コードギアス‐魔導のルルーシュ   作:エヌット

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今回はちょっと実験的な表現も組み込んだ話です


日本解放決戦-4

「次元の歪みが……収まった?」

「現実の地震の様に、大きな歪みの前触れかもしれん。シャマルはヴィクトリアの移送が終わり次第、急いで戻って──」

 

 ユーフェミア達の所で起きた事態を把握していないはやて達は、瞬間的な次元の歪みを大規模次元震の前兆と捉えた。時間が差し迫っていると考え、シグナムがシャマルに頼んでいる所だ。

 周囲に霧が立ち込め始めているが迷うような立地でもないから問題ないだろうと判断しかけた所で、藤堂はふと疑問に思う。今の時間帯でシンジュクゲットーに霧が出る様な天候だったかと。

 藤堂の脳裏に、これまで集めてきたブリタニアの要注意人物に関する情報が駆け巡る。EU圏を中心に殺戮者として名を馳せているラウンズ(ブリタニアの吸血鬼)の噂を。

 

 ──曰く、ブリタニアの吸血鬼が現れた戦場には、霧が立ち込めていた。

 ──曰く、ブリタニアの吸血鬼は、霧の中から姿を現す。

 

 藤堂の経験に基づいた直感が危険を知らせる。はやて達が気が付いていない事からこの霧は魔力を有していないようだが、だからこそ立ち込めている霧の異常さが際立って感じられた。

 

「シャマル医官! その場から離れるんだ!」

 

 藤堂の叫びと同時に、立ち込めていた霧がシャマルの頭上で一か所に集まり、KMFの腕が形を成した。

 

「その命、弾けさせろぉ!」

 

 霧から現れた右腕部の4連クローが高速回転し、コーン状のエネルギー──ルミナスコーンを纏ってシャマルと拘束されているヴィクトリアに振り下ろされる。

 シャマルは咄嗟に短距離転移魔法で躱すが……、

 

「ひぃっ! ブラッ──」

 

 余りにも咄嗟だったためにヴィクトリアの転移が間に合わず、彼女はKMFの振り下ろされた右腕に潰されてしまった。原形すらとどめていない、あっけない幕切れである。

 

「残念♪ 裏切り者の粛清と一緒に殺せると思ったのだがなぁ~!」

 

 何者かの喜色を含んだ声が聞こえる中、右腕以外も霧から形を成していく。

 それは白味がかったグレーと紫色の塗装がされた見た事がない一体のKMFだ。

 頭部はランスロットに似た双眼型のカメラアイで、左腕には衝角が付いた菱形のシールドを保持している。コックピット区画下部に取り付けられている剣は恐らくMSVの類だろう。

 

「霧から……」「ナイトメアが!?」

「そんな! さっきまで魔力反応は全くなかったはずやのに」

 

 千葉と朝比奈が驚愕すると共に、はやてはヴォルケンリッター含めて眼の前に現れたKMFから感じ取れる魔力を探知できていなかった事に警戒感を強めていた。

 正体不明のナイトメアから発せられる魔力量は、推定小型魔力炉級。それだけの魔力量を直前まで隠しきっていたのだ。

 この状況で最も早く動き出したのは、正体不明のナイトメア。ランスロットに比肩する機動力で最も近くにいた月下──卜部機を貫こうとルミナスコーンで突進する。

 

「キハハ! まずはお前からだぁ!」

「ぐぅっ! 月下が、圧されている!」

 

 卜部は月下の廻転刃刀(かいてんやいばとう)でルミナスコーンを受け止めるが、激しい火花を散らしながらその刀身をガリガリと削られる。

 卜部を助けるため、朝比奈が咄嗟に正体不明のナイトメアの背後から月下の廻転刃刀(かいてんやいばとう)で切りかかるが、

 

「やらせるかよ!」

「温い! この程度で、私の命を奪えるものかぁ!」

 

