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黒の騎士団がキョウトから提供された隠し拠点の一つ。大型トレーラーが拠点だった頃よりもゆったりとした空間で食事をしている黒の騎士団の面々は、具沢山のスープが入ったお椀を手に持ったまま首をかしげていた。
「何というか……微妙?」
「確かに……微妙」
「あまり不味くはないけれど……微妙」
口を揃えて微妙と評するスープは、シャマルが作ったものだ。黒の騎士団の面々がゼロや玉城の料理に慣れて舌が肥えているのもあるが、それを差し引いても微妙な表情を向けられている。
材料を考えれば栄養も旨味もたっぷりとあるはずなのだ。調理工程を見ていた玉城によると、少し危なっかしい所はあったが大きな失敗もない。なのに、出来上がった料理は口を揃えて微妙と言われる仕上がりであった。
これがはっきりと不味いならば、食べないという選択肢も選べた。しかし、食べられる程度にはちゃんと出来ていて、しかしなんだかモヤモヤする味という非常に困る塩梅の所為で、美味しくはないけれども勿体ないから首を傾げながら食べ続ける事となっている。
そんな中、ロイドは特に首を傾げずにスープを口に入れる。
「うん、美味しくないけど、セシル君のに比べたらちゃんと食べられるから大丈夫だよ」
「ロイド主任?」
「あんたさぁ、セシルの料理と比較するなんてフォローになっちゃいないよ」
「ラクシャータさん?」
言外にメシマズと言われてセシルはちょっと凹んだ。今度こそはちゃんと美味しい(セシル基準)料理を作ってロイド達をわからせなければと誓う。さしあたって、エリア11にあるというわさびなる食材をふんだんに使ったケーキ等はどうだろうか。
「シャマルが楽しそうに作ってたから邪魔しなかったけどよ、こりゃあ手伝った方が良かったかもしれねえなぁ」
ちょっと顔をしかめながらスープの具を頬張る玉城としては、調理工程はそれほど間違っていないのに、なぜこんな微妙な味になるのか不思議でならない。
「う~ん。ちゃんとレシピ通りに作ったはずなのに、はやてちゃんやゼロのように美味しくならないのよねぇ」
シャマルはそう呟きながら、自分が作ったスープを一口入れる。普段通り、美味しくしようと創意工夫を重ねているのに微妙な味だ。
「まあ、ゼロと出会う前の携帯食料や保存食・配給食頼りだった頃と比べたら、こうして温かい食事ができるのは有り難い事だ」
「そうね、最近は玉城の料理も結構美味しくなってきたし。ブリタニアとの戦いが終わった後ならば、お店開けるんじゃない?」
扇は食事事情が改善されている事に感謝し、井上は腕を少しずつ上げてきた玉城を褒める。
「それも良いかもなー。経理とか色々と勉強しなきゃいけねー事もあるけどよ」
「玉城、以前は一発逆転で官僚になると聞いていたが?」
「そんな事も言ってたなぁ。今思えば、『官僚は金持ちになれる凄い仕事だ!』ってくらいしか考えてなかった頭空っぽな発言だぜ」
南の疑問に、玉城は過去の自分の夢をしみじみと思い出しながら話を続ける。
「黒の騎士団で料理を振るうようになって、食材の管理とか任されるようになったらよ。組織の金や物を管理するってのがどれだけ大変か身に染みたからなぁ。官僚ってのは、扱うものは違えけど間違えちゃいけない事を国単位で休まずに続けるんだろ? そりゃあ俺には無理だって気が付いちまってよ。それより馴染みの奴らに飯を振る舞ってた方がよっぽど俺の性に合ってんだよ」
以前の玉城であれば、自分を大きく見せようと本質を知らないまま分不相応な夢を語っていただろう。だが料理という本人なりの苦労に基づいた、ある種の成功体験が彼自身に今の自分に何ができるのかの物差しを与える結果となっていた。
玉城の成長に、付き合いが長い扇グループの面々は感心する。
「けどよ……もしも俺が店を開くとしたら、その時は店の名前にゼロを使わせてもらうくらいの役得はあっても良いよな? な?」
