コードギアス‐魔導のルルーシュ   作:にゃるが

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エイプリルフールに合わせたIF短編です。


2024年エイプリルフール特別回~IF世界線短編~

 トウキョウ租界の大通りに設置されている大型街頭ヴィジョンから流されている会見放送を、ビルの屋上から見つめている二人の男女がいた。

 一人は10代半ばから後半辺りで黒髪と紫色の瞳をした眉目秀麗な顔立ちの少年で、その身体の線はジャケット越しでもわかるくらいに細く、多くの女性達が彼を見たら思わず振り返るだろう。

 もう一人は十代後半の銀髪赤目の少女。理知的な印象を与える整った顔立ちと服越しでもわかる豊満な双丘は、世の男達が放っておかない美貌だ。

 

『──。さあ、皆さん。正義に殉じた8名に哀悼の意を共に捧げようではありませんか』

『黙祷』

 

 街頭ヴィジョンに映る金髪碧眼の青年が、テロリストによるテロの犠牲者となった者達への哀悼の意を捧げる。その様子は看板役者のようでもあり、深い洞察力が無ければ本当に悲しんでいるようにも見えた。

 

「ルルーシュ、会見に出ているあの人って……」

「ああ。俺の異母兄弟、クロヴィス第三皇子だ。この次元世界に逃げ込んだ次元犯罪者の現地協力者リストに載っていた時はまさかと思ったが……7年間(・・・)探していた故郷(次元世界)に、こんな形で戻ってくることになるとはな」

 

 ルルーシュと呼ばれた少年が、街頭ヴィジョンに映るクロヴィス総督を睨みつけるように見つめる。

 

「此処がルルーシュの次元世界(故郷)……」

「アインス。すまないが先にナナリーの安否を確認したい」

「分かった。ルルーシュの血の繋がった妹だからな」

「任務があるのにすまない……ん?」

 

 ドン! という衝突音が下から響き、ルルーシュの意識が音の聞こえた方に向けられる。意識を向けた視線の先には、建設工事現場に突っ込んで衝突事故を起こしているトラックがあった。

 

「どうしたの、ルルーシュ?」

「あそこ……どうやら事故があったようだ」

「本当だ。どうする?」

「此処で姿を見せるわけには行かない。市民を装って救急車を手配する位で……あれは!? アインス、追うぞ!」

 

 事故を起こしたトラックをビルの屋上から見下ろしていたルルーシュの目に、トラックに駆け寄ってよじ登る少年の姿が映る。そしてトラックが動き出し、少年がトラックのコンテナ内部へと落ちていく様子も。

 トラックはその事に気が付かないまま、その場から逃げる様に走り去っていくを見たルルーシュが慌ててアインスを連れて走り始めた。

 

「ルルーシュ、どうしたの!」

 

 アインスの問いかけに、ルルーシュは自らのバリアジャケットを展開し、自らとアインスに迷彩魔法で空間に溶けこみように姿を隠しながら飛行魔法で空を飛翔する。

 

『あのトラックのコンテナに落ちた奴を確保……いや、話を聞かないといけなくなった!』

『あ……なるほど、そういう事ね。分かった』

 

 ブリタニア軍の戦闘ヘリコプターから警告射撃を受けるトラックを追いかけながら、ルルーシュはアインスに念話で端的に伝える。アインスもトラックを魔法でスキャンしてその理由を察した。

 その間にも、状況は刻一刻と変化する。トラックの後部からアンカーが撃ち出され、戦闘ヘリコプターに命中して撃墜。そしてトラックから姿を現したのは、

 

『グラスゴー! テロリストの車両だったか! だとするとなおさら拙い!』

 

 そのまま戦闘ヘリと赤いグラスゴーの戦闘が始まり、姿を隠したまま飛行するルルーシュたちは巻き込まれないように迂回せざるを得ない。

 魔法を使えばどちらも止める事はできるだろうが、自分達の存在が露見する事になるのは避けなければならない。その結果、トラックはトウキョウ租界からシンジュクゲットーに続く地下鉄路線へと潜ってしまった。

 

『ルルーシュ、彼の生体反応は私が探知できる。彼はまだ生きているわ』

『でかした! 追うぞ!』

 