 正体不明のナイトメアは朝比奈機の月下に対し、左腕部の肘打ちで迎撃、廻転刃刀(かいてんやいばとう)とぶつかり合う寸前で肘からブレイズルミナス系の衝撃波が発生し、朝比奈機の両腕部を廻転刃刀(かいてんやいばとう)ごと破砕。そのまま流れるように衝角付きのシールドによる裏拳を叩き込む。

 予想外の衝撃と破壊力でバランスを崩した朝比奈機のファクトスフィアが、シールドの装甲がスライドし内部からミサイル弾頭を映し出した。

 

「ぁ──」

「朝比奈! すみません、藤堂中佐、離脱します!」

 

 劣勢の鍔迫り合いを繰り広げている卜部が、咄嗟にわざと自らの月下のバランスを崩す事で正体不明のナイトメアのルミナスコーンに片腕を抉り飛ばさせる代わりに体当たり。シールドミサイルが発射されるまでの時間を僅かに稼いだ。

 そのまま卜部は脱出装置を起動させ、朝比奈もシールドミサイルが着弾する前に脱出に成功。それでも、僅かな攻防で四聖剣のうち二人が戦線離脱する事となった。

 

「卜部! 朝比奈!」

「ヴァルトシュタイン卿の要請を受けた時はつまらない任務だと思っていたが、EUの雑魚共よりも大分遊べるようだなぁ! 命の奪いがいがある!」

「やはり、ラウンズか!」

「御名答。私は皇帝陛下よりナイトオブテンの称号を賜った、ルキアーノ・ブラッドリー。ブリタニアの吸血鬼と呼ばれる、人殺しの天才だ」

「千葉、仙波! 此処で奴を止めるぞ! なんとしても、ゼロの所には向かわせるな!」

「「承知!」」

 

 ラウンズとの連戦という予想外、それもヴィクトリアをはるかに凌駕する実力を見せつけたルキアーノと相対し、藤堂は残る四聖剣に共に足止めを行う事を命ずる。

 

「シャマル、脱出した二人の保護をお願い! 私達は藤堂中佐の援護に回ります!」

「分かったわ、はやてちゃん」

 

 主であり家族であるはやての命を受けて、シャマルはその場を離れる。脱出した卜部と朝比奈の避難が終わらないと、はやての得意分野である広域殲滅魔法が本領を発揮できないからだ。

 

「さあ……お前たちの命、弾けさせろぉ!」

 

 

 ────────────────────

 

 

 ゲンブ(レガリア)が地表スレスレを飛翔してスザク(ランスロット)カレン(紅蓮)に肉薄し、合体時に戦鎚から変化した大型ランスで纏めて薙ぎ払う。

 スザク(ランスロット)は跳躍して空中へ、カレン(紅蓮)は地を這うように背を屈めてスレスレのところで回避するが、翼から放たれるハドロン砲の雨がそれぞれに追撃を仕掛ける。

 

「負けるものか!」

「こんのぉっ!」

Blaze Shield! (ブレイズシールド!)」

 

 スザク(ランスロット)は空中に道を作り即席の盾にしながらランドスピナーで疾走して躱し、カレン(紅蓮)は防御魔法による熱エネルギーの障壁で直撃を防ぎながら乗り切る。しかし。ゲンブ(レガリア)の攻撃の苛烈さを前に此方から攻撃を仕掛ける事がなかなかできない。

 上空からゼロ(ガウェイン)のハドロン砲をレガリアに向けて放つが、ゲンブ(レガリア)は頭部から生える両角による大放電でハドロン砲を散らしながら一度地に足を付け、大跳躍。その勢いのまま飛翔してゼロ(ガウェイン)に迫る。

 

「機体のパワーは明らかに相手が上。ならば!」

 

 通常のKMFよりも巨体なガウェインよりもさらに巨大なレガリアとのパワー勝負は不利と判断したゼロは、ハドロン砲の照射を止めて機体前面にブレイズルミナスを展開。更にレガリアのランスによる刺突合わせてわざと弾かれるように後方へ引いて距離を取る事でダメージを最小限に抑える。

