ゼロ、頼みがある」
「どうした、藤堂?」
「紅蓮を君たちに預けたい」
「そもそも紅蓮とはどのような機体だ? それが分からなくては、返答のしようがない」
「紅蓮はブリタニア軍の現行主力機であるサザーランドを凌駕する、第七世代相当のスペックを有する新型KMFとしてキョウトが開発した機体だ。最大の特徴は大型の右手に仕込まれた”輻射波動機構”。対象に高周波を短いサイクルで照射する事で、破壊する」
「つまり、兵器転用された大出力電子レンジか」
「そんなところだ。癖が強い機体だが、あれを遊ばせておくほど状況は甘くない。……頼めるか?」
「……分かった。引き受けよう」
ランスロットと同世代相当のスペックを持つKMFの他組織への提供は、本来ならばできるものではない。だが、紅蓮のパイロットとなるはずだった藤堂が負傷した事。そして使える戦力は使わなければならない追い込まれた状況だからこそ、黙認されているのだ。
「カレン。紅蓮はお前が使え」
「私が……ですか?」
「お前は黒の騎士団の中でスザクと百目木の二人と並ぶトップエースだ。スザクにはランスロットがあり、百目木は既に出撃している以上、お前にしか頼めない」
「それに、輻射波動はラクシャータが研究していた技術だね。彼女が開発に関わっているならばその機体のスペックは保証できるよ。……悔しいけど」
「……分かりました」
「では、案内する」
紅蓮に誰が乗るかが決まったところで、藤堂はカレンとロイドを連れて紅蓮の下へと案内するために格納庫へと向かっていく。ロイドはラクシャータが開発した機体に興味津々なためだ。
「スザク、俺達も出撃準備に入るぞ」
「うん、分かった。何としてもこの戦いを生き延びて、今度こそお祓いに行こう。ゼロ」
「……ああ」
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時は若干遡り、ルルーシュが日本解放戦線と会談を行う週末。その日はブリタニア軍の方でも大きな動きがあった。
それは日本解放戦線を壊滅させるための本拠地強襲作戦。
コーネリア総督の下で集められた情報と、ナイトオブファイブであるヴィクトリアがもたらした情報によって、日本解放戦線の本拠地がナリタ連山にある事を突き止めた事で実行される事となった作戦だ。
動員される兵力は4個大隊。これを7つの部隊に分けて山全体を包囲するように配置し、作戦開始と共に包囲網を狭めて一気に殲滅するつもりだ。
G1ベースはナリタ連山の麓に配置し、ユーフェミア副総督が後方支援と野戦病院としての役割を担当する事となっている。
「キヒヒ……よっぽど、コーネリア総督は私を妹君に近づかせたくないようだな」
ヴィクトリアが指揮する部隊が配置された場所は、G1ベースとはナリタ連山を挟んで対角線上の位置だ。しかも、G1ベースの護衛には純血派のリーダーであるジェレミア・ゴットバルトがついている。
ジェレミアはラウンズにも引けを取らないと目されている実力者であり、サザーランドでランスロットに対して数合打ち合える事からでまかせではない事は明らかだ。
『総員、作戦開始!』
自らグロースターで出撃するコーネリアの号令によって、G1ベースから、列車から、V-TOLから次々とブリタニア軍のKMFがナリタ連山へ向けて出撃していく。その数、実に百機以上!