 

 ────────────────────

 

 

「答えろよ、スザク。毒ガスか? この子が」

 

 ルルーシュ・ランペルージ(・・・・・ ・・・・・・)は、ブリタニア軍の兵士としてまさかの再会を果たした親友の枢木スザクに問いかける。

 アッシュフォード学園の学友であるリヴァルからの紹介で受けた貴族との賭けチェスの代打ちからの帰り。

 事故を起こしたトラックの運転手を助けようとよじ登ったはいいが、頭の中に女性の声が聞こえたと思ったらトラックが動き出した事でコンテナ内部に落ちて出られなくなった上に、そのトラックがテロリストの逃走車両だった。しかも推定シンジュクゲットーの地下鉄網内でトラックが停車したタイミングで脱出しようとしたら、テロリストの仲間と勘違いされかけてブリタニア兵──7年前に親友となった枢木スザクに取り押さえられそうになったりと散々な目に合っているので苛立ちも言葉に含まれている。

 

「しかし、ブリーフィングでは確かに……」

 

 スザクが困惑しているのは、毒ガスだとされていたカプセルから現れたのが、拘束具を着た緑髪の少女だった事だ。

 まさかどこかですり替えられた? そう思ったスザクをルルーシュたちと共に、ライトが照らし出す。

 

「あっ……隊長!」

 

 スザクが隊長と呼んだ人物は右頬に古傷があり、もみ上げとヒゲと赤い帽子を被った男だった。

 

「この猿! 名誉ブリタニア人にはそこまでの許可は与えられていない」

 

 スザクに罵声を浴びせる隊長は、ブリタニア人の中でも生粋のナンバーズ差別主義者のようだ。

 ルルーシュは親友を猿呼ばわりされた事に苛立ちながらも、状況の危うさを理解する

 

(拙い……確かに毒だ。外に漏れれば、スザクの主人たちが危うくなるほどの猛毒)

 

 ブリタニア軍に拘束される可能性がかなり高いと判断したルルーシュだが、隊長の判断は違った。

 

「──。だが、その功績を評価し、慈悲を与えよう。枢木一等兵、この銃でテロリストを射殺しろ」

「えっ……」

 

 拘束すらせずに即時の射殺命令に、ルルーシュの思考が一瞬停止する。

 隊長からの命令に対し、スザクはルルーシュがテロリストでない民間人である事を説明するが、隊長は聞く耳を持たない。

 

「──。自分はやりません。民間人を……彼を撃つような事は」

「では……死ね」

 

 射殺命令を拒否したスザクの腹部を、隊長の銃弾が撃ちぬく。

 

「スザク!」

 

 スザクが撃たれて倒れる様子を見る事しかできなかったルルーシュが叫ぶ。

 

「見たところ、ブリタニアの学生らしいが不運だったな。女を捕獲した後、学生を殺せ」

「イエス、マイロード!」

 

 隊長の命令でルルーシュに銃を向けるブリタニア兵士。

 

(ナナリーっ!)

 

 心の中でルルーシュは最愛の妹を、過去に起きた悲劇によって足と光を喪ったナナリーの事を想う。

 その時、横合いから何本もの鎖が伸びて隊長諸共ブリタニア兵士達を縛り上げた。

 

「な、なんだこれは!」

「う、動けな……!」

 

 拘束を脱しようと足掻く隊長とブリタニア兵士。しかし、鎖は解けるどころか寧ろきつく締まり、ミシミシと音を立てて締めつけていく。

 

「くそっ! 所々崩落していて遅くなった! アインス! 撃たれたブリタニア兵士──彼らを連れて脱出するぞ!」

「分かった、ゼロ! さあ、こっちへ!」

 

 黒と紫が基調のスーツとフルフェイスの仮面をかぶった謎の人物ゼロと、アインスと呼ばれた顔の上半分をフェイスガードで隠した女性が突如として現れた。

 アインスはルルーシュの手を取ってこの場から連れ出そうとする。

 

「待ってくれ! スザクが!?」

 