 

「総員、撃て!」

 

 C.C.(零陽炎)の指揮の下、黒の騎士団の無頼やサザーランドリベリオンがゲンブ(レガリア)の背後に向けて一斉射撃。アサルトライフルの弾幕が、大型キャノン砲の砲弾が、グレネードランチャーが、ゲンブ(レガリア)に殺到する。

 相手が日本最後の首相、枢木ゲンブである事への躊躇はない。日本人を、この世界に生きる人たちを消耗品としか見ないような相手にかける情けなどない。しかし、

 

『「温いわぁ! 儂を足止めしたければ、この三倍は火力と弾幕を持ってくることだ!」』

 

 アクイラの時よりは飛行能力と機動力が低下しているようだが、それでも圧倒的巨体に見合わない機動性で弾幕を躱していく。何発か当たっても、ダメージを与える事が出来た様子は全くない。

 レガリアを相手にするには、無頼やサザーランドリベリオンではそもそもの火力が足りないのだ。アサルトライフルは勿論、大型キャノン砲やグレネードランチャーでさえ、レガリアの視界を一時的に塞ぐか動きを僅かに阻害する程度の効果しか期待できない。

 

「この魔力量……読めたぞ。合体した二機のナイトメアの正体は、魔力炉を内蔵したユニゾンデバイス! 合体する事で魔力炉同士の共鳴反応で増幅し、火力や防御力に転嫁しているのか」

 

 ゼロはレガリアの圧倒的スペックの理由に思い至る。

 圧倒的高性能を達成するために際限なく巨大化したレガリアは、市街地戦を念頭に開発されたKMFの本来の趣旨から大きく逸脱したイレギュラーなナイトメアだ。

 そういう意味ではガウェインも複数の実験的機能を内蔵した結果の大型化なのだから、似たような立ち位置にあるといえるだろう。

 

『「その通り! 貴様らの凡百なナイトメアとこのレガリアは! 兵器としての格が違うのだよ!」』

「魔力炉によってエナジーフィラーに依存しないエナジー供給を行い、規格外のサイズのユグドラシルドライブによる高出力化を実現する。成程、確かに厄介だな」

『「聡明な貴様ならばわかるだろう。レガリアはエナジー切れを起こさない革新的なナイトメアだという事を!」』

「ああ。そしてそのナイトメアの弱点もな。宣言しよう、ゲンブ。三分だ。三分後、お前のレガリアは地を這いつくばる事となる」

『「なにぃ?」』

 

 ゲンブとの短い問答の後に、高らかに宣言するゼロ。それと共に、ゼロ(ガウェイン)の周囲を包むように巨大な魔法陣が形成されてフェアリーサーチャーが数十機展開される。

 

『「何をするつもりか知らんが、儂が待つとでも思っているのか!」』

「邪魔は!」「させない!」

Blaze Mud Bomb! (ブレイズマッドボム!)」

 

 ゼロの企みを邪魔しようとゲンブが襲い掛かるが、横合いからエアリアルロードで接近したスザク(ランスロット)がブレイズルミナスを纏った脚部で回し蹴りを放ち、弾いた先に待ち構えていたカレン(紅蓮)が右腕部から放った魔法が着弾。レガリアに着弾し破裂した火球状の魔法は、そのまま機体に纏わりついて燃え盛りながら動きを拘束する。

 

『「この程度で、レガリアを封じられるとでも!」』

 

 ゲンブ(レガリア)が両角から再び大放電を行い、機体に纏わりついた粘着性の炎を吹き飛ばす。大放電の最中は、ランスロットや紅蓮でも近付くのは危うい。

 大放電が止んだ隙を突くように、ゼロ(ガウェイン)から放たれたフェアリーサーチャーが数機、ゲンブ(レガリア)に体当たりを仕掛ける。ゲンブ(レガリア)に接触したフェアリーサーチャーがそのまま霧散するが、目に見える変化は起こらない。