進撃を開始し、包囲網を狭めるヴィクトリアの脳内に、部下からの念話が届く。
『ヴィクトリア様。藤堂は負傷させることができましたが、最後にしくじりました』
「ああ、エインリッヒか。何があった」
『片瀬少将の暗殺は、黒の騎士団のゼロに阻まれ、正体もバレました』
「まあ、暗殺は片手間にできたらというおまけ程度だ。それより、黒の騎士団も来ているのか」
『はい。コーネリア総督への連絡は如何しますか?』
「いや、その必要はない。黒の騎士団には総督殿の戦力を削ってもらうとしよう。お前もキャスパリーグで出撃しろ」
『イエス、マイロード』
念話を閉じ、ヴィクトリアは口の端を吊り上げて嗤う。
「キヒ、キヒヒ……。今度こそ逃がしはしないぞ、ゼロ!」
ナリタ連山の各所では、日本解放戦線と黒の騎士団、そしてブリタニア軍の大規模な戦いが繰り広げられていた。
コーネリアのグロースターが構えるランスの突撃で貫かれる、日本解放戦線の無頼。
ダールトン将軍のグロースターが構える大型キャノン砲をブレイズルミナスで防ぎ、反撃するマーヤのサザーランド・リベリオン。
ブリタニア軍のサザーランドの部隊を、四聖剣の無頼改が連携して囲み撃破している戦場もあれば、純血派のサザーランドの一斉掃射で無頼が蜂の巣にされる戦場もある。
そんな中、ヴィクトリアが担当する部隊側に展開された日本解放戦線の無頼は、今まで見た事がない新型機と戦闘していた。
「く、くそがぁっ!」
その新型機のフォルムは肉食獣を思わせる、青色を基調とした四足歩行の機械。全高はサザーランドとほぼ同じで、全長も考えると通常のKMFよりも大型だ。四つの脚部に搭載されたランドスピナーによって生み出される機動力に無頼は翻弄され、前脚の電磁クローによって飛び掛かられた無頼がコックピットごと破壊されていく様子は、さながら狩りのようだ。
日本解放戦線の無頼が、味方の無頼を引き裂いた敵にアサルトライフルを向けてフルオートで掃射する。しかし、
そして、頭部にあたるファクトスフィアの下部にある三角錐状のパーツが開き、若干の溜めの後に獣の咆哮の様な音と共に赤黒い光の奔流が無秩序に散らばって無頼と周辺を飲み込んでいく。
この新型機こそ、ヴィクトリアが開発を進めさせていた異形のKMF、キャスパリーグだ。今回の作戦ではヴィクトリアの部隊にのみ少数が配備されている。
周辺にヴィクトリアの部隊以外は残存していない事を確認したキャスパリーグのパイロットは、同行させていた同じ部隊のサザーランドのパイロット達に合図を送り、それぞれが牽引する円筒状の形をしたユニットを地面に設置し接続させる。
『ヴィクトリア様、準備ができました』
「では、早速始めるとしよう。転送装置を起動しろ」
『イエス、マイロード』
ヴィクトリアの指示に従い、設置した転送装置が起動する。ヴィクトリアの部隊の独自の動きの思惑に気が付いた者は、ブリタニア軍側にはまだいない。
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始めは順調だったブリタニア軍によるナリタ連山の包囲と制圧は、徐々にだが遅延が発生していた。特に黒の騎士団の参戦は影響が大きく、ランスロットの活躍とゼロの計略によって若干押し戻されている区域も存在する。
コーネリアにとって、日本解放戦線とは個別に撃破するつもりだった黒の騎士団が既にいた事は少々予想外だった。
黒の騎士団が保有するランスロットとそのパイロット、そして日本解放戦線の奇跡の藤堂とその配下の四聖剣の連携こそ警戒するべきだが、それでもここで諸共に捻り潰す事ができればエリア11の平定は目の前だと考えていた。そうすれば、ユーフェミアにこのエリアを任せる事ができるとも。
コーネリアがそう考えている頃、後方に位置するG1ベースの方は予想外の異常事態を認識していた。
G1ベースが奇襲を受けたわけではない。G1ベースのセンサーが突然、ナリタ連山全域で大量に増加した所属不明機の存在を検知したのだ。
「これは……!?」
「想定されていたよりも……いえ、明らかに敵増援の数と配置がおかしい!」
今回の作戦では、ブリタニア軍は百機以上のKMFを動員しているが、増加した所属不明機の数はそれに並ぶ。
しかも、それだけの数の機体がナリタ連山の各所に同時多発的に出没したのだ。
この事態が異常である事は、軍事に疎いユーフェミア副総督でも分かる。
「早くこの事を連絡しなくては!」
「イエス、ユアハイネス! ……駄目です! ナリタ連山にいる部隊との通信が妨害されています!」
「そんな!」
更に通信妨害も受けてこの異常事態を速やかに部隊に連絡する事もできない。
G1ベースが混乱に陥っている間に、ナリタ連山の部隊の方でも混乱が発生し始める。
G1ベースだけでなく、距離がある友軍とも連絡が取れない通信妨害。眼前に突如出現する無頼。そして──、
「テロリスト如きが! っなぁ!?」
グロースターの一機が、出現した無頼をランスで貫く。躱すそぶりもなく無頼が貫かれた瞬間、桜色の閃光と共に大爆発を起こしてグロースターを飲み込んだ。
