コードギアス‐魔導のルルーシュ   作:エヌット

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日本解放決戦-2

 ブリタニア軍への命令を終えたコーネリアは、嚮団によるシンジュクゲットーの騒動を鎮圧するために自ら出撃していた。周囲からは止められたが、こればっかりは自らの矜持に関わる部分であり、力づくで押し通した。

 ならばと、コーネリアの随伴機となったのはコーネリアの騎士であるギルフォード卿の駆るグロースター。そして黒の騎士団からの監視役という体裁でマーヤの駆る蒼月改。

 ジェレミア卿は純血派を率いて嚮団の戦力を削る現場指揮官とユーフェミアを守る役割があるので、随伴機からは外される事となった。

 

「姫様、今度こそ我が身に代えても──」

「そう気負いすぎるな、ギルフォード。今はまだその時ではない。此処は共に生きて戻る事も達成して初めて勝利となる戦場だ」

「──っ! イエス、ユア・ハイネス!」

「それにしてもこのナイトメア……元々は私のグロースターのようだが、性能がかなり向上しているようだな」

 

 コーネリアが現在搭乗しているグロースターは、ナリタ連山で鹵獲されたグロースターをロイド達が試作装備の実証実験機として改造した代物だ。

 機体の見た目こそコーネリア専用機のグロースターと大きな変化はない。異なるのはマント状の背部ユニットに増設された六本二対で合計十二本のランスユニットだ。

 シンジュクゲットーの大地を走るコーネリア達の進行方向に、四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)が三機。背部のマルチウェポンラックに装備されたアサルトライフルの銃口を、コーネリア達に向ける。

 

「此処は私に任せて!」

 

 マーヤ機(蒼月改)が前に出て、左肩に装備されたシールドを突き出して四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)へと突進する。

 四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)のアサルトライフルが立て続けに火を噴く。後方のコーネリア達を守るように回避行動をとらない蒼月改のシールドに多くが命中するが、ダメージを受けている様子は全くない。

 元々は月下の先行試作型を実戦に耐えられるように改造した機体が蒼月改だが、その改造にはラクシャータとロイドたち特派だけでなく、なんと時空管理局所属の技術陣も関わっているのだ。

 これは近年、次元犯罪組織の間で確認されているAMF(Anti Magilink-Field)搭載無人兵器に対する対抗策を見出すために、魔法との親和性が高く操縦性に優れたKMFを利用できないかという新しい試みである。

 ガウェインからサルベージに成功したデータを基にフレーム全体に魔力伝達機構を導入した事で、蒼月改はKMFであり同時に新機軸の乗り込み型デバイスでもある【ナイトメアデバイス】の第一号機として生まれ変わる事となった。

 その結果、ブレイズルミナスは搭載していないものの、バリアジャケットの技術が装甲に転用されている事で従来のKMFが保有する火器では殆どダメージを受けない堅牢な防御力を獲得するに至った。

 マーヤ機(蒼月改)四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)の攻撃をものともしせずにシールドに格納されているクロ―アームを展開。特派から齎されたMVSの技術によって攻撃力が増したクロ―アームが、四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)の頭部を引き千切る。

 そしてマーヤ機(蒼月改)のすぐ後ろについて来ていたギルフォード機(グロースター)コーネリア機(グロースターカスタム)が散開し、それぞれMVSとランスでさらに一機ずつ撃破した。

 

「蒼月……うん、リベリオンの時よりも私の動きに従ってくれる。良い機体ね」

「嚮団のナイトメアが此方に集まってきている。ミサイル攻撃が来るぞ!」

 

 嚮団所属の無人機サザーランドと四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)の混成部隊が、一斉に5連装ミサイルポッド(ザッテルヴァッフェ)による絨毯爆撃を仕掛ける。

 

「その程度で! 押し通らせてもらう!」

 