 

『「レガリアに干渉して機能を止めるつもりか? そんな小手先の技で止められるとでも!」』

「アンタの相手は!」「僕たちだ!」

「俺達の事も忘れてんじゃねえ!」

 

 嘲笑するゲンブを足止めするべく、スザク(ランスロット)カレン(紅蓮)が肉薄し、黒の騎士団の団員達(無頼やサザーランドリベリオン)が支援砲撃を行う。

 ゼロの宣言から一分が経過。

 

『「バカ息子が! アルハザードの末裔にふさわしい才を得ていながら、なぜ血族の使命のために使わぬ! 貴様が我らに賛同していれば、もっと楽になったというのに!」』

「僕は、この力を大切な人達を守るために使う! 父さんに決められる事じゃない!」

『「アルハザードの再興よりも、重要なものなどあるものか!」』

「僕にとってはある!」

 

 ゲンブ(レガリア)の大型ランスと、スザク(ランスロット)のMVSが何度もぶつかり合う。スザク(ランスロット)のMVS二刀流をランス一本で捌いてのけるゲンブ(レガリア)

 

「例え日本人の血が流れていなくても、私はこの日本で産まれて、日本で育った! 私の心は日本人だ! この日本を取り戻すために戦う! 生まれ育った国を犠牲にして日本人である事を捨てたアンタなんかに負けない!」

『「青二才が!」』

 

 ゲンブ(レガリア)の腰から放たれるハドロン砲を、カレン(紅蓮)は輻射波動で迎撃。

 

『「貴様らがこの国を取り戻したところで、この世界はどのみち詰んでいるのだ! ならばたかが一国を犠牲にして血族の悲願を果たそうとして何が悪い!」』

「悪いに決まってんだろ! 俺達は国と誇りを奪われても、取り戻すために必死に生きてきたんだ!」

「玉城の言うとおりだ! 俺達はみんな一人一人が人間だ! たとえこの国の最後の首相だった貴方でも、俺達の想いを否定はさせない!」

 

 ゲンブ(レガリア)の翼から、ハドロン砲の雨が降り注ぐ。玉城機と扇機(二機のサザーランドリベリオン)は被弾しながらもブレイズルミナスで致命傷を防ぎつつ、支援砲撃を続ける他の団員(無頼)を守る。

 

『「土着生命体(下等生物)風情がぁ! 死ね! 滅びろ! 大人しく我らの糧となれ!」』

 

 ゼロの宣言から二分が経過。

 ゼロを信じて諦めない黒の騎士団を前に、ゲンブは苛立ちを募らせ激高する。

 その間にも、ゼロがレガリアに何度もフェアリーサーチャーを体当たりさせている事にゲンブは意識を向けない。無駄な足掻きだと嘲笑い、目の前のスザク(バカ息子)黒の騎士団(害虫)を始末する事に意識を割いているからだ。

 そして、ゼロが宣言した三分が経過した。

 

「これで条件はすべてクリアされた! ゲンブよ、これで終わりだ!」

 

 ゼロ(ガウェイン)の後方だけでなく、ゲンブ(レガリア)を囲むように魔法陣が展開される。

 ゲンブはゼロの意図を読み誤っていた。ゼロが繰り返しフェアエリ―サーチャーを当てていたのは、レガリアにハッキングするためではない。レガリアにマーキング(・・・・・)する事でレガリアを起点に転移魔法を行使するためだったのだ。

 ゼロが三分間掛けて転移したのは、ゲンブ(レガリア)を包囲するように並べられた謎の機械だ。

 

「ゲフィオンディスターバー、起動!」

『「こんな機械如きで、このレガリアを……何ぃ!?」』

 