「この爆発……流体サクラダイトによる自爆だ!」
ブリタニア軍のパイロットの一人が、閃光の正体を見破る。
その間にも、出現した無頼たちはスタントンファーを展開してKMFに襲い掛かる。ブリタニア軍は勿論、日本解放戦線や黒の騎士団に対しても。
「何なんだ、こいつら!」
「手あたり次第ってこと!?」
「クソッ! 脱出こそできたが、玉城の機体がやられた!」
自爆攻撃にあった玉城が脱出できたのは、リベリオンのブレイズルミナスによる防御が間に合い脱出したコックピットが爆発範囲の外に出られたからだ。
無差別に自爆攻撃を仕掛けているように見える新手の無頼たちだが、もしも通信が正常だったならば、ヴィクトリアの部隊だけは素通りしていることに気がつけただろう。
ナリタ連山各所で桜色の爆発が発生する中、フェアリーサーチャーで所属不明機の無頼を解析して無人機であることを突き止めたルルーシュには、この手口に覚えがあった。
「無人機を用いた自爆攻撃と通信妨害。この手口……七年前に潰したテロ組織が行っていた手口と一緒じゃないか! となるとヴィクトリアという名は……あの女科学者、自分の身体を捨てて男性体の戦闘機人になって、追手を振り切ったな!?」
ルルーシュが思いだしたのは、ミッドチルダにおいて質量兵器の合法化を掲げていたテロ組織の存在だ。麻薬売買と戦闘機人の違法研究、質量兵器の密造を行いテロ拡散していた凶悪な組織で、七年前にヴォルケンリッターとルルーシュで魔力蒐集のために襲撃を仕掛けた相手の一つでもある。その際に管理局にリークしてリーダーと幹部級が軒並み逮捕され、組織として壊滅させたはずだが、どうやら科学者だったヴィクトリアとその部下は逃げ延びていた様だ。
混迷を極める戦況、通信妨害によって近隣の仲間にしか連絡が取れないが、そこはバトンリレー形式にしたり、カレンやマーヤ、C.C.等に念話で指示を送る事でどうにか連携を繋いでいく。
「カレン、紅蓮の調子はどうだ!」
『ゼロ、この機体、私に凄くなじむ! リベリオンよりも私の動きについて来てくれる!』
『あっはっは~。サザーランドがベースのリベリオンだと、紅月君の反射速度に追従しきれていなかったからね~♪』
「それは何よりだ。所属不明機は自爆に特化した無人機だ。撃破する際には接近しないように注意するんだ」
『分かった!』
カレンは預けられたばかりの紅蓮を無事に乗りこなしているようだ。カレンのリベリオンを見せてもらった事があったが、あれは限界ギリギリまで機体の反応速度を上げたチューンナップが施されていたはず。あれでもカレンの動きに追いつけていなかったというのは、KMFの才能という面では元軍人であったスザクよりも潜在ポテンシャルは上かもしれない。
「マーヤ、そちらの戦況はどうだ!」
『さっきまでダールトン将軍のグロースターを日本解放戦線の人達と協力して抑え込んでいたのだけど、乱入してきた所属不明機の無頼の自爆でダールトン将軍は一時撤退した。今は所属不明機を近づかせないように飽和射撃で撃破している』
「C.C.は!」
『複数の所属不明機に追われたのでな、途中でブリタニア軍に押し付けた所だ。今からそちらに向かう』
マーヤとC.C.もまだ余裕はあるようだが、今のうちにこの制御できていない戦況を一度整え直す必要がある。連絡手段がないスザクに関しては、ランスロットのスペックもあるのであまり心配はしていない。
そのためにもルルーシュは、ヴィクトリアが態々この局面でこのような事をした理由を考察し、導き出した複数パターンの可能性に共通する相手の目的から逆算する。
「ヴィクトリアの目的は……恐らくコーネリアの殺害。この状況ならばコーネリアを暗殺しても、日本解放戦線か黒の騎士団に責任を押し付ける事ができる。そうなれば、残るのは庇護を失ったユーフェミア副総督のみとなり、如何様にもする事ができるという訳か」
「だがこれはこちらにとってもチャンスだ。ヴィクトリアを撃破して此方が先にコーネリアを確保すれば、一気に盤面を掌握する事ができる!」
ルルーシュは他の黒の騎士団メンバーと共にC.C.と合流し、コーネリアの確保のためにリベリオンを走らせるのであった。
ミッド式魔法であるストラグルバインドに関しては、クロノが使用したのを見たルルーシュが独学でエミュレートしたものです。
片瀬少将や藤堂が、ゼロの魔法に対して深く追求しなかったのは、それどころではなかったのが大きいです。
〇エインリッヒ
日本解放戦線の幹部である矢車に変身魔法でなりすまして潜入していた、リフレインの密売業も兼ねるヴィクトリアの部下。
保有する劣化ギアスは、”違和感を持たれなくする”能力。草壁たちと違って発動時の代償は無い或いは無視できる程度に軽微な内容の模様。
日本解放戦線から無頼を横流ししたり、海外の架空の対ブリタニア反抗勢力を複数でっちあげてキョウトから無頼を横流ししたりして今回の自爆用無頼(無人機)を用意した。
ストラグルバインドを引きちぎったパワーや、スザクとカレンの追撃をかわした機動力は戦闘機人としてのスペックで、