 コーネリア機(グロースターカスタム)が構えたランスの柄の部分から展開されたブレイズルミナスが、ランスだけでなく周辺を覆い、ミサイルの雨を全て防ぐ。

 これこそがロイド達特派が新たに考案した『ルミナスランス』。元々はランスロットの追加装備プランとして考案されつつも、当時の技術的ハードルの都合でデータだけは存在した試作装備だ。ブレイズルミナスを停滞させる性質と超硬度の両立を目指して精製された特殊合金『シュロッター鋼』にブレイズルミナスを纏わせることで、攻防一体の武装とする技術である。

 コーネリア機(グロースターカスタム)はそのままギルフォード機(グロースター)マーヤ機(蒼月改)を連れてルミナスランスを展開しながら接近。四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)は頭部ユニットを開閉してハドロン砲による破壊を試みるが、照射よりも早くルミナスランスがその頭部を胴体ごと貫く。そしてギルフォード機(グロースター)のMVSとマーヤ機(蒼月改)の廻転刃薙刀が周辺の嚮団所属機を薙ぎ払う。

 

「性能が良かろうとも、無人機ではこの程度か」

「早く進みましょう。ナナリーを助けに行かないと」

「分かっている。行くぞ、我が騎士ギルフォード」

「イエス、ユア・ハイネス!」

 

 立ちふさがる障害を次々と切り伏せながら、コーネリアはまさか自分がテロリストである黒の騎士団と手を組むことになるとはなと苦笑していた。

 コーネリアがなぜこうして黒の騎士団と共闘しているかというと、およそ十二時間前に遡る。

 

 ~~~~

 

 エリア11におけるサクラダイト採掘を一手に担っているキョウト六家の重鎮、桐原泰三が創業者である桐原産業が保有するオオミネ鉱山に秘密裏に作られた地下施設にコーネリアは監禁されていた。

 かつては女人禁制の修験道の聖地だった大峰山も、富士山と同様に神聖ブリタニア帝国によるサクラダイト採掘のために鉱山として無残な姿を晒していた。

 サクラダイト採掘というと、エリア内最大のサクラダイト埋蔵量を誇るフジ鉱山に目が向かいがちだ。しかし、サクラダイトの大規模採掘がおこなわれている場所はフジ鉱山以外にも存在し、ナラ租界南部に位置するオオミネ鉱山もその一つだ。オオミネ鉱山のサクラダイト推定総埋蔵量はフジ鉱山のおよそ七割、フジ鉱山に次ぐエリア内二位のサクラダイト埋蔵量だ。

 そんな地下施設で虜囚の身となっていたコーネリアに、面会希望者が現れた。それがゼロとユーフェミアの二人だ。

 

「御無事で何よりです。お姉様」

「ユフィ……? どうして、お前が此処に!」

「お姉様。私は私の意思で、上に立つ者としての責務を果たすために。そして今まさに命を奪われようとしている民衆を救うためにゼロと協力し、お姉様のお力もお借りしたくて此処に来ました」

 

 ユフィも囚われてしまったのかと絶望し、ゼロに激高しようとしたコーネリアをユーフェミアが宥めると、コーネリアに現在何が起こっているのかを説明する。そして嚮団による魔導テロの影響を受けていない地域のブリタニア軍が横やりを入れないように命令を出して欲しいと、コーネリアに対してユーフェミアは頼みこんできた。

 

「ユフィ……それは本国を敵に回すかもしれないのだぞ? お前に、他の皇族や皇帝と戦う覚悟はあるのか?」

「はい。お姉様は『命を懸けて戦うからこそ統治する資格がある』とよく仰っていましたよね? 私は……ユーフェミア・リ・ブリタニアは、たとえ本国を敵に回すことになるとしても、民衆を守る道を選びます。それが私の統治する者としての責務であり、身命を掛けた戦いです」

 

 ユフィの覚悟に、コーネリアの心が揺れる。テロリストであるゼロに屈したくない反骨心と矜持、民衆を守る統治者としての務めを果たそうとするユフィに応えたい想いがせめぎ合う。

 いや、理屈では協力するべきだとはわかっているのだ。だが、これまでブリタニア皇族として生きてきた誇りが、感情的な部分で待ったをかけている。だからこそ、自分自身を納得させられる理由が欲しい。

 

「ゼロ……一目でいい。お前の素顔を見せて欲しい。私に勝利しユフィが認めた相手の素顔が分からないままでは、私は敗軍の将として踏ん切りがつかない」

 

 以前のコーネリアであれば、自らを敗軍の将と認める事などなかっただろう。

 

「分かった。ユフィにもすでに見せている以上、貴方にも素顔を見せるべきだ」

 

 そう言ってゼロの素顔を隠す仮面が消えると、そこにあったのは一人のブリタニア人の少年であった。

 この顔つきは覚えている。七年前にエリア11となった日本で非業の死を遂げた腹違いの弟、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが生きていればこのような顔つきになっていただろう。

 本音を言えば、考えていた可能性だったが当たってほしくなかった気持ちがある。

 生きていた事への喜び、テロリストとなってクロヴィスを殺めた事への怒りと嘆き。それらがコーネリアの中で綯い交ぜになる。

 

「ルルーシュ、お前……だったのだな」

「はい、姉上。おれは、攫われたナナリーと生贄に捧げられようとしている人々を救いたい。どうか、力を貸してください」

 

 あの負けず嫌いなルルーシュが頭を下げてお願いするなど、今まで想像した事もなかった。ナナリーだけでなく無辜の民も守りたいと自然に言える優しさを表に出すことも。

 ユフィを人質にすれば力ずくで言う事を聞かせられるかもしれないのに、それを行わずに誠意をもって頼むルルーシュの姿勢に、コーネリアは覚悟を決めた。

 

「……わかった。ほかならぬ義弟からの頼みだ。力を貸そう」

「ありがとうございます、姉上」

 