 電磁拘束機の類と判断したゲンブは、レガリアの大放電で薙ぎ払おうとする。しかし、それよりも早くゲンブ(レガリア)を包囲する機械──ゲフィオンディスターバーが起動した。

 ゲフィオンディスターバーが緑色に発光し、レガリアに異常が起こる。魔力炉によってエナジーは豊富に残っているにも拘らず、駆動システムがダウンしてしまったのだ。それだけじゃない、黄金色に輝いていたボディの輝きも色褪せ、黄銅色となっている。

 

『「どうした! 動け、レガリア! 何故動かん!」』

「無駄だ。ゲフィオンディスターバーは、サクラダイトに干渉してナイトメアの第一駆動系システムそのものを停止する。お前の負けだ」

 

 ゼロがレガリアに対処するにあたって、確認しなければならなかった事は、【レガリアの駆動システムが何に依存しているか】だった。だからこそ、フェアリーサーチャーでマーキングする際にレガリアの魔力炉が駆動システムにどこまで干渉しているのかも調べていた。

 結果は通常のナイトメアと同じユグドラシルドライブを用いた駆動システムだと判明したからこそ、ゲフィオンディスターバーの使用に踏み切った。もしも駆動システムが魔力炉そのものだった場合は、AMF(Anti-Magilink-Field)による包囲網で魔力炉を停止させる算段ではあったが、その場合は少なからず犠牲を出すことになっていたかもしれない。

 

「ゼロ……トドメは僕が」

「良いのか、スザク」

「うん。これは僕がやらなきゃいけないケジメだ。それに、僕が未来(明日)に向かうために必要だから」

「……分かった。任せる」

「ありがとう」

 

 ゲフィオンディスターバーを跳び越えて、スザク(ランスロット)ゲンブ(レガリア)の前に立つ。黒の騎士団のナイトメアには、あらかじめゲフィオンディスターバーの影響を受けないようにする対策が施されている。

 そして、ゲンブ(レガリア)の前でMVSを構え、中腰の体勢をとる。

 

『「ま、待て! スザク! 儂を殺すのか! 七年前の様に、再び己のエゴのために父である儂を殺そうというのか!」』

「そうだね、父さん。今回も、僕は僕自身のエゴのために父さんを殺す」

『「止めろ! 二度も親殺しを行うなど、正気の沙汰ではない!」』

「そうかもしれない。でも、僕は父さんを殺して未来(明日)に進むよ」

 

 MVSにエネルギーが伝搬。更に世界とつながる力(ワイアード)で引き出した魔力も魔力伝達機構を通してMVSに流し込む。

 

「……父さん、僕の人生を狂わせた貴方に、一つだけ今でも感謝していることがある」

『「な、何を言って……」』

「大切な友達……ルルーシュとナナリーに出会わせてくれたことだよ。だから──」

 

 スザク(ランスロット)の背中から、桜色の魔力を伴った光が噴出し、加速する。

 

「だから──、祖国を裏切った日本最後の首相としてではなく、枢木ゲンブの名を騙る狂人として死んでもらう!」

「ス、スザクぅっ!!!」

 

 ゲンブ(レガリア)の胴体に、加速したスザク(ランスロット)のMVSが深々と突き刺さる。それは、七年前にスザクがゲンブを殺めた時の光景を再現しているかのようであった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 スザクが過去と決別した頃、シンジュクゲットーの嚮団拠点に突入したコーネリア達は先んじて潜入していた咲世子たちと合流した事で、機械人形の群(枢木ビャッコ達)を相手に快進撃を演じていた。

 いくら人間を超えるスペックを発揮する機械人形(アンドロイド)でも、KMFを相手取るだけの攻撃力と防御力は備わっていない。

 ましてや相手は敵に対して容赦のない三人。KMFによって機械人形の群(ビャッコ達)は次々と薙ぎ払われていく。そして──、

 

「この先が、儀式の中核となる設備です!」

「分かった! 今助けるぞ、ナナリー! はぁぁっ!」

 