「それ、良いかも。今度ゼロに聞いてみたら?」
「経営も黒の騎士団と日本解放戦線の面々で常連を確保できそうだし、割といけるんじゃないか?」
「俺達が来た時には、割安で頼むぞ?」
「分かってるって! それと冷蔵庫で冷やしといた手製のヨーグルトスフレケーキもあるから、デザートに食ってみてくれよ」
団欒を愉しみながら、鍋一杯に作られた具沢山のスープは無くなっていく。味そのものは微妙でも、仲間たちと楽しく雑談しながらの食事は不思議と美味しく感じるものだった。
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黒の騎士団が今後の将来について話している頃、ルルーシュは時空管理局本局次元航行部隊に所属するL級艦船の第八番艦「アースラ」の艦内にいた。
ルルーシュ達の世界の近くで巡行している次元空間にいるアースラに乗艦したルルーシュの目的は大きく分けて二つ。
一つはカレンの母親であるカリン・コウヅキをミッドチルダの大病院に転院させる事。破損したリンカーコアを本格的に治療するためには、自分達の世界の設備では不可能だからだ。
管理世界ではMIAと扱われていたカリン・コウヅキ二等空尉が二十年の時を経て帰還するというニュースは、地上本部となじみが深い所からは少なからず驚かれているらしい。
娘であるカレンも、母親の見送りのためにアースラに乗艦している。
もう一つは、自分達の世界固有の
自分達はこれらの
他にもスザクたちの精密検査が終わるまでの間に神聖ブリタニア帝国と次元犯罪組織の繋がりについて、アースラの艦長を務めているクロノ・ハラオウン提督とブリッジで情報共有を図ったりもしていた。
そして新たに得た情報について考えを纏めようと、部屋に向かう最中だったのだが……。
「ルルーシュ……♪」
気が付けば、ルルーシュは良く見知った少女に抱き着かれた状態で一緒に歩いていた。
その少女の容姿は十代後半の銀髪赤目で、管理局員とは異なる装いの制服に包まれた豊満な双丘はルルーシュの腕に組み付いてムニュリと形を歪めている。整った顔立ちは普段ならば理知的な印象を与えるはずだが、ルルーシュに対して向ける表情は恋する乙女にしか見えない。
そんな少女に対して、ルルーシュは満更でもない表情で彼女の頭を優しく撫でる。
「ん……。ルルーシュ、会えて嬉しい♪」
「俺もだよ、リィンフォース。いや、今はアインスだったな。元気そうで本当に良かった。思えば、
「そうですね……。
経年劣化によって老朽化が進んでいる歴戦の老艦は、ルルーシュに懐かしさと共に七年前の記憶を思い起こさせる。
アインスと呼ばれた少女は、七年前の闇の書事件における闇の書の管制人格であり、当時のルルーシュが起こした奇跡によって闇の書の防衛プログラムから完全に切り離されて救われた八神家の家族だ。
傍から見ると恋人──それもバカップルレベルのいちゃつき具合にしか見えない様子の二人だが、ルルーシュの認識としては家族に向ける親愛である。アインスの方は親愛に少しばかり情愛も含まれているかもしれないが。
「シグナムとシャマルから聞いたぞ。アインスは無限書庫に勤めているんだって?」
「はい。歩けるようになったはやてや家族たちの一助となるために、そしてかつての罪の贖罪のために。無限書庫ではユーノ司書長の助手として働かせてもらっている。今回は、管理局が突入・制圧した違法研究所のデータを解読するために、部隊に同伴した帰りでした」
「あいつ、もう無限書庫のトップになったのか。凄いものだ」
ルルーシュは闇の書事件の中で知り合ったフェレットもとい少年の事を思い返す。確か彼の一族は遺跡発掘を生業としていたはず。彼らの協力を得られれば、自分達の世界にある古代文明の遺跡について何か知る事が出来るかもしれない。
「確かにかつての膨大な魔力の大半を失っているとはいえ、