 ~~~~

 

 ルルーシュとユーフェミアからの提案を受け入れて、再び表舞台に舞い戻ったコーネリア。

 この戦いの後は再び敵同士に戻るのか、或いは本国から裏切り者と見なされてなし崩し的に黒の騎士団と協力する事になるのかはまだわからないが、少なくとも今は嚮団の企てを止める事が先決だと判断し突き進んでいった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 コーネリア達が北部から進撃する一方で、南西部に展開する黒の騎士団と嚮団とのぶつかり合いは一進一退の攻防が繰り広げられていた。純血派よりも黒の騎士団を脅威と判断したV.V.が、より多くの戦力をこちら側に振り分けたためだ。

 第七世代ナイトメア相当の戦闘力を有する四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)に対して、ナイトメアとしての世代が下の黒の騎士団の主力ナイトメアである無頼やサザーランド・リベリオンでは分が悪い。その代わり、特記戦力であるスザクのランスロットとカレンの紅蓮が大いに暴れまわっている。

 四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)の部隊が頭部のハドロン砲を展開し、スザクのランスロットに向けて乱れ撃つ。

 

ランスロット・トラヴァース(・・・・・・・・・・・・・)! エアリアルロード!」

 

 スザクはランスロットを跳躍させてハドロン砲の掃射を躱すと、ランスロットに新たに追加された機能を起動させる。すると、ランスロットの脚部から桜色の光が噴出、光は板状の障壁となってランスロットが疾走(はし)る道を空中に創り出した。

『エアリアルロード』は、ナリタ連山で世界とつながる力(ワイアード)による過負荷でボロボロとなったランスロットを再構築する過程で、特派がラクシャータだけでなく管理局からも技術提供を受けて開発・導入したシステムだ。基となっているのは管理局職員であるギンガ・ナカジマが保有する先天性魔法『ウイングロード』。世界とつながる力(ワイアード)を魔力伝達機構で制御し、ブレイズルミナスのようにエネルギーフィールドとする事で疑似的に再現した代物で、これによってランスロットは空中でもランドスピナーを用いた三次元立体機動が可能となった。

 空中に創り出された桜色の光の道をランスロットが疾走し、更に四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)に向かって独楽の様に回転しながら跳躍。ブレイズルミナスを纏った脚部による陽昇流(ひのぼりりゅう)誠壱式旋風脚(まこといちしきせんぷうきゃく)で纏めて薙ぎ払う。