 分厚い隔壁で閉ざされた扉を、コーネリア機(グロースターカスタム)のルミナスランスが抉り貫き、大穴をあける。そしてマーヤ機(蒼月改)が大穴に両腕をねじ込んで力づくで扉をこじ開けた。

 

「ナナリーは……居た!」

 

 同心円状に何層にもわたって配置されたカプセル越しに発光する淡い光によって明るく照らされた部屋の中央部に、冠のようなものを被せられて玉座に座らされているナナリーを見つける。

 周囲には嚮団員達が銃やデバイスと思しき杖を取り出して応戦しようとするが、

 

「此処は僕に任せて」

 

 ロロが体感時間停止(ギアス)を発動。嚮団員達の銃やデバイスを持つ手を真っ先に次々と撃ちぬいて無力化していく。

 

「本当は殺した方が後腐れが無いんだけど、ナナリーが気に病みそうだからさ」

 

 僕も甘くなったかなとぼやきながらギアスを解除し、突然の痛みに武器を落とし喘ぐ無力化した嚮団員達を咲世子とギンガと共に拘束していく。

 

「見て! このカプセル、中に子供たちが!」

「こっちはまだ息がある! あっちは……駄目だ。心の声が聞こえない」

「早くシステムを停止させて、ナナリーちゃんもこの子たちも出来る限り助けるわよ!」

 

【それは困るのぉ?】

 

 カプセルの中身を確認し、生存者を救おうと動き始めたギンガたちの脳内に、強大な威圧感を伴った老人の声が直接響く。

 

【邪魔されては困る故、お主らも堕ちてもらうとしようか。この枢木セイリュウの想起のギアスでもって(夢の世界へ)

 

 姿を見せない老人のしわがれた声に引き寄せられるように、その場にいた全員の意識が呑み込もうと魔力が浸食を始める。

 ギアス対策の魔法的防御を施していたマーヤたちにも影響を与える程の、劣化ギアスとは比べ物にならない干渉力。

 

「拙……この、ままじゃ……」

 

 ナナリーを前にしてマーヤたちの意識は薄れ、暗闇へと沈んでいった。

 

 

 ────────────────────

 

 

 誰かの苦悶の叫びが、応報を求める怨嗟の声に導かれるままに、俺達(・・)は気がつけばこの世界に形を成していた。

 不思議な感覚だ。身体は一つだけなのに、心も一つのはずなのに、覚えている記憶は時間も場所も矛盾だらけの重なり合った記憶ばかり。

 この身体は(カルマ)でできている。枢木スザクという存在の有り得た罪業の可能性の集合体。

 

 ──父親殺しという原初の(カルマ)

 

 あの時から、俺は死に場所を求めていた。

 

 ──守りたかった君主(ユフィ)を救えず、親友を皇帝に売った裏切りの(カルマ)

 

 あの時から、俺は血濡れの道を歩む決意を抱いた。

 

 ──故郷に深い、深い爪跡を残した殺戮の(カルマ)

 

『生きろ!』

 

 親友の呪い(ギアス)は、俺に取り戻したかったものを壊す引き金を引かせた。

 そして……、

 

 

 

『奴隷になれ!』

 

 ──親友の呪い(ギアス)によって殺戮者となった最も忌まわしい(カルマ)

 

 敵も、同胞も、守りたかった者(ユフィ)も。全て、全て何もかもこの手で殺め血に染めた。

 幾つもの可能性、幾つもの(カルマ)が、この肉体には宿っている。

 最も忌まわしい(カルマ)の世界で愛機だったランスロット・カルマを駆って当てもなく空を飛ぶ。

 この世界で形を成した時、ユフィに感謝された。やめてくれ。僕はもう、君とともにいる資格なんてないんだ。この手はもう、数多の血で穢れてしまっている。

 それよりも……この世界にはゼロが、ルルーシュが生きている。

 理屈では俺達の世界の彼じゃないと解っている。それでも、この胸から湧き出る憎悪が、憤怒が、ルルーシュを殺せと叫んでいる。

 