 咄嗟にスザクの方を見やると、倒れているスザクと緑髪の少女はどういう理屈か宙に浮かんだ状態でゼロに運ばれていた。

 パニックに陥りかけるルルーシュの視界が一変する直前、トラックが自爆して地下鉄網の構造体の一部が崩落したのが見えた。

 

 

 ────────────────────

 

 

「アインス、スザクの容体は……」

「……大丈夫。幸い重要な臓器は外れているわ。私でも治せる」

「そうか、良かった……」

 

 訳が分からないまま逃走に成功したルルーシュは、ゼロ達についていく形でどこかの建物──周辺に見える景色からトウキョウ租界の屋上で二転三転する状況を整理する。

 あのゼロという人間はテロリストの仲間なのか? だが毒ガスとされていたカプセルの中にいた緑髪の少女に対して何のリアクションも示していないのはどういう事だ? 

 それにブリタニア軍の兵士だったスザクの容体を心配しているのもテロリストとしてはおかしい。スザクがテロリストの内通者だった? それはない。あのスザクがそんな腹芸ができるわけもない。

 なによりも……、

 

「なあ……」

「なに? ルルーシュ」

 

 ルルーシュが尋ねようとして、アインスが反応する。

 こいつらは只の学生で通しているはずの自分の事を知っている。しかもどこか気安い態度だ。

 

「私達が怪しいのは分かる。この姿も、現れたタイミングも。だが、スザクが撃たれるのを待っていたわけではない事は信じて欲しい。撃たれる前に間に合わず、本当にすまなかった」

 

 ゼロがルルーシュに対して頭を下げて謝罪する

 信じて欲しいのがそこなのか? ルルーシュは相手の対応から毒ガスを奪ったテロリストとは別口だと推測した。

 テロリストがこちらを信用させようとするならば、もっと違うアプローチをしてくるはずだからだ。スザクが日本最後の首相の息子とはいえ、ブリタニア軍の兵士となった名誉ブリタニア人への甘い対応をするはずがない。

 

「そこは信じるしかない。助けてくれたことにも感謝している。だが、さっきのあれは何だ? まるでおとぎ話の魔法のような──」

「魔法……そうだな、魔法だ」

「おい、ふざけるのも大概に──」

「ふざけてなんかいないさ。現に、アインスがスザクを治療しているのも魔法だ。尤も、おとぎ話とは違って厳密なロジックに基づいた技術だがな」

 

 はぐらかされていると思って突っかかろうとしたルルーシュをゼロが制止し、スザクの服を脱がして傷口から弾丸を摘出後に淡い光を纏った手を当てて傷口を塞いでいるアインスの方を指さす。

 スザクの血色も良くなっていき、目の前で起こっている不可思議な現象を見たルルーシュも認めざるを得ない。

 

「ん……うぅ。ここ……は」

「スザク!」

 

 治療を終えて間もなく、スザクが目を覚ます。

 

「あれ? 僕は確か……隊長に撃たれて、あれ? 傷が……無い?」

「スザク。お前が撃たれた後、彼らが俺達を助けてお前を治療してくれたんだ」

「ルルーシュ、無事でよかった。それと、ありがとうございます」

 

 ルルーシュの説明を聞いて、スザクはぼんやりした意識のまま親友の無事を安堵し、ゼロとアインスに礼を言う。

 

「礼には及ばんさ。そもそも、私達が間に合っていれば撃たれる事もなかった」

「まさか、貴方達が──」

「いや、テロリストとは無関係だ。私達は偶発的にルルーシュを発見し、保護するためにあのトラックを追っていた」

「俺を……?」

 

 ルルーシュの中で、ゼロ達への警戒度が上がる。

 ルルーシュ・ランペルージの正体は、7年前に人質として妹と共に日本への留学という体裁で送り込まれた神聖ブリタニア帝国の第11皇子にして、第17皇位継承者。ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだ。

 今までの話しぶりや反応からして、ゼロ達は自分の正体にも気が付いている。その上で保護しようとするならば、彼らは皇族の内の誰かからの使い──状況からしてクロヴィス以外──だろう。

 このまましらばっくれるかどうかを思考していると、

 

 ──piriririri! 

