ナナリーを縛めていた鎖が、閉じ込めていた檻籠が罅割れ砕け散った。支えを失ったナナリーが倒れないようにその背中をマーヤとコーネリアが支える。
マーヤたちの呼びかけにナナリーは反応し、ゆっくりと閉じられていた瞳が開かれた。
「ナナリー……目が!」
「お久しぶりです、コーネリアお姉様。そして……貴方がマーヤさんなのですね?」
「うん。そうだよ、ナナリー」
「私はもう過ぎ去ってしまった過去にしがみつきません。お父様が望んだ変わらない
ナナリーはV.V.が度々口にしていた『嘘だらけの世界』への憎悪、そして夢から覚める直前に過去の
『嘘のない世界』を創るために神と呼ばれる何かを殺し、人類を文字通り一つにしようとしている。この既視感は、恐らくは気のせいではない。今のナナリーは、神殺しの弾丸とするために
(お母さま……私に、ナナリーに力を貸してください)
「だから、まずはあれを何とかしてきますね」
そう言って、ナナリーを包むように、一体のKMFが構築されていく。それは頭部がなくコックピットも剥き出しの青を基調とした基本フレームに、複数の肘関節を備えた長い腕部と左右の脚部に計4基のランドスピナーを備えたガウェインに匹敵する巨体の機体だった。
「な、なにあれ!」
「あれは、アッシュフォード学園に保管されているガニメデ!?」
「ガニメデは元々、マリアンヌ皇后がテストパイロットを務めていた機体だ、あの人の娘であるナナリーが知っていてもおかしくはないが……」
ナイトメアの開発史を知らないマオが、ナナリーを乗せたガニメデの威容に驚く。
【馬鹿な!
これまで余裕綽々であったセイリュウが焦りを露にし、大樹から枝を伸ばしてナナリーを捕えようとする。
しかし、ナナリーを乗せたガニメデは初めて乗ったと思えない滑らかな動きでセイリュウが伸ばした枝を躱し、大樹を駆け上がっていく。
本来のガニメデの性能だったなら、これほどの動きは不可能だった。しかし、ナナリー達が今いる場所は想いが力となって形になる精神世界。ナナリーにとってナイトメアとは、母であるマリアンヌが駆るガニメデだ。娘である自分が母の愛機で理想の動きができないわけがないという根拠のない確信が、ガニメデに現実世界における本来の性能を超えた性能を発揮させていた。
地響きを上げて隆起する大樹の幹をのぼり、ガニメデの長い腕部を活かして樹上で生活する類人猿の様に枝から枝へと軽やかに飛び移る。
まるでどこにあるのかを理解しているかの様に、ナナリーはセイリュウの中核へと最短距離で向かっていく。
「枢木セイリュウ。私の世界からいなくなりなさい!私達の未来を妨げないで!」
ナナリーの瞳に
本来ならば有り得ない、ヴィクトリアが生み出した偽りのギアスでない本物のギアス、それでいてコードユーザーを介さずに発現するという特級のイレギュラー。
奇しくもV.V.によって注ぎ込まれた膨大な魔力が、ナナリーが目覚めたギアス――未来線を読む力を増幅させ、今この場においては局所的な
ナナリーの
【な、なんだ!?これは!世界の浸食が進まない!それどころか、儂が朽ち果てていく!?】
「何が起きているのかよくわからないけれども!」
「今こそが好機!」
さらに各々のナイトメアによる攻撃とギンガの魔法が、脆くなった大樹を一気に削り砕いていく。
精神世界という養分を失った大樹は見る見るうちに瘦せ細り、自重を支える事もできなくなって音を立てて崩れていった。
崩壊する大樹から、ガニメデに乗ったナナリーが飛び降りて大地へと着地する。
駆け寄ったコーネリア達は、ナナリーの瞳に宿るギアスの輝きを見て、不安を覚えながら訪ねた。
「ナナリー……その
「本来は……未来の可能性を、未来線を読む力です。私が辿る可能性のあった未来の一つが、私に力を貸してくれました」