 ──見つけ出したい(仇を殺したい)見つけたくない(親友を殺したくない)

 

 理性と感情が激しくせめぎ合いながら、放浪する。そんな危ういバランスの状況でもし、ルルーシュを見つけてしまったら……。

 それは、運命の悪戯か必然か。

 俺は、この世界の(白い)ランスロットと、ガウェインを見つけてしまった。

 

「ぁ、ぁああ……」

 

 理性が削れ、憎悪の感情が膨れ上がる。ごめん、この世界のユフィ(ユフィ)……俺は、また君の想いを踏みにじってしまう。

 

「ゼロぉおぉっ!!!」

 

 ランスロット・カルマのハドロンブラスターを展開、衝動のままにガウェインに向けて引き金を引いた。

 

「あれは!? くぅっ!」

 

 ガウェインは俺の世界にはなかったはずのブレイズルミナスを展開し、ハドロンブラスターの余波が地上に降り注がないようにその軌道を変えながら耐え凌いだ。

 

「ゼロぉっ! ルルーシュ!」

 

 殺す。殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す! 

 

「あれは、黒いランスロット!?」「しかも飛んでるし見た事ない装備もあるぞ!」

「紅月が藤堂中佐の所に派遣されたばっかりだってのに!」

「ゼロ! あの黒いランスロットの相手は僕がする! 団員たちを連れて先に行ってくれ!」

「しかし!」

「大丈夫、死ぬ気はないよ。皆で未来(明日)を掴み取るんだ」

「……頼むぞ」

 

 この世界の(白い)ランスロット──この世界の俺が、立ちはだかるように前に出る。飛翔滑走翼やフロートシステムの類は搭載していない、普通のランスロットを無視してガウェイン(ルルーシュ)を追おうとして、この世界の(白い)ランスロットは脚部から桜色の光を噴出し、空中に道を創り出してランドスピナーで接近してきた。

 

「俺の邪魔をするな!」

「ルルーシュの邪魔はさせない!」

 

 互いのMVSがぶつかり合い、鍔迫り合いを繰り広げる。ランスロット・カルマの出力は本来のランスロットを凌駕している。それにもかかわらず拮抗しているのは、あのランスロットは先程見せた機能をふくめてランスロット・カルマとは異なる進化を遂げているという事だ。

 互いに同じタイミングで仕切り直して距離を取りながら、左腕部のスラッシュハーケンを同時に等直線上に射出。双方のスラッシュハーケンが互いにガッチリと噛み合い、互いを逃がさない。さながらチェーンデスマッチの様相だ。

 空を飛翔するランスロット・カルマと、空を疾走するランスロット・トラヴァース。

 互いにヴァリスによる引き撃ちを放棄し、MVSとメッサ―モードにしたスラッシュハーケンによる白兵戦を空中で繰り広げる。

 そうしていくうちに、二人のスザクの脳裏に、知らない記憶が流れ込む。

 

 ──シンジュクゲットーでルルーシュを守ろうとしてクロヴィス第三皇子の親衛隊隊長に撃たれた時の記憶。

 (カルマ)スザクには、銃弾は何かに弾かれて重傷を負う事なくルルーシュと共に逃走したヴィジョンが流れ込む。

 スザクには、銃弾に撃ち抜かれて倒れるヴィジョンが流れ込む。

 

「今の……」「記憶は?」

 

 互いに困惑しながらもぶつかり合ううちに、再び知らない記憶が。

 

 ──クロヴィス第三皇子暗殺犯が裁判所へと移送されると記憶。

 スザクには、自らが暗殺犯として拘束されていて、途中でゼロ(ルルーシュ)による救出劇のヴィジョンが流れ込む。

 (カルマ)スザクには、自らではなく特派の人たちが拘束されていて、途中でゼロ(ルルーシュ)が自分と共に救出劇を繰り広げるヴィジョンが流れ込む

 