 

 ルルーシュの携帯から着信音が鳴り出す。

 

(寄りにもよってこのタイミングで!?)

「私達の事は後でいい。電話に出てあげるんだ」

「……分かった」

 

 ルルーシュはゼロに促されるまま、着信音が鳴る携帯を取って通話を始める。

 

『ルル! 今日も学校サボってリヴァルとどこ行っているの! さっきまで携帯にも繋がらなかったし!』

 

 電話の相手はアッシュフォード学園に在籍する生徒会メンバーのシャーリー・フェネットからだった。

 

「すまない。さっきまで携帯がつながらない所にいてさ」

『また賭けチェス?』

「まあ、そんなところだ。その後でトラブルがあってさ。ついさっきまでその後処理に追われていたんだ」

『もう、危ないからもう辞めよう? 皆も心配するし、私も……

「ああ、ほとぼりが冷めるまでひとまずはそうさせてもらうよ。それと、最後に何か言ったか?」

『何でもない!』

 

 最後がちゃんと聞き取れなかったので聞き直したが、シャーリーは起こって通話を切ってしまった。

 何かシャーリーを怒らせてしまう事を言っただろうか? 

 

「ルルーシュ……賭けチェスも良くないけど、さっきのは無いと思うよ?」

「そうです。ガールフレンドを心配させてはいけませんよ」

 

 しかも親友(スザク)とアインスからもダメだしされてしまった。

 

「ガールフレンドではありませんよ。同じ学園で生徒会に所属しているだけです」

「こりゃ重症だな」

「そうですね」

「そうだね」

 

 解せぬ。

 

「童貞坊やの鈍感具合は置いといて、本題に戻らないのか?」

「誰が童貞坊やだ」

 

 今まで沈黙を保っていた緑髪の少女が、口を開く。余計な事も口走っているが、弛緩した空気を引き締める効果はあったようだ。

 

「それもそうだな。ルルーシュ、そして君の妹であるナナリーと共に私達に保護させてほしい」

「そうやって、また俺達兄妹を政治の駒に使うつもりか」

「いや、ブリタニアも皇族も関係ない。私個人の私情だ」

「なんだと?」

 

 訳が分からない。皇族どころかブリタニアとも無関係で俺達兄妹を保護する理由はなんだ? こいつに一体何の益がある? 

 まさか、母上を慕っていた軍人か何かか? だが、その場合も俺達を神輿に担ぎ上げて来るはず。

 

「ゼロ、このままだと互いにすれ違ったまま平行線になると思う。だから……」

「そうだな。混乱させないために隠していたが、素顔を見せよう」

 

 アインスの言葉にゼロが応え、ゼロの仮面がほつれるように消えていく。

 

「な……!?」

「ど、どういう事……?」

 

 仮面が消えたゼロの素顔は、ルルーシュと瓜二つであった。

 

「俺が……もう一人?」

「俺達が実は双子だったのか、どちらかがクローンだったのか。或いは俺が知る世界に酷似した別世界なのか。それはわからない。ただ一つ言える事は、俺もお前もルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであるという事だ」

 

 ルルーシュもスザクも、緑髪の少女でさえもぽかんと口を開いて呆然とするしかなかった。

 

 

 ────────────────────

 

 

「ルルーシュが二人か……。どうしよう、ルルーシュを呼んだら二人とも反応しちゃうな」

「懸念するところがそこなのか、お前は」

 

 スザクのピントのずれたボケにルルーシュがツッコミを入れる。

 

「そこは保護の件も含めて追々考えるとして、俺達も本来の任務を果たしに行かなければならない」

「任務?」

「端的に言えば、エリア11に逃げ込んだ犯罪者を捕らえる事だ」

「厄介なのは、クロヴィスがその犯罪者の現地協力者の一人なのよね……」

「クロヴィス総督が!?」「クロヴィス兄上が?」

「『CODE-R』と呼ばれる何かの研究のために人体実験用の人身売買や、違法薬物の斡旋がクロヴィスとその一派にかけられている容疑だ」

 

 ルルーシュ(ゼロ)の言葉に、緑髪の少女がピクリと反応する。その様子を、どちらのルルーシュも見逃していなかった.