「そうか。それにしても懐かしいな。アリエス宮にいた頃のお前のやんちゃぶりを思い出したぞ」
「そうですか?」
「ああ、お前とユフィの二人でルルーシュを取り合いっこしていた頃と、本質は変わっていない」
ナナリーのギアスの輝きが鎮まる。ギアスが暴走している訳ではないのは不幸中の幸いかもしれない。
「お見事でございます、ナナリー様。篠崎咲世子、ナナリー様のメイドとしてこれからも変わらず尽くさせていただきます」
「ありがとうございます、咲世子さん」
「良かった、ナナリー。今度こそ助ける事が出来て。兄さんも喜ぶよ」
「えっと、どちら様でしょうか?学園や孤児院でもお会いした事は無かったような気がするのですが」
「そういえばナナリーには自己紹介がまだだったね。僕はロロ、よろしく」
「ロロさん、此方こそよろしくお願いします」
ロロが差し伸べた手を、ナナリーは握って握手する。この時にロロが何を考え想いながらマーヤたちと一緒に助けに来てくれたのかを、ナナリーは感じ取った。
「良かったね、ナナリー。皆と一緒にルルーシュの所に帰ろう」
「はい。もう少ししたら、皆さんの意識も元の肉体に戻ると思います」
「ナナリーがトラウマを乗り越えて目を開けられるようになったと知ったら、ルルーシュはさぞ驚くだろうな」
「その事についてですが、後でお兄様たちも交えてお話しするべきことが――」
【あぁ……口惜しや。よもや只の小娘と侮ったがために……】
大樹が崩れ落ちた方向から、老人の声が聞こえる。マーヤたちが視線を向けると、視線の先には頭部に位置していただろう歪な球状の黒い靄が輪郭部分から徐々に霧散しながら漂っていた。
「セイリュウ!」
【カッカッカ……そう身構えるでない。
実際その声は弱々しく、今にも霧散して消滅してしまいそうなほどに存在感が薄まっている。
「それで、うたたかの夢に消えゆく貴様が何の用だ?」
コーネリアはセイリュウを警戒し、睨みつける。マーヤも拳銃を構え、いつでも撃てるように銃口を向けている。
【なに……敗れ去った者としてのささやかなお節介じゃよ。早く現実世界へと脱出し、一刻も早く逃げる準備をした方が良いぞ?】
「なに?」
【言ったであろう。
「……っ!?」
セイリュウの言葉の意図を探ろうと
「マオ、どうしたの?」
「
【そう。次の機会はないと判断した儂ならば、この世界に余波を与えぬように展開する障壁を、旅立ちのためのエネルギーに注いで賭けに出る。この世界から脱出するほどのエネルギーの余波、いったいどれ程の被害をもたらすかのう?あぁ……口惜しや】
そう言い残し、セイリュウの残滓は完全に霧散した。
恐ろしいことになるとは理解してもその具体的なイメージが追い付かないマーヤ達。一方、反応が顕著だったのは、ギンガであった。
「拙い……!早くしないと!大惨事になるわ!」
「ナナリー!私たちを現実世界の方に戻せ!大至急だ!」
「あ、はい!わかりました、コーネリアお姉さま!」
「皆さん、話は現実世界に戻ってから。脱出しながら説明します!」
ギンガの反応から、自分たちの予想よりも悲惨なことになると判断したコーネリアの呼びかけに応じて、精神世界の主としての権限を取り戻したナナリーがマーヤ達の意識を現実世界へと急浮上させる。
マーヤ達が目覚めると、淡い光を放ち部屋を照らしていたカプセルからその光は失われていた。
身体を起こしたギンガが玉座のような席に座っているナナリーから冠状の装置を外し、咲世子が抱きかかえる。
「カプセル内の生存者も一緒に!」
「駄目だ。僕たちがセイリュウに精神世界へ引きずり込まれていた間にこの子達はもう……」
マオがカプセルで眠る子供達から心の声が聞こえなくなっていることを感じ取り、亡骸となった彼等に短く黙祷。
そしてマーヤ、コーネリア、ギルフォードのナイトメアの手にそれぞれマオとロロ、佐代子とナナリー、ギンガを抱えて脱出を開始する。