 カワグチ湖ホテルジャック事件の記憶が、ナリタ連山での戦いの記憶が流れ込み、互いに流れ込んでくる記憶・ヴィジョンの出どころを察する。

 

「「まさか、この記憶は……!」」

 

 スザクは、黒いランスロットのパイロットが違う可能性を経験した自分である事を理解した。

 (カルマ)スザクは、この世界のスザクが自分とは全く違う人生を辿ってきたことを理解した。

 

 互いに相手を理解してもなお、寧ろ戦いは激化していく。

 憎悪と怨嗟に血濡れた殺戮者である(カルマ)スザクは、この世界のように自分が親友と分かりあい手を取り合えた可能性があった事を認める事が出来ない。認めてしまったら、自分は一体何だったのかというアイデンティティの崩壊に直結してしまうからだ。

 一方のこの世界のスザクは、数多の世界で自分とルルーシュが互いにぶつかり合い、憎悪し、争って悲劇を広げていった事実を受け止め、だからこそ目の前のもう一人の自分を止めようと誓う。

 (カルマ)スザクを通して流れ込んだ記憶とヴィジョンには、ルルーシュのギアスによって引き起こされた幾つもの悲劇もあった。

 

「君がルルーシュを憎む気持ちは理解できる。でも君が憎むべき相手は、この世界のルルーシュじゃない!」

「ならば赦せと!? ユフィに消えない汚名を被せたあいつを!」

 

 (カルマ)スザクのランスロット・カルマのMVSが、スザクのランスロット・トラヴァースのMVSを斬り落とし、MVSを囮にしたメッサ―モードの手刀でランスロット・カルマの右腕を肘から抉り落とす。

 

 

「ルルーシュはギアスを持っていない!」

「黙れ! ルルーシュの存在は、多くの悲劇を生む! 生まれてきた事が、生きている事が間違いなんだ!」

 

 互いのブレイズルミナスを纏った蹴りがぶつかり合い、互いに弾かれる様に距離を取る。

 

「そうやって、ユフィを悲しませるつもりなのか! 君自身の手で!」

「っ!!?」

「君の世界のユフィも、この世界のユフィも! そんなことは望んでいないだろう!」

「ぁ、ぁあぁっ! 黙れぇえぇっ!!!」

 

 ランスロット・カルマの両腰のスラッシュハーケンが射出され、ランスロット・トラヴァースの右腕を貫く。

 

「まずは、お前からぁあぁあっ!」

 

 互いに接近し、加速する。

 左腕にブレイズルミナスを纏い、相手を貫こうと手刀を突き出す(カルマ)スザクのランスロット・カルマに対し、スザクはランスロット・トラヴァースの左腕を分離(パージ)することで本来の機動力を取り戻して回転するように躱す。

 

「この、馬鹿野郎!」

 

 その回転力を殺すどころかむしろ加速させ、陽昇流(ひのぼりりゅう)誠壱式旋風脚(まこといちしきせんぷうきゃく)でもってランスロット・カルマの側面を強かに打ち据えて大地に叩き落とした。




 ヴィクトリア、ルキアーノによって処刑されるの巻

 本作においてエクウスとアクイラがかなりデカい理由:ヴィクトリアが機体に魔力炉を搭載するために大型化せざるをえなかった。
 なおスカリエッティ製のKMFは、魔力炉を搭載しつつユグドラシルドライブと一体化する事で、基になった機体と同サイズを維持している模様。
 ヴィクトリア製:魔力炉で魔力製造、魔力をエナジーに変換し高出力のユグドラシルドライブへ。莫大なエナジーで各種兵装を使用。
 スカリエッティ製:魔力炉をユグドラシルドライブと一体化、魔力とエナジー双方を動力源にしつつ機体の武装などに魔力を伝搬させることも可能に。
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