 そのまま敵陣に切り込んで大暴れするスザクのランスロットと同様に、カレンの紅蓮もまた新たな力を手に入れていた。

 元々大型で異形だった右腕は、更に肥大化し禍々しいものとなっている。左右のバランスを少しでもとるためなのか、元々は腰にマウントされていた呂号乙型特斬刀が左腕部にマウントされている。

 

「弾けろ!」

 

 紅蓮弐式()の、輻射波動を搭載した右腕部が突き出されると、援護射撃を続けている嚮団所属の無人機サザーランドに向かって勢いよく射出(・・)された。

 輻射推進型自在可動有線式右腕部輻射波動機構。それが紅蓮弐式改が得た新たな力。ロケットパンチの様に撃ち出された右腕部は、狙い誤らずに無人機サザーランドを捕らえると輻射波動を流し込んで機体を融解。そのままスナップを利かせて周辺の嚮団所属ナイトメアに投擲し、疑似的な爆弾として扱ってまとめて吹き飛ばす。

 紅蓮弐式改を排除しようと、無人機サザーランドと四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)の混成部隊による5連装ミサイルポッド(ザッテルヴァッフェ)が次々と放たれる。

 紅蓮弐式改の右腕部を引き戻したカレンは、回避することなく右腕部をかざす。

 

「新しい紅蓮なら! エクスプロード!」

Understood,Karen! 『Blaze Wave』! (了解しました、カレン! 『ブレイズウェーブ』!)」

 

 エクスプロードの詠唱に合わせて紅蓮弐式改の右腕掌から魔法陣が展開され、高熱の衝撃波が前方に照射される事で飛来するミサイルを全て叩き落としただけでなく、前衛にいた無人機も巻き込まれて数機が融解する。

 紅蓮弐式改もまた、蒼月改やランスロット・トラヴァースと同様に魔力伝達機構が導入されており、バリアジャケットによる防御力の蒼月改、先天性魔法の再現による機動力のランスロットに対して紅蓮弐式改は魔法による攻撃能力の強化に重点が置かれていた。

 

「凄い火力だね、カレン」

「ラクシャータさんの話では、輻射波動でも似たような事できる様にしたいって」

 

 次々と現れる嚮団のKMFをランスロットと紅蓮がどんどん撃破し、漆黒のKMF零陽炎が無頼やサザーランドリベリオンの指揮を執りながら連携して嚮団のKMFを着実に撃破していく。

 その様子だけ見たならば、黒の騎士団が快進撃を進めている様にも錯覚するだろう。しかし、幾ら倒しても湧いてくる嚮団の無人機を前に、戦線は思うように進まず他の黒の騎士団は苦戦を強いられている。

 そこに、この戦場のある種の拮抗状態を乱す存在が姿を現した。

 

「あれは!?」

「で、でけぇ……」

 

 ランスロットと紅蓮がいる最前線の後方。零陽炎が指揮を執る部隊の側面から強襲を仕掛けてきたそれは、四足獣をモチーフとしながらも四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)とはまた異なる、ケンタウロスを彷彿とさせるフォルムのダークグレーを基調とした異形の四足歩行型兵器であった。なによりもサイズが桁違いだ。通常のKMFの3~4倍はある巨体と、そのボディがちっぽけに見えてしまうような巨大な戦鎚。KMFという枠組みに含めて良いのかすらも怪しい。

 

「撃て! 撃ちまくれ!」

 

 黒の騎士団の部隊長の号令で、周囲にいた無頼の部隊が一斉にアサルトライフルを斉射する。

 その異業の機体は巨体からは考えられない滑らかな動きでサイドステップや跳躍を駆使してアサルトライフルの弾幕を躱すと、そのまま無頼に肉薄して手に持つ巨大な戦鎚で一薙ぎ。たった一薙ぎで周辺の無頼はまとめて破壊されてスクラップとなってしまった。

 

「あの位置は、拙い! このままだと零陽炎が狙われる! カレン、此処は任せた!」

「ええ!」

 

 前線で戦っていたスザクも新手の強襲に気が付き、その場をカレンに任せて救援に向かおうとする。しかし──、

 

「っ!」

 