「闇の書の管制人格として破壊と悲劇ばかり齎していた私が、こうして他の誰かのために生きられるようになったのはルルーシュ、貴方のおかげです」
「俺だけじゃないさ。皆がはやてやアインスを助けるためにそれぞれにできる事を成したからこそ、最善の結果を手繰り寄せる事が出来たんだ」
穏やかな表情でアインスと語り合うルルーシュ。
時間はまだある事だし、情報を纏めるのは黒の騎士団の拠点に戻ってからでも良いかとルルーシュが考え始めてた辺りで、通路の曲がり角から出てきたスザクとカレンの二人と遭遇する。
「あ、ルルーシュ」
「ルルーシュ!? その娘は一体?」
両手にドリンクを二つ持ったままスザクはいつも通り普通に話しかける一方で、カレンは少し困惑した様子で尋ねる。カレンからすると色恋沙汰に振り回される印象が強いルルーシュが、銀髪美少女といい雰囲気なのだから気になるのも無理はない。もしもルルーシュと遭遇したのがC.C.だったならば、絶対に弄っていた事だろう。
「スザクとカレンか。彼女はアインス。俺のもう一つの家族の一人だよ」
「あぁ~、シグナムさんが訓練の合間に話していた人だったか」
「あの朴念仁のルルーシュにべったりくっついていて満更でもない様子だから、驚いちゃったわよ。でもナナリーにべったりな事を考えれば納得できるか」
この様子だと、シャーリーは前途多難ね……。とカレンはルルーシュに聞こえないくらい小さく呟く。
「誰が朴念仁だ。俺としても、ナナリーが独り立ちできるように妹離れをしようとはしているんだ……。それよりスザク、検査はもう大丈夫なのか?」
「うん、今は結果待ち。C.C.とマオは休んでいるから飲み物を代わりに取りに行ってあげようと思って」
「相変わらず、体力が有り余っているな」
「それが取り柄だからね」
「お二人の事はルルーシュから聴いております。特にスザクさんは大切な親友だと。私はアインス、どうかよろしくお願いします」
「此方こそよろしく」
スザクから差し出された握手に対して、アインスはようやくルルーシュから離れてスザクと握手する。
「それにしても、こうして実際に乗ってみると凄いね。まるでSFの世界に迷い込んだみたいだ」
「発展した科学は魔法と見分けがつかないように、魔法も突き詰めていくと科学と見分けがつかなくなるという事だ。元々、管理局で使われている魔法は
「魔法文明なのに、私達の世界よりもずっと科学的に発展しているのが、この船だけでもよくわかる。だからこそ、次元犯罪組織と手を結んでいるかもしれないブリタニアが、どれだけ危険なのかも」
スザクが管理世界の技術力に感心する一方で、カレンが危惧しているのは神聖ブリタニア帝国が次元犯罪組織を通して他の次元世界にまで侵略の手を拡げないかという事。事実、次元犯罪組織の中にはKMFを運用し始めている所も出始めているという。
更にナリタ連山での戦いでロールアウトされた、
更に、インド軍区から派遣されたラクシャータが手土産に持ってきた、ブリタニアから強奪したガウェインという機体には魔導技術が使われていた痕跡があったという。特派が開発したランスロットの技術が断片的にとはいえブリタニア軍のKMFにフィードバックされ始めたのに加えて、魔導技術の導入によって更に強化されていく事は容易に想像できる。
「ああ……。しかもクロノ提督を含めた局員から聞いた話を纏めると、俺達がヴィクトリアを討ち取った以降も管理外世界での関連組織の活動が停滞している様子はないそうだ」
「え゛っ、どういうこと……?」
カレンの疑問に、ルルーシュは推論ではあるがと前置きしたうえで答える。
「考えられるのは、俺達が倒したヴィクトリアは戦闘用の影武者だったパターンだ。尤も、今もなおナイトオブファイブの席が空席のままである事を考えると、現在組織を動かしているヴィクトリアは戦闘型ではないだろう」
「でも、それはもうヴィクトリアと言って良いのかい? 最早別人な気がするのだけど」