「ギンガさん、説明をお願いします」
「ええ。セイリュウはアルハザードへの帰還のため、莫大な魔力で構築された
ギンガの前置きに、周囲は頷く。
「脱出方法として想定されるのは、大気圏外へ本体を打ち出せるほどに大出力な推進力を持ったロケット。それも、彼らのオリジナルの人格を宿したロストロギアを格納したロケットです」
「大気圏外へ脱出するほどの大出力ならば、発生する衝撃波や爆風も相当なものになるのは分かるが……想定される被害範囲は?」
「ロケットのサイズにもよりますし、開けた地上で打ち上げる前提の話だけど、それでも半径数キロ圏は影響が出ます。ロケットのサイズと推進装置の出力次第ではより広範囲により大きな被害が出ることも考えるべきでしょう」
「でも、地表に目立つ構造物はありませんでした。そうなると、地下ブロックを構成する多層構造体に格納していると見た方が良いですね」
「その場合、打ち上げ時の衝撃と爆風が地下の多層構造体に一気に流入する可能性が。ゲットーを構築する構造体の崩壊といった二次被害も含めると、より広範囲にわたって被害が及ぶかもしれません」
「そんなことになったら……最悪の場合、シンジュクゲットーが壊滅してしまう!」
ギンガの説明によって事態の深刻さを理解したマーヤが叫ぶ。
クロヴィス前総督によるシンジュクゲットーでの虐殺でも相当な被害は出たが、あくまでそれは人的な被害と地表建築物の崩落が主だった。しかし今回はその時よりもより甚大な、シンジュクゲットーを構築する地下構造体そのものの崩壊につながりかねない事態だ。
それはそのまま部隊を展開している黒の騎士団とユーフェミア率いるブリタニア軍の壊滅だけでなく、近隣のゲットーや租界にまで被害が及ぶ可能性もある。
「止める方法はないの!?」
「無理だ。どこにあるか定かではないロケットを見つけ出し、発射前に爆発させずに止めるには時間が足りん。私たちにできることは、一刻も早く全軍に撤退命令を出し、シンジュクゲットーにつながる区画の隔壁を可能な限り閉じて被害を少しでも軽減することだ」
コーネリアの言葉に、一行はその表情を曇らせることしかできなかった
――――――――――――――――――――
嚮団拠点を脱出したマーヤ達からの緊急通信は、シンジュクゲットーで戦っている三陣営すべてに大きな衝撃を与えた。
「シンジュクゲットー圏外への撤退を急いでください!軍の撤退が確認でき次第、シンジュクゲットーと隣接している地下区画の閉鎖もお願いします!」
コーネリアから情報を得たユーフェミアは、ジェレミア卿を筆頭に重傷者を収容したG1ベースを直ちに退かせるとともに、もしもの被害を少しでも軽減するために地下区画の閉鎖を指示する。
ナナリー救出の報告を受けた時は喜びの声をあげたものだが、その後の想定される惨事を聞くとそれも霧散してしまった。
シンジュクゲットーの住人を避難させることはできないかと考えたが、嚮団が引き起こした儀式の起点に近い事から生存者は絶望的だと告げられ、問答する時間すら惜しい状況ゆえに軍の撤退を優先せざるを得ない現実にユーフェミアは顔を曇らせる。
「お姉さま、ルルーシュ、ナナリー、マーヤさん、……スザクさん、どうかご無事で」
心細さを感じながら、大切な人の無事を願うユーフェミア。しかしそこでふと疑問に思う。なぜ自分は今、スザクのことも身を案じたのだろうか?
確かに枢木スザクはルルーシュの親友ではあるが、自分との接点は薄い。それなのに、先ほどの自分はとても親しい相手であるかのように案じていた。
思えば、先程のもう一人の枢木スザクに対してもある種の強い親しみを感じていた。
(ひょっとして、私は……彼に?いえ、今そんなことを考えるのは不謹慎です!)