 殺気を感じ取り、咄嗟にサイドステップしたランスロットのすぐ脇を、上空から飛来した何かが掠めた。

 それは、鳥人(ハーピィ)を彷彿とさせる白いボディの異形の機体であった。此方も通常のKMFの3~4倍はある巨体で、鳥の翼のような両腕を広げて進路上にある建造物を両断しながら飛行し旋回する様子は、通常の兵器とは次元が異なる事を端的に表している。

 

『バカめ。アクイラのMVSウイング(この一撃)で大人しく死んでいればよかったものを』

「……ぇ? その、声は……。な、なんで……」

 

 アクイラが上空で翼を広げて雨覆羽に相当する部分からハドロン砲の雨を降らせる相手から聞こえてきた言葉に、枢木スザクは困惑する。その声は機械音声混じりだが、決して忘れる事が出来ないトラウマ(記憶)となった人物の声だと確信してしまったからだ。

 

「スザク! っくぅ!」

 

 カレンが紅蓮弐式改の右腕部からアクイラに向けてブレイズウェーブを放つが、相手はひらりと交わすとそのままドリルの様に錐もみ回転しながら紅蓮弐式改めがけて突進してきた。

 カレンはこの突進を躱しながら様子がおかしいスザクのランスロットに近づく。

 

「なんで……生きて? 僕が……してしまった、はずなのに」

「スザク!」

『ああ、確かに儂は一度死んだ。スザク、お前が七年前に殺した。だが、アルハザードの遺産はワシを蘇らせたのだ!』

「どうして……父さん!」

 

 廃墟となっていたビルをぶち抜きながら旋回し戻ってきたアクイラのパイロットの嘲笑と侮蔑を含んだ言葉と、スザクの慟哭。

 

「あいつが、スザクのお父さん? つまり日本最後の首相、枢木ゲンブ……。なんで、なんで嚮団なんかに力を貸しているのよ!」

『このバカ息子のくだらぬ友情とつまらぬ義憤の所為で、七年前に達せられるはずだった我らの忘れられし悲願がここまでずれ込んだのだ。アルハザードの末裔たる枢木一族の悲願がだ!』

「枢木家の、悲願……? まさか、ナナリーを攫ったのは!」

 

 枢木一族の悲願などという話は、スザクは今まで親族からも聞いた事もない。それでも篠崎咲世子から聞いていた話を思い出し、ナナリーを攫ったアルハザードの末裔の正体の可能性に思い当たる。

 

『そう! この計画は、一族の使命を思い出した歴代枢木一族の長年の悲願でもあるのだ! 初代枢木家当主【枢木セイリュウ】の時代からのなぁ!』

 

 四足歩行型KMF(キャスパリーグの簡易量産型)の部隊が先ほどまでの無人機としての画一的な動きではない、部隊単位で一つの意思を共有しているような高度な連携攻撃でランスロットと紅蓮弐式改に襲い掛かる。

 シンジュクゲットーで運用されている無人機を統括している枢木ビャッコが、黒の騎士団を壊滅させるためにこの区域のAIを直接操作し始めたからだ。

 ギリギリのところで連携攻撃を躱し、防ぎ、凌ぐことができるのは、スザクもカレンも、トップエースと言って差し支えないほどのKMF技量とその能力を十全に扱えるKMFがあってこそだ。

 

『全てはアルハザード再興のため。でなければ土着生命体に取り入る屈辱を甘んじて受け入れるはずがなかろう』

『然り。本来ならば下等生物は我らアルハザードの末裔のために正しく使われ消費されるべきなのだ』

 

 ビャッコとセイリュウの身勝手な言い分に、スザクとカレンに怒りが宿る。

 

「……こんなのが……ご先祖様と父さんの本性? ……ふざけるな!! こんな、こんな連中のために()は!」

「スザク、こいつらは絶対に許しちゃいけない。認めちゃいけない!」

 

 スザクが親殺しに対する罪悪感と贖罪の意識の下で生きてきた七年間を踏みにじられた怒り。こんな人物を父親として尊敬していた自分への怒り。

 カレンも彼らの言葉は元の世界からこの世界へ迷い込み、父と出会い共に愛した母をも侮辱する言葉だった。そんな両親から生まれた自分を否定する様な言葉を吐くゲンブたちへの怒りは収まるはずがない。