 

「どうやら、心当たりがあるようだな」

「大方、お前はその人体実験のために誘拐か売られた被害者辺りか?」

「いや。私がその『CODE-R』だ」

「「「「!!?」」」」

「私はC.C.。クロヴィスは不老不死の研究のために私を監禁して実験していたのさ」

 

 予想よりも核心に迫った、事件の核心そのものであるC.C.と名乗った少女に驚かされる。

 

「成程、だからクロヴィスは軍を動かしてでも必死になって探していたのか。となると……」

 

 ブリタニア軍の動きに納得がいったルルーシュの頭に、ある可能性がよぎる。

 ならば、自分達を見失った事を報告されたクロヴィスはどう動くか。最悪の可能性を。

 それを裏付けるように、シンジュクゲットーの方向から爆発音を幾つも伴った火の手が上がる。

 

「シンジュクゲットーが……」

「クロヴィスめ。実験対象が見つからない事に焦って、目撃しているかもしれない人間をシンジュクゲットーごと殲滅するつもりか!」

「そんな! 早く止めさせないと!」

「どうやってだ! C.C.を捕まえた事にして引き渡すつもりか?」

「それは……どうやって、どうやったら……」

 

 スザクはどうやったら犠牲を出さずに虐殺を止められるかを必死に考えるが、妙案が全く思い浮かばない。

 スザクは過去のトラウマから、正しい過程を経ていない結果に対する強い忌避感を持っている。

 虐殺は止めたい。でも正しい方法で止める方法が分からない。堂々巡りに思考の迷宮で迷子になっているスザクに、ゼロ(ルルーシュ)が呼びかける。

 

「スザク。俺はお前がどんな7年間を経験してきたかを知らない。その中には、お前の価値観を大きく変えるような何かがあったのだろう」

「ルルーシュ……」

「軍人としてルールを守ろうとする気持ちは間違ってはいない。その上で、お前が本当に守りたいものは、救いたいものは何なのかを教えてくれ」

「僕が、守りたいもの……」

 

 ゼロ(ルルーシュ)の言葉を受けて、スザクは自問自答する。

 七年前、自分はどうして実の父を殺した? 

 戦争を止めるため。確かにそれは理由ではある。でも血の繋がった家族を殺さなくては成せないと思うほどどうして思い詰めていた? 

 なんで戦争を止めないといけないと思った? 一般論ではないもっと根源的な理由は何だった? 

 考えて。考えて。考えて……。

 そして、スザクは自分が抱いた想いの根底と向き合う。

 

「僕は……ルルーシュと、ナナリーを守りたかった」

「スザク?」

「戦争が止まれば、ルルーシュもナナリーも殺されなくて済むって思って。僕は、僕は……戦争を続けようとする父さんを」

「「スザク!」」

 

 頭を抱え、震え出すスザクに二人のルルーシュが寄り添う。

 公的には責任を取って自裁した事になっている枢木ゲンブの最期を察した二人。それは幼少期はガキ大将だったスザクの性格が変貌するほどのトラウマの根底にあるものだった。

 

「すまない、スザク。お前がそこまで思い詰めていた事に気がつけなかった」

「お前は、俺達の事を守ってくれたんだな」

 

 二人のルルーシュは親友が抱える事となった心の闇を知らなかった事に自責の念を感じる。

 

「それで、スザクはこの状況をどう終わらせたい?」

「どう……って。僕は……どうしたら良いのかまだ分からない。けど、クロヴィス総督にこんな間違った事は──ルルーシュだけじゃなくこのゲットーに住む人たちを虐殺させるような事は止めなきゃいけない」

 

 何が正しいのかはまだ分からない。どのような方法が正しいのかも皆目見当がつかない。でも、ブリタニアのルールでは救えない命が、守れない誇りがある事はようやくわかった気がする。

 迷いはまだ残っていても、スザクは確かに前に進むことができたのだった。




という訳で、闇の書事件以降も元の世界に帰れずに時空管理局の協力者となっていたルートになった場合における、【魔導のルルーシュ】の方のルルーシュが、原作コードギアスの世界に意図せずに介入してしまう世界線でした。

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