ユーフェミアはもしもの可能性を考えて、緊迫したこの状況では不謹慎だと首を振って撤退作業の指揮を執っていた。
一方、神聖ブリタニア帝国ラウンズの一角であるルキアーノ・ブラッドリーと交戦中の藤堂たちにとっては苦しい状況であった。
月下の武装は腕部にマウントするハンドガンと手持ちの
一方、月下を超える性能を有しているルキアーノの
霧と化したルキアーノの
「どうしたぁ?私の命を奪ってみせろ!できないなら……私がお前たちの命を奪ってやろう!」
「させないよ!」
ルキアーノのナイトメアが右腕に展開したルミナスコーンとカレンの紅蓮弐式改の右腕部輻射波動はぶつかり合い、エネルギーが鬩ぎあう。
数秒の鬩ぎあいの後、ルキアーノは機体をバックステップさせて下がりながら反撃としてシールドミサイルを発射。紅蓮弐式改に向かうそれを仙波と千葉の月下が装備するハンドガンの十字砲火で撃ち落とす。
「良い動きと連携だ。だが、そちらはいつまでエナジーが保つかな?」
ルキアーノのナイトメア、プロトヴィンセントには、従来のナイトメアとは異なりユグドラシルドライブと魔力炉心によるハイブリッド動力となった事で活動限界時間が大幅に延長されている。
事実、藤堂たちはルキアーノとの激しい戦闘によって月下の活動限界時間を意識しなくてはならない所までエナジーを消耗させていたし、カレンの紅蓮弐式改も攻撃に魔法を織り込ませることで節約していたとはいえカートリッジ式である輻射波動の残弾が心もとなくなっている。
(拙い。突破口となる手札が二つしかない上にこちらにはエナジーだけでなく撤退の時間制限もある。相手は霧になればシンジュクゲットーの崩壊から逃げられることを考えると、このままでは間に合わなくなる。最悪の場合、機体を放棄して八神二等陸佐たちに部下と紅月たちを転移してもらい撤退することも考えねば)
藤堂は戦況の悪さを把握し、脱出が間に合わない最悪の場合に備えていた。
そしてルルーシュは、ナナリーを連れたマーヤ達と合流し共に黒の騎士団を引き連れてシンジュクゲットーからの脱出を急いでいた。
本音を言えばこのまま嚮団拠点を完全制圧し、嚮主V.V.も見つけ出して捕らえたかったところだ。しかし状況はそれどころではなくなってしまい、少しでも黒の騎士団の被害を抑えるために撤退を進める必要に迫られている。
「V.V.め……次に見つけ出した時には必ず!」
当初の目的はほぼ完全にクリアした。本命であるナナリーを助け出し、関東圏を襲っていた生命力の収奪も停止した。
それでも、計画の本筋を放棄しての逃げの一手を相手の一部が強行した事で、シンジュクゲットーにも壊滅的なダメージが発生してしまう。
突貫でシンジュクゲットーから緊急避難するループ放送を構築し、全周波で緊急放送として流しているが、どれだけの人たちの避難が間に合うかは未知数だ。
時には瓦礫などで塞がっていないルートをスキャンし、場合によってはガウェインのハドロン砲で通行を妨げる大きな瓦礫を吹き飛ばして撤退ルートを確保。そうやって黒の騎士団の無頼とサザーランド・リベリオンの撤退を進めていくルルーシュが操るガウェインのドルイドシステムが、自分達とは正反対に嚮団拠点へと向かう一機のナイトメアの機影を捉える。
「あれは……スザクと交戦していた黒いランスロット!何をするつもりだ?」
黒いランスロットの軌道は、さながら空母へと特攻する戦闘機のような命を顧みない動きをしていた。
超高密度の魔力で保護されているロケットを破壊するとなると、KMFが出せる火力では不可能だ。それこそ闇の書の闇を討滅する際に用いられた、アルカンシェルのような問答無用の火力が必要だが、そんなものがあればこちらを襲撃した際に使っていないのは理屈が通らない。
理解できないもどかしさを抱えつつも黒の騎士団の団員をシンジュクゲットーから脱出させるルルーシュ。
そして……嚮団拠点が桜色の輝きに包まれた。