 

『ほざけよ。貴様らはここで死ぬ』

『ナナリーとルルーシュ、そしてエクウス(もう一人の儂)に殺されるゼロの為に、先に黄泉路で待っている事だなぁ!』

「くっ! (まだか、ルルーシュ!)」「くぅっ! (まだなの、ルルーシュ!)」

 

 ゲンブの言葉から、嚮団が今なおゼロとルルーシュが同一人物だと気が付いていない事を二人とも察し、落ち着きを取り戻して戦い続ける。

 気が付かれていないならば、ルルーシュの仕込みにも気が付いていないはず。後はルルーシュが間に合うかどうか。

 アクイラの攻撃を躱しながら無人機を着実に破壊し続けるが、どれだけ撃破しても攻撃の密度が薄くなっている様子がない。

 

「明らかに、数がおかしい!」

「やっぱり、この無人機たちは他所で作られてどんどん送り込まれているんだ!」

『分かったところで、お前たちに万に一つも勝ち目がない事が浮き彫りになるだけだ! 大人しく、死ねぇ!』

 

 ゲンブのアクイラが再びハドロン砲を上空から照射しようとしたその時、

 

「万に一つも勝ち目がない? 違うな、間違っているぞ!」

 

 突如、ゼロの声がシンジュクゲットーの各所から聞こえてきた。シンジュクゲットー全域の通信設備が一斉に稼働し、ゼロの声を届けているのだ! 

 状況の変化に真っ先に気が付いたのは、無人機を統括・制御しているビャッコだった。

 

『ば、馬鹿な! この近隣の無人機の制御が! 乗っ取られていくだと!?』

『何ぃ!?』

 

 連携攻撃を行っていた無人機が1機ずつその動きを止め、あるものは同士討ちをはじめ、あるものはアクイラに向けて火砲を向け攻撃を仕掛けていく。

 

『馬鹿な、どこからハッキングを! そもそも魔導師とはいえ人間風情に私が出し抜かれれ、れれrere・・・・・・!!?』

『ビャッコ、どうした!?』

「無人機による戦力拡大は悪くなかった。ハッキング対策も万全だったのだろうが、相手が悪かったな。これで、チェックメイトだ!」

 

 ゼロが言い終わるのと同時に、シンジュクゲットーに地響きが起こる。上空を飛ぶアクイラに乗るゲンブからは、それがシンジュクゲットーの複数区画が分断されるようにエリアが分離(パージ)されていったことによるものだと分かる。

 一見するとシンジュクゲットーの区画を無意味に不規則に分離したように見えるが、嚮団のこの計画に深く関わっているゲンブは急に声を荒げ始めた! 

 

『ゼロ、貴様ぁ!? なんという事をぉォ!!!』

「ふははは! そうだ! これでお前たちの計画は大幅な遅延と見直しを迫られる! 何故なら、先程のエリアパージによって、お前たちの計画の根幹となる生命力収奪魔法の魔法陣はズタズタに寸断されたのだからな!」

『「ぬぉっ!?」』

 

 ゼロの笑い声と共に、アクイラとエクウスの頭上にハドロン砲が照射される。アクイラは錐もみするようにギリギリ躱し、エクウスは頭部から生える両角から放出した大出力の放電で弾きこそしたが、それはついでと言わんばかりにハドロン砲は照射されたまま射線を動かして無人機を次々と薙ぎ払っていった。

 アクイラよりも高空を飛行しハドロン砲を放っていたのは、1体の漆黒の大型KMFガウェイン。そして──、

 

「待たせたなC.C.。此処からは反撃開始だ」

「やれやれ、相変わらず人使いの荒い男だな」

 

 零陽炎から、ゼロと同じスーツを纏っているC.C.の声。ガウェインからは黒の騎士団のリーダー。ゼロの姿が映し出される。

 アクイラで制空権を奪い、エクウスが先ほどまで迫っていた地上の零陽炎にゼロが搭乗していると考えていた嚮団にとっては、ガウェインの存在もゼロが今まで戦線にいなかった事も予想外の事態であった。