「古代ベルカ時代の王族は、自らのクローンに人格と記憶をコピーする事で疑似的な不老不死を体現していた。遺伝子・記憶・人格が同一ならば、それは同一人物であるという認識なんだろう。『我思う、故に我あり』という奴だ」
「まあ、確かに心の持ちようは重要ではあるか……」
カレンとスザクは渋い顔をしながら、ルルーシュの説明に一応は納得する。
「折角だ。俺もC.C.の様子も見に行くか」
「では私は確認するデータがまだありますのでこの辺りで」
「ああ、はやて達にも宜しく伝えておいてくれ」
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「C.C.検査後の調子はどうだ?」
すやすやと仮眠をとっているマオの髪を撫でながら、ベッドで一緒に休憩しているC.C.の部屋に赴いたルルーシュ達。C.C.はピザが無い事に不満を少し感じながらも、スザクから受け取ったドリンクを飲んでいる。
「今のところ問題はない。クロヴィスの所での実験と違って苦痛を与える類の実験もないし、こうしてゆったりとできる。まぁ、ピザがないのは不服だがな」
「拠点に帰ったら作ってやるから我慢しろ。それでマオの様子は?」
「此処の設備のおかげで、マオのギアスは復活した。しかも以前のような暴走状態ではなく任意で発動・制御できるよう、此処の技術者が専用の簡易デバイスを作ってくれたよ。今仮眠をとっているのは、その調整のために色々と試していた気疲れだ。こうしてゆったりと眠れるのはいつ以来だろうとマオは眠る前に言っていた」
「それは良かった」
マオの安らかな寝顔を見て、ルルーシュは安堵する。肉体こそ自分と同年代だが、歪な幼少期を経験した過去によって精神的に幼い所があるマオは、ルルーシュにとっては庇護と迄はいかなくても気には掛けてやりたくなる相手だ。
「C.C.……もしお前達が良ければだが──「言っておくが、私もお前の共犯者だ。それにマオも恩返しがしたいと言っている。私達だけ、除け者にするなよ?」──はぁ、分かったよ」
ルルーシュとしては、C.C.とマオが望むならば管理局に保護してもらう事を提案するつもりだった。だが、当の本人が望まないならばそれを受け入れる事も必要だろう。
それに、マオの読心のギアスは使いこなすことができれば諜報要員としてとてつもないアドバンテージを得る事ができる。黒の騎士団という組織として見れば是非ともいてほしい人材だ。
「それに、私個人としても今回の検査は朗報だったしな」
「朗報?」
「ああ、他者にコードを押し付けずに死ねる方法に目途がついた」
普段よりは少しだけ饒舌に、C.C.はその方法を語る。
「検査の途中で話していた内容によると、ギアスは本人のリンカーコアに記録されるから外の世界でも有効だ。しかしコードによる不老不死はCの世界と密接に関わっているようでな。Cの世界の影響範囲外、例えば外の世界であれば、私は不老不死ではなくなる」
「つまり、コードによる不死性は私達の世界に起因するって事ね?」
「その通りだ。ああ、先に言っておくが、自殺するつもりは毛頭ないぞ? お前との契約を完遂したら、外の世界でしわくちゃのお婆ちゃんになるまで自堕落に生きるつもりさ」
「死にたがりで無くなったのは良いが、少しは働け。周囲からピザニートと白い目で見られるぞ」
「マオの情操教育にもよくないよ?」
「もしもそれで太ったら、笑ってあげる」
口ではそう言いつつも、ルルーシュ達の表情は柔らかい。結果的にではあるが、C.C.の願いを穏当な形で叶える方法が見つかったのだから。
「容赦ないな、お前ら」
ルルーシュ達から色々と言われたC.C.の呟きにも、歓びの色が混ざっていた。
微妙な味のスープでも、皆とわいわい楽しんで会話しながらならば思い出の味になると思うんですよね。
C.C.のコード周りの設定に関して、あるゲームとのコラボシナリオにおける設定と矛盾する部分がありますが、独自設定です。