――――――――――――――――――――
時は少し遡る。
ランスロット・カルマを大地に叩き落し勝利したスザクは、通信をつないだまま彼の意識が戻るのを待っていた。
少しして、
「なぜ殺さなかった」
「殺したくなかったから。それより、目……醒めた?」
「……最悪な気分だ」
ルルーシュを殺すのを
思えば、本当にルルーシュを殺したいならばランスロット・カルマの後ろ腰に装備されている
それなのにそうしなかったのは、ひょっとしたら……ルルーシュを許したい気持ちがかすかにあったのかもしれない。
「それで、俺をどうするんだ?」
「うーん。とりあえず、ナナリーを助けて落ち着いたら、ルルーシュと引き合わせてみるつもり」
「馬鹿か?俺はルルーシュを殺そうとしているんだぞ」
「でも、今の君からは衝動的にそうしようとするほどの憎悪は残っていない気がするから。互いに理解しているつもりになって、話し合わないですれ違って。親友同士で憎しみ合いながら殺しあって終わりだなんて悲しいと思うんだ」
自分だからわかってしまう。こいつは本気でルルーシュと引き合わせて話をさせるつもりだ。
確かに、俺を形作っている数々の
真の意味で互いを理解しようと話し合っていれば、すべてとはいかないが避けることができたかもしれない。敵対は避けられなくても憎しみ合うことはなかったかもしれない。
「俺……は、――」
「待って、何か放送される」
言葉を紡ごうとして、全周波での緊急放送の音声が流れていることに気が付いた
『エリア11総督にして第二皇女、コーネリア・リ・ブリタニアの名のもとに貴官らに命じる!シンジュクゲットーに展開しているブリタニア軍は直ちにシンジュクゲットーより撤退し、シンジュクゲットーとつながる全区画の隔壁を閉鎖せよ!繰り返す!――!』
『同じく黒の騎士団のゼロからも通告する!総員、直ちにシンジュクゲットーから撤退し、ブリタニア軍とともにシンジュクゲットーとつながる全区画の隔壁を閉鎖せよ!間もなくシンジュクゲットー全域の多層構造体が崩落する恐れがある!繰り返す!――!』
それは両陣営がシンジュクゲットー全域からの脱出命令を発令する異常事態。
「なんだと!」
「ルルーシュからのメール通信も来ている。突入班によるナナリーの救出は成功しているって!ルルーシュが脱出を優先したってことは、止めることは間に合わないって判断したんだ。君も一緒に脱出を!」
(そうか……俺がこの世界に来たのは、この時のためなんだな)
それは、自分の存在意義。何のために顕現し、本当になすべき使命。
「すまない。俺は、行かなくてはならない」
ランスロット・カルマのフロートシステムを再起動。両腕を喪った機体を浮かせる。
「何を……」
「ルルーシュに伝えてくれ。できる限り早く、ニーナ・アインシュタインを保護するように。彼女はこれからの未来のキーパーソンになる」
「待つんだ!」
「お前は生きろ!生きて
嚮団拠点にほど近い大地に偽装されていた地表の隔壁が開き、地下に隠されていた大型のロケットがランスロット・カルマの画面に映し出される。
相手も接近する此方に気が付いただろう。しかし、両腕を喪い武装を使えない半壊のKMF一機如きで止められるわけがないと高を括っているだろう。その慢心こそが命とりとなるのだ。
ランスロット・カルマの後ろ腰にマウントしているフレイヤランチャーにアクセスし、フレイヤを起動させる。効果半径10キロをさらに縮めて半径1キロになる様にリミッター強度を再設定。
フレイヤのカウントダウンが始まる。
たとえ超高密度の魔力によってロケットが保護されていようとも、フレイヤが引き起こす消滅反応の前では無力。ロケットが打ち上がる前に諸共に消し飛ぶだろう。
エリア11を、日本を生贄にしようとした邪悪な企みを滅ぼす一刺しを前にして、憎悪に荒れ狂っていた心は静かだった。
「ユフィ……」
これから愛機とともに終わりを迎える