 ガウェインがアクイラや嚮団の拠点のレーダーに気づかれなかったのは、ガウェインのハドロン砲を改良するにあたって使用されたラクシャータの技術、ゲフィオンディスターバーによって齎されたステルス機能によるところが大きい。

 しかし、その事を知らない嚮団にとっては、ガウェインはシュナイゼル第二皇子配下の特派が開発していた技術試験機であり、実戦運用できるような代物ではなかったはずという知識が先行する。

 それ以上に、何らかの異常をきたしたビャッコとの連絡が取れなくなったゲンブにとっては、下手人であるゼロとガウェインは未知の存在そのものだ。

 それでも悲願達成を目前にして再び邪魔された事に、エクウスに乗る方のゲンブは怒りの矛先をゼロへと向ける。

 

「ゼロぉ! 貴様は、貴様だけはぁ!!!」

「諦めろ。お前たちの計画は既に破綻した」

「まだだ! 今からでもエリア11を、日本を血の海に沈めれば! アクイラ(もう一人の儂)よ! あれを使うぞ!」

『ああ! このまま終わる事など出来るものかぁ!』

 

 エクウスが黒の騎士団そっちのけでアクイラの方へと疾走し、アクイラもスザクやカレンを無視してエクウスの方へ飛翔する。

 黒の騎士団からの砲撃を躱しながら、エクウスがその巨体を四本脚で跳躍させ、アクイラと接触。その瞬間、眩いばかりの閃光が発生して周囲を白く染め上げた。

 

『「今こそ、一つに!」』

「うぉっ! 眩しっ!」

「一体、何が起こっているの!」

 

 閃光に思わず目を閉じていた玉城や井上の叫びは、黒の騎士団の誰もが思っていた。

 追い詰められて奥の手を使ったようだが、普通ならば衝突して墜落するよう接触を行ったエクウスとアクイラがどうなったのか様子は中々うかがえない。

 閃光はやがて薄れ、黒の騎士団の前に姿を現したのは──、

 

『「これがエクウスとアクイラの最強合体形態! 究極にして無敵のナイトメア、レガリアだ!」』

 

 エクウスのボディにアクイラの翼が生えたような異形のKMF(レガリア)。ボディを彩る黄金色の輝きが、シンジュクゲットーの大地に舞い降りる。

 圧倒的な威圧感を感じさせるゲンブの切り札を前に、玉城が思わず叫んだ。

 

「……いやっ! そうはならねえだろ!?」




 オオミネ鉱山もとい大峰山が、フジ鉱山もとい富士山に次ぐサクラダイト採掘場という設定は、独自設定です。

 ランスロット、紅蓮、蒼月に大規模な改造が施されました。
・防御力強化主眼の蒼月改
・機動力強化主眼のランスロット・トラヴァース
・攻撃力強化主眼の紅蓮弐式改
なお、ランスロットにフロートユニットが装備されなかったのは、世界とつながる力(ワイアード)使用時におけるフロートユニットにかかる過負荷の調整が今回の作戦に間に合わなかったためという事情が有ったり。

蒼月と零陽炎についてですが、「コードギアス ロストストーリーズ」に登場するラクシャータ作のKMFです。
蒼月は月下の試作型を実践改修してロールアウトされたKMF
零陽炎は、ゼロ専用の指揮官用KMFとして開発されていたものの、ガウェイン強奪によって不要となった事から原作では開発中止となった設定のKMFです。
本作では、ガウェイン強奪後も開発が継続される事となり、日本解放決戦ではゼロが前線に出ていると偽装するためにゼロに扮したC.C.が騎乗しておりました。

 エクウスとアクイラは、元々はDS版コードギアスに搭乗したラスボスです。当初はパラックス・ルィ・ブリタニア、キャスタール・ルィ・ブリタニアも搭乗させる予定でしたが、枢木ゲンブに変更となりました。(エクウスに生身のゲンブが、アクイラにバイオ脳的な分体が騎乗)
 その結果、枢木ゲンブのパイロットとしての技量がとんでもないことになり、スザクのナイトメア乗りとしての才能の根拠となる事態に……。
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